
執筆者:辻 勝
会長税理士
相続税税率は最大55%|速算表と試算方法を税理士が解説

はじめに:相続税税率は最大55%でも「そのまま掛かる」わけではありません
相続税の税率は最大55%ですが、相続財産の総額にいきなり55%を掛ける計算ではありません。悩ましいのは、預金・不動産・保険金などを合算した後に基礎控除や債務控除等を反映し、さらに法定相続分で按分して課税遺産総額を段階的に計算する点です。税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり相続・承継の相談を多数受けてきましたが、「税率は知っているのに税額の見当がつかない」という声は非常に多いです。本記事では、速算表と試算例で計算の全体像をつかめるように整理します。
相続税 税率とは:最大55%の意味と「実効税率」の考え方
相続税の税率(10%〜55%)は、相続税の総額を求める過程で「法定相続分に応ずる取得金額」に当てはめるものです。つまり、遺産総額に直接税率を掛けるわけではなく、(1)基礎控除を引いた後の課税遺産総額を、(2)法定相続分で仮に分け、(3)各人の金額に税率を適用して合計する、という流れになります。国税庁もこの計算構造を明示しています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
ここで重要なのが「実効税率」です。最高税率55%は上の階層部分に適用される税率であり、課税遺産総額の全体に55%が掛かるケースは限定的です。例えば、課税遺産総額が同じでも相続人の構成(配偶者がいるか、子が何人か)で按分結果が変わり、税率階層も変わります。
相続税 速算表:税率と控除額一覧(国税庁)
相続税の計算で使う相続税の速算表(税率・控除額)は次のとおりです。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
速算表は「税率」だけでなく「控除額」までセットで使います。例えば、法定相続分に応ずる取得金額が7,600万円なら、30%と700万円控除で計算します(国税庁の例示でも同様です)。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
相続税の計算手順:課税遺産総額から納付税額まで
相続税は、国税庁が示す計算フローに沿って進めると迷いにくくなります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
Step 1: 正味の遺産額を把握する(課税価格の合計額)
預金・有価証券・不動産・死亡保険金等を合算し、非課税財産を除外し、債務・葬式費用等を差し引いて正味の遺産額を出します。相続税がかかるかどうかの入口は「正味の遺産額が基礎控除を超えるか」です。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
Step 2: 基礎控除を差し引き、課税遺産総額を出す
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
課税遺産総額=課税価格の合計額−基礎控除額、という形で計算します。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
Step 3: 課税遺産総額を法定相続分で按分し、速算表を当てはめる
各法定相続人の「法定相続分に応ずる取得金額」に速算表を当てはめ、算出税額を合計して相続税の総額を求めます。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
Step 4: 相続税の総額を、実際の取得割合で配分する
相続税の総額を、各人の課税価格に応じて割り振り、各人の税額を計算します。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
Step 5: 税額控除(配偶者軽減など)を差し引き、納付税額を確定する
代表例が配偶者の税額軽減です。配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない仕組みです。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
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相続税 計算 シミュレーション:3つのケースで税額の目安を試算
以下は「概算をつかむ」ためのシミュレーションです(財産評価、非課税枠、特例、各種控除の有無で結果は変動します)。
| ケース | 法定相続人 | 正味の遺産額 | 基礎控除 | 課税遺産総額 | 相続税の総額(概算) |
|---|---|---|---|---|---|
| A:配偶者+子2人 | 3人 | 1億5,000万円 | 4,800万円 | 1億200万円 | 約1,495万円 |
| B:子1人(単独相続) | 1人 | 8,000万円 | 3,600万円 | 4,400万円 | 約680万円 |
| C:子2人(高額資産) | 2人 | 15億円 | 4,200万円 | 14億5,800万円 | 約6億5,790万円 |
ケースA:配偶者+子2人、正味の遺産額1億5,000万円(概算)
- 法定相続人:3人(配偶者1人、子2人)
- 基礎控除:3,000万円+600万円×3人=4,800万円(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 課税遺産総額:1億5,000万円−4,800万円=1億200万円
法定相続分(配偶者1/2、子は各1/4)で按分すると、
- 配偶者:5,100万円
- 子:2,550万円×2人
速算表で計算(控除額も使用)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- 配偶者:5,100万円×30%−700万円=830万円
- 子:2,550万円×15%−50万円=332.5万円(×2=665万円)
よって相続税の総額(概算)は 830万円+665万円=約1,495万円。
なお、配偶者が実際に取得した財産が1億6,000万円以下等の範囲なら、配偶者の税額は軽減で0になり得ます(要申告・要分割確定)。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
ケースB:子1人、正味の遺産額8,000万円(概算)
- 法定相続人:1人
- 基礎控除:3,000万円+600万円×1人=3,600万円 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 課税遺産総額:8,000万円−3,600万円=4,400万円
- 法定相続分に応ずる取得金額:4,400万円(100%)
速算表:3,000万円超〜5,000万円以下(20%、控除200万円)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
4,400万円×20%−200万円=680万円(概算)
ケースC:子2人、正味の遺産額15億円(概算)— 55%が出てくる場面
- 法定相続人:2人
- 基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 課税遺産総額:15億円−4,200万円=14億5,800万円(=145,800万円)
- 法定相続分:子が各1/2 → 72,900万円ずつ(=7億2,900万円)
速算表:6億円超(55%、控除7,200万円)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
各子:72,900万円×55%−7,200万円=32,895万円
相続税の総額:32,895万円×2=65,790万円(=約6億5,790万円)
このケースで初めて「55%」の階層が登場します。ただし、55%が課税遺産総額の全てに掛かるのではなく、法定相続分で按分した上位部分に適用される点がポイントです。
税率だけでは決まらない注意点:贈与加算・申告期限・配偶者軽減
税率・速算表を押さえたうえで、実務では次の論点で税額が動きます。
- 生前贈与の加算(暦年課税):相続開始前の一定期間内の贈与が相続税の課税価格に加算され得ます。国税庁の解説では、相続開始日が令和8年12月31日以前の場合は「相続開始前3年以内」が一つの基準として示されています(制度の適用関係は個別確認が必要です)。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 申告・納税期限:相続税がかかる場合、原則として「死亡を知った日の翌日から10か月以内」に申告・納税が必要です。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 配偶者の税額軽減:取得額が一定範囲内なら配偶者の税額が大きく下がる(または0になる)一方、申告や分割確定が要件になります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
相続税の概要は政府広報オンラインでも整理されています。制度全体像の確認に有用です。https://www.gov-online.go.jp/article/202407/entry-6250.html
よくある質問
Q: 相続税の税率が55%なら、遺産の半分以上が税金になりますか?
Q: 速算表は、実際に分けた金額に当てはめるのですか?
Q: 配偶者がいれば相続税は必ず0になりますか?
Q: 概算で試算したいとき、最初に見るべき数字は何ですか?
まとめ
- 相続税の税率は最大55%だが、遺産総額に直接55%を掛ける計算ではない
- 計算は「正味の遺産額→基礎控除→課税遺産総額→法定相続分→速算表」で進む
- 速算表は税率だけでなく控除額もセットで使用する
- 配偶者の税額軽減などの控除で納付税額が大きく変わる(要件・申告に注意)
- 生前贈与の加算や申告期限(10か月)も含め、早めの全体設計が重要
参照ソース
- 国税庁「No.4155 相続税の税率」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
- 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
- 政府広報オンライン「相続税はいくらから?基礎控除とは?」: https://www.gov-online.go.jp/article/202407/entry-6250.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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