
執筆者:辻 勝
会長税理士
生前贈与7年加算ルール【2026年版】対策スケジュール|税理士が解説

生前贈与の7年加算とは?結論(いつから加算されるか)
生前贈与の「7年加算」とは、相続で財産を取得した人が、被相続人から相続開始前一定期間に受けた暦年贈与を、相続税の課税価格に持ち戻して加算するルールです。
2026年時点の実務で重要なのは、「いつ贈与したか」だけでなく「いつ相続が開始したか(死亡日)」で加算範囲が変わる点です。
相続税対策として毎年贈与を続けている方ほど、改正の影響で「想定より相続税が増える」ケースが出ます。特に50代以上で、親からの贈与を受け始めている方は、今後の資金移転計画を早めに組み直す必要があります。
旧ルール(3年加算)と新ルール(7年加算)の違い
何が変わったのか(ポイント3つ)
- 加算対象期間が、原則「相続開始前3年以内」から最長7年以内へ拡大
- ただし一気に7年へ移行するのではなく、相続開始日(死亡日)に応じて段階的に適用
- 相続開始日が一定以後の場合、3年超部分の加算については「総額100万円まで加算しない」調整がある(対象・計算は要注意)
3年加算 vs 7年加算(比較表)
| 項目 | 旧:3年加算 | 新:7年加算(段階的移行) |
|---|---|---|
| 対象となる贈与 | 相続開始前3年以内の暦年贈与 | 相続開始日によって最長7年以内の暦年贈与 |
| 110万円贈与 | 3年以内なら加算対象になり得る | 7年(移行期は2024以降の贈与等)で加算対象が広がる |
| 影響が出やすい人 | 死亡直前に贈与が多い家庭 | 毎年コツコツ贈与している家庭ほど影響が出やすい |
| 対策の軸 | 直前3年を避ける | 「贈与の目的・制度選択・タイミング」を再設計 |
2024年〜2031年の段階的移行スケジュール(早見表)
7年加算は「令和6年(2024年)1月1日以後の暦年贈与」から制度設計が変わり、相続開始日(死亡日)で加算対象期間が切り替わります。
以下は、2026年時点で相談が多い「どの年の贈与が戻るか」を、実務で使いやすい形に圧縮した早見表です(暦年贈与が前提)。
早見表:相続開始年(死亡年)ごとの「加算される贈与年」
| 相続開始(死亡)年 | 相続税に加算される贈与の範囲(原則) |
|---|---|
| 2024年 | 2022〜2024年(3年以内) |
| 2025年 | 2023〜2025年(3年以内) |
| 2026年 | 2024〜2026年(3年以内) |
| 2027年 | 2024〜2027年(2024/1/1以後〜死亡日) |
| 2028年 | 2024〜2028年(同上) |
| 2029年 | 2024〜2029年(同上) |
| 2030年 | 2024〜2030年(同上) |
| 2031年 | 2025〜2031年(原則7年以内) |
- 2026年までの相続開始は、従来どおり「3年以内」が基本です。
- 2027〜2030年は移行期で、「2024年以後の贈与」が幅広く加算対象になり得ます(結果として4〜7年相当になることがあります)。
- 2031年以後の相続開始で、原則として「相続開始前7年以内」が完成形になります。
「暦年贈与110万円が使えなくなった?」誤解の解消
結論から言うと、110万円の基礎控除(暦年課税)は残っています。変わったのは「贈与税がかからない=相続税でも無関係」ではなくなった点です。
110万円贈与で損したと感じやすいパターン
- 毎年110万円を子に贈与してきた
- ところが相続開始が移行期(特に2027〜2030年)に当たった
- 直近の贈与は贈与税ゼロでも、相続税の課税価格に加算され、相続税が増える
ここで重要なのは、「110万円贈与が無意味」ではなく、次のように目的に応じて使い分ける発想です。
- 生活費・教育費など、都度必要な費用の負担(要件に沿った実費精算)
- 不動産取得、事業承継など資産の性質に合わせた制度選択
- 贈与契約書・資金移動の証拠を整え、贈与の実体を固める
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相続時精算課税制度との賢い使い分け(2026年の実務視点)
暦年贈与(110万円)と、相続時精算課税は「どちらが得か」ではなく、資産規模・相続人構成・資産の中身で最適解が変わります。税理士法人 辻総合会計では、相続税申告・生前対策の現場で、次の切り口で判断します。
使い分けの目安
-
暦年贈与が向くケース
- 受贈者が複数いて、毎年分散して移転したい
- 将来の相続開始がまだ遠く、計画的に贈与の目的を積み上げられる
- 贈与する財産が現預金中心で、評価変動が小さい
-
相続時精算課税が向くケース
- 将来値上がりしそうな資産(自社株・不動産など)を早めに移したい
- 相続人を限定して資産承継の筋を作りたい
- 2024年以後の改正により、相続時精算課税でも年110万円の基礎控除(別枠)が使える設計が整ったため、少額移転も織り込みやすい
注意点(制度を混ぜるときの落とし穴)
- 相続時精算課税は「選択したら原則戻れない」ため、入口設計が重要です。
- 暦年贈与の7年加算は加算対象期間の拡大なので、短期の節税テクニックより、資産移転の設計が問われます。
今すぐ始める生前対策(不動産・保険・教育資金)スケジュール
制度が複雑化した今ほど、「何をいつやるか」の工程表が効きます。以下は、対策を実務に落とすための基本スケジュールです。
Step 1: 資産の棚卸し(現預金・不動産・保険・有価証券)
財産目録を作り、相続税の概算(基礎控除・法定相続人)と、贈与に回せる余力を把握します。
不動産は評価(路線価・固定資産税評価額)と収益性もセットで確認します。
Step 2: 「贈与の目的」を決めて制度を当てはめる
- 教育費・生活費:都度必要な費用としての負担(要件確認)
- 住まい:住宅取得等資金贈与の非課税の適用余地
- 事業承継:株式移転の方法(評価・議決権・納税資金)
- 介護・老後費:親の資金繰りを崩さない設計
Step 3: 2027〜2031を見据えた加算リスクの平準化
移行期に相続開始が重なる可能性があるなら、暦年贈与だけで突っ走らず、相続時精算課税や保険(受取人設計・非課税枠)を組み合わせ、加算の影響を平準化します。
Step 4: 書面と証拠の整備(贈与契約書・振込・管理)
暦年贈与は、税率以前に「贈与の成立」を否認されないことが重要です。毎年の契約、振込記録、受贈者の管理実態を整えます。
よくある質問
Q: 生前贈与の7年加算は、いつの贈与から対象ですか?
Q: 110万円の贈与は、もう意味がないのですか?
Q: 7年加算になると二重課税になりますか?
Q: 暦年贈与と相続時精算課税、どちらを選ぶべきですか?
まとめ
- 生前贈与の加算期間は、相続開始日(死亡日)により段階的に拡大し、最終的に原則7年へ
- 2027〜2030年は移行期で「2024年以後の贈与」が広く加算対象になり得る
- 110万円贈与は廃止ではないが、加算対象期間内なら相続税で持ち戻され得る
- 暦年贈与と相続時精算課税は「得・損」ではなく、資産の中身と承継方針で使い分ける
- 2026年の対策は、制度理解よりも「スケジュール化(棚卸し→制度選択→証拠整備)」が差になる
参照ソース
- 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
- 国税庁「令和5年度 相続(パンフレット)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf
- 財務省「令和5年度税制改正の大綱(相続税・贈与税関係)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/05taikou_02.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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