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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

寄与分とは?介護相続の条件と計算方法|税理士が解説

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寄与分とは?介護相続の条件と計算方法|税理士が解説

寄与分とは

寄与分とは、共同相続人(相続人のうち複数人がいる場合)の中で、被相続人(亡くなった方)の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした人が、遺産分割で法定相続分より多く取得できるように調整する制度です。

親の介護をしてきた相続人から「介護した分だけ相続を多くしたい(または多く受け取れるのか)」という相談は少なくありません。ただし、介護をした事実だけで当然に増えるわけではなく、特別と評価される介護であり、かつ財産的な効果(費用の節約など)が説明できることが重要です。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、30年以上にわたり相続・遺産分割に関する相談対応を行う中で、「介護の負担感」と「法定相続分の機械的な分け方」のギャップが紛争の火種になりやすいと実感しています。本記事では、寄与分が認められる条件と、介護寄与分の金額の考え方・計算方法を具体的に解説します。

寄与分が認められる条件

条文上のポイント(要件の骨格)

寄与分は、概ね次の要素で判断されます。

  • 寄与行為があること(療養看護、労務提供、財産給付など)
  • その寄与が「特別の寄与」であること(通常期待される扶養・同居の範囲を超える)
  • 寄与行為によって、被相続人の財産が維持・増加したといえること(典型例:介護人を雇う費用を免れた等)
  • 寄与分の額は、遺贈控除後の限度額を超えないこと(上限ルール)

「介護なら何でもOK」ではない理由

介護で寄与分を主張する場面では、裁判所実務上、次の観点が重視されがちです。

  • 被相続人が、第三者の介護サービスや付添人を要する状態だったか(要介護度相当、病状、ADLなど)
  • 介護の内容が、同居親族として通常期待される範囲を超えるか(頻度、時間、夜間対応、失禁処理、医療付添など)
  • 介護をしたことで、具体的に支出を免れた(節約できた)と説明できるか
ここがポイント
「長年同居していた」「身の回りの世話をした」という事情は重要ですが、それだけでは特別の線を越えないことがあります。病状・介護必要性(医学的資料)と、介護内容(記録)のセットで立証できると強いです。

寄与分が認められるケース・認められにくいケース

介護の寄与分は、事案の個別性が強く、結論も幅があります。実務での見立てを整理すると、次のようになります。

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観点認められやすいケース認められにくいケース
被相続人の状態寝たきり・認知症進行・失禁・夜間見守り必須など、外部介護が現実的に必要介護サービス不要〜軽度、日常生活が概ね自立
介護の内容毎日・長時間、医療付添、夜間対応、入浴介助、排泄介助など負担が重い通院の送迎のみ、家事一般、見守り中心で負担が限定的
財産的効果介護人・施設費用の支出を免れた等が説明可能節約額の説明が難しい(同居していただけ、等)
立証資料介護記録、診断書、要介護認定、ケアプラン、領収書、日記などが揃う記録が乏しく、口頭説明中心

ポイントは、「介護の大変さ」を主観で語るだけでなく、介護が必要な状態と、実際にどんな介助をどれだけ行ったかを客観資料で積み上げることです。

寄与分の計算方法(介護の場合)

基本の考え方:節約できた介護費用をベースにする

介護寄与分は、「もし相続人が介護しなかったら、外部サービス(訪問介護等)や付添人を利用し、その費用がかかったはず」という観点で金額化されることが多いです。

実務でよく使われるイメージは次の式です。

  • 介護報酬相当額(単価) × 日数(または時間) × 裁量割合(0.5〜0.8程度で調整されやすい)

ここでの「裁量割合」は、資格者が提供する介護サービスの報酬をそのまま当てはめるのは実態に合わない、同居親族の扶助の範囲も混在する、といった事情を踏まえた調整として用いられます。

ここがポイント
寄与分の金額は、定型の計算式が法律で決まっているわけではありません。最終的には、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額、他の相続人との公平など「一切の事情」で決まります。

計算例:介護寄与分を数値に落とす

たとえば、次の前提で概算します(説明のための単純化です)。

  • 相続人Aが、要介護状態の父に対し、入院前の90日間、毎日介助・見守り・排泄対応を行った
  • 外部サービス相当の単価を日額6,500円と仮置き
  • 裁量割合を0.7とする

この場合の概算は次のとおりです。

  • 6,500円 × 90日 × 0.7 = 409,500円(約41万円)

この「約41万円」が、遺産分割の中でAの取り分を増やすための寄与分の候補になります。

相続分への反映(配分がどう変わるか)

寄与分は、「相続財産から先に寄与分を控除して仮の相続財産を作り、法定相続分を計算し、最後に寄与者へ寄与分を加算する」というロジックで調整します。

例として、相続人が子2人(A・B)、遺産が3,000万円、Aの寄与分が100万円だとします。

  • 仮の相続財産:3,000万円 − 100万円 = 2,900万円
  • 法定相続分(各1/2):2,900万円 × 1/2 = 1,450万円
  • Aの取得額:1,450万円 + 100万円 = 1,550万円
  • Bの取得額:1,450万円

このように、寄与分は「上乗せ」ではなく「全体の分け方を調整」する仕組みです。

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寄与分を主張する手続きと必要資料

手続きの流れ(協議→調停→審判)

寄与分は、まず相続人間の協議で決めます。まとまらない場合、家庭裁判所の手続(調停・審判)を利用します。

Step 1: 相続人間で協議(遺産分割協議)

  • 介護内容と金額根拠を示し、寄与分を合意形成する
  • 可能なら遺産分割協議書に寄与分の取り扱いを明記

Step 2: 調停の申立て(寄与分を定める処分調停)

  • 協議が不成立・協議できない場合に利用
  • 調停で合意できない場合は審判へ移行し得る(遺産分割審判の申立てが必要となる場面に注意)

Step 3: 審判(家庭裁判所が寄与分を決める)

  • 資料と主張の積み上げが勝負になりやすい
  • 介護の必要性(医学的根拠)と、介護の内容・期間(記録)が重要

役に立つ証拠(介護寄与分)

介護寄与分では、次の資料が実務上有効です。

  • 診断書、医療カルテ、入退院記録
  • 要介護認定資料、主治医意見書、ケアプラン、サービス利用票
  • 介護日誌(いつ・何をしたか)、同居状況が分かる資料
  • 介護用品・オムツ等の領収書、通院交通費の記録
  • 他の相続人が介護していないこと(分担の状況)を示す事情

よくある質問

Q: 介護を10年しました。必ず寄与分は認められますか? ▼
必ずではありません。寄与分は「介護の年数」だけで決まらず、被相続人の状態、介護内容が通常の扶助を超えるか、介護をしたことで外部費用の支出を免れたといえるか、といった点が重視されます。長期であっても記録が乏しいと評価が難しくなるため、日誌や医療資料の整備が重要です。
Q: 寄与分はいくらくらいが相場ですか? ▼
一律の相場はありません。介護報酬相当額×日数(時間)×裁量割合で算定する考え方が使われることはありますが、最終的には個別事情で調整されます。遺産額に比べて寄与分が過大だと調整されることもあるため、根拠(単価・期間・内容)を丁寧に組み立てる必要があります。
Q: 兄弟が協議に応じません。どうすればいいですか? ▼
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で「寄与分を定める処分調停」を利用できます。調停が不成立の場合に審判へ進む流れもあり、遺産分割手続との関係で申立ての整理が必要になることがあります。早めに専門家へ相談し、資料の収集と主張の組み立てを進めるのが安全です。
Q: 相続人ではない嫁(息子の配偶者)が介護しました。寄与分になりますか? ▼
寄与分は原則として「共同相続人」が対象です。相続人ではない親族の貢献は、別制度(特別寄与の枠組み)で問題になることがあります。どの制度で請求できるかは家族関係や遺産分割の状況で変わるため、個別に整理が必要です。

まとめ

  • 寄与分とは、介護などで被相続人の財産維持に特別に貢献した相続人の取り分を調整する制度
  • 介護の事実だけでなく、「特別の寄与」と財産的効果(費用の節約等)の説明が重要
  • 介護寄与分は「介護報酬相当額×日数(時間)×裁量割合」で整理されることがあるが、最終判断は個別事情
  • 協議でまとまらないときは家庭裁判所の調停・審判手続を利用する
  • 診断書・要介護資料・介護日誌など、客観資料を早期に揃えることが紛争予防と主張立証の鍵

参照ソース

  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  • 裁判所「寄与分を定める処分調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_23/index.html
  • 法務省「寄与分に関する裁判例(PDF)」: https://www.moj.go.jp/content/001222143.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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