
執筆者:辻 勝
会長税理士
【2025年最新】名義預金とは?相続税で否認されない対策を解説

名義預金とは?相続で問題になる理由
名義預金とは、通帳や口座の名義は家族(配偶者・子・孫など)でも、原資の拠出や管理・運用の実態から見て、実質的には被相続人(亡くなった方)の財産と判断され得る預金を指します。
相続税は「名義」ではなく「実質」で課税されるため、相続時に家族名義の預金が見つかると、「それは被相続人の財産ではないか」が争点になりやすいのです。
国税庁も、名義にかかわらず被相続人が資金を拠出しているなど「被相続人の財産と認められるもの」は相続税の課税対象になり得る、という考え方を示しています。
家族名義の預貯金が相続税申告に計上されないと、申告漏れとして指摘されるリスクが高まります。
名義預金が税務調査で見られるポイント
相続税・贈与税の調査は、現金・預貯金周りが焦点になりがちです。国税庁が公表する調査状況でも、贈与税の実地調査では無申告中心の指摘が多いことが示されています(近年は追徴税額も増加傾向)。
また、相続税の調査では「申告漏れ財産の構成」として現金・預貯金等の割合が一定程度を占めるデータも公表されています。
税務調査で典型的に確認されるのは、次の3領域です。
1) 原資は誰のお金か(拠出者)
- 被相続人の給与・事業収入・年金等からの拠出か
- 被相続人の口座から家族名義口座へ定期的に振り込まれていないか
- 名義人(子など)の収入水準に比して預金残高が不自然に大きくないか
ここで問われるのが、実質所有者は誰か、という一点です。
2) 管理・運用は誰がしているか(通帳・印鑑・暗証番号)
- 通帳・印鑑の管理が被相続人側にある
- 名義人が残高や入出金を把握していない
- 引出しや定期預金の継続手続を被相続人が行っている
裁決事例の解説でも、通帳・印鑑の保管が相続開始時まで被相続人の管理下にあり、名義人が処分可能な状況になかった場合は、贈与があったとはいえない(=相続財産)と判断された趣旨が示されています。
3) 贈与としての手当てがあるか(契約・記録・申告)
- 贈与契約書や贈与の合意を示す資料があるか
- 贈与後、名義人が自分の判断で使える状態になっているか
- 贈与税申告(必要な場合)を行っているか
ポイントは、贈与の事実を「後から説明できる形」で残せているか、です。
否認されないための3つのポイント
ここからが実務の核心です。名義預金は「作ってしまった」こと自体が即アウトというより、贈与としての整備が弱いと否認されやすい論点です。次の3点をセットで整えるのが現実的です。
ポイント1:贈与の合意を見える化する(名義預金 贈与 証拠)
贈与は「あげる・もらう」の意思の合致が前提です。税務調査では、合意が口頭のみだと立証が弱くなりがちです。
そのため、少なくとも以下を整備します。
- 贈与契約書(毎年贈与なら年ごとに作成)
- 贈与の対象・金額・日付・当事者の署名押印
- 資金移動のエビデンス(振込記録、払戻し記録)
「贈与契約書があれば絶対大丈夫」ではありませんが、ない場合に比べて説明力が大きく上がります。
ポイント2:管理主体を名義人へ移す(使える状態が重要)
名義人の財産であるなら、名義人が自分の意思で使える状態であることが自然です。
具体的には、次のような実態づくりが重要です。
- 通帳・届出印・キャッシュカードを名義人が保管
- ネットバンキング等のログイン情報も名義人が管理
- 入出金の判断も名義人が行う(親が指示する運用は避ける)
形式だけ名義人にして、実態が被相続人管理のままだと、否認リスクが残ります。
ポイント3:申告が必要なら期限内に行う(名義預金 税務調査への備え)
贈与税は、暦年課税では基礎控除(110万円)を超える場合に申告が必要です。また相続時精算課税を選択する場合は届出などの手続も伴います。
「本当は贈与のつもりだった」が通らない典型は、申告・届出が必要な局面で何もしていないケースです。
実務では、次の考え方が安全です。
- 基礎控除を超える贈与をするなら、贈与税申告までを1セットにする
- 相続時精算課税を検討するなら、制度要件と届出期限を先に確認する
- 過去分を含めて論点整理し、相続発生前に棚卸ししておく
名義預金のよくあるパターン比較表
「名義預金として否認されやすい」かどうかは、原資・管理・記録の3点で差が出ます。
| 観点 | 否認されやすい(名義預金と判断されやすい) | 認められやすい(贈与として説明しやすい) |
|---|---|---|
| 原資 | 被相続人の収入・口座から拠出が明確 | 名義人の収入や贈与としての資金移動が明確 |
| 管理 | 通帳・印鑑・暗証番号を被相続人が管理 | 通帳・印鑑等を名義人が管理し自由に利用 |
| 運用 | 定期継続・払戻し等を被相続人が実行 | 運用判断を名義人が実行(親は関与しない) |
| 記録 | 贈与契約書なし/合意の証拠が乏しい | 贈与契約書・振込記録などが揃っている |
| 税務 | 贈与税申告なし(必要でも未対応) | 必要に応じて贈与税申告・届出を実施 |
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実務での進め方(ステップ形式)
相続発生後に慌てて整合を取ろうとすると、説明が苦しくなります。可能であれば生前のうちに、次の手順で整理してください。
Step 1: 家族名義口座を棚卸しする
- 名義人ごとに口座一覧、残高、入金経路を整理
- 原資(誰の資金か)を口座単位で確認
Step 2: 口座ごとに「帰属」を決め、証拠を整備する
- 贈与として整理するなら、契約書・資金移動記録を作成
- 贈与後の管理主体を名義人へ移す(通帳・印鑑等)
Step 3: 申告・届出の要否を確認し、必要なら期限内に対応する
- 暦年課税の申告要否(基礎控除超)を判定
- 相続時精算課税の適用検討と届出
- 過去分の論点(修正申告等)がある場合は早期に専門家へ相談
よくある質問
Q: 親が子どもの名義で貯金していました。全部名義預金になりますか?
Q: 贈与契約書があれば税務署に否認されませんか?
Q: 税務調査で指摘されたら、どのように対応すべきですか?
まとめ
- 名義預金は「名義」ではなく「実質」で判断され、相続税で否認されると申告漏れになり得る
- 税務調査では「原資」「管理(通帳・印鑑等)」「贈与の証拠・申告」を重点的に確認されやすい
- 否認対策は、贈与の合意の見える化、管理主体の移転、必要な申告・届出の3点をセットで行う
- 生前に口座を棚卸しし、口座ごとに帰属と証拠を整理しておくと、相続時の説明が大幅に楽になる
- 個別事情で結論が変わるため、金額が大きい場合や過去分が絡む場合は専門家への早期相談が有効
参照ソース
- 国税庁「誤りやすい事例(申告書第11表の付表3関係)被相続人以外の名義の財産(預貯金)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-ayamarijireishu/ayamarijirei6.pdf
- 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
- 国税庁「贈与税の申告をされる方へ(令和7年分 確定申告特集)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/zouyozei.htm
- 国税庁「裁決評釈(家族名義預金と贈与の成否に関する論点)」: https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/journal/saisin/290731_kawaguchi.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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