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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続 財産調査の方法|漏れなく探す手順を解説

9分で読めます
相続 財産調査の方法|漏れなく探す手順を解説

相続財産調査とは|結論:証跡ベースで「口座・不動産・有価証券」を潰す

相続財産調査とは、亡くなった方(被相続人)の財産と負債を、申告・分割・名義変更に耐える証拠で漏れなく把握する作業です。相続人にとっての問題は「何がどこにあるか分からない」「後から見つかって手続きがやり直しになる」ことではないでしょうか。実務では、通帳・郵便物・税金関係書類などの証跡を起点に、預金・不動産・株式(投資信託含む)を系統立てて確認すると、抜け漏れを大幅に減らせます。なお相続税申告が必要な場合、期限(原則10か月)を意識して早めに着手することが重要です。


相続 財産調査の全体像|「手掛かり→照会→一覧化→残高確定」の流れ

調査は、思いつきで銀行を回るより、工程を固定した方が早く正確です。税理士法人 辻総合会計でも、初動で資料の回収範囲を決め、証跡の有無にかかわらず「存在し得る財産」をリスト化してから照会に入ります。

Step 1: 手掛かり(証跡)を集める

  • 財布・金庫・通帳・キャッシュカード・スマホ(金融アプリ)
  • 郵便物(銀行・証券・保険・クレジットカード・自治体)
  • 確定申告書、源泉徴収票、配当金計算書、特定口座年間取引報告書
  • 固定資産税納税通知書、賃貸借契約書、登記識別情報通知(権利証)

Step 2: 財産カテゴリ別に「当たり」を付ける(預金/不動産/株式等)

  • 預金:通帳の入出金先、年金振込先、公共料金引落口座
  • 不動産:固定資産税の課税明細、住所履歴(過去居住地)
  • 株式等:特定口座の報告書、配当通知、NISA関連書類

Step 3: 金融機関・自治体・法務局で照会し、一次一覧を作る

  • 口座は「残高証明」「取引明細」を取得し、基準日(死亡日)で残高を確定
  • 不動産は「名寄帳(固定資産関係)」と「登記事項証明書」を突合
  • 証券は「残高証明」「取引報告書」で評価の根拠を揃える

Step 4: 抜け漏れチェック(負債・名義預金・生前贈与も含む)

  • 借入・未払金・クレカ・連帯保証の有無
  • 名義だけ家族の預金(名義預金)や、直前の大きな資金移動
  • 生命保険金(みなし相続財産)や退職金の見落とし

相続 預金口座の調べ方|「郵便物×入出金×照会」で網羅する

預金は最も数が多く、解約・残高証明の取得に戸籍等の書類が必要で時間を要します。ポイントは「手掛かりから網をかける→照会で確定する」です。

手掛かりの見つけ方(実務で効く順)

  • キャッシュカードの発行元、通帳、ネットバンキングのワンタイムパスカード
  • 年金・給与・家賃の振込先(通帳の摘要や明細)
  • クレカ・公共料金・保険料の引落口座
  • 金融機関からの残高通知、投信・外貨の取引報告

銀行に依頼する主な書類

  • 残高証明書(死亡日現在など指定)
  • 取引明細(一定期間:例 1〜3年、税務上の説明に必要な範囲)
  • 定期預金・外貨・投資信託(銀行取扱)の内訳資料
ここがポイント
預金の「調査」は、原則として相続人等が金融機関ごとに行います。手掛かりが薄い場合は、被相続人のスマホ・郵便物・確定申告書類(配当・利子の記載)から金融機関名を拾うのが現実的です。戸籍収集に時間がかかるため、金融機関への問い合わせ前に必要書類(戸籍一式・本人確認等)を整えておくと手戻りを減らせます。

相続 不動産 名寄帳の使い方|「名寄帳→登記→評価」の順で固める

不動産は、固定資産税の課税がある限り自治体側に情報が残るため、「名寄帳(所有者別の一覧)」の取得が有効です。特に過去に住んでいた市町村、貸家・駐車場の所在地が別の自治体にあるケースでは、名寄帳が起点になります。

名寄帳(固定資産関係)のポイント

  • 自治体(市区町村)の資産税課で取得できることが多い
  • 同一自治体内の土地・家屋が所有者名義で一覧化される
  • 守秘義務の関係で、取得できる範囲や申請者の要件は自治体運用で異なる場合があります(必要書類の事前確認が重要)

固定資産課税台帳に関する情報提供の考え方として、登記簿記載情報は提供可能な一方、評価額などは守秘義務の対象となる旨が整理されています。

登記事項証明書で「権利関係」を確定する

名寄帳は「課税対象の一覧」であり、権利の確定は登記で行います。土地・建物の登記事項証明書等は、オンライン請求・郵送・窓口などの方法があります。法務局は登記事項証明書等の請求手続きを案内しており、オンライン請求が可能な手続も示されています。


相続で株式・投資信託を探す|「配当通知・特定口座報告書」が最短ルート

株式等は、証券会社の口座に集約されていることが多い一方、口座数が分散していると見落としやすい領域です。

典型的な手掛かり

  • 特定口座年間取引報告書(証券会社名が明確)
  • 配当金計算書、分配金のお知らせ(銘柄名・取扱金融機関が出る)
  • NISAの通知(制度口座の所在が分かる)
  • 銀行口座への「配当金」入金(摘要から証券会社が推測できる)

証券会社に依頼する主な書類

  • 残高証明書(死亡日基準)
  • 取引報告書(必要期間)
  • 外国株・外貨建商品がある場合は評価資料(為替含む)

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預金・不動産・株式の調査先と取得資料|比較表で整理

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対象主な調査先まず集める手掛かり取得しておきたい資料
預金(普通・定期・外貨)各金融機関通帳、カード、引落明細、郵便物残高証明書、取引明細、定期明細
不動産(土地・建物)市区町村、法務局固定資産税通知、住所履歴、賃貸契約名寄帳、固定資産評価証明、登記事項証明書
株式・投信・債券証券会社、銀行(投信)特定口座報告書、配当通知、入金明細残高証明書、取引報告書、評価資料

申告漏れ・やり直しを防ぐ注意点|期限と「後出し財産」に備える

相続税の申告が必要な場合、申告期限は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」が原則です。申告が遅れたり、財産を少なく申告した場合に加算税等がかかり得る点も含め、期限管理は実務上の最重要論点です。

また、分割協議後に財産が見つかると、遺産分割のやり直しや登記の追加手続が必要になることがあります。調査の終盤では、次の観点で横断チェックしてください。

  • 被相続人宛の郵便物が「別住所(実家・別荘)」に届いていないか
  • 休眠口座や少額口座(ネット銀行含む)がないか
  • 賃料収入・配当収入など「定期的な入金」の出所が全て説明できるか
  • 借入金、保証債務、未払医療費・施設費など負債の計上漏れがないか
ここがポイント
「見つからない財産」をゼロにするのは難しい一方、調査の質は証跡で説明できるかで評価されます。税務調査対応まで見据えるなら、残高証明・取引明細・登記・評価資料の保存が重要です。個別事情で必要書類は変わるため、早い段階で専門家に手順設計を依頼するのが安全です。

よくある質問

Q: 相続財産調査はいつから始めるべきですか? ▼
できれば葬儀後すぐに着手し、遅くとも四十九日までに「手掛かり回収」と「一次一覧」を作るのが現実的です。相続税申告が必要な場合は期限が原則10か月のため、戸籍収集や金融機関対応の時間を見込んで前倒しが重要です。
Q: 名寄帳を取れば、被相続人の不動産は全部分かりますか? ▼
名寄帳は自治体内の課税対象を一覧化できる一方、自治体が異なる不動産や非課税資産等は別途確認が必要です。名寄帳で当たりを付けた上で、登記事項証明書で権利関係を確定し、評価資料まで揃える流れが基本です。
Q: 通帳が見当たらない場合、預金口座はどう調べますか? ▼
郵便物(金融機関からの通知)、公共料金やクレカの引落明細、年金・給与・配当の入金履歴などから金融機関名を推定し、相続人として照会します。ネット銀行・ネット証券もあるため、スマホアプリやメールの受信履歴も重要な手掛かりです。

まとめ

  • 相続財産調査は、証跡ベースで預金・不動産・株式等を体系的に洗い出すのが基本
  • 手掛かり回収→照会→一覧化→残高(評価)確定の順に進めると漏れが減る
  • 不動産は名寄帳で当たりを付け、登記事項証明書で権利関係を確定する
  • 株式等は配当通知・特定口座年間取引報告書が最短ルートになりやすい
  • 相続税申告が必要な場合は期限(原則10か月)を意識し、早期着手が重要

参照ソース

  • 法務局「各種証明書請求手続」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00002.html
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
  • 内閣府「固定資産課税台帳情報の活用について(PDF)」: https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/teianbukai93shiryou04_3.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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