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相続・事業承継コラム
作成日:2025.01.28
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続した実家売却の税金|3,000万円控除を税理士が解説

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相続した実家売却の税金|3,000万円控除を税理士が解説

相続した実家を売却するときの税金は、基本的に「売却益(譲渡所得)」に対してかかります。一方で、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける「空き家の特例(被相続人の居住用財産の特別控除)」が使えることがあります。ポイントは、建築年・相続後の利用状況・売却期限・耐震/解体の要件を外さないことです。

相続した実家を売却すると税金はどう決まる?

土地や建物を売ったときの所得は、給与などとは分けて計算する「申告分離課税」です。税金の対象になる譲渡所得は、次の考え方で算出します。

  • 譲渡所得 = 売却代金(収入金額)-(取得費+譲渡費用)- 特別控除

取得費は購入代金や購入手数料、改良費などで、建物部分は減価償却相当額を控除して計算します。取得費が分からない場合など、実務では「概算取得費(売却代金の5%)」になるケースもあり、税額が想定以上に大きくなる原因になります。

税率は所有期間で変わります(売った年の1月1日時点で判定)。

  • 長期(5年超):所得税15%+住民税5%(復興特別所得税は別途)
  • 短期(5年以下):所得税30%+住民税9%(復興特別所得税は別途)

相続した実家の売却は長期に該当することが多いものの、権利関係の整理が遅れて期限を過ぎると、控除が使えず税負担だけが残ることがあります。

3,000万円特別控除(空き家特例)とは|適用条件の全体像

ここでいう3,000万円控除は、いわゆる「マイホーム(自分の居住用財産)」ではなく、被相続人の居住用財産(空き家)の特例です。国税庁(タックスアンサーNo.3306)では、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象とされています。

対象となる家屋の要件(建築年・非区分所有・単独居住)

特例の対象となる「被相続人居住用家屋」は、概ね次の要件を満たす必要があります。

  • 昭和56年5月31日以前に建築
  • 区分所有建物登記(マンション等)でない
  • 相続開始直前に、被相続人以外の居住者がいない

なお、被相続人が要介護等で老人ホームに入所していた場合でも、別途要件を満たせば対象になり得ます(詳細は国税庁の関連解説で確認します)。

相続後の「使い方」が重要(貸す・住む・事業利用は要注意)

売却までの間に、相続人が実家をどう扱ったかが適用可否を左右します。原則として、相続から譲渡までの間に

  • 貸付け(賃貸)
  • 居住(相続人が住む)
  • 事業利用(事務所・倉庫など)

に供していると要件を外れやすく、控除の前提が崩れます。

ここがポイント
「売るまでの間だけ短期で貸す」「荷物置き場として事業に使う」などは、意図せず適用不可になる典型例です。売却方針が固まっている場合は、相続後の利用を設計してから動くのが安全です。

売却期限・売却価額(1億円)・相続人が多い場合の上限

適用には、次の期限・金額要件もあります。

  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が1億円以下(分割売却や他の相続人の売却分も合算判定になるケースあり)

さらに、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合、控除上限が2,000万円になります(3,000万円ではありません)。

令和6年以後の実務ポイント(譲渡後の耐震・解体でも間に合う)

従来は、譲渡時点で耐震基準を満たすこと等が求められ、売却前に工事・解体を済ませる必要がありました。令和6年1月1日以後の譲渡では、一定の場合に限り、譲渡後(譲渡年の翌年2月15日まで)に

  • 耐震基準を満たすこととなる(耐震改修)
  • または家屋の全部の取壊し等(解体)

を行えば要件を満たせる枠が明確化されています。売却スケジュールに柔軟性が出る一方、期限管理がシビアになる点は注意が必要です。

3,000万円特別控除と「他の特例」の違い|併用可否に注意

相続不動産の売却では、空き家特例のほかに「マイホームの3,000万円控除」や「取得費加算の特例」などが論点になります。特に、空き家特例は他の特例と併用できないものがあるため、選択の優先順位を整理しておくと判断が速くなります。

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制度概要主な対象併用の注意
空き家の3,000万円特別控除譲渡所得から最大3,000万円控除(条件により2,000万円)相続した被相続人の旧居(空き家)取得費加算など他特例と併用不可の場合あり
マイホームの3,000万円特別控除自分の居住用財産の譲渡益から最大3,000万円控除自宅を売る本人適用要件が別(居住実態等)
取得費加算の特例相続税の一部を取得費に上乗せして譲渡益を圧縮相続財産を一定期間内に譲渡空き家特例の適用要件に「取得費加算等を受けていないこと」がある

「どれが得か」は、譲渡益の見込み、相続税の有無・額、売却期限、相続人の数で変わります。税理士法人 辻総合会計でも、売却前に概算シミュレーションを行い、空き家特例を狙うのか、取得費加算を採るのかを比較して方針を固めるケースが多いです。

手続きの流れ|売却前にやるべきこと(実務チェックリスト)

空き家特例は「売った後に気づいても間に合わない」論点が多いため、段取りが重要です。

Step 1: 適用可否の一次判定をする

  • 建築年が昭和56年5月31日以前か
  • 区分所有(マンション等)ではないか
  • 相続直前に同居人がいないか
  • 相続後に貸付け・居住・事業利用に供していないか
  • 売却期限(相続開始から3年超の年末)に間に合うか

Step 2: 耐震改修か解体か、スケジュールを決める

  • 譲渡時点で耐震基準を満たす必要があるか
  • 令和6年以後の譲渡なら、譲渡後(翌年2月15日まで)の改修・解体で要件充足できる枠に当たるか
  • 解体費用・工期・近隣対応を織り込めるか

Step 3: 市区町村の「確認書」を取得する

確定申告では、市区町村長が交付する被相続人居住用家屋等確認書の添付が求められます。早めに役所へ相談し、必要書類(住民票除票・戸籍の附票、登記事項など)を整えます。

Step 4: 売却契約・引渡し(1億円判定も含めて管理)

共有での分割売却や、他の相続人が持分を別途売る場合、1億円判定が合算になることがあります。後日合計が1億円を超えると、修正申告が必要になるケースもあるため、売却計画は相続人間で共有します。

Step 5: 確定申告で特例を適用する

確定申告書に加え、譲渡所得の内訳書(計算明細書)や登記事項証明書、確認書などを添付して申告します。譲渡所得の計算自体(取得費・譲渡費用の整理)が崩れると、控除以前に税額がズレるため、領収書・契約書は一式保管します。

ここがポイント
相続不動産の売却は「相続手続(遺産分割・登記)」と「譲渡所得の申告」が同時並行になりがちです。期限がある特例は、売却方針と登記スケジュールを先に固定すると事故が減ります。

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よくある落とし穴|適用不可・税額増加を招くポイント

  • 相続後に一時的に賃貸へ出してしまい、「貸付けの用」に該当してしまう
  • 共有の一部を先に売り、後続売却を含めると1億円超になって修正申告が必要になる
  • 取得費資料が見つからず概算取得費(5%)になり、譲渡益が膨らむ
  • 耐震改修・解体を「翌年2月15日まで」に終える前提で動き、工期遅延で要件を落とす
  • 相続人が3人以上で、控除が3,000万円ではなく2,000万円上限だったことに後から気づく

例として、兄弟3人で実家を相続し、売却益が大きいケースでは「2,000万円上限」を前提に資金計画(納税資金・手取りの分配)を設計しないと、決済後に資金繰りが詰まることがあります。

よくある質問

Q: 相続した実家に、売るまでの間だけ住んでも大丈夫ですか? ▼

A:

空き家特例では、相続から譲渡までの間に「居住の用」に供していないこと等が要件になる場面があります。短期間でも居住実態があると要件を外す可能性があるため、売却前に適用可否を確認したうえで判断してください。
Q: 売却前に必ず解体しないと3,000万円控除は使えませんか? ▼

A:

ケースによります。譲渡時点で耐震基準を満たすこと等が求められる類型がある一方、令和6年1月1日以後の譲渡では、一定の場合に限り、譲渡後(譲渡年の翌年2月15日まで)に耐震改修や解体を行うことで要件を満たす枠が示されています。契約条件と工期を含めて計画してください。
Q: 空き家特例と取得費加算の特例は両方使えますか? ▼

A:

原則として併用できません。空き家特例の要件として「取得費加算の特例など他の特例の適用を受けていないこと」が挙げられています。譲渡益、相続税額、期限を踏まえて、どちらが有利かを試算して選択します。
Q: 相続人が複数いる場合、3,000万円控除はどう分けられますか? ▼

A:

控除の上限や適用の可否は、譲渡の形態や相続人の数(令和6年以後は3人以上で2,000万円上限)などにより影響を受けます。共有持分の譲渡、同一年内の売却の整理も必要になるため、売却前に設計することをお勧めします。

まとめ

  • 相続した実家の売却税金は、売却益(譲渡所得)に対する申告分離課税が基本
  • 空き家の3,000万円特別控除は、建築年・居住状況・相続後の利用・期限など要件が多い
  • 令和6年以後は、相続人が3人以上だと上限2,000万円、譲渡後の耐震/解体で要件充足できる枠もある
  • 1億円判定の合算や、相続後の賃貸・居住で適用不可になる落とし穴に注意
  • 空き家特例と取得費加算などは併用できないことがあるため、売却前の試算が重要

参照ソース

  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
  • 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
  • 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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