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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

デジタル遺品の相続|SNS・電子マネーの対処法

9分で読めます
デジタル遺品の整理と相続|SNS・サブスク・電子マネー対処法を税理士が解説

デジタル遺品とは?相続で何が問題になるか

デジタル遺品とは、亡くなった方が保有していたスマホ・PC内のデータ、各種アカウント、サブスク契約、電子マネーやポイント等の「デジタル上の資産・権利関係」を指します。相続の現場で問題になるのは、資産性の有無以上に「アクセスできない」「解約できず請求が続く」「家族が勝手に触ってよいか不安」という実務面です。

特に、相続手続は行政・金融・民間手続が同時多発します。国も死亡・相続手続のオンライン化を進めていますが、現時点では遺族側で情報を集め、手続きを分解して進める必要があります。遺族の負担が増えやすい領域だからこそ、早期にデジタル遺品の棚卸しを行うことが重要です。

税理士法人 辻総合会計でも、相続税申告の準備に入った段階で「故人のスマホがロック解除できず、電子マネー残高やサブスクの契約状況が分からない」という相談は少なくありません。紙の通帳・郵便物が減った分、デジタル側の整理が相続の入口になりつつあります。

デジタル遺品の種類別チェックリスト

まずは「何があるか」を分類すると、動き方が明確になります。デジタル遺品は大きく次の4系統に分けて考えると整理が進みます。

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区分具体例目的(最初にやること)相続・手続の注意点
SNS・コミュニケーションLINE、X、Instagram、Facebook、メール追悼設定・アカウント削除・連絡先確認本人確認が厳格。ログイン試行の乱発で凍結リスク
サブスク・継続課金動画/音楽配信、クラウド、アプリ課金、会員制サービス解約・請求停止クレカ明細起点で洗い出すと早い
デジタル資産(資産性あり)電子マネー、ポイント、暗号資産、ネット証券、EC残高残高把握・承継/換金規約・法令・本人確認で手続が分かれる
端末・データスマホ、PC、写真、クラウド保存データ保全・遺族の必要情報確保初動で上書き・消去を避ける
ここがポイント
端末ロック解除や二要素認証(SMS/認証アプリ)が絡む場合、焦って初期化・パスコード総当たりをすると復旧不能になることがあります。まずは「電源を切らず充電を確保」「むやみに設定変更しない」を優先してください。

デジタル遺品の整理手順:遺族がまずやるべき流れ

デジタル遺品は、相続税の論点というより「手続きの交通整理」です。現場では次の順に進めると詰まりにくくなります。

Step 1: 支払い・連絡の入口を確保する

  • 故人名義のクレジットカード明細、銀行口座の引落一覧、メール受信(請求通知)を確認
  • 継続課金の洗い出しを優先し、請求を止める対象を特定します

Step 2: 端末と認証手段を確保する

  • スマホ(SIMあり/なし)、PC、タブレット、認証アプリ端末の有無を確認
  • 主要メールアドレス(キャリア/フリーメール)の候補をメモします

Step 3: 「資産性のあるもの」から残高把握する

  • 電子マネー・ポイント・暗号資産・ネット証券は、残高把握が遅れるほど手続が長期化しがちです
  • 相続税申告が必要なケースでは、評価時点(原則:死亡日)での残高・時価確認が論点になります

Step 4: SNS・サブスクの処理方針を決める

  • SNSは「残す(追悼化)」「削除する」の方針を家族内で決めます
  • サブスクは基本的に解約・請求停止が優先です(データが必要ならバックアップ後に)

Step 5: 証跡を残す(相続・トラブル予防)

  • どのサービスにいつ連絡し、何を提出し、どう処理されたかを一覧にします
  • 遺産分割協議がある場合、デジタル資産は「誰が承継するか」を明確にしておくと紛争予防になります

SNS相続の実務:追悼・削除・連絡先確保の考え方

「SNSは相続できるのか?」という質問が多いのですが、実務上は「相続財産」というよりアカウントの処理の問題です。多くのSNSは利用規約に基づき、遺族からの申請で追悼設定や削除の手続きを案内します(ログインして勝手に投稿・削除する運用は推奨されません)。

対応のポイントは次の通りです。

  • 追悼化:故人の記録として残したい場合に選ばれます
  • 削除:なりすまし・乗っ取りリスクを下げたい場合に有効です
  • 連絡先確保:交友関係への連絡が必要なら、早めにDMや連絡先を整理します(ただしプライバシーに配慮)
ここがポイント
「家族だからログインしてよい」と思いがちですが、サービス側の運用や本人確認に反する可能性があります。遺族の申請窓口があるサービスは、公式手続で進める方が結果的に早いことが多いです。

サブスク死亡解約のコツ:請求停止を最短で進める方法

サブスクは「契約が残っている限り請求が続く」ため、相続手続より先に動く価値があります。コツは、サービス名から探すのではなく、次の入口から逆引きすることです。

  • クレジットカード利用明細(毎月同額の請求に注目)
  • 銀行引落(収納企業名・決済代行名にも注意)
  • メール(請求・更新・領収書メール)
  • アプリストアの定期購入一覧

解約時に求められやすい情報は「登録メール」「注文番号」「契約者情報」「死亡の事実を示す書類(写し)」などです。提出書類はサービスにより異なるため、一覧表にして管理すると二度手間を減らせます。

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電子マネーやポイントは、残高があれば実質的に経済価値があります。一方で、法令・規約・本人確認の運用により「払い戻し」「名義移転」「相続人への承継可否」が分かれます。

制度面では、前払式支払手段(いわゆるプリペイド型の電子マネー等)に関するルールが定められており、発行者が払い戻しを行う枠組みも整理されています。実務では次の点を押さえると判断が速くなります。

  • 残高の有無:端末内だけでなく、アカウント紐づけ型はWeb上に残高が残ります
  • 種別の確認:前払式(チャージ)か、後払い・クレカ連携かで手続が変わります
  • 提出書類:相続人であることの確認(戸籍等)、死亡の確認、本人確認書類が必要になりやすい
  • 相続税:申告が必要な場合、死亡日時点の残高を把握し、遺産として計上できるよう証跡を残します

なお、暗号資産やネット証券は、ログイン・二要素認証・取引所ごとの相続手続が絡み、時間がかかる傾向があります。可能なら相続開始後すぐに専門家(弁護士・税理士)と連携し、評価資料の確保を優先してください。

生前対策:デジタル終活で家族の負担を減らす

デジタル遺品は「残された側が困る」典型領域です。生前にできる対策は難しくありません。

  • 主要アカウント一覧(メール、SNS、金融、サブスク)を作り、保管場所を家族に伝える
  • 解除手段(端末のPIN、認証アプリのバックアップ)を整理する
  • デジタル資産の承継方針(誰に渡すか、換金するか)をメモする
  • 遺言の活用を検討する(制度のデジタル化に関する議論も進んでいます)

ここで重要なのは、パスワードそのものを共有するより「どこに何があるか」を共有することです。セキュリティと実務のバランスを取りつつ、家族が手続きを開始できる状態を作るのが現実的です。

よくある質問

Q: デジタル遺品は相続財産として申告が必要ですか? ▼
資産性があるもの(例:電子マネー残高、ポイント、暗号資産、ネット証券、ECサイト残高など)は、原則として遺産に含めて検討します。評価方法や証跡の取り方はサービス形態により異なるため、相続税申告が必要な場合は死亡日時点の残高資料を早めに確保するのが安全です。
Q: SNSは家族がログインして削除してもよいですか? ▼
実務上は推奨しません。規約や本人確認の運用により、凍結や手続のやり直しにつながることがあります。追悼化・削除などの遺族申請窓口が用意されているサービスは、公式手続で進める方がトラブルを避けやすいです。
Q: サブスクの請求が止まりません。最短で止めるには? ▼
クレジットカード会社・銀行の引落情報から請求元を特定し、サービス側の解約手続に進むのが基本です。あわせて、カード会社の明細で同種の請求がないか確認し、複数契約の見落としを防ぎましょう。死亡の証明書類の提出が必要なケースもあります。

まとめ

  • デジタル遺品は「アクセスできない・請求が止まらない」が最大の実務リスク
  • まずは明細・メールからサブスクを洗い出し、請求停止を優先する
  • SNSは追悼化か削除か方針を決め、公式手続で処理するのが安全
  • 電子マネー等は種別により承継・払戻しが分かれるため、死亡日時点の残高証跡を確保する
  • 生前に「どこに何があるか」を共有しておくと、遺族の負担が大きく減る

参照ソース

  • デジタル庁「死亡・相続手続のオンライン・デジタル化」: https://www.digital.go.jp/policies/inheritance_onestop_service
  • 法務省「遺言制度のデジタル化に関する調査研究報告書の公表について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00355.html
  • e-Gov法令検索「前払式支払手段に関する内閣府令」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=421CO0000000296

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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