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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

認知症の相続対策5つ|親が元気なうちに|税理士が解説

8分で読めます
認知症の相続対策5つ|親が元気なうちに|税理士が解説

認知症の相続対策とは

認知症の相続対策とは、親の判断能力が十分なうちに「財産の管理」と「相続時の分け方」を先回りして決めておく準備です。結論として、認知症になる前に契約・意思決定を終えることが最大のポイントです。

親が認知症になると、預金の解約、不動産の売却、遺産分割協議などで「本人の意思確認」が求められ、家族だけでは手続が進まなくなる場面が増えます。結果として、相続発生後に「遺産分割ができない」「実家を売れない」といった詰まりが起きやすくなります。

税理士法人 辻総合会計でも、「母が認知症になってから、相続の話が一切進まない」といった相談は少なくありません。早めの準備は、節税だけでなく、家族の事務負担とトラブルを減らす実務策でもあります。

親が認知症になってからでは遅い理由

認知症だと「契約」が止まりやすい

相続対策の多くは、遺言作成、贈与契約、信託契約、任意後見契約など、法律上の「意思表示(契約)」を前提にします。判断能力が低下すると、これらの有効性が争点になりやすく、金融機関・法務局・不動産取引の現場でも慎重な対応になります。

ここがポイント
「家族が代わりにサインすればよい」と考えがちですが、本人名義の契約行為は本人の意思が原則です。安易な代理は無権代理となり、後で無効・取消リスクが残ります。

「認知症 遺産分割 できない」が起きる典型パターン

遺産分割協議は相続人全員の合意が前提です。相続人の中に認知症などで意思能力が不十分な人がいる場合、家庭裁判所で成年後見人選任などの手続が必要になり、時間とコストが増えます。さらに、後見人が就くと「本人の利益」を中心に判断されるため、相続人間の希望どおりに柔軟な分け方ができないケースもあります。

親が認知症になる前にやるべき相続対策5つ

1. 遺言書を整える(まずは分け方を固定する)

最優先は遺言です。遺言があると、相続発生後の「誰が何を相続するか」が明確になり、遺産分割協議の論点が減ります。

ポイントは次の3つです。

  • 不動産がある場合は、誰が取得するかを明記する
  • 代償分割(不動産を相続した人が他の相続人へ金銭を支払う)も設計する
  • 付言事項(なぜその分け方か)で感情面の摩擦を抑える

遺言は節税よりも「争族予防」効果が大きい点を押さえておくと判断しやすくなります。

2. 任意後見契約で「判断能力低下後の代理」を決める

任意後見は、判断能力が十分なうちに「将来、判断能力が低下したときに代理してもらう人・内容」を契約で定める制度です。認知症発症後の財産管理・施設入所費用の支払いなど、生活を回すための仕組みとして有効です。

  • 任意後見は「元気なうちに契約」が必要
  • 発動は、判断能力低下後に家庭裁判所の関与が入る(任意後見監督人など)

「親の通帳管理をどうするか」が曖昧な家庭ほど、任意後見の検討価値が上がります。

3. 家族信託で「不動産・預金の管理と承継」を設計する

家族信託は、親(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を託し、受益者(多くは親)に利益を帰属させる仕組みです。認知症による凍結リスクが高い「不動産の売却・賃貸」「修繕・建替」などに強みがあります。

特に次の財産がある場合は検討されやすいです。

  • 収益不動産(賃貸管理・売却判断が必要)
  • 実家(将来売却して施設費に充てたい等)
  • まとまった金融資産(管理者を明確化したい)

家族信託は「相続対策」よりも「認知症対策(資産凍結回避)」として機能しやすい点が重要です。

ここがポイント
家族信託は万能ではなく、設計を誤ると贈与税・相続税の論点や親族間トラブルの火種になります。信託目的、受託者の権限、残余財産の帰属(最終承継先)まで一気通貫で整理しましょう。

4. 財産の見える化(親の資産棚卸し・相続人確認)

実務上、最も効果が大きいのが「見える化」です。これがないと、どの対策も決められません。

  • 預金(口座・支店・名義・概算残高)
  • 有価証券(証券会社・銘柄)
  • 不動産(所在地・登記名義・ローン有無)
  • 保険(契約者・被保険者・受取人)
  • 借入金・保証(債務の有無)
  • 推定相続人(戸籍で確認)

財産目録と家系図(相続関係説明図)の整備は、相続発生後の手続期間を大きく短縮します。

5. 生前の整理と「争点の芽」を先に潰す(贈与・名義・共有の見直し)

認知症対策は制度設計だけでなく、争点を減らす整理が重要です。

  • 不動産の共有はできるだけ避ける(将来の売却意思決定が難化)
  • 名義預金(実質は親の財産)を放置しない
  • 生前贈与をするなら、目的(節税か生活費か)と記録(契約書・振込)を残す
  • 介護を担う子がいる場合、将来の負担調整(遺言での配慮、付言事項等)も検討する

ここは家庭ごとの最適解が大きく異なるため、税務・法務・家族関係をセットで整理するのが現実的です。

対策ごとの違い(比較表)

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対策できること向いているケース注意点
遺言書相続時の分け方を指定不動産がある、相続人が多い内容次第で遺留分トラブル
任意後見判断能力低下後の代理生活費・施設費の支払いを安定化発動までに手続が必要
家族信託財産の管理・処分・承継設計不動産売却・賃貸管理が必要設計ミスで税務論点
生前贈与生前に財産を移転早期に承継したい税務・記録・公平性
財産見える化手続の土台を作る全家庭に推奨放置すると情報が散逸

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家族信託は、親の認知症による資産凍結リスクに備えつつ、相続時の承継方法まで設計できる仕組みです。基本構造、遺言・成年後見との違い、手順、税務上の注意点を整理します。親などの資産(預金・不動産等)を「信託」という枠組みに移し、家族が受託者として管理・処分できるようにする仕組みです、結論として、誰にとって何が問題かという。

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認知症 前 やること:進め方のステップ

Step 1: 家族で目的を言語化する

「実家を将来売却して施設費に充てるのか」「自宅を残すのか」など、方針を先に決めます。

Step 2: 財産と相続関係を棚卸しする

財産目録・不動産登記・保険証券・戸籍(相続人確認)を揃えます。

Step 3: 打ち手を組み合わせる

遺言+見える化をベースに、必要なら任意後見や家族信託を追加します。単発でなく、制度同士の整合性が重要です。

Step 4: 文書化と定期見直しを行う

遺言の更新、受託者の変更余地、通帳・印鑑管理ルールなどを、年1回程度見直します。

ケーススタディ:認知症発症後に不動産が動かせず困った例

あるご家庭では、母が所有する実家を売却して介護費用に充てる予定でした。しかし、母が認知症を発症し、売買契約の意思確認ができない状態に。成年後見人選任の申立てから売却判断まで時間を要し、当面の施設費は子が立替えることになりました。

一方で、早い段階で家族信託(売却権限を受託者へ付与)と遺言をセットで整えていた別のご家庭では、売却判断と資金移動がスムーズに進み、家族の立替負担が最小化できました。

「節税」よりも「資金繰りと意思決定」を止めない設計が、認知症局面では効きます。

よくある質問

Q: 親が認知症になると、遺産分割協議は本当にできないのですか? ▼
相続人全員の合意が必要なため、認知症などで意思能力が不十分な相続人がいると、そのままでは合意形成が困難になります。成年後見人の選任など家庭裁判所手続が必要となるのが一般的です。
Q: 家族信託と任意後見はどちらを選ぶべきですか? ▼
目的で選びます。不動産売却・賃貸など「財産の管理処分」を止めたくないなら家族信託が有力です。生活費支払いや契約代理など「身上監護を含む支援」を重視するなら任意後見が検討対象です。併用設計が適するケースもあります。
Q: まず最初にやるべきことは何ですか? ▼
財産の見える化(口座・不動産・保険・負債)と、遺言のたたき台作りです。これが揃うと、任意後見や家族信託の要否判断が一気に現実的になります。

まとめ

  • 認知症の相続対策は、判断能力が十分なうちに契約と意思決定を終えることが核心
  • 遺言書で「分け方」を固定し、遺産分割協議の詰まりを減らす
  • 任意後見は判断能力低下後の代理、家族信託は財産管理・処分の継続に強い
  • 財産の見える化(目録・戸籍確認)が全対策の土台
  • 生前整理では共有・名義・贈与記録を整え、争点の芽を先に潰す

参照ソース

  • 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html
  • 裁判所「相続・遺産分割」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/souzoku/index.html
  • 法務局(法務省)「家族信託とは?」(PDF): https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/content/001451073.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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