
執筆者:辻 勝
会長税理士
"公正証書遺言の作り方完全ガイド|費用・必要書類・メリット"

公正証書遺言は、相続トラブルを抑えたい人にとって有力な選択肢です。一方で「どう作る?」「必要書類は?」「費用はいくら?」が分からず、検討が止まりがちです。本記事では、公正証書遺言の基本から、作り方、費用の考え方、書類準備の勘どころまで、実務の流れでまとめます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認し、公正証書として作成する遺言です。自筆証書遺言と比べて形式不備リスクを下げやすく、原本が公証役場側で管理される点が特徴です。
また、相続開始後の手続き面で大きいのが「検認」です。裁判所の案内では、公正証書による遺言は検認不要とされています。
ポイント
相続発生後の「最初の詰まりどころ」になりやすい検認が不要になるのは、手続きのスピードとストレスの両面で効きます。
公正証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 検認が不要で、相続手続きに早く入れる(自筆証書でも法務局保管+証明書なら不要の場合あり)
- 公証人関与により、形式不備による無効リスクを抑えやすい
- 原本が公証役場で保管され、紛失・改ざんリスクを抑えやすい
- 高齢・病気などで筆記が難しい場合でも設計しやすい(出張対応の余地あり)
デメリット(注意点)
- 費用がかかる(財産額・受取人の数で増える)
- 証人の手配が必要(身内が利害関係に当たると不適切になり得るため、手配に工夫が必要)
- 内容設計が甘いと「争いの火種」は残る(遺留分、付言事項、遺言執行者などの設計が重要)
公正証書遺言の費用|内訳と目安
公正証書遺言の費用は、大きく次の要素で構成されます。
- 公証人手数料(本体):法律行為の目的価額に応じた手数料(別表)
- 遺言加算:遺言の作成は原則として1万1,000円加算(一定条件あり)
- 出張日当・旅費(必要時):日当は1日2万円(4時間以内は1万円)+交通実費など
- 謄本(正本・謄本)交付、証人手配などの実費(運用は公証役場ごとに案内)
目安をつかむための「手数料テーブル」(抜粋)
公証人手数料令の別表は、目的価額ごとに金額が定められています。
| 法律行為の目的価額 | 手数料(抜粋) |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 23,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 29,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 43,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 43,000円+超過5,000万円ごとに13,000円加算 |
| 3億円超〜10億円以下 | 95,000円+超過5,000万円ごとに11,000円加算 |
| 10億円超 | 249,000円+超過5,000万円ごとに8,000円加算 |
ざっくり試算例(イメージ)
例:配偶者に2,000万円、子に1,000万円を相続させる内容(目的価額の区分に当てはめるイメージ)
- 2,000万円 → 23,000円(1,000万超〜3,000万以下)
- 1,000万円 → 17,000円(500万超〜1,000万以下)
- 小計 40,000円 + 遺言加算 11,000円 → 51,000円(+実費等)
ポイント
費用は「財産総額」だけでなく「受取人の数・配分」で動くため、分け方次第で手数料イメージが変わります。
必要書類チェックリスト(準備のコツ)
公正証書遺言で実務的に求められやすい情報・資料は次のとおりです(最終的な要否は公証役場の案内に従います)。
1) 本人確認・同一性確認
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 印鑑(押印が必要になる場面が多い)
2) 相続関係を特定する資料
- 戸籍関係(誰が相続人になるかを確定するため)
- 住民票等(住所確認)
3) 財産を特定する資料(「特定できること」が重要)
- 不動産:登記事項証明書、固定資産評価証明書など
- 預貯金:金融機関名・支店・口座番号が分かるもの(通帳写し等)
- 有価証券:銘柄・口座情報が分かる資料
- その他:自動車、保険、事業用資産などは特定情報(契約番号等)
4) 証人に関する準備
- 証人2名の氏名・住所・生年月日等(公証役場で手配できる場合もあります)
補足(代替策)
「自筆証書遺言+法務局保管制度」を使う場合、手数料は3,900円と案内されています。
方式・リスク・費用のバランスで比較検討すると合理的です。
公正証書遺言の作り方|手続きの流れ(5ステップ)
公正証書遺言の作成は、「内容設計」と「書類整備」を先に固めるほどスムーズです。
-
遺言内容の設計
- 誰に何を渡すか(財産の特定)
- 遺留分への配慮、分けにくい財産(不動産等)の扱い
- 必要に応じて遺言執行者、付言事項を検討
-
必要書類・財産資料の収集
- 戸籍・不動産・金融資産などを整理
- 財産一覧(棚卸し)を作ると公証役場とのやり取りが速い
-
公証役場へ事前相談(予約)
- 口頭で概要を伝え、必要資料・費用レンジ・当日の持参物を確認
-
案文(遺言案)の調整
- 公証役場の指示に沿って、表現・特定情報を整備
- 曖昧な表現(「全部」「適宜」など)を避けるのが基本
-
作成当日:本人・証人立会いで作成
- 内容確認 → 署名押印等 → 正本・謄本の受領
- 病院等での作成が必要なら、出張日当・旅費が発生し得ます
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公正証書遺言と他方式の比較表
「何を優先するか」で最適解が変わります。費用と手続き負荷の両面で比較しましょう。
| 方式 | 費用感 | 紛失・改ざんリスク | 検認 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 手数料+実費(財産額等で変動) | 低め(原本保管) | 不要 | 争いを避けたい/確実性優先 |
| 自筆証書遺言(保管なし) | 低い | 高め | 原則必要(例外あり) | まずは簡易に作りたい |
| 自筆証書遺言(法務局保管) | 3,900円 | 低め | 証明書なら不要 | コスト抑制+一定の安心が欲しい |
よくある質問(FAQ)
Q1. 公正証書遺言は相続発生後に何が楽になりますか?
家庭裁判所での検認が不要となり、相続手続きを進めやすくなります。
Q2. 費用はどのタイミングで増えやすいですか?
受取人が多い、配分が細かい、高額資産が含まれる、出張が必要(病院・施設等)といった場合に増えやすいです。出張日当・旅費の考え方は公証人手数料令に定めがあります。
Q3. まずは費用を抑えたい場合の現実的な選択肢は?
自筆証書遺言を作成し、法務局の保管制度を利用する方法があります(手数料3,900円)。
ただし、内容設計(遺留分、財産特定、執行のしやすさ)は別途検討が必要です。
まとめ|公正証書遺言で失敗しない要点
- 公正証書遺言は、検認不要で相続手続きを前に進めやすい
- 費用は「手数料テーブル+遺言加算(1万1,000円)+実費」が基本
- 出張が必要なら日当・旅費が追加(1日2万円、4時間以内1万円など)
- 必要書類は「相続関係」「財産特定」「本人確認」を軸に、早めに棚卸しする
- コスト重視なら「自筆証書+法務局保管(3,900円)」も比較対象
参照ソース(URLはgo.jpのみ)
- https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
- https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/download/4375/04/h05Bc002240204ja15.0_r4C249.pdf
- https://houmukyoku.moj.go.jp/hakodate/content/001422138.pdf
- https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
- https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/table/kousyou/all.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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