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相続・事業承継コラム
作成日:2023.11.22
更新日:2025.11.11
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

預金相続手続きの進め方|口座解約・名義変更を税理士が解説

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預金相続手続きの進め方|口座解約・名義変更を税理士が解説

預金の相続手続きとは?結論と全体像

預金の相続手続きとは、亡くなった方(被相続人)の銀行口座を、相続人が「解約して払戻しを受ける」「相続人の口座へ振込・配分する」などの形で承継するための一連の手続です。銀行が死亡を把握すると口座凍結されるのが一般的で、以後は原則として相続手続が完了するまで出金や各種変更ができません。

相続実務では、銀行窓口での手続そのものよりも、(1)相続人の確定、(2)遺言書の有無確認、(3)遺産分割の合意形成、(4)提出書類の整合がボトルネックになりがちです。当法人(税理士法人 辻総合会計)では、30年以上にわたり相続税申告・相続実務の支援を行い、預金手続の遅延が相続全体の停滞につながるケースを数多く見てきました。まずは全体の流れを押さえ、分岐点(遺言・遺産分割・裁判所手続)を早期に整理することが重要です。

口座解約と名義変更の違い(どちらを選ぶべきか)

預金相続では「名義変更で相続人がそのまま使う」イメージを持たれますが、実務上は「解約(払戻し)→相続人へ分配」が標準的です。名義変更の可否は金融機関・商品性(普通預金、定期預金、投資信託口座等)によって異なり、そもそも取り扱いがない場合もあります。

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比較項目解約(払戻し・分配)名義変更(承継)
実務で多い形多い限定的(商品・金融機関次第)
手続後の口座被相続人口座は閉鎖が一般的相続人名義へ切替(できる場合)
分配のしやすさ遺産分割に沿って分配しやすい分配が別途必要になりやすい
典型的な用途遺産分割の実行、相続税納付原資承継後も同一商品を継続したい場合
ここがポイント
「名義変更できますか?」というご相談は多いものの、普通預金は解約・払戻し対応となる金融機関が一般的です。手続の入り口で「どの口座・どの商品を、誰が、どう承継したいか」を棚卸しすると、銀行確認が短縮できます。
遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

銀行相続手続きの流れ(必要書類の準備順)

以下は、銀行手続きを止めないための「準備順」です。窓口提出の前段階を固めるほど、差戻しや追加提出が減ります。

Step 1: 取引金融機関の把握と残高の確認

通帳・キャッシュカード・郵便物・スマホの銀行アプリ履歴などから口座を洗い出します。相続税申告が見込まれる場合は、死亡日時点の残高証明書や取引明細の取得も検討します(金融機関所定の依頼書式が必要なことがあります)。

Step 2: 相続人の確定(戸籍の収集)

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)を収集し、法定相続人を確定します。相続関係説明図(家系図)を作っておくと、銀行説明・他手続にも転用できます。

Step 3: 遺言書の有無を確認

自筆証書遺言がある場合は家庭裁判所の検認(法務局保管の遺言書を除く)が関係することがあります。公正証書遺言は検認不要です。遺言執行者がいる場合は、その権限確認書類も論点になります。

Step 4: 遺産分割の方針決定(遺言がない場合)

遺言がない(または預金の承継先が遺言で定まらない)場合、相続人全員で遺産分割協議書を作成し、全員が署名押印(実印)します。銀行所定の相続手続依頼書・払戻請求書への押印を求められることもあります。

Step 5: 銀行へ相続手続を申請(解約・払戻し・振込等)

一般的に求められる書類は次のとおりです(詳細は金融機関ごとに異なります)。

  • 被相続人の戸籍一式(死亡記載のあるものを含む)
  • 相続人全員の戸籍
  • 相続人の印鑑証明書
  • 遺言書(ある場合)/遺産分割協議書(ある場合)/調停調書・審判書(裁判所手続の場合)
  • 銀行所定の相続届、払戻請求書、振込依頼書等
  • 代表相続人の本人確認書類

Step 6: 払戻金の受領・分配、税務(相続税等)へ接続

預金は相続財産として評価され、相続税申告が必要な場合は申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)が基準となります。納税資金の確保も見据え、分配計画と税額見込みを並走させることが現実的です。

遺産分割前に引き出したいとき(預貯金の仮払い制度)

生活費や葬儀費用など、遺産分割の成立を待てない資金需要がある場合、預貯金の仮払い制度が検討対象になります。民法では、一定の範囲で共同相続人が単独で預貯金債権を行使できる枠組みが定められています(算式は「口座ごとの相続開始時債権額の3分の1 × 当該相続人の法定相続分」)。さらに、同一の金融機関(預貯金債権の債務者)ごとの上限額が省令で定められています。

ここがポイント
仮払いは便利な一方、後日の遺産分割で「既に受け取った分」を調整する前提で運用されます。相続人間の説明資料(使途・領収書)を残し、分割協議の火種にならない管理が重要です。

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ルート典型的な提出書類進めやすさ留意点
遺言がある遺言書(種類により検認書類等)・相続人関係書類・受遺者等の印鑑証明比較的進めやすい遺言の対象口座・金融機関が特定されているか確認
遺産分割協議遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明・相続人関係書類標準相続人の一部欠け、押印不備、記載不一致が差戻し原因
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よくあるつまずきと実務上の注意点

  • 口座凍結後の引落し停止
    公共料金やクレジットカード引落しが止まり、延滞や解約が発生することがあります。早めに支払方法の切替を検討します。

  • 相続人の確定に時間がかかる
    戸籍が複数自治体に分散している、転籍・改製が多いと時間が読みにくくなります。収集計画を立て、並行して金融機関へ必要書類を確認すると効率的です。

  • 金融機関ごとの「書式・原本還付」ルールの違い
    同じ戸籍でも、原本提出の要否、写しの可否、原本還付(返却)の扱いが異なります。複数銀行がある場合、提出順序の設計が有効です。

  • 税務との接続が遅れる
    預金の払い戻し自体は税額を直接決めませんが、相続税申告期限(10か月)は待ってくれません。評価資料(残高証明、利息計算書等)の取得も含め、早期に全体工程を組みます。

よくある質問

Q: 銀行に死亡の連絡をすると、すぐ口座が凍結されますか? ▼
一般に、金融機関が死亡を把握すると取引制限(口座凍結)となり、入出金や引落しが止まることがあります。凍結後は相続手続の提出書類が整うまで払戻し等ができないため、引落し先の切替や当面の資金手当てを先に検討すると実務的です。
Q: 相続人が複数いるのに、代表者だけで解約できますか? ▼
遺言で承継先が定まっている場合や、仮払い制度の範囲内などの例外を除き、原則として相続人全員の合意(遺産分割協議書)や裁判所手続書類が必要になります。金融機関ごとに「代表相続人が窓口で手続するが、同意書類は全員分必要」という運用が多い点に注意してください。
Q: 遺産分割がまとまらない場合、預金はずっと引き出せませんか? ▼
合意が難しい場合は、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用する選択肢があります。生活費等の急迫の資金需要があるときは、民法の枠組みに基づく遺産分割前の預貯金債権行使(仮払い)も検討対象です。ただし、使途管理と後日の精算を前提に進める必要があります。

まとめ

  • 預金相続は、口座凍結を前提に「相続人確定→遺言・分割方針→銀行提出書類」の順で進めると停滞しにくい
  • 実務の中心は解約(払戻し・分配)。名義変更は商品・金融機関により可否が分かれる
  • 遺産分割前の資金需要がある場合は、民法の枠組みと省令上限に基づく仮払いを検討できる
  • 複数銀行があると書式・原本運用が異なるため、提出順序を設計すると効率的
  • 相続税申告が見込まれる場合は、残高証明等の取得を早めに行い、期限(10か月)から逆算して動く

参照ソース

  • e-Gov 法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089&referral=yh-free
  • e-Gov 法令検索「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成三十年法務省令第二十九号)」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=431CO0000000089_20220224_504CO0000000046
  • 裁判所「遺産分割調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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