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相続・事業承継コラム
作成日:2025.10.19
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続税税務調査の確率と狙われる人|いつ来る?準備チェック

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相続税税務調査の確率と狙われる人|いつ来る?準備チェック

相続税の税務調査とは?実地調査と「簡易な接触」の違い

相続税の税務調査とは、申告内容が適正かどうかを税務署等が確認する手続です。調査には、担当者が自宅等で帳票・通帳・契約書類を確認する「実地調査」と、文書・電話連絡や来署依頼の面談で申告内容の是正を促す「簡易な接触」があります。

結論として、相続税は「申告さえすれば安心」ではなく、申告後も確認の対象になり得る税目です。ただし、全件が調査対象になるわけではありません。税務署は、金融機関照会や資料情報などから、申告漏れが想定される案件を優先して確認します。

ここがポイント
「税務署からの連絡=必ず実地調査」とは限りません。連絡の入口は、照会文書、電話、来署依頼、実地調査の事前連絡など複数あります。連絡の種類を見極め、初動で情報整理することが重要です。

相続税調査でよく見られるポイント

相続税は、現金・預貯金、不動産、株式、保険、貸付金など多様な財産を扱います。調査の観点は概ね次の3つです。

  • 財産の漏れ(そもそも申告していない)
  • 評価の誤り(評価方法や前提の取り違え)
  • 形式と実態の不一致(名義と実質の帰属が違う)

とりわけ名義預金(親の資金を子名義口座に置いている等)や、土地の評価(路線価・形状補正・貸家建付地等)は、ミスも意図せぬ否認も起きやすい領域です。

相続税の税務調査はどれくらいの確率?公表データの読み方

「調査される確率」は、定義によって数字が変わります。そこで、国税庁の公表資料を使い、考え方を整理します。

実地調査の規模感(件数・追徴税額)

国税庁の公表資料(令和5事務年度)では、相続税の実地調査件数は8,556件、追徴税額(本税+加算税)の合計は735億円とされています。実地調査は「やっていない」のではなく「資料情報から絞って実施している」と理解するのが現実的です。

「確率」の目安を出す計算式

厳密に言えば、調査件数(事務年度)と申告件数(年分)は母集団が完全一致しません。とはいえ、概算の目安としては次の式が使えます。

  • 実地調査の目安 = 実地調査件数 ÷ 相続税申告(提出)件数

例えば、令和5事務年度の実地調査件数8,556件を、令和5年分の「相続税の申告書の提出に係る被相続人数」155,740人で割ると、約5.5%です。ここに「簡易な接触」18,781件も含めて同様に割ると約17.6%になります(あくまで年度・対象のズレを含む概算)。

データで見る「実地調査」と「簡易な接触」

公表資料に基づく代表的な指標を並べると、次のとおりです(令和5事務年度)。

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区分件数非違割合(申告漏れ等が見つかる割合)追徴税額(合計)
実地調査8,556件84.2%735億円
簡易な接触18,781件-(非違件数5,079件)122億円
無申告の実地調査690件88.8%123億円

重要なのは、実地調査は「当たるか外れるか」ではなく、当たった場合に高確率で申告漏れ等が指摘されやすい点です。逆に言えば、申告内容が資料情報と整合しており、説明資料が揃っていれば、調査に発展しにくい構造でもあります。

税務調査の対象になりやすい人の特徴

税務署が狙うのは「資産家だけ」ではありません。資産規模よりも、申告内容と資料情報のギャップ(不自然さ)が強い案件が優先されます。よくある特徴を、実務の観点で整理します。

1) 現金・預貯金の動きが大きい(名義預金・タンス預金)

相続開始前後で多額の出金・移動がある場合、資金の帰属(誰の財産か)と使途が確認されやすくなります。特に、子や孫名義口座に資金が積み上がっている場合は、「名義は子でも実質は被相続人」と判断されやすい典型です。

2) 生前贈与の記録が弱い(贈与契約書・通帳の整合性)

贈与は「渡した・もらった」の合意と、移転の事実が重要です。贈与契約書がない、毎年同額・同時期に動く、受贈者が管理していないなどは、贈与の否認や名義預金の認定につながります。

3) 不動産評価に裁量がある(形状・利用区分・貸借関係)

土地評価は、形状補正、奥行価格補正、間口狭小補正、利用区分(自用・貸家建付地等)など、前提の置き方で金額が変わります。評価根拠(図面、賃貸借契約、現況写真等)が薄い申告は、再評価(増額)の対象になりやすいです。

4) 非上場株式・同族会社が絡む(株価評価・貸付金・役員貸付)

非上場株式は、類似業種比準方式や純資産価額方式など評価が複雑です。また、会社への貸付金、役員借入金、生命保険の名義など、法人側資料も含めて整合が見られます。

5) 海外資産・海外送金がある(口座・証券・不動産)

海外口座、海外証券、海外不動産などは、資料情報に基づく調査対象になりやすい領域です。海外資産は「申告していれば終わり」ではなく、評価・換算・保有実態の説明が求められます。

税務調査はいつ来る?連絡のタイミングと期間の目安

「いつ来るか」は一律ではありませんが、実務上は次の流れで考えると整理できます。

  • 相続税の申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内
  • 申告期限後、資料情報の整理・照会が進み、連絡が入る
  • 連絡の形は、電話、文書、来署依頼、実地調査の事前連絡など

一般的には、申告から1年〜2年程度で動き出すケースが多い一方、案件によってはより早いことも、数年後に来ることもあります。調査に備えるというより、申告後も「説明できる状態」を維持するのが現実的です。

ここがポイント
税務署職員を名乗る不審電話や詐欺もあります。個人情報や口座情報を求める連絡が来た場合は、折り返し先を公式番号で確認し、安易に応じないよう注意してください。

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税務調査が来たときの対応手順(準備チェックリスト)

調査対応は「慌てない」「書類を揃える」「説明を一貫させる」が基本です。次の手順で進めると、リスクを抑えやすくなります。

Step 1: 連絡内容を整理する(調査種別・対象年分・対象者)

電話の場合は、担当部署、担当者名、用件、求められている資料、期限をメモします。実地調査か、簡易な接触かで準備量が変わります。

Step 2: 申告書・財産目録・評価資料を「再現」できる形にする

申告書一式、財産評価の根拠、計算過程を、第三者が見ても追える形にまとめ直します。特に、不動産評価は、路線価図・倍率表・現況・補正理由をセットで整理します。

Step 3: 通帳・残高証明・入出金明細で資金の流れを説明できるようにする

被相続人と相続人の口座を、相続開始前後で横断的に見て、資金移動の理由と使途を説明できるようにします。名義預金が疑われるなら、管理主体(印鑑・通帳保管・意思決定)を整理します。

Step 4: 生前贈与・保険・貸付金など「よく争点になる論点」を点検する

贈与契約書、保険契約者・被保険者・受取人、会社貸付金の残高、未収配当、立替金などを確認します。形式と実態がズレる箇所は、説明方針を揃えます。

Step 5: 税理士に同席依頼し、当日の説明窓口を一本化する

同席の有無で心理的負担と説明の一貫性が変わります。税理士法人 辻総合会計のような相続実務に強い専門家に、論点整理と資料の出し方を事前に相談しておくと、対応の質が上がります。

よくある質問

Q: 相続税の税務調査で必ず追徴されますか? ▼

A:

必ずではありません。ただし、実地調査は申告漏れが想定される案件を中心に実施されるため、結果として申告漏れ等が指摘される割合は高くなりやすい傾向があります。まずは申告内容を再現できる資料を揃え、事実関係を丁寧に説明することが重要です。
Q: 税務調査の連絡が来たら、資料は全部すぐ提出すべきですか? ▼

A:

いいえ。求められた資料の範囲と目的を確認し、提出物を整理してから対応するのが安全です。誤って不要な資料まで提出すると、別論点が広がることもあります。提出前に控えを取り、提出一覧を残しましょう。
Q: 名義預金と判断されないために、今からできることは? ▼

A:

口座の管理主体(通帳・印鑑の保管、入出金の意思決定)を明確にし、贈与であれば贈与契約書の作成と、受贈者が実際に管理している状態を作ることが基本です。状況により最適解は異なるため、早めに専門家へ相談してください。

まとめ

  • 相続税の調査は「実地調査」と「簡易な接触」があり、全件ではなく絞り込みで行われる
  • 「確率」は定義次第だが、公表データから概算の目安を計算できる(実地調査は約5.5%の目安)
  • 狙われやすい特徴は、名義預金、生前贈与の記録不足、不動産評価の裁量、非上場株式、海外資産など
  • いつ来るかは案件次第だが、申告後も説明可能な資料状態を維持することが重要
  • 初動は連絡内容の整理、申告の再現、資金移動の説明準備、窓口一本化が有効

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な税務判断を示すものではありません。事案の状況により結論は異なりますので、税理士等の専門家にご相談ください。


参照ソース

  • 国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況(PDF)」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
  • 国税庁「令和5年分 相続税の申告事績の概要(PDF)」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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