
執筆者:辻 勝
会長税理士
山林の相続税評価と立木計算方法|税理士が解説

山林・立木を相続したときの評価は「土地」と「木」を分けて考えます
山林を相続した場合の相続税評価は、原則として「山林(土地)」と「立木(樹木)」を別々の財産として評価します。つまり、固定資産税評価額のように一体で捉えるのではなく、「土地としての山林」と「その上の立木(森林の樹木)」に分解して評価し、合算するのが基本です。
この分解ができていないと、立木の計上漏れ(過少申告)または二重計上(過大評価)になりがちです。山林は都心の土地ほど単価が高くない一方で、立木は条件次第で評価額が大きく振れます。誰にとって何が問題かというと、相続人にとっては「評価の根拠資料が揃えにくく、税額の見通しが立ちにくい」点が最大のハードルになります。
山林の相続税評価とは(山林 相続税評価)
山林(=土地)は「山林」として評価区分がある
相続税・贈与税の評価は、国税庁の財産評価基本通達に従って進めます。山林は宅地とは別に「山林」として評価の章立てがあり、山林の態様(自用地、借地権・地役権等が絡むケース)に応じて評価関係が整理されています。まずは「その土地は何として評価するか(宅地ではなく山林か)」を確定させるところが出発点です。
実務で使う情報(最低限)
山林(土地)の評価を進める際、当法人で最低限そろえることが多いのは次の情報です。
- 所在地・地番、地積(登記簿・公図)
- 現況(航空写真、現地写真、境界の状況)
- 林道や公道への接続、傾斜、搬出のしやすさ
- 伐採・造林の履歴、管理状況(分かる範囲で)
山林は個別性が強く、いわゆる「一律の相場」で押し切ると否認リスクが上がります。評価単位(どこまでを一団地とみるか)と、利用制約(崖地・岩石地等の不利用地の扱い)を丁寧に切り分けるのが実務の肝です。
立木の評価方法(立木 相続)と計算の全体像
立木は「標準価額 × 補正 × 面積」が基本線
森林の主要樹種(代表例として杉・ひのき)の立木は、通達上、標準価額表等に基づく「標準価額」を起点に、森林の状況に応じた補正(地味級・立木度・地利級など)を掛け合わせ、最後に地積を掛けて算定する枠組みです。
要点は、立木評価は「木材価格そのもの」ではなく、通達の標準価額と補正で評価を組み立てるという点です。ここを理解すると、見積りの精度が大きく上がります。
- 標準価額(樹種・樹齢・地域単位で定まる考え方)
- 補正(地味級:地力、立木度:密度、地利級:搬出の便否など)
- 面積(不利用地があれば除外して森林の地積を確定)
立木評価は「樹齢・樹種・立木度・地利」の把握が難所です。現地調査や森林簿(市町村・県が把握する資料)等を用いて、根拠のある区分に落とし込むことが重要です。
「主要樹種以外」「庭木」「単木」の考え方
通達上、森林の主要樹種(杉・ひのき)とそれ以外、さらに庭園の立木や単木で評価単位が異なります。山林一帯が人工林(杉・ひのき中心)なのか、雑木林なのか、庭先の樹木なのかで評価アプローチは変わります。
相続で多いのは「山林(森林の立木)」ですが、屋敷林や境界木が混在するケースもあるため、まずは現況で区分してから評価に入ります。
山林(土地)と立木の違いがわかる比較表
| 項目 | 山林(=土地) | 立木(=樹木) |
|---|---|---|
| 財産の性質 | 不動産(土地) | 動産的性格をもつ独立財産として扱う |
| 評価の基本 | 山林としての評価区分・利用状況に基づく | 標準価額と補正(地味級・立木度・地利級等)×面積 |
| 実務の難所 | 評価単位、境界、現況(不利用地等) | 樹種・樹齢・密度・搬出条件の立証 |
| ありがちなミス | 宅地評価と混同、地積の取り違え | 立木の計上漏れ、補正の根拠不足 |
「山林=土地」だけで申告してしまうのが典型的な失敗です。森林としてまとまった立木がある場合、立木は別財産として評価対象になり得ます。
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山林 相続 手続きの流れ(申告までのステップ)
Step 1: 財産の棚卸し(山林と立木を分ける)
登記簿で土地を把握し、現況で「山林(森林)」かどうか、立木が一団地として存在するかを整理します。境界不明・共有・遠隔地はここで詰まりやすいので、早期に現地写真や地図資料を集めます。
Step 2: 評価資料の収集(根拠を固める)
山林:所在地・地積・現況・接道等。
立木:樹種、樹齢レンジ、立木度、搬出条件(地利)など、補正に関わる情報を集めます。
Step 3: 評価の組み立て(通達の枠内で合理化)
山林(土地)の区分に応じた評価 → 立木の標準価額を起点に補正 → 合算。
この段階で、評価が大きくなりそうなら、遺産分割や納税資金(延納・物納の検討を含む)も並行して検討します。
Step 4: 相続登記と申告実務の整合
相続税申告と登記は別手続ですが、実務では「誰が相続するか」の確定が資料整備の前提になります。なお、相続登記は制度上、一定期間内の申請が義務化されています(詳細は法務省案内参照)。期限管理が難しい場合は、登記と申告を同時並行で進める設計が安全です。
Step 5: 申告書への落とし込み(評価明細・添付資料)
山林・立木は評価明細の作り方が独特です。評価の前提(評価単位、除外地積、補正の根拠)を文章・資料で残し、税務調査でも説明できる形にして提出します。
税理士が現場でよく見る「評価が揉めるポイント」
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、山林・立木の評価相談は「資料が少ない」「現地に行けない」「共有で決まらない」の3点セットが多い印象です。特に揉めやすいのは次の論点です。
- 評価単位:隣接地でも管理・樹種・樹齢が違えば分けるべきか
- 不利用地:岩石地・崩落地・急傾斜で実質使えない部分の扱い
- 補正の根拠:地利級(搬出)を「感覚」で決めてしまう
- 売却予定の有無:売るつもりでも、評価は通達の枠組みで合理化が必要
よくある質問
Q: 山林を相続したのですが、固定資産税評価額のまま相続税評価に使えますか?
Q: 立木は必ず評価しないといけませんか?
Q: 山林の相続で手続き上、最初に何をすべきですか?
Q: 樹齢や立木度が分からないときはどうしますか?
まとめ
- 山林の相続税評価は「山林(土地)」と「立木(樹木)」を分けて合算するのが基本
- 立木は標準価額を起点に、地味級・立木度・地利級などの補正を掛けて面積で算定する枠組み
- 実務の難所は、評価単位(団地の区分)と、補正の根拠資料の整備
- 「立木の計上漏れ」「補正が説明できない」が調査リスクになりやすい
- 相続登記や遺産分割の進行と、評価・申告を同時並行で設計すると事故が減る
参照ソース
- 国税庁「第4節 山林及び山林の上に存する権利」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/10.htm
- 国税庁「第2節 立竹木」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/05/02.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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