
執筆者:辻 勝
会長税理士
相続税計算の方法とシミュレーション例【2026年版】|税理士が解説

相続税計算とは?結論と全体像
相続税の計算は、「財産合計に税率を掛ける」だけではありません。結論として、基礎控除で課税対象を絞り、いったん法定相続分で仮計算して総額を出し、最後に実際の分割割合に振り分けて控除を適用する流れです。基礎控除の式(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は国税庁が明示しています。
「自分で概算したいが、手順が多くて途中で不安になる」方は少なくありません。税理士法人 辻総合会計でも、まずは家族で大枠を共有するために、簡易シミュレーションを作るケースが多いです。以下では、相続税 計算方法を自分で再現できるよう、計算順と具体例をセットで解説します。
相続税の計算方法:自分でできる7ステップ
相続税 計算 自分で行う場合は、順番が最重要です。国税庁の「相続税の計算」が示す骨格に沿って、実務で使える形に並べ替えます。
Step 1: 法定相続人の数を確定する
戸籍で相続人を確定し、相続放棄があっても「基礎控除の計算上は放棄がなかったもの」とする点に注意します(法定相続人の数の考え方は国税庁の解説に沿います)。
Step 2: 財産を洗い出し、相続税評価で金額化する
預金・有価証券・不動産・事業用資産・生命保険金(みなし相続財産)などを整理します。不動産評価は路線価・倍率方式等で評価するため、ここがブレると全体が崩れます。
Step 3: 債務・葬式費用など控除できるものを差し引く
ローン残高、未払金、葬式費用などを差し引き「正味の遺産額」を作ります。
Step 4: 基礎控除を差し引き、課税遺産総額を出す
課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)です。
ここでマイナスなら申告・納税は原則不要になります。
Step 5: 法定相続分で按分し、税率(速算表)で仮計算する
課税遺産総額を法定相続分で分け、相続税の速算表に当てはめて各人の算出税額を出し、合計して「相続税の総額」を作ります。税率表は国税庁が公開しています。
Step 6: 実際の分割割合で総額を振り分ける
相続税の総額を、各人の課税価格割合で按分します(法定相続分どおりに分けた場合とズレるのが通常です)。
Step 7: 各種税額控除・加算を反映し、納付税額を確定する
配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除等を差し引きます。配偶者の税額軽減は「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」まで実質的に相続税がかからない制度として整理されています。
相続税の速算表(抜粋)
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【具体例】相続税シミュレーション(配偶者+子2人)
ここでは、相続税 シミュレーションとして、現実に近い数字で一連の流れを再現します(端数処理は理解優先で概算)。
前提(相続人と財産)
- 相続人:配偶者1人、子2人(法定相続人3人)
- 財産(相続税評価ベース)
- 自宅土地建物:8,000万円
- 預金:4,500万円
- 上場株式:1,000万円
- 死亡保険金:1,200万円(受取人は相続人)
- 債務・葬式費用:合計1,000万円
1) 死亡保険金の非課税枠を確認
相続人が受け取る死亡保険金には、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)があり、超える部分だけが課税対象です。
法定相続人3人なので非課税限度額は1,500万円。死亡保険金1,200万円は全額非課税枠内のため、課税対象は0円(概算)とします。
2) 課税価格の合計額(正味の遺産額)を計算
課税対象になり得る財産の合計:8,000+4,500+1,000=1億3,500万円
債務・葬式費用控除:▲1,000万円
よって課税価格の合計額(正味の遺産額):1億2,500万円
3) 基礎控除を差し引き、課税遺産総額を計算
基礎控除=3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税遺産総額=1億2,500万円-4,800万円=7,700万円
4) 法定相続分で按分して仮計算
法定相続分:配偶者1/2、子は各1/4
- 配偶者:7,700×1/2=3,850万円
- 子:7,700×1/4=1,925万円(各)
速算表で税額を算出(概算)
- 配偶者:3,850万円×20%-200万円=570万円
- 子:1,925万円×15%-50万円=約238.75万円(各)
相続税の総額=570+238.75×2=約1,047.5万円
5) 実際の分割割合で総額を振り分け
実際の分割(例):配偶者6,000万円、子A3,500万円、子B3,000万円(合計1億2,500万円)
按分税額(概算)
- 配偶者:1,047.5×6,000/12,500=約502.8万円
- 子A:1,047.5×3,500/12,500=約293.3万円
- 子B:1,047.5×3,000/12,500=約251.4万円
6) 配偶者の税額軽減を反映
配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までなら、配偶者の相続税はかからない(軽減)と整理されています。
本例の配偶者取得6,000万円は範囲内のため、配偶者の納付税額は0円(概算)。結果として、家族全体の納税は子の合計(約544.7万円)が目安になります。
【比較】法定相続分での仮計算と実際の分割の違い
相続税の計算が難しく感じる最大の理由は、「仮計算(法定相続分)」と「実際の分割(遺産分割協議)」が二段階で出てくる点です。
| 観点 | 法定相続分での仮計算 | 実際の分割(協議・遺言) |
|---|---|---|
| 目的 | 相続税の総額を算出するため | 各人の納付税額を配分するため |
| 使う割合 | 民法の法定相続分 | 実際に取得する割合(合意内容) |
| よくある誤解 | 実際の取得額に税率を掛ける | 「仮計算の税額=その人の税額」と思い込む |
| 影響する論点 | 税率(速算表)、相続人の数 | 配偶者軽減、2割加算、控除の適用可否 |
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計算でつまずきやすい注意点(よくある落とし穴)
相続税の計算は、入力ミスが「申告要否」そのものを逆転させることがあります。特に以下は、当法人の相談でも頻出です。
- 生命保険金の非課税限度額:相続人が受取人の場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税枠で、超える部分が課税対象です。
- 不動産評価:路線価評価・倍率方式、貸家建付地、借地権などで大きく変動します。概算では「評価のズレ」を前提に幅を持たせてください。
- 生前贈与の加算:一定期間内の贈与が課税価格に加算される場合があります(制度改正により期間が延びる論点もあるため、相続開始時期で整理が必要です)。
- 2割加算:配偶者・一親等以外(兄弟姉妹、おい・めい等)には税額の2割加算があり、孫養子などで例外論点も出ます。
- 二次相続:配偶者軽減で一次相続の税負担を抑えても、配偶者の死亡時に税負担が増える設計になりやすく、家族構成と資産の偏りを踏まえた設計が重要です。
申告・納税までの流れと期限(10か月)
相続税は、計算だけでなく期限管理が実務の山場です。国税庁は、申告が「死亡を知った日の翌日から10か月以内」と明示しています。
- 期限までにやること:相続人確定、財産評価、遺産分割協議、申告書作成、納税(または延納・物納の検討)
- 提出先:原則として被相続人の住所地を所轄する税務署
- 提出方法:e-Tax(電子申告)または郵送等(国税庁の案内に沿って選択)
よくある質問
Q: 相続税の計算は自分でどこまでできますか?
Q: 生命保険金は相続税がかかりますか?
Q: 配偶者が相続すれば相続税は必ず0ですか?
Q: 申告期限の10か月を過ぎるとどうなりますか?
まとめ
- 相続税の計算は「基礎控除→法定相続分で仮計算→実分割へ配分→控除反映」の順で行う
- 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、課税遺産総額を作るのが第一歩
- 税率は速算表を使い、いったん法定相続分で総額を算出するのがポイント
- 配偶者の税額軽減や生命保険金の非課税枠など、控除・非課税の適用で税額が大きく変わる
- 申告期限は原則10か月。評価と分割のスケジュール管理が成否を分ける
参照ソース
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁「No.4155 相続税の税率」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
- 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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