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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続税の連帯納付義務とは?滞納時の請求リスク|税理士が解説

11分で読めます
相続税の連帯納付義務とは?滞納時の請求リスク|税理士が解説

相続税の連帯納付義務とは?結論とポイント

相続税の連帯納付義務とは、同じ被相続人から財産を相続した人全員が、他の相続人の未納分も相続で受けた利益の範囲で連帯して納める責任です。遺産分割でもめていたり、相続人の一人が資金難だったりすると、完納したはずのあなたに税務署から請求が来ることがあります。特に「他の相続人が相続税を滞納したら自分に来るのか」という不安は、現場でよく伺うテーマです。どんな条件で請求され、どう備えるべきかを税理士の実務目線で整理します。

制度の根拠は相続税法34条(連帯納付の義務)

国税庁のQ&Aでも、相続税には「相続により取得した財産の価額を限度として、他の相続人が納付すべき相続税額について連帯して納付しなければならない」義務があると説明されています。これが相続税 連帯納付義務です。
ポイントは「あなた自身の相続税を完納していても、他の相続人の滞納があると請求対象になり得る」という点にあります。

対象者は「相続人」だけではない

条文上の対象は「相続又は遺贈により財産を取得した全ての者」です。
そのため、法定相続人だけでなく、遺言で財産をもらった受遺者(相続人ではない人)がいる場合も、連帯納付の枠組みの中で論点になることがあります。

責任は無制限ではない(上限がある)

連帯納付は「誰かの未納分を全部かぶる制度」と誤解されがちですが、責任には上限があります。国税庁が示す通知様式でも、連帯納付の責任は「相続によって受けた利益の価額を限度」とされています。
つまり、あなたが相続で得た経済的利益の範囲を超えて、無制限に負担させられる建付けではありません。

なお、令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日閣議決定)の概要でも、資産課税の改正項目は別テーマが中心で、連帯納付義務(相続税法34条)の枠組み自体を変更する記載は少なくとも概要レベルでは確認できません。

ここがポイント
連帯納付義務は、相続人同士で「各自が自分の分だけ払う」と合意しても消えません。税務署との関係では法律上の責任が残るため、実務では「滞納を生まない設計」が最重要になります。

相続税 他の相続人 滞納で自分に請求が来る流れ

国税庁Q&Aは、他の相続人が相続税を滞納した場合に、制度に基づいて他の相続人へ納付を求めることがあると明記しています。実務では税務署から納付通知書等が送付され、そこで初めて知る方も少なくありません。

税務署の請求は「いきなり差押え」ではない

国税庁の通達(相続税法34条に係る通知等)では、連帯納付責任がある人に対し、責任がある旨を早期に通知して滞納整理を円滑にする考え方が示されています。また、滞納者から十分な担保を徴している場合などは通知を省略できる場面もあるとされています。
請求や手続の細部は個別事情で変わるため、届いた書面の種類と記載事項をまず確認してください。

連帯納付の請求までの実務フロー

Step 1: まず滞納者本人へ督促・納付の働きかけ

滞納が発生すると、税務署は原則として滞納者に納付を促します(督促状の発送等)。

Step 2: 連帯納付責任者へ通知・納付の求め

滞納状況等に応じて、連帯納付責任がある人に対して通知や納付の求めが届きます(納付通知書等)。

Step 3: 期限までに納付されない場合、滞納処分の対象になり得る

納付がない場合、法律上は連帯納付責任者も滞納整理(財産調査や差押え等)の対象となる可能性があります。

Step 4: 立替えて納付した場合、内部では求償の問題へ

あなたが他の相続人の未納分を支払った場合、相続人間では「誰がどれだけ負担すべきか」という別の整理(求償)が必要になります。

相続税の基礎控除とは|計算方法と申告要否を税理士が解説【2025年版】

連帯納付義務の負担上限と金額イメージ

連帯納付で最も重要なのは、負担上限である受けた利益の価額を限度という考え方です。実務では「あなたが取得した財産の相続税評価額」「引き継いだ債務の有無」「相続放棄の有無」などを踏まえ、上限の当てはめを検討します。ここは誤解が多いため、イメージを持っておくと安心です。

具体例:請求が来ても、上限で止まる(ことが多い)

  • 例1:あなたが取得した財産が3,000万円、他の相続人が滞納した相続税が200万円
    この場合、あなたの上限は3,000万円相当なので、200万円の請求は上限内となり得ます。

  • 例2:あなたが取得した財産が800万円、他の相続人の滞納が1,500万円
    理屈上は1,500万円全額があなたに転嫁されるのではなく、あなた側の負担は最大でも800万円相当が上限になります。

※上記は制度理解のための単純化した例です。実際の「利益」や請求額の算定は、課税価格・各種控除・附帯税(延滞税等)の有無などで変動します。

連帯納付が現実化する典型パターンとリスク

連帯納付は、相続税の申告・納付の現場で「起きてから困る」論点です。税理士法人 辻総合会計では30年以上にわたり資産税の実務に携わってきましたが、特に次のパターンで相談が集中します。

よくある発生パターン

  • 遺産分割協議が長期化し、相続人の一部が納付資金を確保できない
  • 相続人の一部が海外在住・所在不明で、連絡が取れず申告自体が遅れる
  • 不動産中心の遺産で現金が少なく、換金が間に合わない(納付が遅れる)
  • 「払うつもりだったが後で精算する」と口約束のまま期限を過ぎる

リスクは「お金」だけではない

連帯納付の本質は、税務署が「徴収の確実性」を優先できる点にあります。あなたが資金を用意できる立場だと、先に請求が来る可能性が高まります。
また、相続人間の信頼関係が崩れると、求償(立替分の回収)が進まず、家族関係と資金繰りの両方が傷つくこともあります。

ケーススタディ(匿名事例)

兄弟3人で不動産と預金を相続し、長男が海外転居で納付が遅れたケースがあります。次男と三男は自分の分を納付したものの、数か月後に税務署から連帯納付に関する書面が届き、三男が一部を立替える形で一旦納税しました。
その後、遺産分割協議書とは別に「立替分の精算合意書」を作成し、長男の帰国時期・送金方法まで具体化して回収計画を整えたことで、追加の紛争を最小化できました。

ここがポイント
「払ったら終わり」ではありません。連帯納付で支払った金額を他の相続人から回収するには、相手の資力や合意形成が必要です。税務(公法)と、相続人間の精算(私法)は切り分けて設計しましょう。
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相続税 連帯納付 回避・軽減の実務対策

結論として、連帯納付義務を法的に「ゼロ」にするのは困難です。現実的には、滞納が起きないように前倒しで手当てし、起きた場合のダメージを小さくするのが「回避」に近い実務対応です。

事前にできる対策(納付期限までが勝負)

  • 申告前から、相続人ごとの納税資金を見える化する(現金・預金・売却予定資産)
  • 期限までに払えない相続人がいるなら、延納・物納の検討を早めに開始する
  • 立替える可能性がある場合は、求償の前提(立替上限、精算方法、遅延時の扱い)を書面化する
  • 遺産分割が未確定でも、申告期限(原則10か月)に間に合うよう「未分割申告」を含めて戦略を立てる

「払えない相続人」がいるときの選択肢比較

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選択肢向く状況メリット注意点
延納(分割納付)現金不足だが継続的収入がある滞納を回避しやすい利子税・担保など要件あり
物納(現物で納付)不動産等はあるが換金が難しい売却不要で納付できる場合認められる財産や順位がある
他の相続人が立替納付期限までに間に合わない期限内納付で延滞を抑えられる回収(求償)は別問題

通知が届いた後の対応手順(慌てないためのチェック)

Step 1: 書面の種類を確認する(納付通知書、連帯納付責任の通知など)

同じ「請求」に見えても、書面により意味合いが異なります。期限・税目・対象額をまず把握します。

Step 2: 自分の負担上限(受けた利益)を整理する

取得財産の評価資料、相続放棄の有無、債務の引継ぎ等を整理し、上限の見通しを立てます。

Step 3: 滞納者の納付可能性と、延納・物納の可否を確認する

滞納者本人が手続可能なら、延納・物納へ誘導することで、連帯納付の実害を抑えられます。

Step 4: 立替納付する場合は、同時に精算ルールを固める

口約束のまま立替えると回収が長期化します。最低限、支払額・期限・精算方法は文書化しましょう。

※個別事情により最適解は変わります。税務署対応と相続人間の精算を同時並行で整理する場合は、早い段階で専門家に相談すると判断が早まります。

よくある質問

Q: 私は自分の相続税を完納しています。それでも他の相続人の滞納分を払わされますか? ▼
はい、可能性があります。国税庁も、他の相続人が滞納した場合に、制度に基づき他の相続人に納付を求めることがあると説明しています。負担には上限があり、一般に「相続で受けた利益の価額」を限度として判断されます。
Q: 連帯納付の「上限」は、私の法定相続分ですか? ▼
上限は法定相続分そのものではなく、あなたが相続・遺贈で得た「利益」を基準に考えます。実務では取得財産の相続税評価額や債務の引継ぎ等も含めて検討するため、資料をそろえて整理することが重要です。
Q: 立替えて納付したら、他の相続人へ請求できますか? ▼
相続人間では、立替分を他の相続人へ求める(求償する)余地があります。ただし回収は相手の資力・合意形成に左右されるため、立替前に精算ルールを明文化しておくと紛争予防になります。

まとめ

  • 相続税の連帯納付義務により、他の相続人の滞納があると自分に請求が来ることがある
  • 負担は無制限ではなく、「相続で受けた利益の価額」を上限として検討される
  • 請求は通知書等で行われ、放置すると滞納整理の対象になり得る
  • 実務の「回避」は、滞納を起こさない資金設計と、延納・物納等の活用が中心
  • 立替納付をするなら、同時に求償(精算)ルールを文書化しておく

参照ソース

  • 国税庁「(問3)私は相続税を完納していますが、他の相続人が相続税を滞納していると、その滞納している相続税を私が納付しなければならない場合があると聞きましたが本当ですか。」: https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/qa/qa/q03.htm
  • 国税庁「相続税法第34条に規定する連帯納付の義務に係る通知等について」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/chosyu/880613/01.htm
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要(令和7年12月26日 閣議決定)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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