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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

死因贈与と遺贈の違い|撤回可否と税務を税理士が解説

10分で読めます
死因贈与と遺贈の違い|撤回可否と税務を税理士が解説

結論:迷ったら「遺贈(遺言)」が基本、例外的に死因贈与が有効

死因贈与と遺贈はどちらも「亡くなったときに財産を渡す」手段ですが、最大の違いは、死因贈与は契約、**遺贈は遺言(単独行為)**という点です。
一般論としては、撤回や変更の柔軟性・証拠力の面で遺贈(遺言)が使いやすく、死因贈与は「相手に確実に受け取ってもらう合意を固めたい」「特定の手続き(登記等)をセットで進めたい」など、条件が合う場合に選択します(民法の枠組みはe-Gov法令検索の民法を参照)。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

税務(相続税・贈与税)に関しては、どちらも実務上は相続税の射程に入る場面が多く、重要なのは「いつ・誰が・何を取得したか」と「申告期限までに手続きが終わる設計」です。国税庁のタックスアンサーでは、贈与者が贈与した年に死亡した場合の取扱い(贈与税不要となり相続税で整理される場面がある)などが整理されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4307.htm

死因贈与と遺贈の違い(死因贈与 遺贈 違い)

定義の違い:契約か、遺言か

  • 死因贈与:贈与者と受贈者の合意(契約)で「死亡を条件に財産を与える」
  • 遺贈:遺言によって「特定の人に財産を与える」

ここが実務上の分かれ目で、契約である死因贈与は「当事者間の合意内容」を契約書でどこまで詰められるかが肝になります。一方、遺贈は遺言書の方式と内容が核心です(遺言制度の実務は法務省の自筆証書遺言書保管制度の案内も参考になります)。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

比較表:撤回・手続き・トラブルポイント

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項目死因贈与遺贈
法的性質契約(合意)遺言(単独行為)
撤回・変更契約内容・事情に左右。実務上は「撤回の可否・条件」を契約で明確化が重要(民法の枠組み参照)原則として遺言者がいつでも撤回・変更しやすい設計になっている(民法・遺言の規律参照)
書面死因贈与契約書(公正証書化が多い)遺言書(自筆/公正証書等)
不動産の移転登記死亡後に相続手続き+原因証明情報等が必要になりやすい相続人への遺贈は、一定の場合に受遺者単独申請が可能(制度改正の案内あり) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html
典型的なトラブル契約書が曖昧、条件未整備、相続人との紛争遺言方式不備、内容の不明確、遺留分トラブル

「撤回できる/できない」を一般論で断定すると危険です。死因贈与は契約なので、契約条項(解除条件・負担・合意解除・違約条項等)と当事者の事情で結論が変わります。必ず個別設計が必要です(民法の枠組み参照)。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

死因贈与の撤回はできる?(死因贈与 撤回)

実務の要点:撤回条項を「最初から書く」

死因贈与は「死亡時に効力が生じる贈与」なので、撤回論点が起きやすいのは次の場面です。

  • 贈与者の意向が変わった
  • 受贈者との関係が悪化した
  • 介護・同居など条件付きのつもりが曖昧だった
  • 財産状況が変わり、贈与対象を維持できなくなった

このとき、契約書に撤回(解除)できる条件・手続きを明記していないと、相続開始後に相続人と受贈者の対立に発展しがちです。

よく使う条項例(考え方)

  • 解除条件:介護・同居・扶養等の条件が満たされない場合は失効
  • 合意解除:当事者の合意でいつでも解消できる
  • 目的物の変更:不動産を売却した場合の代替財産の指定
  • 費用負担:登記・税務申告費用を誰が負担するか

「撤回できる設計」自体を契約書に組み込むのが、死因贈与の基本戦略です。

死因贈与と遺贈の税務:相続税・贈与税の違い

相続税の実務:どちらも「相続開始で取得」になりやすい

死因贈与も遺贈も、経済的実態は「死亡により財産が移転」します。したがって、実務では相続税申告の中で整理されることが多いです。
国税庁は、贈与者が贈与した年に死亡した場合の贈与税・相続税の取扱いを示しており、受贈者の立場や相続財産を取得するかどうかで整理が変わる点が明記されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4307.htm

また、生前贈与に関しては「相続開始前の一定期間の加算」など周辺論点も絡みます。制度は改正が入るため、最新の整理は国税庁の解説(贈与財産の加算など)に当たってください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

実務で差が出るのは「手続きの詰め」と「期限管理」

税務上の最大リスクは、制度の名前ではなく次の2点です。

  • 相続開始後10か月の申告期限までに、必要書類・評価・分割/移転の見通しが立つか
  • 遺留分や他の相続人との調整が難航し、財産の帰属が確定しないまま申告期限が来ないか

死因贈与は「契約があるから安心」と誤解されがちですが、契約書が弱いと争点が増えることもあります。遺贈でも、遺言書の方式・文言が弱いと同様に争点になります。

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死因贈与契約書の作り方(死因贈与 契約書)

死因贈与を選ぶなら、契約書の精度が成否を分けます。最低限、次の流れで整えます。

Step 1: 対象財産と条件を棚卸しする

不動産なら地番・家屋番号、預金なら金融機関・支店・口座、株式なら銘柄・数量まで特定します。
介護などの条件があるなら、内容・期間・不履行時の効果(解除/減額等)まで文章化します。

Step 2: 「撤回・変更」「代替」「費用負担」を条文化する

意向変更が起きたときの手続き(通知方法、合意解除の要否)を決めます。
売却・滅失・名義変更などで対象が消える場合の代替(代替財産、金銭清算)も入れます。

Step 3: 公正証書化・付随手続き(登記等)を設計する

トラブル予防の観点では、公正証書化が選ばれることが多いです。
不動産が絡む場合は、相続開始後の登記・必要書類・申請主体(誰が動くか)まで決めます。遺贈については、法務局が制度改正を踏まえた案内を出しており、相続人への遺贈は一定の場合に受遺者単独申請が可能とされています。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

不動産は「契約書(または遺言)を書けば終わり」ではありません。相続開始後に、登記原因証明情報・戸籍・評価資料など実務書類が必要になります。設計段階で相続人が非協力でも進むかを確認しましょう。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

どちらを選ぶべき?判断基準(典型パターン)

  • 遺贈(遺言)を選びやすいケース

    • 将来の心変わり・財産変動があり得る(撤回・変更を柔軟にしたい)
    • 相続人間の調整が読みにくい(まず遺言で道筋を作りたい)
    • 遺言書保管制度などを使い、形式面のリスクを減らしたい
      https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
  • 死因贈与がはまるケース(例外的に有効)

    • 受贈者に一定の負担(介護、同居、事業承継の実務)を求め、合意の形で残したい
    • 特定の財産を確実に渡したい一方、条件不履行時の解除も明確にしたい
    • 相続開始後の実務(登記・管理)を受贈者主導で進める設計にしたい

迷う場合は、まず遺言ベースで設計し、必要な部分だけ契約(死因贈与)で補強する組み立てが安全です。

よくある質問

Q: 死因贈与は遺言より確実に相手に渡せますか?

A: 「契約だから確実」とは限りません。契約書が曖昧だと、相続開始後に相続人が争う余地が残ります。確実性は、条項設計(対象財産の特定、解除条件、手続き、費用負担)と証拠力(公正証書化等)で決まります(民法の枠組み参照)。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

Q: 死因贈与と遺贈で税金(相続税・贈与税)は変わりますか?

A: 死亡を契機に財産が移転するため、実務では相続税で整理される場面が多いです。一方で、贈与者が贈与した年に死亡した場合など、受贈者の立場や相続財産を取得するかどうかで取扱いが整理されます。国税庁の解説を前提に個別判断してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4307.htm

Q: 不動産を遺贈(相続人への遺贈)した場合、登記は誰ができますか?

A: 制度改正により、一定の場合に受遺者(相続人)が単独で所有権移転登記を申請できる旨が案内されています。対象となるかは遺言内容・関係者の状況で変わるため、法務局の案内に沿って確認してください。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

Q: 死因贈与契約書は手書きでも有効ですか?

A: 一般論として書面化は可能ですが、争い予防・証拠力・手続きの確実性を考えると、公正証書化を検討するのが実務的です。税務面だけでなく、相続開始後の登記・名義変更まで見据えて設計することが重要です。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

まとめ

  • 死因贈与は契約、遺贈は遺言で、撤回・変更の考え方が異なる
  • 死因贈与は「撤回条項・条件・代替・費用負担」を契約書で詰めないと揉めやすい
  • 税務は相続税で整理される場面が多いが、個別事情で取扱いが変わるため国税庁の整理を前提に判断する
  • 不動産は相続開始後の登記実務まで設計が必要(遺贈の登記は制度改正の案内あり)
  • 迷ったら遺贈(遺言)を基本に、必要に応じて死因贈与で補強するのが安全

参照ソース

  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 国税庁 タックスアンサー「No.4307 贈与者が贈与をした年に死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱い」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4307.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
  • 法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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