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相続・事業承継コラム
作成日:2025.10.18
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

実家相続どうする?判断基準と売却・賃貸・住む比較|税理士が解説

8分で読めます
実家相続どうする?判断基準と売却・賃貸・住む比較|税理士が解説

実家の相続で悩ましいのは、「気持ち」と「数字(税金・維持費)」が衝突しやすい点です。結論としては、家族の合意形成→登記・名義の整理→税金の見通し→物件の収益性/処分性の確認の順で判断すると、後戻りコストを抑えられます。当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、相続後に“とりあえず共有”にした結果、売却も賃貸も進まず、固定資産税と管理負担だけが増える相談が少なくありません。

実家相続どうする?最初に整理すべき3つの論点

「親の家をどうするか」は感情論になりがちですが、実務では次の3点で大枠が決まります。

1) 使う人がいるか(居住・利用の確度)

誰が住むのか、住むならいつからか。ここが曖昧だと、空き家期間が長引き、修繕費・防犯・近隣対応などの管理コストが膨らみます。

2) 共有名義にするか(意思決定の難易度)

相続人が複数の場合、共有にすると売却・賃貸・大規模修繕の意思決定が難しくなります。「全員の同意が必要な局面」が増えるため、合意形成に時間がかかるほど“塩漬け資産”になりやすい点に注意が必要です。

3) 税金とキャッシュフロー(手残り)を見える化できているか

売却なら譲渡所得税、賃貸なら所得税・住民税、住むなら維持費(固定資産税、修繕、火災保険等)が継続します。数字の見通しが立つと、家族内の議論も進みやすくなります。

売却・賃貸・住む場合の比較表(実務での判断軸)

以下は、実務でよく使う比較軸です。迷ったら、まずこの表を埋めてください。

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比較項目売却賃貸住む
初期の手続き負担中(測量・境界・契約)高(修繕・募集・契約管理)低〜中(名義・引越し)
収支の見通し一括で確定しやすい継続収入だが空室リスク収入は生まれない
税金のポイント譲渡所得税、特例の可否不動産所得(必要経費計上)維持費中心(税負担は軽い傾向)
家族トラブル共有だと売却同意が壁管理方針で揉めやすい住む人・住まない人の不公平感
向くケース使う予定がない、現金化したい立地が良い、修繕後も利回りが出る居住ニーズが明確、生活基盤を置く

「住む人が確定」していないのに賃貸化や大規模修繕に進むと、途中で方針転換できず損失が出やすい点は要注意です。

実家を売却する場合:税金(空き家特例)と手続きの要点

空き家の3,000万円特別控除の対象になり得る

一定要件を満たすと、相続した実家(被相続人の居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。期間や要件があり、近年は相続人が3人以上の場合の控除額に注意点もあります。「売却すれば自動で3,000万円控除」ではありません。

ここがポイント
空き家特例は、建物の状態(耐震・解体の要否)、居住実態、譲渡期限などの要件判定が核心です。契約直前ではなく、売却準備の初期に要件確認を行うと手戻りが減ります。

取得費が不明だと税金が増える可能性

譲渡所得は「売却額 −(取得費+譲渡費用)」で計算します。親が購入した当時の契約書等が見当たらないと、取得費を十分に主張できず税負担が重くなることがあります。資料探索(売買契約書、領収書、登記費用、リフォーム記録など)は早めに行いましょう。

実務の流れ(売却)

  • 相続人の確定・遺産分割協議(または遺言の確認)
  • 相続登記(名義変更)を進める
  • 境界・測量、残置物処分、必要に応じて解体/修繕
  • 不動産会社の査定・媒介契約、売買契約、引渡し
  • 確定申告(譲渡所得・特例適用の申告)

実家を賃貸に出す場合:収益性と管理の“現実”

賃貸は「持ち続けながら収入が得られる」一方で、実務の負担が最も大きい選択肢です。

収益性のチェック(利回りより“手残り”)

家賃収入から、固定資産税、火災保険、修繕、管理委託料、空室期間の負担を差し引いた“手残り”で判断します。特に築古戸建は、入居付けのために水回り・外壁・給湯器などの支出が先行しがちです。

共有のまま賃貸は揉めやすい

賃貸条件(家賃、修繕の上限、設備更新)や、収益分配、将来の売却方針で意見が割れやすくなります。実務では、管理権限を誰が持つか(代表者、費用負担ルール、意思決定プロセス)まで決めておくことが重要です。

ここがポイント
「いったん賃貸に出して様子を見る」は合理的に見えますが、賃借人保護の観点から、途中で売却や自己使用へ切り替える際に時間を要する場合があります。方針転換の条件(いつまで・いくらで・誰の同意で)を文書化しておくと安全です。

実家に住む場合:節税より“家族内の公平”が論点になりやすい

住む選択は、生活の安定というメリットが大きい一方、住まない相続人から「自分だけ得をしている」と見られやすい傾向があります。

遺産分割での調整が実務ポイント

  • 住む人が不動産を取得し、他の相続人には預金等で調整する
  • 代償金(住む人が他の相続人へ金銭を支払う)で公平を図る
  • 将来売却時の分配方法を合意しておく

「住む=無料で使える」ではなく、相続財産の配分として整理すると紛争予防になります。

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失敗しない判断手順(実家相続のやり方)

実務では、次の順序で進めるとブレにくくなります。

Step 1: 相続人・遺言・財産の全体像を確定する
戸籍収集、遺言の有無、預金・不動産・借入の確認を行い、実家以外も含めた全体で分割方針を考えます。

Step 2: 相続登記の方針を決め、期限管理する
遺産分割が長引く見込みなら、期限対応(申出制度等)も含めて検討し、登記を放置しない運用にします。

Step 3: 物件の“市場性”を数値化する
売却査定(複数社)、賃貸想定家賃、修繕見積、固定資産税額、近隣の取引事例を揃えます。

Step 4: 税金のシミュレーションを作る
売却なら譲渡所得と特例可否、賃貸なら所得見込み、住むなら維持費を年次で並べ、家族会議の共通資料にします。

Step 5: 合意内容を文書化し、実行計画に落とす
共有の場合は代表者・費用負担・意思決定のルールを合意し、売却/賃貸/居住の実行スケジュールを決めます。

ケーススタディ:共有のまま放置して“売れない家”になった例

例えば、相続人が3名で「いずれ売る」と共有登記したものの、残置物処分や境界確定の費用負担で合意できず、数年が経過したケースがあります。結果として、建物の劣化が進み、売却時に解体費が増加。近隣からの苦情対応も必要になり、精神的コストも膨らみました。
このような場合、早期に「誰が意思決定者か」「費用の上限」「売却期限」を決めていれば、追加コストを抑えられた可能性が高いといえます。

よくある質問

Q: 実家は相続したらすぐ売った方がいいですか? ▼

A:

一概にはいえません。住む人がいるか、賃貸で手残りが出るか、売却で空き家特例の要件を満たせるかで結論が変わります。まずは査定・修繕見積・税金シミュレーションを揃え、家族で比較できる状態にすることが先決です。
Q: 兄弟で共有名義にすると何が問題ですか? ▼

A:

売却、賃貸、大規模修繕などで合意が必要となり、意思決定が遅れやすい点が典型です。共有にするなら、代表者、費用負担、将来売却の条件などを文書化しておくとトラブル予防になります。
Q: 相続登記はいつまでに必要ですか? ▼

A:

相続登記は期限管理が重要です。遺産分割がまとまらない場合の対応策も含め、早めに専門家へ相談し、放置を避けてください。

まとめ

  • 実家相続は「使う人」「共有の設計」「税金と手残り」の3点で方向性が決まる
  • 売却は一括で整理しやすいが、空き家特例など要件判定が重要
  • 賃貸は管理負担が最大。手残りと方針転換条件まで設計する
  • 住む場合は家族内の公平(代償金等)を分割設計として整理する
  • 判断は「合意形成→登記→税金→市場性」の順で進めると失敗しにくい

参照ソース

  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得時期」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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