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相続・事業承継コラム
作成日:2025.10.11
更新日:2026.01.01
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

事業承継とは?3つの方法とメリット・デメリット|税理士が解説

8分で読めます
事業承継とは?3つの方法とメリット・デメリット|税理士が解説

事業承継とは、経営者が持つ「経営権(意思決定)」と「資産(株式・事業用資産)」を次の担い手へ引き継ぎ、事業を継続させる取り組みです。中小企業の経営者にとっては、後継者不在だけでなく、自社株の評価や相続税・贈与税、金融機関対応が同時に絡みやすく、準備不足が“承継後のトラブル”に直結します。事業承継は「いつか」ではなく「設計する」テーマとして早期に着手することが重要です。

事業承継とは(種類と全体像)をわかりやすく

事業承継は大きく「人(後継者)」「資産(株式・事業用資産)」「知的資産(ノウハウ・顧客・ブランド)」の3要素を引き継ぐプロジェクトです。単なる名義変更ではなく、組織・取引先・従業員の信頼を保ちながら移行する点に難しさがあります。

事業承継で起こりやすい“詰まりどころ”

  • 後継者はいるが、株式移転の資金負担(相続税・贈与税)が読めない
  • 株価が高く、承継の前に利益調整・役員退職金・配当方針などの設計が必要
  • 親族内かM&Aかで、従業員・取引先への説明戦略が変わる

税理士法人 辻総合会計でも、税金そのものより「承継後に資金繰りが詰まる」「役員体制が決まらない」といった実務上の相談が多く、税務・法務・組織の論点を同時に整理する必要があります。

事業承継の3つの方法(親族内・従業員・M&A)

事業承継の代表的な方法は、(1)親族内承継、(2)従業員承継(役員・社員への承継)、(3)第三者承継(M&A)の3つです。「誰に、何を、いつ、どう渡すか」で最適解が変わります。

1) 親族内承継(子・親族へ引継ぎ)

親族が後継者となる形です。長期的な育成がしやすい一方、相続人間のバランス(遺留分、分割)と株式集中の両立が課題になります。

2) 従業員承継(役員・幹部・社員へ引継ぎ)

現場理解が深く、取引先・従業員の安心感を得やすい方法です。課題は株式の買い取り資金や、金融機関との調整(個人保証・担保の整理)です。

3) M&A(第三者へ引継ぎ)

後継者不在でも選択でき、雇用維持や成長投資につながる可能性があります。一方で情報開示、条件交渉、PMI(統合)など、進行管理の難易度が上がります。

ここがポイント
M&Aを検討する場合は、仲介・FA(フィナンシャルアドバイザー)の役割が異なります。手数料体系と支援範囲(買い手探索、条件交渉、PMI支援等)を事前に確認し、“どこまでを誰が担うか”を明確にしておくとトラブル予防になります。

3つの方法のメリット・デメリット比較(事業承継 種類)

方法ごとの特徴を、意思決定の観点で整理します(実務では「税負担」「資金繰り」「ガバナンス」「対外説明」の優先順位で決めることが多いです)。

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項目親族内承継従業員承継M&A(第三者承継)
継続性(文化・理念)高い高い買い手次第
株式移転の資金負担相続・贈与税が論点買い取り資金が論点売却対価で資金化可能
組織の納得感家族内の調整が必要従業員の安心感が出やすい説明戦略が重要
スピード比較的ゆっくり設計可能資金調達次第条件合意まで変動
主なリスク相続争い、株式分散資金不足、保証問題条件不一致、PMI不全

税務の“共通論点”:自社株(非上場株式)の評価

非上場株式の相続・贈与では、国税庁の評価ルールに基づき、会社規模区分に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式等で評価します。特に同族株主かどうかで評価方式が変わる点は見落としがちです。「株価がいくらになりそうか」を早期に把握するだけで、承継の打ち手(贈与のタイミング、組織再編、利益設計)が現実的になります。

事業承継の進め方(方法・手順)

実務上は「後継者の決定」より先に、現状把握と設計から入る方が成功率が上がります。

Step 1: 現状診断(課題の棚卸し)

株主構成、相続人関係、役員体制、借入・保証、主要取引先、許認可、知的資産を一覧化します。ここで「株式が分散している」「個人名義資産が混在している」などの地雷が見つかることが多いです。

Step 2: 方針決定(3つの方法から選ぶ)

親族内・従業員・M&Aのいずれが現実的かを、税負担と資金繰り、対外説明の難易度で比較します。複数案を並走(親族内を第一候補にしつつM&Aも情報収集)するのも有効です。

Step 3: 承継スキーム設計(株式・資産・契約の移転)

株式移転(贈与・相続・譲渡)、役員退職金、配当方針、組織再編、個人保証の整理、各種契約の名義変更を設計します。必要に応じて株価試算を複数年で行い、負担を平準化します。

Step 4: 実行(関係者合意と手続き)

家族会議、取締役会・株主総会、金融機関協議、従業員・取引先への説明を段階的に進めます。M&Aの場合はDD(デューデリジェンス)と最終契約、PMI計画が要所です。

ここがポイント
法人版事業承継税制(特例措置)は、一定要件のもと非上場株式に係る相続税・贈与税の納税が猶予・免除され得る制度です。特例措置の適用期限は2025年度末(2026年3月31日)までとされており、活用検討は早めの情報収集が重要です(要件・手続は個別に確認が必要)。

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失敗しないための注意点(税務・支援策)

注意点1:株式を“分散させない”設計

相続で株式が分散すると、意思決定が遅れ、将来のM&Aや資金調達の足かせになります。遺言・種類株式・持株会社化など、状況に応じて選択肢を検討します(法務は弁護士・司法書士との連携が前提です)。

注意点2:資金繰りに直結する「税金」と「買い取り資金」

従業員承継では買い取り資金、親族内承継では相続税・贈与税が焦点になりがちです。税制の活用余地(要件充足)と同時に、支払原資(配当・退職金・保険・借入)を設計します。

注意点3:公的な相談窓口を早期に使う

国の支援施策として、事業承継・引継ぎ支援センター等での相談導線が整備されています。M&Aや承継計画の入口で第三者の視点を入れることで、選択肢の見落としを減らせます。

免責事項(重要)

本記事は一般的な情報提供であり、最適な手続・税務判断は会社規模、株主構成、資産状況、承継相手、地域の運用等により異なります。個別案件は必ず専門家へご相談ください。

よくある質問

Q: 事業承継はいつから準備すべきですか? ▼

A:

株価・保証・役員体制の調整に時間がかかるため、一般には「後継者候補が見えた時点」ではなく「承継の可能性を意識した時点」からの着手が安全です。特に非上場株式の評価と税負担見込みを早期に把握すると、打ち手が増えます。
Q: 従業員承継で一番つまずくポイントは何ですか? ▼

A:

株式の買い取り資金(自己資金・借入・配当方針)と、金融機関との調整(個人保証の扱い)が要所です。資金計画と同時に、役員体制・権限移譲のロードマップを作ると実行性が上がります。
Q: M&Aを検討するとき、最初に何をすべきですか? ▼

A:

まずは「譲れない条件」(雇用維持、ブランド、価格、役員の処遇等)を整理し、簡易的な企業概要(決算、事業内容、強み、リスク)を整えます。そのうえで公的窓口や専門家に相談し、仲介・FAの役割と手数料体系を確認することが重要です。

まとめ

  • 事業承継とは、経営権・資産・知的資産を次世代へ引き継ぎ事業を継続させる取り組み
  • 方法は「親族内承継」「従業員承継」「M&A」の3つで、税負担・資金繰り・対外説明で最適解が変わる
  • 非上場株式の評価(株価見込み)を早期に把握すると、承継の選択肢が広がる
  • 進め方は、現状診断→方針決定→スキーム設計→実行の順で進めると失敗が減る
  • 公的支援策(事業承継税制、相談窓口)も含め、期限・要件を前提に早めに検討する

参照ソース

  • 中小企業庁「事業承継」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html
  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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