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相続・事業承継コラム
作成日:2025.09.10
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

空き家3000万円控除の条件と手続き|2026年版を税理士解説

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空き家3000万円控除の条件と手続き|2026年版を税理士解説

導入:相続した空き家の売却で使える3000万円控除とは

相続した実家が空き家のままだと、固定資産税や管理負担が重く、売却も「古家付きで売るべきか、解体すべきか」で迷いやすいテーマです。結論として、一定条件を満たす相続空き家の売却は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。適用には期限・家屋の要件・確認書取得・確定申告が揃って初めて成立するため、手続き順序の設計が重要です。

空き家3000万円控除(被相続人居住用の特例)とは

「空き家3000万円控除」は、正式には被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例です。相続等で取得した一定の家屋・敷地を売却したとき、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。適用期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日までとされています。

また、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合の控除上限が2,000万円に引き下げられる点に注意が必要です。

どの税金が減るのか(相続税ではなく所得税・住民税)

この特例が減らすのは、売却益(譲渡所得)に対する所得税・住民税です。相続税の計算に直接影響する制度ではありません。売却益が出る見込みがある場合ほど効果が大きく、取得費が不明で概算取得費(5%)になりやすい相続不動産では実務上よく使われます。

適用条件チェック:対象物件・期限・売り方の要点

ここが最重要です。要件を一つでも外すと適用できません。国税庁の整理に沿って、実務的にチェックしやすい順にまとめます。

対象となる家屋の要件(古い戸建て・単身居住が基本)

特例対象の「被相続人居住用家屋」は、相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋で、次の要件すべてを満たす必要があります。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記(マンション等)でないこと
  • 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと(同居があると原則対象外)

なお、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等へ入所していた場合でも、一定要件を満たせば対象になり得ます(いわゆる「老人ホーム特例」)。

売却の期限と金額(3年以内・1億円以下)

売却期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです(例:2026年3月10日に相続開始なら、期限は2029年12月31日)。この期限は、相続開始から3年経過年の12月31日までと覚えると整理しやすいでしょう。

また、要件として売却代金が1億円以下であることが必要です。共有で複数回に分けて売る場合は合算判定になるため、後から1億円を超えると修正申告が必要になることがあります。

ここがポイント
実務でのつまずきは「期限」です。相続開始から3年経過年の12月31日と、(売却後に解体/耐震をする場合の)譲渡年の翌年2月15日の2つの締切が並走します。売買契約の時期だけでなく、工事・証明書・申告まで逆算して設計してください。

どんな売り方なら対象になるか(耐震/解体と時期)

売却パターンは大きく3つです。令和6年(2024年)以後は「売却後に買主が解体/耐震」を行うケースも対象に含まれました。

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売却パターン何を売るか工事のタイミングポイント
A. 家屋+敷地を売る(耐震済み)建物と土地売却時点で耐震基準を満たす耐震適合の証明が要る
B. 先に解体して土地を売る土地のみ売却前に取壊し解体後は更地の利用制限に注意
C. 売却後に解体/耐震(令和6年以後)建物と土地(または建物)譲渡後~翌年2月15日までに実施売買契約で特約等の整備が重要

対象外になりやすいケース(賃貸・居住・親族売買)

次のようなケースは、要件を外れやすい代表例です。

  • 相続後に賃貸に出した、事業で使った、誰かが居住した
  • 親子・夫婦など「特別の関係がある人」へ売却した
  • そもそもマンション(区分所有)だった
  • 売却前後のタイミングで要件(耐震/解体、期限)を満たさない

手続きの流れ:確認書取得から確定申告まで(6ステップ)

以下は、税理士法人 辻総合会計が相続不動産の譲渡相談で通常行う、実務順序に沿った流れです。

Step 1: 相続関係を確定し、遺産分割・名義を整理する

共有のまま売却するか、換価分割にするかで契約・入金・申告が変わります。相続人が3人以上なら控除上限が2,000万円になる点も、早期に共有者へ共有しておく必要があります。

Step 2: 物件が「被相続人居住用」に該当するか事前診断する

建築時期(昭和56年5月31日以前)、区分所有でないこと、相続開始直前の居住状況を確認します。老人ホーム入所がある場合は、入所要件と「家屋の一定使用(家財保管等)」の実態確認が重要です。

Step 3: 売却パターン(A/B/C)を決め、解体・耐震・特約を設計する

買主側で解体する場合は、譲渡後に要件を満たせなければ特例が飛びます。特約の文言や工事の期限管理は、売買仲介会社と早めにすり合わせるべき論点です。

Step 4: 市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得する

確定申告の添付書類に必要です。住民票の記載だけで確認できない場合も、代替書類やヒアリングで交付されることがあります。

Step 5: 売買契約・決済(譲渡)を行い、証明書類を揃える

登記事項証明書、売買契約書、耐震基準適合証明書(必要な場合)など、申告添付に必要な証憑を整理します。

Step 6: 翌年の確定申告で特例を適用する

譲渡所得の内訳書(計算明細書)とともに、確認書等を添付して申告します。申告しなければ控除は受けられません。

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必要書類と取得先:チェックリスト

確定申告時の添付書類は、売却形態によって一部変わりますが、基本は次の通りです。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 登記事項証明書等(建築時期、区分所有でないこと、相続取得を確認できるもの)
  • 市区町村長が交付する被相続人居住用家屋等確認書
  • (耐震が要件となる場合)耐震基準適合証明書等
  • (解体した場合)除却を確認できる書類(閉鎖事項証明書、請負契約書等)
  • 売買契約書・領収書、仲介手数料など譲渡費用の証憑
ここがポイント
「確認書」は税務署ではなく市区町村が交付します。交付要件の確認に時間がかかる自治体もあるため、売買契約の直前ではなく、売却方針が固まった段階で申請すると手戻りが減ります。

注意点と実務の論点:失敗を避けるためのポイント

「空き家のまま」ではなく「使っていない」ことが重要

相続後に一時的に誰かが住んだ、短期で貸した、事務所として使った場合でも、要件(事業・貸付・居住に供していない)が崩れる可能性があります。「片付けのために短期滞在した」程度でも、実態次第で判断が分かれ得るため、証拠(電気・水道の使用状況、写真、鍵管理)も含めて慎重に扱ってください。

老人ホーム入所は対象になり得るが、要件が細かい

要介護認定等と施設の種類、家屋の継続保管利用、第三者の居住・賃貸がないことなど、確認ポイントが多岐にわたります。入所期間が長いほど、家屋の管理実態を示す資料の準備が重要になります。

相続人が多いと、税額メリットが想定より小さくなる

令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除上限は2,000万円です。共有での売却では、売却判断の前に各人の譲渡所得の見込み(取得費・譲渡費用・持分)を簡易試算しておくと合意形成がスムーズです。

他の特例との併用関係に注意する

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例など、他制度との併用可否が問題になります。適用関係の整理を誤ると、後から更正の請求や修正申告が必要になることがあります。

よくある質問

Q: 被相続人が配偶者と同居していました。空き家3000万円控除は使えますか? ▼

A:

原則として、相続開始直前に被相続人以外の居住者がいると要件を満たしません。配偶者同居がある場合は対象外となることが多いため、他の譲渡特例(居住用財産3,000万円控除等)や取得費加算の検討が現実的です。
Q: 売却してから買主が解体する予定です。控除を受けられますか? ▼

A:

令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡後から譲渡年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象になり得ます。ただし、買主の協力が前提となるため、売買契約の特約・スケジュール管理が重要です。
Q: 被相続人が老人ホームに入所していました。対象になりますか? ▼

A:

要介護認定等の有無、入所施設の類型、入所後も家屋が家財保管など一定使用に供され、第三者居住・賃貸がないこと等の要件を満たす場合、対象となり得ます。
Q: 確認書はどこで、いつ取ればよいですか? ▼

A:

物件所在地の市区町村で申請し交付を受けます。確定申告で添付するため、売却が決まり次第、遅くとも譲渡年の年内には申請手続きを進めるのが安全です。

まとめ

  • 相続空き家の売却は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例がある
  • 対象は「昭和56年5月31日以前の戸建て」「単身居住」など要件が厳格
  • 期限は相続開始から3年経過年の12月31日、売却後解体/耐震は翌年2月15日が鍵
  • 添付書類の中心は「被相続人居住用家屋等確認書」と譲渡所得の内訳書
  • 共有・老人ホーム・売却後解体などは判断が分かれやすく、事前診断が重要

参照ソース

  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm
  • 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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