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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

持株会社ホールディングス事業承継の活用法|税理士が解説

8分で読めます
持株会社ホールディングス事業承継の活用法|税理士が解説

持株会社(ホールディングス)スキームとは、グループ各社の株式を上位の会社(持株会社)に集約し、承継対象を「各社の株式」から持株会社の株式へ一本化する設計です。グループ会社が増えるほど、後継者への株式移転・議決権コントロール・相続/贈与の設計が複雑化しますが、持株会社化により承継の論点を集約できます。

税理士法人 辻総合会計では、複数法人を抱えるオーナー企業の承継設計を多数支援してきました。現場感として多いのは「子会社ごとに株主構成がバラバラ」「後継者が複数いて議決権が割れる」「金融機関・取引先への説明が難しい」という悩みです。本稿では、実務で使われる整理の仕方を優先して解説します。

持株会社(ホールディングス)とは:事業承継で何が変わる?

持株会社とは、子会社の株式を保有し、グループを統括する会社です。事業承継で重要なのは、「誰が・何の株式を・どれだけ持つか」を設計し、経営権を安定させることです。

持株会社化で変わるポイントは次の3つです。

  • 承継対象の集約:各社株式の承継から、持株会社株式の承継へ一本化
  • 支配の明確化:議決権・配当方針・役員構成を持株会社で統制しやすい
  • 再編のしやすさ:事業をどの法人に置くか、将来の売却・分社化などの選択肢が増える

一方で、持株会社を「作れば自動的に節税」ではありません。株価・移転手段・少数株主の整理など、税務と会社法の両面で設計が必要です。

持株会社×事業承継のメリット:なぜ効率化できるのか

ロングテールの「持株会社 ホールディングス 事業承継 メリット」に対して、実務で効くポイントを整理します。

メリット1:株式移転の作業が減る(管理コストの低下)

子会社が3社、5社と増えると、相続・贈与のたびに「各社の株式評価」「各社の贈与契約」「各社の株主名簿管理」が発生します。持株会社で株式を集約できれば、基本的には持株会社株式の評価・移転に集約しやすくなります。

メリット2:議決権の一本化で経営権が安定する

兄弟姉妹で株式が分散すると、子会社単位で意思決定が止まることがあります。持株会社で議決権を設計し、重要決議を持株会社側に寄せると、グループとしての経営権が安定しやすくなります。

メリット3:組織再編・事業再配置に強くなる

事業承継は「株式の移転」だけでなく、「将来の事業の置き場所」も論点です。例えば、収益事業を中核会社に集約する、リスク事業を分社化する、M&Aで子会社を増やすなど、承継後の再編余地が広がります。

ここがポイント
持株会社化は「承継(相続・贈与)」の前に、グループ内の資本関係を整理する工程です。承継の直前に慌てて組むと、株価・手続・利害調整が間に合わないことが多いので、3〜5年単位の設計が現実的です。

持株会社の作り方(設立手順):株式移転・株式交換・現物出資の選び方

ロングテールの「持株会社 ホールディングス 事業承継 設立」に対して、典型的な3パターンを提示します。どれが正解というより、株主構成と税務要件で選び分けます。

Step 1: 現状把握(株主・株価・契約)

  • 各社の株主構成(先代、後継者、親族、役員、少数株主)
  • 直近期の株価(類似業種比準・純資産価額などの論点)
  • 銀行借入・担保・連帯保証、グループ内取引の有無

Step 2: スキーム選定(主に3類型)

  • 株式交換:子会社株主が持株会社株式を受け取り、持株会社が子会社を完全子会社化する方法
  • 株式移転:新設持株会社を作り、既存株主が株式を移して持株会社株式を受け取る方法
  • 現物出資:株式を現物出資して持株会社を作る(評価・手続に注意)

Step 3: 税務の論点整理(組織再編税制・株式譲渡課税)

株式交換などは、要件を満たすかで課税関係が大きく変わります。国税庁では、株式交換の適格判定の照会資料の記載例や、株式交換に伴う譲渡所得の特例(所得税の取扱い)など、論点の入口になる情報が整理されています。

Step 4: 実行と事後管理(株主名簿・配当・役員設計)

持株会社を作った後が重要です。配当方針、役員報酬、グループ内の資金移動(貸付・配当・役務提供)を、税務調査も意識して整備します。

ここがポイント
「株式交換で持株会社化→その後に事業を集約(会社分割等)」という流れは実務でもよくあります。再編を連続で行う場合、目的・実態・継続性の説明ができる資料づくりが重要です。

持株会社スキームの税務上の注意点:デメリットと詰まりやすい論点

ロングテールの「持株会社 ホールディングス 事業承継 税務」に対して、失敗しやすいポイントを先に出します。

注意点1:株価が高いほど移す瞬間が重い

持株会社化は、株式を動かす行為です。株価が高い会社ほど、移転時点の課税・評価・対価設計が難しくなります。まずは「どの会社の株価が高いか」「どの株主にどれだけ集まっているか」を棚卸ししてください。

注意点2:少数株主・名義株が残ると承継が止まる

親族外の株主がいる、名義株が疑われる、退職役員が株を持っているなどのケースは、持株会社化の前に整理が必要です。後から揉めると、承継税務よりもガバナンス問題の方が深刻になります。

注意点3:法人版事業承継税制との合わせ技は要件管理が必須

法人版事業承継税制(特例措置等)は、対象会社・後継者・先代・その他株主などの要件管理が重要です。持株会社を作ることで対象関係がどう変わるかは、ケースで結論が異なるため、制度ページの要件を前提に個別検討が必要です。

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持株会社化しない方がよいケース:比較で判断する

持株会社は万能ではありません。比較表で、判断軸を置きます。

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判断軸持株会社が向くケース持株会社が向きにくいケース
グループ規模3社以上、事業が多角化1〜2社でシンプル
株主構成集約できる(少数株主が少ない)少数株主が多く調整困難
将来計画M&A、分社化、事業売却の可能性事業の再配置予定がない
承継方針後継者に経営権を集中させたい兄弟で公平分配を最優先
コスト許容設立・管理コストを許容管理コストを最小化したい

結局のところ、持株会社は「承継の設計図」です。経営権をどう残すか、誰に株式を集めるか、税務要件を満たすかを同時に満たす必要があります。

よくある質問

Q: 持株会社を作ると、相続税や贈与税は必ず下がりますか? ▼
下がるとは限りません。持株会社化は株式の持ち方を変える設計であり、株価(評価)や移転方法によって税負担は増減します。まずは現状の株価・株主・移転手段を整理してから判断します。
Q: 株式交換でホールディングス化する場合、税金はかかりますか? ▼
要件を満たすと、株式交換に伴う株式譲渡課税について特例が適用される場合があります。一方、要件を満たさないと課税が顕在化する可能性があります。具体的な取扱いは国税庁の解説を踏まえて個別検討が必要です。
Q: 法人版事業承継税制と持株会社は併用できますか? ▼
併用可能性はありますが、対象会社や株式の持ち方が変わるため、要件判定が重要になります。制度要件は更新され得るため、最新情報を確認しつつ、認定・計画・報告の実務を含めて設計します。
Q: 持株会社を作る最適なタイミングはいつですか? ▼
多くのケースで「承継の直前」ではなく、数年かけて準備する方が現実的です。少数株主整理、株価対策、資金繰り、再編の順序など、時間を要する論点が多いからです。

まとめ

  • 持株会社(ホールディングス)は、グループ承継を持株会社株式に集約して設計しやすくする手法
  • メリットは「株式管理の一本化」「議決権の安定」「将来の再編自由度」
  • 設立手段(株式交換・株式移転・現物出資)は、株主構成と税務要件で選ぶ
  • 少数株主整理や株価の高い会社の扱いが詰まりポイント
  • 法人版事業承継税制と併用する場合は要件管理が必須。個別事情で結論が変わる

参照ソース

  • 国税庁「同一の者による支配関係のある法人間で行われる株式交換の適格判定について照会する場合の説明資料の記載例(記載例4)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/07.htm
  • 国税庁「No.1526 株式交換により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1526.htm
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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