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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

おしどり贈与の要件と活用法|婚姻20年の自宅贈与を解説

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おしどり贈与の要件と活用法|婚姻20年の自宅贈与を解説

おしどり贈与とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で「自宅(居住用不動産)または自宅取得資金」を贈与したときに、贈与税の基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで控除できる特例です。つまり、要件を満たせば最大2,110万円分まで贈与税の負担を抑えながら配偶者へ自宅を移せます。
一方で、名義の移し方や評価、申告書類の不備によって「控除が使えない」「想定外の税負担が出る」こともあります。特に、相続対策として使う場合は、他の制度(相続開始前贈与の加算など)との関係も含めて設計する必要があります。

おしどり贈与とは(配偶者贈与2,000万円の特例)

おしどり贈与は、正式には「贈与税の配偶者控除」と呼ばれる制度で、一定の要件を満たすと最高2,000万円(+基礎控除110万円)まで贈与税の課税価格から控除できます。

対象となる贈与は次の2パターンです。

  • 居住用不動産(国内の家屋、敷地、借地権など)の贈与
  • 居住用不動産を取得するための金銭の贈与(資金贈与)

また、この特例は同じ配偶者間では一生に一度しか使えません。将来の相続・資産移転全体の設計の中で「いつ使うか」が重要になります。

ここがポイント
贈与税がゼロになりそうな場合でも、配偶者控除の適用を受けるには原則として贈与税の申告が必要です。申告しないと特例は適用できません。

おしどり贈与の要件(婚姻20年贈与の条件)

国税庁の整理では、要件は大きく3つです。

  • 婚姻期間が20年以上であること(20年を「過ぎた後」の贈与であること)
  • 贈与財産が「居住用不動産」または「居住用不動産の取得資金」であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与で取得した不動産(または資金で買った不動産)に実際に住み、その後も住む見込みがあること

「住む見込み」の判断は個別事情に左右されます。転居予定・売却予定・別居中などの事情がある場合は、適用可否の事前確認が必須です。

居住用不動産の範囲(敷地だけの贈与も可能)

自宅の「建物」だけでなく、「敷地」や「敷地の一部」も対象になり得ます。例えば、建物は妻名義で敷地が夫名義のケースで、敷地を妻へ贈与する、といった設計もあり得ます。
ただし「敷地のみ」の場合、建物の所有関係や同居親族の状況など、追加の条件を満たす必要があります(敷地だけを単独で贈与すれば常にOK、ではありません)。

活用法(相続対策としての使いどころ)

おしどり贈与は「配偶者へ自宅の持分を移しておく」ための制度ですが、活用の狙いは主に次の3つに整理できます。

1) 自宅の名義を整理して、将来の分割をスムーズにする

相続の現場では、「自宅が被相続人単独名義で、配偶者と子が共有に…」という流れがトラブルの起点になることがよくあります。
生前に配偶者へ持分移転しておけば、相続開始時点で「配偶者の居住の安定」と「遺産分割の自由度」を両立しやすくなります。

2) 相続開始前贈与の持ち戻しとの関係を押さえる

相続税では、生前贈与が一定期間「相続税の課税価格に加算」される仕組みがあります(いわゆる持ち戻し)。この期間は改正により段階的に拡大しており、暦年課税の贈与は相続開始前7年以内が加算対象となる取扱いに変わっています(相続開始日によって適用関係は段階的です)。
一方で、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)の適用を受ける(または受けようとする)部分は、一定範囲で加算不要と整理されています。相続対策としての効果を正しく見積もるには、この制度間の接続を必ず確認します。

3) 「配偶者に資産を寄せすぎない」バランス設計

配偶者に自宅持分を移すと、将来の売却・住み替え・介護施設入居などで意思決定がしやすくなる半面、配偶者側の相続(第二次相続)で子の負担が増える設計になってしまうことがあります。
税理士法人 辻総合会計では、一次相続だけでなく第二次相続まで見通して、持分移転の割合(例:1/2、1/3)と他財産の配分を同時に設計することが多いです。

申告手続き(居住用不動産贈与の進め方)

おしどり贈与は「やったら自動で2,000万円控除」ではなく、贈与税の申告が要件です。実務は次の流れで進めます。

Step 1: 贈与の内容を決める(持分・対象・資金贈与の有無)

  • 建物・敷地・持分割合を決める
  • 住宅ローンがある場合は、金融機関の承諾・返済負担との整合を確認する(名義だけ移して返済は贈与者、はリスク要因になりやすいです)

Step 2: 名義変更(登記)と評価資料の準備

  • 不動産の登記手続き(司法書士と連携)
  • 贈与税申告用に評価明細書などを準備(不動産の評価は税務上のルールで行います)

Step 3: 必要書類を揃えて贈与税申告(翌年3月15日まで)
一般的に、国税庁が求める添付書類は次のとおりです(代表例)。

  • 戸籍謄本(または抄本)
  • 戸籍の附票の写し
  • 登記事項証明書等(一定の場合は不動産番号の記載により添付省略が可能な取扱いあり)
ここがポイント
贈与した年に贈与者が亡くなるケースでは、相続と贈与の関係整理が特に重要です。特例適用の可否や、加算の扱いが論点になります。生前にスキームだけ決めて「申告まで到達していない」状態は避けましょう。

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比較表:おしどり贈与と他の選択肢(暦年贈与・相続)

「配偶者 贈与 2000万円」で検索される方の多くは、何が一番得かよりもうちの事情に合うかを知りたいはずです。判断軸を表にまとめます。

←横にスクロールできます→
比較軸おしどり贈与(配偶者控除)暦年贈与(通常の贈与)相続で配偶者へ取得
税負担の特徴最大2,000万円+110万円控除毎年110万円の基礎控除中心配偶者の税額軽減など別制度で調整
使える財産居住用不動産・取得資金に限定原則どの財産でも可原則どの財産でも可
手続きの要点贈与税申告が必須贈与税申告はケースによる相続税申告・遺産分割が中心
リスク・注意点一生に一度、居住要件、名義・評価加算対象期間(相続前贈与)の影響分割協議が長期化しやすい

よくある質問

Q: 配偶者に2,000万円まで贈与しても、必ず申告が必要ですか? ▼
原則として必要です。おしどり贈与は「申告により適用を受ける」特例で、申告しないと配偶者控除が使えません。添付書類(戸籍、附票、登記事項証明書等)も求められます。
Q: 敷地だけ(または建物だけ)の贈与でも、おしどり贈与は使えますか? ▼
条件を満たせば可能です。居住用家屋と敷地は一括贈与でなくてもよい整理ですが、「敷地のみ」の場合は建物の所有関係(配偶者や同居親族が建物を所有している等)の条件が追加で問題になります。
Q: 贈与した年に夫(贈与者)が亡くなった場合、おしどり贈与は無効になりますか? ▼
一律に無効ではありません。相続開始の年の贈与は相続税の計算に取り込まれるのが原則ですが、婚姻20年以上の配偶者が取得した居住用不動産について、過去に配偶者控除を使っていないなど一定要件を満たす場合、配偶者控除相当額の扱いが論点となります。個別事情で結論が変わるため、早めの税理士相談が安全です。
Q: おしどり贈与は、相続税対策として必ず有利ですか? ▼
必ずしもそうとは限りません。一次相続で配偶者へ寄せすぎると、第二次相続で子の負担が増えることがあります。持分割合、他財産の配分、将来の住み替えまで含めて設計するのが実務的です。

まとめ

  • おしどり贈与は、婚姻20年以上の配偶者へ自宅等を贈与したときに最大2,000万円(+110万円)控除できる贈与税の特例
  • 要件は「婚姻20年以上」「居住用不動産(または取得資金)」「翌年3月15日までに居住し住み続ける見込み」
  • 同一配偶者間で一生に一度の制度なので、使うタイミングと持分割合が重要
  • 適用には贈与税の申告と添付書類が必要。名義・評価・ローンなど実務論点が多い
  • 相続開始前贈与の加算(持ち戻し)など周辺制度も踏まえ、一次相続と第二次相続を通した設計が安全

参照ソース

  • 国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
  • 国税庁「No.4455 配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4455.htm
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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