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相続・事業承継コラム
作成日:2025.07.30
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

家族信託とは?認知症・相続対策の活用ポイント|税理士が解説

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家族信託とは?認知症・相続対策の活用ポイント|税理士が解説

家族信託とは、親などの資産(預金・不動産等)を「信託」という枠組みに移し、家族が受託者として管理・処分できるようにする仕組みです。結論として、認知症による資産凍結に備えながら、相続時の承継先や分配ルールまで設計できる点が強みです。
誰にとって何が問題かというと、「親が認知症になると不動産の売却や預金の引出しが実務上止まり、介護費・修繕費・納税資金が手当てできない」ことが資産家世帯や不動産オーナーにとっての現実的な課題になります。

家族信託とは何か

仕組みを一言でいうと

家族信託は、委託者(主に親)が信託契約で資産を信託し、受託者(主に子)がその資産を管理・運用・処分し、受益者(多くは親)が利益を受ける形をとります。
重要なのは「名義(管理権限)」と「利益を受ける権利」を分けて設計できる点です。

関係者(委託者・受託者・受益者)の役割

  • 委託者:信託を始める人。何を誰にどう管理させるかを決めます。
  • 受託者:信託財産を管理する人。契約に沿って処分(売却等)も行います。
  • 受益者:信託財産から生じる利益(家賃収入等)を受ける人。

「受託者になれば自由に使える」わけではなく、信託契約の目的と条項に拘束されます。設計の精度が成果を左右します。

家族信託で「できること/できないこと」

できることの典型例は、不動産の管理・賃貸・修繕・売却、売却代金の管理、介護費や生活費の支払いルール化などです。
一方で、身上監護(医療同意、施設入所契約の代理など)を当然にカバーする制度ではありません。ここは成年後見等の守備範囲と異なります。

ここがポイント
家族信託は「資産管理(財産行為)」に強い一方、介護や医療の契約代理などの「身上監護」は原則として別建てで考えます。家族の役割分担と、必要に応じた後見制度の併用が現実的です。

認知症対策での家族信託の活用法

認知症で起きる「資産凍結」の実務

親の判断能力が低下すると、金融機関の手続きや不動産売却の場面で、本人意思の確認ができないとして手続きが進まないことがあります。結果として、介護費、修繕費、納税資金の手当てが遅れがちです。
家族信託は、判断能力が十分なうちに権限設計をしておくことで、この断絶を緩和します。

不動産オーナー・自宅保有世帯に向く理由

賃貸不動産を持つ場合、賃料の入金管理、修繕、更新、空室対策、売却判断など「継続的な意思決定」が必要です。
信託契約で管理の意思決定者を受託者に置けるため、運用の停滞を避けやすいのが実務上のメリットです。

よくある設計パターン(例)

  • 親を受益者(生活費・介護費は親のために支出)
  • 子を受託者(管理・売却までできる条項)
  • 親の死亡後は子や孫を受益者に切替(承継の道筋を明確化)

この「生前の管理」から「死亡後の承継」までを一本でつなげる設計が、家族信託が選ばれる理由です。

相続対策での家族信託の活用法

遺言代用としての位置づけ

家族信託は、死亡後の受益者や帰属先(最終的に誰が資産を引き継ぐか)を条項で定めることで、遺言のような機能を持たせられます。
ただし、遺留分(一定の相続人に保障される取り分)など、相続法上の論点と衝突する可能性は残ります。

承継の「順番」を決めたいときに強い

例えば「配偶者が存命の間は生活費として利益を配分し、その後は子へ」というように、資産承継の順番を設計したいケースがあります。
家族信託では、受益者の切替や分配方法を条項で設計することで、相続発生後の混乱を抑えやすくなります。

ケーススタディ(匿名事例)

70代の不動産オーナー(父)が、賃貸マンションと預金を保有していました。将来の認知症リスクに備え、子を受託者として信託を設定し、家賃収入から修繕・固定資産税・生活費を支払うルールを明確化しました。
その後、父の判断能力が低下しても、受託者が契約に基づいて修繕や更新対応を継続でき、空室長期化や資金不足のリスクを抑制できました。相続時には受益者切替条項により、承継先の議論が短期化しました。

税理士法人 辻総合会計でも、こうした「資産管理の継続性」と「承継ルールの明確化」を同時に実現したいご相談が増えています。

家族信託と他制度の違い

家族信託は万能ではなく、目的に合う制度選択が重要です。代表的な制度を整理します。

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制度主な目的強み注意点
家族信託資産管理・承継設計認知症後も資産管理を継続しやすい/承継ルールを条項化できる設計難度が高い/家族間の合意形成が重要
成年後見制度本人保護(財産管理+身上監護)家庭裁判所の関与で本人保護が強い運用の柔軟性が低い場合/継続コストが生じうる
遺言死亡後の承継指定低コストで使いやすい生前の資産凍結対策にはならない
任意代理(委任契約等)生前の事務代行目的が限定的なら簡便判断能力低下後の実効性が課題になり得る
ここがポイント
「認知症対策=家族信託」ではありません。本人保護や身上監護が中心なら成年後見が適する場合があります。資産内容(不動産・自社株・預金)と家族関係を踏まえ、制度を組み合わせて設計します。

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家族信託の進め方(方法・手順)

家族信託は「書類を作れば終わり」ではなく、目的と資産の棚卸しから始めます。一般的な流れは次のとおりです。

Step 1: 目的を定義する(認知症対策/相続対策/事業承継)
誰の、どの資産を、何のために、誰が管理し、誰が利益を受けるのかを言語化します。ここが曖昧だと条項が肥大化し、運用リスクが上がります。

Step 2: 信託財産と関係者を確定する
不動産、預金、有価証券、出資持分などを整理し、受託者の適格性(実務遂行力、家族内の信頼)を検討します。必要に応じて受託者の監督設計も行います。

Step 3: 信託契約(信託条項)を設計する
管理権限の範囲(売却可否、投資可否、支出基準)、受益者の設定、受益者変更、終了時の帰属先などを具体化します。税務・登記・金融実務を同時に見ながら設計することが重要です。

Step 4: 契約締結と資産の移転(名義変更・信託口口座等)
不動産は信託登記が必要となるのが通常です。預金等も運用方法を整理し、実務上の管理導線を作ります。

Step 5: 運用開始後の記録・定期レビュー
受託者の支出記録、分配記録、年次の見直しを行い、家族の状況変化(介護、相続人の増減)に応じて設計の再点検をします。

注意点・リスク(失敗しないためのチェック)

家族間トラブル(受託者の権限と説明責任)

受託者に権限が集中するため、不透明な支出や情報不足は不信の火種になります。第三者の関与(専門家チェック)や、定期的な報告条項の設計が有効です。

税務(贈与税・相続税など)の論点

信託の設定や受益権の移転の仕方によって、贈与税が課税される場合があります。信託の形(誰が受益者か、どの権利を誰が取得するか)を税務面から確認することが不可欠です。
国税庁も、信託設定等で適正な対価なく受益権等を取得した場合に贈与税が課税され得る旨を示しています。

「作って終わり」になりやすい運用リスク

家族信託は運用の仕組みです。通帳・賃貸管理・支出基準が整備されないと、結局「誰も動けない」状態に戻りかねません。運用ルールと記録の定着が成否を分けます。

2025年以降の実務上の留意点

信託法の枠組み自体は大きく変わりにくい一方、税務上の解釈や金融機関・登記実務の運用は更新され得ます。設計時点の前提を固定せず、定期的な点検を推奨します。

よくある質問

Q: 家族信託の費用はどれくらいかかりますか? ▼

A:

信託財産の内容(不動産の有無、評価額、関係者の人数)により大きく異なります。一般に、公正証書化の手数料や登記費用、専門家報酬などが論点になります。費用だけでなく「設計の目的達成」と「運用のしやすさ」で比較することが重要です。
Q: 受託者は子でないといけませんか? ▼

A:

必ずしも子に限定されませんが、受託者には継続的な事務処理能力と説明責任が求められます。家族関係や資産の性質によっては、複数受託や監督設計を検討します。
Q: 家族信託があれば成年後見は不要になりますか? ▼

A:

目的によります。資産管理の継続には有効ですが、身上監護(介護・医療・施設関連の代理)を当然にカバーしません。本人保護の必要性が高い場合は、成年後見の活用や併用を検討します。
Q: 税務上、贈与税や相続税のリスクはありますか? ▼

A:

あります。信託設定や受益権の移転の設計次第で贈与税が課され得ます。相続時も、資産の帰属や受益者の設定によって課税関係が変わるため、税理士など専門家の関与が望ましいです。

まとめ

  • 家族信託は、家族が受託者として資産管理を継続し、承継ルールまで設計できる仕組み
  • 認知症による資産凍結の回避や、不動産管理の継続性確保に有効なケースが多い
  • 遺言・成年後見・委任契約とは目的と守備範囲が異なり、制度選択が重要
  • 手順は「目的定義→資産整理→条項設計→名義移転→運用レビュー」が基本
  • 税務・家族関係・運用設計を含め、個別事情に応じた専門家検討が不可欠

参照ソース

  • e-Gov法令検索「信託法」: https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108
  • 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4427.htm
  • 法務省「成年後見制度(パンフレット)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/pdf/pamphlet.pdf

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件への適用可否は状況により異なります。具体的な設計・税務判断は、必ず専門家へご相談ください。

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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