税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
相続コラムに戻る
相続・事業承継コラム
作成日:2025.10.07
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業 物件選びのポイント|税理士が解説

9分で読めます
クリニック開業 物件選びのポイント|税理士が解説

クリニック開業の物件選びで失敗しない結論

クリニック開業の物件選びで重要なのは、「良さそうな立地」を感覚で決めることではなく、診療圏(来院が見込める範囲)と法規制、そして内装・設備の条件を同時に満たす物件を、契約条件まで含めて選ぶことです。特にテナント開業では、契約後に工事制約や追加費用が発覚しやすく、開業スケジュール全体が崩れる原因になります。

税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり医科・歯科の開業支援に携わり、資金繰り・損益分岐・人件費設計だけでなく、物件由来のコスト超過や開業遅延の相談を多数受けてきました。本記事は、現場で「後から困る論点」を先回りして整理します。

クリニック開業の物件選びとは|立地・建物・契約を一体で考える

「立地が良い=成功」ではない理由

立地が良く見えても、次のいずれかが欠けると失敗確率が上がります。

  • 需要と供給のズレ:想定患者層と通行動線・生活圏が一致しない
  • 建物要件の不足:動線、電気容量、給排水、空調、バリアフリーなどが診療に合わない
  • 契約の罠:原状回復や工事制限、更新条件で収益が削られる

法規制は「開設手続」だけでなく「物件適合」に直結する

医療機関の開設は医療法の枠組みで整理され、ケースによっては許可が必要になります(開設者や病床の有無等により扱いが変わる点に留意)。物件側の要件(構造設備、人員要件など)も論点になり得ます。物件契約前に、保健所・自治体の運用(届出様式、事前相談の要否)を確認しておくことが実務上の安全策です。
出典:厚生労働省「医療法(抜粋)」では、開設許可等の考え方が示されています。

立地選定のポイント|診療圏・導線・競合を数値で確認

診療科別に「狙う商圏」が違う

同じ駅前でも、診療科により適合が変わります。

  • 内科:生活導線(スーパー、バス停、駐車場)と継続通院のしやすさ
  • 小児科:ベビーカー導線、駐車場、近隣に子育て世帯の集積
  • 皮膚科・眼科:視認性(看板)、回転率、オンライン予約との相性
  • 整形外科:広さ、導線、リハビリ区画確保、送迎/駐車

「半径○km」といった円だけでは不十分で、川・幹線道路・踏切などの“心理的な壁”を加味します。診療圏は、人口・年齢構成・昼夜人口・競合数を最低限セットで確認しましょう。

競合は「数」より「提供価値の重なり」で見る

競合が多い地域でも、診療時間、専門外来、予約導線、導入機器、スタッフ体制で差別化できることがあります。一方、競合が少なくても需要そのものが薄い地域では、立ち上がりが遅れて資金繰りが苦しくなります。

ここがポイント
現地確認では「平日昼・平日夜・土日」の最低3回を推奨します。人流は曜日と時間帯で変わり、同じ通りでも“動く方向”が逆になることがあります。看板位置や入口の見え方は、この差で評価が一変します。

物件タイプの違い|路面店・ビルイン・医療モール比較

物件タイプ別のメリット・デメリット(比較表)

←横にスクロールできます→
項目路面店ビルイン(雑居ビル/オフィス)医療モール
視認性・新患導入強い(通行人に訴求)弱め(階数で減衰)共同集客で中程度
工事自由度物件次第(制限少なめが多い)制約が多い傾向(管理規約)テナント規格が決まっていることが多い
賃料・共益費立地で高騰しやすい面積単価は抑えめも共益費/販促費が発生する場合
近隣クレーム入口前滞留・騒音に注意ビル全体のルールに従うルールが整備されやすい
推奨の診療科皮膚科/眼科/内科など心療内科/専門外来など内科・小児科など相乗効果系

「医療モールなら安心」とは限りません。モール側の指定業者、診療時間の縛り、広告掲出ルール、撤退時の原状回復条件などが収益に影響します。逆に路面店でも、入口が奥まっている、駐輪スペースがない、看板が出せない、といった制約で新患が伸びない例があります。

相続・事業承継の専門家にご相談ください

相続税申告、事業承継対策など、資産に関するお悩みをトータルでサポートします。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

"公正証書遺言の作り方完全ガイド|費用・必要書類・メリット"

"公正証書遺言の作り方を、費用の目安・必要書類・手続きの流れ・メリット/注意点まで一気に整理。検認不要などの実務メリットと、コストが増えるケースも具体例で解説します。"

続きを読む

テナント開業の注意点|用途地域・消防・工事費の落とし穴

用途地域・用途制限の確認は「最初」に行う

テナント契約前に、用途地域(都市計画上の区分)と建物用途の整理が必要です。用途地域は建築できる建物用途に制限がかかり、計画する施設内容と整合しないと追加手続や計画変更が生じます。国土交通省資料では、用途地域ごとの用途制限の考え方が整理されています。

消防・防火の論点は「内装プラン」と一体

診療所は不特定多数が出入りするため、防火区画、避難経路、内装制限、誘導灯・非常灯などが論点になります。消防庁は火災予防関係の届出様式として「防火対象物使用開始届出書」等を示しています。消防協議は、設計着手と同時に進めるのが安全です。

ここがポイント
よくある失敗は「設計が固まってから消防へ相談」することです。避難経路や区画の修正が入ると、図面修正→見積り増→工期延長になりやすく、開業月の売上計画に直撃します。

工事費は「坪単価」ではなく、制約条件で決まる

内装工事費は坪単価の相場感だけで判断すると危険です。以下で大きくブレます。

  • 電気容量の増設可否(増設不可だと機器選定や導線が制約)
  • 給排水・排気のルート確保(工事範囲が拡大)
  • ビル側の指定工事・夜間工事制限(人件費・工程が増える)
  • 既存設備の流用可否(居抜きでも医療仕様に合わないことがある)

結果として、想定より内装工事費が膨らみ、運転資金の余裕が削られるのが典型パターンです。

テナント契約で見落としやすい条項

  • 原状回復範囲(スケルトン戻し、設備撤去の範囲)
  • 看板・外装の掲出可否(追加費用・申請の要否)
  • 途中解約・違約金(撤退時の損失が固定化)
  • 更新条件と賃料改定条項(長期運営で効いてくる)
  • 工事遅延時の責任分界(オーナー/施工/借主)

物件が良くても、契約条件が悪いと、黒字でもキャッシュが残らない構造になり得ます。

物件探しの方法と手順|候補抽出から契約までの実務フロー

失敗しないための標準フロー(ステップ形式)

Step 1: 要件定義(診療と経営の両面)
診療科・提供サービス、必要面積、必要設備、想定患者層、開業月(いつ売上が立つか)を確定します。ここが曖昧だと、物件が決まっても内装が迷走します。

Step 2: 候補抽出(診療圏×物件条件)
駅距離、駐車場、視認性、競合、周辺施設を条件化し、候補を複数確保します。単独物件の深追いは避けます。

Step 3: 現地・建物調査(制約の洗い出し)
入口動線、エレベーター、段差、騒音、空調、電気容量、給排水、看板位置、ゴミ置場などを確認します。

Step 4: 行政・消防・管理側の事前確認
医療法上の手続の論点(届出・許可の要否など)を含め、自治体・保健所の運用を確認します。消防もこの段階で相談し、図面要件を握ります。

Step 5: 概算見積と収支シミュレーション
家賃・共益費・保証金・内装・医療機器・人件費・広告費を並べ、損益分岐と運転資金の安全余裕(月数)を見ます。税務上の扱い(資産計上/一括費用)も合わせて設計します。

Step 6: 契約交渉・最終決定
原状回復、工事承諾、看板、フリーレント、解約条項、引渡条件を交渉します。「契約してから考える」は避け、開業スケジュールに落とし込みます。

現場で多い失敗例(匿名ケース)

ある駅近テナントで「人通りが多い」点を優先し契約したものの、入口が裏導線で視認性が低く、さらに看板掲出に制限があり、新患が想定の7割程度に留まりました。結果的に広告費が増え、収益性が崩れました。
教訓は、立地の“賑わい”ではなく、「患者が見つけて入りやすい導線」と「ルール上の掲出可否」を契約前に確定することです。

よくある質問

Q: 医療モールと路面店、どちらが開業に向いていますか? ▼

A:

一概には言えません。医療モールは相乗効果が期待できる一方、共益費・ルール・指定業者などの制約が利益率に影響します。路面店は視認性が強い反面、賃料負担や近隣対応が論点です。比較表の観点で「自院の勝ち筋」に合う方を選ぶのが合理的です。
Q: 居抜き物件なら内装費は大幅に下がりますか? ▼

A:

下がる場合もありますが、医療機器の電源容量、給排水、導線、感染対策、消防要件などで作り替えが発生し、想定ほど下がらないことがあります。居抜きは“残せる範囲”を先に確定し、見積で判断してください。
Q: テナント契約で最も注意すべき条項は何ですか? ▼

A:

原状回復範囲と途中解約条件が最重要になりやすいです。撤退時の費用が読めない契約は、最悪の場合「赤字でも撤退できない」状態を作ります。工事承諾・看板・更新条件も合わせて確認しましょう。

まとめ

  • クリニック開業の物件選びは「立地」だけでなく、診療圏・法規制・建物性能・契約条件を一体で判断する
  • 物件タイプ(路面店/ビルイン/医療モール)の違いを、集客と制約・コストで比較する
  • 用途地域や建物用途、看板・工事制限は契約前に確定させる
  • 消防協議と内装計画は同時進行が基本。後回しは工期と費用を押し上げる
  • 概算見積と収支シミュレーションで、内装工事費のブレまで織り込む

参照ソース

  • 厚生労働省「医療法(抜粋)」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/shikarinsyo/gaiyou/kanren/iryo.html
  • 国土交通省「用途地域による建築物の用途制限の概要(PDF)」: https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001373094.pdf
  • 消防庁「火災予防・危険物規制事務に係る届出等様式について」: https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/post-17.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
相続コラムに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

家族信託とは?認知症対策と相続対策を同時に実現|税理士が解説

家族信託とは?認知症対策と相続対策を同時に実現|税理士が解説

住宅取得資金贈与の非課税特例|条件と手続き|税理士解説

住宅取得資金贈与の非課税特例|条件と手続き|税理士解説

事業承継税制とは?納税猶予と特例承継計画|税理士が解説

事業承継税制とは?納税猶予と特例承継計画|税理士が解説

人気コラムランキング

1
ゆうちょ銀行の相続手続き方法|必要書類・期間を解説

ゆうちょ銀行の相続手続き方法|必要書類・期間を解説

2
相続税の基礎控除とは|計算方法と申告要否を税理士が解説【2025年版】

相続税の基礎控除とは|計算方法と申告要否を税理士が解説【2025年版】

3
遺産分割協議書の作り方|必要書類と注意点を解説

遺産分割協議書の作り方|必要書類と注意点を解説

4
共有名義不動産相続のトラブル回避ポイント|税理士が解説

共有名義不動産相続のトラブル回避ポイント|税理士が解説

5
遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15