
執筆者:辻 勝
会長税理士
実家相続後どうする?売却・賃貸・居住の税金と手続き|税理士が解説

実家相続後にまず整理すべき結論
実家を相続したら、結論として「売る・貸す・住む」のどれかを早めに決めるのが合理的です。特に、相続人が複数いるご家庭では、共有名義のまま意思決定が止まり、維持費だけが積み上がることが問題になりがちです。税金面でも、手続きの期限(相続登記・相続税申告)を過ぎるとコストと手間が増えます。税理士法人 辻総合会計では、相続後の不動産に関するご相談を継続的に受けており、まずは「期限」「名義」「利用方針」を同時に整理することを推奨しています。
まず迷ったら、次の3点で判断してください。
- 近い将来に現金化が必要か(納税・介護費・相続人間の清算)
- 実家を利用する具体的な人がいるか(居住・二拠点・事業利用)
- 維持管理を継続できるか(固定資産税、修繕、見回り、近隣対応)
実家相続で最初に必要な手続き
相続後の実務は「戸籍・遺産分割・名義変更・申告」の順で進むと混乱が減ります。売却や賃貸の前に、誰が所有者になるかを確定させることが先決です。
Step 1: 相続人と遺産分割方針を確定する
戸籍で相続人を確定し、遺言書の有無を確認します。遺産分割協議を行う場合は、実家を「誰が取得するか」「代償金を払うか」まで決めると後戻りが減ります。
Step 2: 相続登記(名義変更)を申請する
不動産の名義が被相続人のままだと、売却・担保設定・賃貸の一部手続きが進みにくくなります。相続登記は制度上の義務化が進んでおり、期限管理が重要です。
Step 3: 相続税の申告要否を判定する(期限は10か月)
相続税の申告期限(10か月)は、原則として「死亡を知った日の翌日から10か月以内」です。基礎控除の範囲内なら申告不要ですが、判定には財産評価(不動産の評価含む)が必要です。納税資金が不足しそうなら、売却の検討を前倒しすることがあります。
実家 相続 売却の税金
実家を売るときの税金は、相続税そのものではなく、主に譲渡所得(売却益)に対する所得税・住民税が論点になります。売却価格そのものに課税されるのではなく、「売却価額 −(取得費+譲渡費用)」で計算した利益が課税対象です。
売却時に押さえるべき代表的な特例(空き家特例)
相続した実家が一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(いわゆる空き家特例)」が検討対象になります。空き家の3,000万円特別控除はインパクトが大きい一方、要件が細かいため、売買契約を急ぐと取りこぼしやすい点に注意が必要です。
Step 1: まず「誰が売るか」を確定(登記・契約主体の整理)
遺産分割で取得者を決めて単独名義で売るのか、共有で売るのかを決めます。共有売却は全員の合意が必要で、実務では止まりやすい典型論点です。
Step 2: 特例の要件チェック(空き家特例を含む)
対象となる家屋の要件、居住状況、売却時期、リフォームや取壊しの要否などを、売買契約前に確認します。要件の確認は税理士・司法書士・不動産会社の連携が有効です。
Step 3: 確定申告(翌年2/16〜3/15が原則)
譲渡所得が出る場合は確定申告が必要です。損失の場合でも、特例や他の所得との関係で申告が有利になるケースがあります。
実家相続後に賃貸する場合の税金と実務
賃貸にすると、売却益ではなく「家賃収入」に対して不動産所得として課税されます。ポイントは、収入だけでなく必要経費(修繕費、管理費、固定資産税、保険料、減価償却費など)を適切に集計し、収支を見える化することです。
賃貸で起きやすい税務・実務トラブル
- 共有名義のまま賃貸し、家賃の受取口座や経費負担が曖昧になる
- 大規模修繕が必要で、投資回収期間が読めない
- 相続後に初めて賃貸を始め、確定申告(青色申告の可否や帳簿)でつまずく
賃貸は「持ち続ける」意思決定なので、収益性の見込みと管理体制(遠方・空室時対応)をセットで検討してください。相続人の誰かが住む可能性が残る場合は、賃貸借契約の形(普通借家・定期借家)も重要になります。
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実家に住む場合の税金と注意点
実家に住む場合、売却時の譲渡所得税の問題は直ちには発生しませんが、固定資産税・修繕費などの維持コストは継続します。また、将来売却する可能性があるなら、「いつ・誰が・どの名義で住むか」を決めておくと出口が楽になります。
住む選択をしたときの実務ポイント
- 相続登記を済ませ、居住者と所有者(名義人)を一致させるか整理する
- リフォーム費用の負担と、将来の売却代金の分け方を合意しておく
- 相続人が複数いる場合、住む人が他の相続人へ代償金を払う設計も検討する
「住む」は感情面の納得が得やすい反面、費用負担と権利関係が曖昧なまま時間が経つと、次の相続で問題が複雑化しがちです。
実家 相続 空き家を放置しないための判断軸
空き家は、固定資産税・火災リスク・近隣クレーム・防犯など、金銭以外のコストも増えます。判断を先送りしないために、選択肢を比較表で整理しておきましょう。
| 選択肢 | 主なメリット | 主なデメリット/税務 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 売却 | 現金化しやすく相続人間の清算がしやすい | 譲渡所得の申告が必要、特例要件の確認が必須 | 維持が難しい、納税資金が必要、遠方 |
| 賃貸 | 継続収入が見込める | 不動産所得の申告・管理負担、修繕投資が必要 | 立地が良い、管理体制を作れる |
| 居住 | 住居確保、思い出を残せる | 維持費継続、共有のままだと将来揉めやすい | 家族が住む予定が明確 |
税務は「制度」だけでなく「実行手順」で結果が変わります。迷う場合は、まず相続登記と相続税の要否判定を進め、並行して不動産会社の査定(売却価格・賃料相場)を取り、数字で比較すると判断が進みます。
よくある質問
Q: 実家を相続してすぐ売ると、必ず税金がかかりますか?
Q: 実家相続の「空き家特例(3,000万円控除)」は誰でも使えますか?
Q: 実家を賃貸にしたら確定申告は必要ですか?
まとめ
- 実家相続後は「売却・賃貸・居住」を早めに決め、期限と名義を同時に整理する
- 相続登記と相続税の申告期限(10か月)の管理が、後工程のコストを左右する
- 売却は譲渡所得課税が中心で、空き家の3,000万円特別控除など特例要件の事前確認が重要
- 賃貸は不動産所得として申告・管理が必要で、共有状態だと運用が止まりやすい
- 空き家放置は金銭以外の負担も増えるため、査定など数字で比較して意思決定する
参照ソース
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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