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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

遺言信託 銀行のメリット・費用相場と家族信託の違い|税理士が解説

8分で読めます
遺言信託 銀行のメリット・費用相場と家族信託の違い|税理士が解説

遺言信託(銀行の信託サービス)とは

銀行の「遺言信託」とは、一般に、遺言の内容整理から公正証書遺言の作成支援、遺言書の保管、相続開始後の遺言執行(名義変更・払戻し・分配など)までをパッケージで支援するサービスです。誰にとって何が問題かというと、「相続人が遠方」「財産が多い・複雑」「相続人同士の調整が不安」な方ほど、相続開始後の実務が回らず揉めやすい点が課題になります。そこで、第三者(銀行等)が遺言執行を担うことで、手続の停滞や感情的対立の火種を減らす狙いがあります。

なお「遺言信託」という名称でも、実態は「遺言作成支援+保管+遺言執行」の総称として使われることが多く、各社でコース名や範囲が異なります。契約前にどこまでやってくれるのかを必ず確認しましょう。

遺言信託のメリット

相続開始後の実務をプロジェクト化できる

相続は、戸籍収集、残高証明、名義変更、換金、分配、場合によっては準確定申告・相続税申告など、期限付きのタスクが連続します。銀行の遺言信託は、遺言執行者としての実務を引き受ける設計が多く、相続人が手続きを抱え込まずに済みます。

遺言書の作成を制度に乗せやすい

遺言が無効にならないよう、方式や文言、財産の特定などの落とし穴を避ける必要があります。銀行は公証役場での公正証書遺言作成の段取り(証人手配を含む)まで支援することが多く、初めての方でも進めやすい点がメリットです。

相続人間の連絡役になり、揉めポイントを減らせる

遺言内容の説明や、必要書類の提出依頼などは相続人間の感情が絡みやすい部分です。第三者が窓口になることで、「誰が言った」「聞いていない」の摩擦を減らし、手続を前に進めやすくなります。

ここがポイント
遺言信託は揉めない魔法ではありません。遺留分(一定の相続人に保障される最低限の取り分)を大きく侵害する内容だと、相続開始後に請求・交渉が起き得ます。設計段階で、遺留分や家族関係の事情も踏まえて検討しましょう。

遺言信託の費用相場と内訳(遺言信託 費用)

銀行の遺言信託は、概ね「(1)遺言作成支援・契約時の手数料」「(2)保管・管理関連」「(3)相続開始後の遺言執行報酬」の組み合わせです。費用体系は各行で差が大きいので、ここでは見方と相場感を整理します。

よくある費用の型

  • 相談・コンサル系:定額(例:数万円〜数十万円)
  • 保管系:年額(例:年数万円程度)または無料〜低額
  • 執行報酬:遺産額に応じた段階料率+最低報酬(例:最低数十万円〜数百万円)

実務で多いのは、遺産規模が大きいほど執行報酬が上がる設計です。特に不動産が多いと、名義変更・売却・分配などの実務負担が重くなり、結果として報酬も高くなりがちです。

「総額」を見誤らないためのチェックポイント

  • 最低報酬の有無(小規模相続でも一定額が発生するか)
  • 対象財産の範囲(他行預金・証券・不動産・非上場株などが含まれるか)
  • 追加費用の扱い(登記費用、司法書士報酬、税理士報酬、郵送実費などは別途が一般的)
  • 相続税申告や準確定申告が必要な場合の連携(銀行が税務申告を代行するわけではない)
ここがポイント
「遺言信託の費用」は、銀行手数料だけでなく、相続登記・税務申告・換金など周辺費用を含めた総コストで比較するのが安全です。見積書に含まれる/含まれないが分かれているかを確認しましょう。

遺言信託と家族信託の違い(遺言信託 家族信託 違い)

家族信託(民事信託)は、本人(委託者)が家族(受託者)に財産管理・処分を託し、受益者(多くは本人)に利益を帰属させる仕組みです。遺言信託が「相続開始後の執行」が中心なのに対し、家族信託は「生前からの財産管理・承継設計」に強みがあります。

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比較項目遺言信託(銀行)家族信託(民事信託)
主な効きどころ相続開始後の遺言執行を外部化生前の管理・意思能力低下への備え
開始時期基本は死亡後に本格稼働契約後すぐ運用可能
管理者銀行等(第三者)家族(受託者)
向く財産預金・証券・不動産など(取扱範囲は要確認)不動産・自社株・収益物件など継続管理向き
費用の特徴手数料+執行報酬(遺産額連動が多い)初期の設計・契約コストが中心(継続費は設計次第)
リスクサービス範囲外の財産がある/費用が読みにくい受託者の運用負担・管理不正リスク/設計不備

ポイントは、「生前の管理が必要か」です。たとえば認知症リスクに備えて賃貸不動産の修繕・建替え・売却まで見据えるなら、家族信託が選択肢になります。一方、家族に実務負担をかけたくない、相続開始後の段取りを確実に回したいなら、銀行の遺言信託がフィットしやすいでしょう。

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銀行の遺言信託が向く人・向かない人

向く人

  • 相続人が遠方・多忙で、相続手続きをまとめる人がいない
  • 財産が複数(不動産+預金+証券など)で、実務が複雑
  • 相続人間の関係性に不安があり、第三者が窓口の方が良い
  • 遺言の内容を確実に実現したい(特定の遺贈、寄付、分配条件など)

向かない(注意が必要な)人

  • 生前から柔軟に財産を動かす必要がある(賃貸経営の意思決定など)
  • 相続人が少なく協力的で、費用を抑えたい
  • 取扱いが難しい資産が中心(非上場株、複雑な共有不動産など)
  • 家族に管理能力・意欲があり、家族信託で十分に回る

実際の相談では「遺言信託だけ」「家族信託だけ」ではなく、遺言(最終分配の設計)+任意後見/家族信託(生前管理)を組み合わせるケースもあります。

失敗しない選び方と進め方(手順)

Step 1: 財産と関係者を棚卸しする

預金(銀行別)、証券、保険、不動産(所在地・共有状況)、負債、相続人・受遺者候補を一覧化します。ここが曖昧だと、遺言の特定が弱くなり、執行時に手戻りが増えます。

Step 2: 目的を1行で言語化する

例:「長男に自宅、長女に金融資産を配分し、配偶者の生活費を優先する」「障害のある子の生活を長期で支える」など。目的が固まると、遺言信託と家族信託のどちらが主役か判断しやすくなります。

Step 3: 銀行に確認すべき論点を決めて見積を取る

  • 対象財産に含まれる/含まれないもの
  • 相続開始後に誰が連絡する運用(通知者の設定等)
  • 遺言執行の範囲(不動産売却まで対応か、名義変更までか)
  • 報酬の計算方法(最低報酬、料率、追加費用の扱い)

Step 4: 家族信託が必要かを並行検討する

認知症などで意思能力が低下すると、本人名義の不動産売却・建替え・金融取引が止まりやすいのが実務です。相続前に動かす必要があるなら、家族信託や任意後見も含めて設計します。

Step 5: 遺言書を作成し、定期的に見直す

不動産の売買、相続人の状況変化、税制改正などで、遺言の最適解は変わります。少なくとも数年に一度、遺言の棚卸しを推奨します。

よくある質問

Q: 遺言信託を使うと、遺言書は必ず公正証書になりますか? ▼
サービス設計としては公正証書遺言を前提に進むことが多いです(方式の確実性が高いため)。ただし、銀行やコースにより扱いは異なるため、契約前に遺言方式(公正証書/自筆証書)を確認してください。自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用する選択肢もあります。
Q: 遺言信託の費用は、相続税申告の報酬も含まれますか? ▼
一般に含まれません。遺言執行と税務申告は別業務で、税理士報酬が別途発生するのが通常です。見積では「銀行手数料」「登記等の専門家費用」「税理士費用」を分けて把握すると、総額の比較がしやすくなります。
Q: 家族信託があれば遺言は不要ですか? ▼
不要とは限りません。家族信託は信託した財産の承継設計に強い一方、信託していない財産(預金の一部、保険、動産など)が残ることも多いです。残余財産や最終的な分配意思を明確にするため、遺言を併用する設計が実務的です。

まとめ

  • 銀行の遺言信託は、遺言作成支援・保管・遺言執行を通じて相続実務を外部化するサービス
  • 遺言信託の費用は「契約時手数料+保管関連+遺言執行報酬(遺産額連動が多い)」で総額判断が重要
  • 家族信託は生前の財産管理・意思能力低下対策に強く、遺言信託は死亡後の執行に強い
  • 選び方は、財産棚卸し→目的の言語化→銀行の範囲と報酬の確認→家族信託の要否検討が王道
  • 実務では、遺言(最終分配)+家族信託/任意後見(生前管理)を組み合わせるケースも多い

参照ソース

  • 法務省「遺言書保管申請 ガイドブック(自筆証書遺言書保管制度)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/guidebook_r5.pdf
  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  • 金融庁「改正信託業法が施行されました」: https://www.fsa.go.jp/policy/shintaku/index.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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