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相続・事業承継コラム
作成日:2025.10.02
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

M&A事業承継の会社売却流れと費用|税理士が解説

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M&A事業承継の会社売却流れと費用|税理士が解説

M&Aによる事業承継とは(会社売却の基本)

M&Aによる事業承継とは、会社(株式)または事業を第三者に譲渡し、経営を引き継ぐ方法です。後継者不在でも承継できる一方で、情報管理・条件交渉・税務の設計が成否を分けます。特に中小企業では「株式譲渡」と「事業譲渡」のどちらを選ぶかで、手続き・費用・税金・リスクが大きく変わります。

親族内承継・従業員承継との違い

M&Aは「相手探し」と「条件の市場性」が入る点で、親族内承継や従業員承継(MBO)と性質が異なります。資金手当や金融機関対応、個人保証の解除など、外部調整が増えるため、早期着手が重要です。

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比較項目M&A(第三者承継)親族内承継従業員承継(MBO等)
後継者不要(探索する)必要必要
価格の決まり方市場性・交渉低めになりやすい資金調達制約が強い
期間3〜12か月が目安比較的長期6〜18か月も
留意点情報漏えい、DD、契約条項相続・贈与、株価対策資金、連帯保証、金融機関
ここがポイント
M&Aは「売れれば終わり」ではありません。譲受側に引き継いだ後の運営(PMI)まで見据え、契約条件と社内体制を設計しておくことが、結果的に譲渡価格や従業員の定着にも効いてきます。

会社売却の流れ(中小企業M&Aの標準プロセス)

中小企業の会社売却は、概ね「準備→相手探し→基本合意→調査→最終契約→クロージング」の順で進みます。ここでは実務で押さえるべきポイントを、ステップ形式で整理します。

Step 1: 事前準備(売却方針・論点整理)

  • 目的の明確化(完全退出/一部株式売却/役員続投など)
  • スキームの方向性(株式譲渡か事業譲渡か)
  • 決算・契約書・許認可・労務の棚卸し(後のDD負荷を下げる)

Step 2: 支援者選定(仲介・FA・士業)

  • 仲介:売り手・買い手双方の間に入り調整
  • FA(フィナンシャル・アドバイザー):売り手側の代理として条件最適化
  • 税理士・弁護士:税務スキーム、契約、表明保証の設計

Step 3: 企業価値評価と資料作成

  • 企業概要書(IM)・条件提示資料の整備
  • 価格目線の形成(複数手法でレンジを持つ)
  • バリューの言語化(強み、顧客基盤、人材、再現性)

Step 4: 相手探索と初期交渉(NDA→面談)

  • 秘密保持契約(NDA)締結後に情報開示
  • トップ面談、条件のすり合わせ
  • 意向表明(LOI)を受領し、候補を絞る

Step 5: 基本合意→デューデリジェンス(DD)

  • 基本合意書(LOI/基本合意)で大枠を固定
  • デューデリジェンス(財務・税務・法務・労務・ビジネス)を実施
  • 論点(簿外債務、税務リスク、契約解除条項等)を価格・条件に反映

Step 6: 最終契約→クロージング(実行)

  • 株式譲渡契約(SPA)等を締結
  • 代金決済、株式移転、役員変更、保証解除、引継ぎ
  • PMI(運営統合・権限移譲)に着手
ここがポイント
中小企業でトラブルになりやすいのは「相手の見極め」と「契約の詰め」です。ガイドライン等でも、仲介/FA契約前など早期から譲受側の確認(反社・資金力・目的等)を行う重要性が示されています。公的制度(登録支援機関)を活用し、説明責任を果たせる支援者選定が有効です。

期間の目安

準備の成熟度で大きく変わりますが、目安は3〜12か月です。決算が整っていない、契約が属人的、個人保証が複雑などの場合は長期化しやすく、早めに論点を潰すほど短縮できます。

M&A費用の相場(手数料・専門家費用の内訳)

M&A費用は大きく「仲介/FA手数料」「DD費用」「契約関連費用」「実行コスト」に分かれます。特に中小企業では成功報酬(レーマン方式等)と最低報酬(ミニマムフィー)の設計が実務上の争点になります。

仲介・FA・プラットフォームの違いと費用構造

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支援形態主な報酬体系向き/特徴注意点
仲介着手金+月額+成功報酬(or 成功報酬のみ)調整力、相手探索に強い利害の整理が重要
FA(売り手側)月額+成功報酬条件最適化、競争入札に強い体制が必要
プラットフォーム掲載/マッチング費用+成約手数料低コストの選択肢DD・契約の自走が必要

費用相場(中小企業の一般的レンジ)

案件規模・業種・地域・難易度で変動しますが、実務では概ね以下が目安です(個別契約により大きく異なります)。

  • 仲介/FA成功報酬:譲渡価格等に対してレーマン方式(段階料率)を採用する例が多い
  • 最低報酬(ミニマムフィー):100万円〜数百万円程度が設定されることがある
  • DD費用:税務/財務/法務で数十万円〜数百万円(範囲次第で上振れ)
  • 契約・登記関連:弁護士費用、登記費用、各種証明取得費用など

実務での見積りは、(1)譲渡スキーム、(2)買い手の要望、(3)論点の多さで決まります。費用だけでなく「成果物(IM、買い手探索、条件交渉、DD対応、契約支援)の範囲」を契約前に明確にすることが重要です。

公的支援の活用(登録支援機関・無料相談)

中小企業庁等の枠組みとして「M&A支援機関登録制度」が整備され、補助金(専門家活用枠)では登録支援機関のFA/仲介手数料が補助対象とされる運用が示されています。また、国が全国に設置した「事業承継・引継ぎ支援センター」では無料相談窓口が案内されています。まずは無料相談で論点整理し、必要に応じて登録支援機関や専門家へ接続するのが堅実です。

中小企業M&Aで失敗しない注意点(リスクと実務ポイント)

情報漏えいと従業員対応

会社売却は、情報の出し方を誤ると従業員の動揺や取引先の不安につながります。NDA締結前に詳細資料を出さない、開示範囲を段階化する、社内説明のタイミングを決めるなど、情報統制を最優先に設計します。

個人保証・担保・許認可(見落としがちな論点)

中小企業では、代表者の個人保証や担保提供が残っていることが多く、M&Aの実行条件になります。譲受側が引き継ぐのか、金融機関と解除交渉するのか、クロージング条件(CP)として契約に落とし込む必要があります。許認可・名義変更の要否も、業種によってはスケジュールの制約になります。

税務の要点(スキームで税負担が変わる)

  • 株式譲渡:売り手(株主)側は譲渡益課税が中心、会社の契約関係は原則維持
  • 事業譲渡:会社側に譲渡益課税が生じ得るほか、資産・契約の移転手続きが増える

税務は「どの主体に、どのタイミングで、どの税目が発生するか」を整理し、手取り最大化とリスク低減の両立を図ります。実務では税務DDの指摘が価格調整(アーンアウト、エスクロー、補償条項)に直結するため、早い段階で整備しておくほど交渉が有利です。

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支援機関の選び方と、売り手が今すぐできる準備

支援者選定のチェックポイント

  • 報酬体系(着手金、月額、成功報酬、最低報酬、経費)を明文化している
  • 業界理解と買い手ネットワークがある(同業の実績が望ましい)
  • DD・契約・PMIまでの役割分担が明確(誰が何をやるか)
  • 登録制度の活用(登録支援機関か、説明体制が整っているか)

売り手側の準備チェックリスト(短期で効くもの)

  • 直近3期の決算の整備(異常値・私的経費の整理、科目の一貫性)
  • 契約書の棚卸し(取引基本契約、賃貸借、リース、業務委託)
  • 株主・役員構成の整理(名義株、相続未了、持株会等)
  • 月次試算表の早期化(意思決定スピードの土台)
  • 重要人材・顧客の依存度の見える化(引継ぎ計画の作成)

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、M&Aそのものの手続きだけでなく、売却前の「数字の整え方」「論点の先回り」「税務リスクの言語化」を重視して支援します。最終的に買い手が評価するのは、成長性だけでなく「不確実性の低さ」だからです。

よくある質問

Q: 会社売却はどのくらいの期間がかかりますか? ▼

A:

目安は3〜12か月です。決算や契約が整っている、論点(個人保証、簿外債務等)が少ないほど短縮できます。逆に、許認可や保証解除が必要な場合は長期化しやすいです。
Q: M&Aの費用は売り手と買い手のどちらが払いますか? ▼

A:

仲介の場合は両手(双方から報酬)・片手(片側のみ)など契約で異なります。FAは通常、依頼者側が負担します。費用の総額よりも、業務範囲と成果物、解約条件、最低報酬の有無を確認してください。
Q: 個人保証は必ず外せますか? ▼

A:

必ずではありませんが、M&Aの条件(クロージング条件)として金融機関と解除交渉を行うケースは多いです。譲受側の信用力、担保、返済計画により判断されるため、早期に金融機関を巻き込み、選択肢(借換、条件変更等)を整理します。
Q: 事業譲渡と株式譲渡はどちらが一般的ですか? ▼

A:

中小企業の事業承継では株式譲渡が選ばれることが多い一方、不要資産や特定事業のみを切り出す場合は事業譲渡が適します。税金・手続き・契約移転・リスクの出方が異なるため、目的に合わせた設計が重要です。

まとめ

  • M&Aによる事業承継は、後継者不在でも承継できる一方、情報管理・契約・税務設計が重要
  • 会社売却の流れは「準備→探索→基本合意→DD→最終契約→クロージング」が基本
  • 費用は仲介/FA手数料に加え、DD・契約・実行コストが発生し、報酬体系の確認が必須
  • 個人保証、許認可、簿外債務などの論点は早期に洗い出し、条件交渉に反映する
  • 公的支援(事業承継・引継ぎ支援センター、登録支援機関制度)を活用すると進めやすい

参照ソース

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
  • 事業承継・引継ぎポータルサイト(SMRJ): https://shoukei.smrj.go.jp/
  • M&A支援機関登録制度: https://ma-shienkikan.go.jp/

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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