
執筆者:辻 勝
会長税理士
在医総管2026厳格化|軽症者割合と対応策を税理士が解説

在医総管2026年厳格化で何が起きるか
在医総管(在宅時医学総合管理料)の2026年厳格化とは、在宅医療の中でも「医学管理の負荷が相対的に小さいケース(いわゆる軽症者)」に算定が偏る状況を是正し、評価(点数)を「重症度・支援の厚み」に寄せる方向性です。
訪問診療クリニックにとっての問題は、制度の趣旨自体ではなく、自院の患者構成(軽症者比率)次第で、在医総管の算定の通り方・単価・監査耐性が一気に変わる点にあります。
令和8年度診療報酬改定では「適切な在宅医療の推進」「在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化」が明記され、施行は令和8年6月とされています。したがって、2026年前半の準備が実務上の分岐点になります。
在医総管の「軽症者割合」論点とは
「軽症者割合」がなぜ問題になるのか(政策側の論理)
在宅医療は本来、通院困難・多疾患併存・急変対応・看取りなど、連携と判断が連続する領域です。
一方で、在医総管は月単位の包括評価であるため、運用次第では「比較的安定した患者」を集めて件数を積むインセンティブが働きやすい構造があります。過去の中医協資料でも、在宅医療を中心に提供する医療機関が「軽症者を集めて診療」することによる弊害が論点として提示されてきました。
この流れを2026改定で再度強める、という読みが現場では自然です。
2026年の実務イメージ:制限は「患者群の定義×算定可否×点数差」に出る
制度設計は「軽症者の定義」そのものよりも、次の組み合わせで効いてきます。
- 軽症者の判定(状態像、医療依存度、介護度、訪看回数、処置の有無など)
- 軽症者が一定割合を超えた場合の取り扱い(点数の逓減、加算不可、施設基準強化、算定制限など)
- 月内の訪問回数(月1回と月2回以上で評価が分かれる設計が過去改定でも強調)
「月2回」算定制限が与える影響(訪問診療 2026)
在医総管は「月単位で医学管理を評価」する点数ですが、制度上は月内の訪問頻度と結びついて整理されてきました。
平成30年度改定の資料では、在総管・施設総管について「月2回以上の訪問診療を行った場合の在総管・施設総管を適正化し、月1回の場合を充実する」と明記されています。
つまり、2026年も同様に、運用としては次のいずれかが起きやすいと考えられます。
- 月2回以上の層の単価が伸びない(あるいは厳格化で要件が上がる)
- 月1回の層は「軽症者寄り」と見なされ、割合管理の対象になりやすい
- 訪看・処置・介護度などの「重症度の裏付け」がないと、月2回運用が説明しづらくなる
自院への影響を3分で見積もる方法(在医総管 軽症者 割合)
ここからは、税理士として「経営に落とす」ための簡易診断です。
結論として、2026厳格化の影響は 患者構成×単価×監査耐性 の3軸で決まります。
Step 1: 在医総管算定患者を棚卸しする
- 在医総管の算定患者数(直近3か月平均)
- 月1回運用 / 月2回以上運用の内訳
- 施設系(同一建物)比率の概算
Step 2: 軽症者に寄りやすい群を仮分類する
院内でまずは「監査で説明しづらい群」を先に拾います。
例:病状安定、処置なし、訪看少、連携記録が薄い、家族支援の記載が弱い、など。
Step 3: 影響の出方をパターンで把握する
下表のどこに自院が当てはまるかで、2026の体感が変わります。
| パターン | 典型的な状態 | 2026で出やすい影響 | 優先対応 |
|---|---|---|---|
| A:軽症者比率が高い | 月1回中心、処置少、訪看少 | 算定の説明負荷が急増、単価見直しの直撃 | 症例構成の調整、記録の標準化 |
| B:混在型 | 月1回と月2回が混在 | ルール変更の影響が読みにくい | 患者群ごとの採算管理 |
| C:重症度寄り | 医療依存度高、看取り、訪看多 | 制度趣旨には合致しやすいが、体制要件が問われる | 24時間対応・連携の証跡強化 |
| D:施設集中型 | 同一建物の比率が高い | 集中に対する評価適正化の影響を受けやすい | 施設契約と算定区分の再点検 |
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訪問診療クリニックの対応策(収益・実務・監査を同時に守る)
1) 症例構成を「重症度の裏付けがある群」に寄せる
2026の本丸は、軽症者に偏った医学管理の評価を是正することです。
したがって対策は「軽症者を切る」ではなく、次のように“裏付けを作る”方向が現実的です。
- 介護度・認知症自立度・訪看回数・処置の有無を、算定患者ごとに見える化
- 多職種連携(ケアマネ、訪看、薬局、施設職員)を定型フォーマットで記録
- 看取り・急変対応の体制(連絡体制、オンコール、受入先)を文書化
2) 「月2回」運用は、医療計画と連動させて説明できる形にする
月2回以上の訪問は、過去改定資料でも評価の適正化対象になりやすい領域です。
そのため、回数の根拠を以下で揃えます。
- 診療計画書(頻度・目的・観察項目)
- 直近の状態変化(検査・処置・薬剤調整・症状増悪)
- 訪看や家族支援との役割分担(医師が月2回行う合理性)
3) 診療録と算定要件のギャップを埋める(返戻・個別指導対策)
個別指導で崩れるのは、点数そのものより「根拠の不足」です。
地方厚生(支)局の資料でも、請求の根拠は診療録にあること、遅滞なく必要事項を記載することが強調されています。
- 記録の最低限セット(同意、計画、急変時方針、連携、包括範囲)
- 医師・事務の役割分担(誰がどの証跡を残すか)
- 返戻理由の棚卸し(同一理由の再発を止める)
4) 収益シミュレーションは「単価×件数」ではなく「粗利×人時」で見る
在医総管の厳格化は、売上の上下だけでなく「業務負荷の増加」とセットで来ます。
税理士としては、次の管理単位を推奨します。
- 患者群別の粗利(在医総管+訪問診療+加算−外注費・移動費・人件費按分)
- 医師・看護・事務の人時(稼働が増えても粗利が伸びない構造を早期発見)
- 施設契約の見直し余地(移動効率と同一建物評価のバランス)
よくある質問
Q: 在医総管の「軽症者」は明確に定義されるのですか?
A:
改定ごとに定義の置き方は変わり得ますが、実務上は「介護度・認知症の状態・訪看頻度・処置・急変リスク・連携の必要性」といった客観指標で説明できるかが重要です。2026は在宅医療の評価適正化が明記されているため、裏付けの弱い群ほど影響が出やすいと考えられます。Q: 月2回の訪問診療を増やせば有利になりますか?
A:
回数増は単純な解ではありません。過去改定資料でも月2回以上の層は「適正化」の対象として整理されています。回数の合理性を診療計画・診療録で説明できないと、返戻や指導対応の負荷が上がります。Q: 税理士に相談すると何が変わりますか?
A:
診療報酬の論点を「患者群別採算」「人員配置」「契約(施設・訪看・薬局)」「資金繰り」に落として、制度変更に耐える経営設計にします。個別指導で問題化しやすい論点は、運用と記録の型を作ることで再現性高く改善できます。Q: 本記事の内容だけで算定可否を判断してよいですか?
A:
いいえ。診療報酬は告示・通知・疑義解釈、個別の患者状況、届出状況で結論が変わります。本記事は2026の方向性を踏まえた実務の整理であり、最終判断は最新資料と個別事情に基づき行ってください。まとめ
- 2026改定(令和8年度)は「在宅医療・訪問看護の評価適正化」が示され、在医総管は運用の厳格化が想定される
- 影響の本質は、軽症者に算定が偏る場合に「単価・算定可否・説明負荷」が同時に変わる点にある
- 月2回運用は回数ではなく、医学管理の合理性を計画書と診療録で説明できるかが鍵
- 対応は「症例構成の見える化」「連携・記録の標準化」「患者群別採算と人時管理」をセットで進める
- 個別の算定判断は最新の告示・通知等に依存するため、院内フローと専門家相談で精度を上げる
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬改定について(令和8年度改定の取扱い)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
- 社会保障審議会医療保険部会・医療部会「令和8年度診療報酬改定の基本方針」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001618046.pdf
- 中医協資料「在宅医療(その1)(平成30年度改定関連)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000563523.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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