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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

アパート経営 相続対策の効果と失敗例|税理士が解説

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アパート経営 相続対策の効果と失敗例|税理士が解説

アパート経営は相続対策になる?結論と前提

アパート経営が相続対策になる理由は、相続税評価上「土地は貸家建付地」「建物は貸家」として評価され、現預金よりも課税価格が下がりやすい点にあります。つまり、同じ実勢価値でも相続税評価が圧縮されやすいのが特徴です。

ただし、これは「相続税評価の話」であり、「投資として成功するか(キャッシュフローが回るか)」とは別問題です。相続税を下げても、赤字や資産劣化で家族が困るケースは少なくありません。相続対策は、税額だけでなく、収益性・資金繰り・承継(分け方)まで一体で設計する必要があります。

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、地主・開業医の資産管理や相続税申告に長年携わる中で、「評価は下がったが揉めた」「建てた後に資金が詰まった」といった相談を数多く見てきました。以下、効果の仕組みと失敗パターンをセットで解説します。

アパート建築で相続税が下がる仕組み(評価の基本)

土地:貸家建付地の評価(アパート建築 相続税)

アパートの敷地は「貸家建付地」として評価し、一定の計算により自用地より評価額が下がります。国税庁の算式では、自用地価額から「借地権割合×借家権割合×賃貸割合」分を控除します(地域の割合は路線価図等で確認)。
出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm

建物:貸家の評価(固定資産税評価額から控除)

賃貸中の建物(貸家)は、固定資産税評価額から「借家権割合×賃貸割合」相当額を控除して評価します。満室想定ほど評価は下がりやすく、空室が多いと効果が薄れます。
出典:国税庁「No.4602 土地家屋の評価(Q&A)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602_qa.htm

ここがポイント
「評価が下がる=得をする」と早合点しないのが重要です。評価減は相続税の計算上の話で、建築費・借入金利・修繕費・空室損などの実コストは別途発生します。相続対策は税と事業を同じ土俵で検証してください。

小規模宅地等の特例との関係(賃貸経営 相続 節税の落とし穴)

貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例が適用できると、一定面積まで評価減の対象になりますが、要件・面積上限・適用可否の判断が難しく、想定通りに効かないこともあります。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

「現金で持つ」vs「アパートで持つ」相続税評価の違い(比較表)

実務では、同じ1億円相当の資産でも、資産の形で相続税評価が変わる点がアパート相続対策の核心です。

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資産の形相続税評価の基本評価が下がる主因注意点
現預金額面どおりなし最も分かりやすいが課税価格が高くなりやすい
更地(自用地)路線価等で自用地評価なし活用余地はあるが評価は下がりにくい
アパート敷地(貸家建付地)自用地価額から控除して評価借家権等による控除空室・社宅扱い等で前提が崩れると効果が薄れる
賃貸建物(貸家)固定資産税評価額から控除借家権割合×賃貸割合築年数・構造・修繕で収益性が悪化しやすい

相続税対策としては、「評価は下がるが、経営は別」を徹底するのが失敗回避の第一歩です。

典型的な失敗パターン(アパート 相続 失敗)

失敗1:過大借入でキャッシュフローが回らない

「評価を下げたい」目的が先行して、家賃水準に見合わない建築費・借入を組むと、空室が少し増えただけで返済が詰みます。相続直後に家賃下落や金利上昇が重なると、納税資金どころか生活資金が不足します。

失敗2:立地と商品設計ミスで空室が埋まらない

新築時に満室でも、近隣供給増・人口動態・競合物件の改善で数年後に空室が常態化します。相続税評価は賃貸割合が効くため、空室が多いほど評価減も弱くなる点がダブルで痛いところです。

失敗3:修繕・大規模改修を見込まず、相続後に資金負担が爆発

外壁・屋上防水・給排水・設備更新は、築10〜20年でまとまった資金需要になります。長期修繕計画と積立がないと、相続人が追加出資できず売却を迫られることもあります。

失敗4:共有相続で意思決定が止まり、揉める

「兄弟で仲良く持てばいい」と共有にすると、売却・建替え・修繕・借換えの意思決定が一致せず、資産価値が下がりやすくなります。特に賃貸経営は経営判断が必要で、共有の相性が悪い資産です。

ここがポイント
相続対策としてのアパートは、税額を下げる道具であると同時に、相続人に「事業」を引き継がせる選択でもあります。相続人が経営に関与できるか、できないなら出口(売却・管理委託・法人化等)を先に決めることが重要です。

失敗5:節税効果の過信(「賃貸経営 相続 節税」だけで判断)

相続税が下がっても、所得税・住民税(不動産所得)、固定資産税、火災保険、管理費、原状回復費などで手取りが薄いと、家計を圧迫します。相続対策は「税金を下げる」より「家族が困らない」が優先です。

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相続対策として検討する手順(実務の進め方)

Step 1: 目的を分解する(相続税・納税資金・承継・収益)
「相続税を下げたい」だけでなく、納税資金をどう用意するか、誰が運営するか、分け方(遺言・分割方針)まで言語化します。

Step 2: 収支を保守的に作る(空室・家賃下落・修繕を織り込む)
満室前提ではなく、空室率・家賃下落・金利上昇・大規模修繕を入れたストレスケースで、返済可能性を確認します。ここで赤字なら建てないのが最適解です。

Step 3: 相続税評価の概算と、要件論点を洗い出す
貸家建付地・貸家評価の考え方、賃貸割合、社宅扱い等の論点、小規模宅地等の特例の適用可能性を整理します(適用可否は個別事情で変わります)。

Step 4: 出口戦略を決める(売却・建替え・法人化・共有回避)
相続後に何をするかを先に決めます。遺言で取得者を一本化する、代償分割の資金手当をする、管理体制を決めるなど、揉めにくい設計にします。

Step 5: 実行前に第三者チェック(税理士+不動産の両面)
税務だけでなく、賃貸市場・建築費妥当性・管理の現実性もレビューします。相続対策としてのアパートは、税理士と不動産実務の両輪が不可欠です。

よくある質問

Q: アパートを建てれば相続税は必ず下がりますか? ▼
一般に、賃貸中であれば土地は貸家建付地、建物は貸家として評価され、現預金より課税価格が下がりやすいです。ただし、空室状況や賃貸割合、社宅扱い等で前提が変わることがあり、必ず同程度の効果が出るとは限りません(評価方法は国税庁の各解説に基づきます)。
Q: 「節税になる」と言われたのですが、失敗しない見極め方は? ▼
税額だけでなく、保守的な収支(空室・家賃下落・修繕・金利上昇)で返済と生活資金が維持できるかが最重要です。さらに、相続人の運営能力・共有回避・売却可能性(出口)まで設計できない場合は、節税目的の建築はリスクが高いです。
Q: 小規模宅地等の特例は賃貸アパートでも使えますか? ▼
貸付事業用宅地等として適用できる場合がありますが、要件や面積上限があり、相続開始前後の利用状況等も影響します。適用可否の判断は個別事情で変わるため、事前に要件整理が必要です。

まとめ

  • アパート経営の相続対策は、貸家建付地・貸家評価により相続税評価を圧縮できる点が核心
  • ただし「評価減」と「賃貸経営の成功」は別で、過大借入・空室・修繕・共有で失敗しやすい
  • 節税だけで建てると、相続後に資金繰りや家族関係で詰むリスクがある
  • 保守的な収支、要件整理、共有回避、出口戦略をセットで検討する
  • 個別事情で結論が変わるため、税務と不動産実務の両面で事前検証が重要

参照ソース

  • 国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
  • 国税庁「No.4602 土地家屋の評価(Q&A)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602_qa.htm
  • 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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