
執筆者:辻 勝
会長税理士
親が亡くなったらやること順番10選|税理士が解説

親が亡くなったら最初にやることは「証明」と「締切」整理です
親が亡くなった直後に最優先なのは、死亡の事実を公的に証明できる書類を揃え、締切が短い手続き(死亡届7日・相続放棄3か月など)を先に押さえることです。
通帳、保険、スマホは「急いで触るほど不利になる」落とし穴がある一方で、資金繰り(葬儀代等)だけは早めの手当が必要です。ここでは、40〜60代で相続が初めての方が迷わないよう、順番で10個に絞って解説します。
死亡直後〜7日以内にやること(1〜4)
1. 死亡診断書(死体検案書)を受け取る
まず医師から「死亡診断書(または死体検案書)」を受領します。死亡届と一体になっている様式が一般的で、後の手続きで提示を求められることが多いです。
紛失すると再発行に時間がかかるため、コピー・写真保管を早めに行いましょう。
2. 死亡届を提出する(原則7日以内)
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村へ提出するのが原則です。提出先は死亡地・本籍地・届出人所在地の市区町村です。
この届出が遅れると火葬許可証など後続の実務が詰まります。
3. 火葬許可証の取得〜葬儀会社の手配
多くの自治体では死亡届提出と連動して火葬許可証が交付され、火葬・葬儀の段取りに進みます。
葬儀社を決める前に「見積(総額・追加費用条件・キャンセル条件)」だけは確認し、立替負担が誰に偏らないよう家族内で合意を作っておくと後の揉め事を減らせます。
4. 連絡リストを作る(勤務先・年金・金融機関・保険)
直後は関係者連絡が集中します。先に「誰へ何をいつ連絡したか」を表にしておくと、手続き漏れを防げます。
特に年金は、受給者が亡くなった場合の手続き(死亡の届出・未支給年金など)が論点になります。
口座凍結はいつ起きる?「葬儀代だけ先に引き出す」現実解(5〜6)
5. 口座凍結の仕組み:金融機関が死亡を把握すると停止しやすい
一般に、金融機関が名義人の死亡を把握すると、預金口座の払戻し等が制限される運用になります。
そのため「連絡をする前に引き出すべきか」と悩みがちですが、無理な引き出しは後日、相続人間の説明コスト(使途証明・不公平感)を増やしやすいのが実務です。
6. 葬儀代・当面の生活費は「遺産分割前の払戻し制度」を検討する
近年は、遺産分割前でも一定額について払戻しを受けられる制度が整備されています。代表例として、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関窓口で一定額の払戻しを受ける仕組みや、家庭裁判所の手続で仮払いを認めてもらう枠組みがあります。
この制度趣旨は、生活費や葬儀費用等の資金需要に対応するためと整理されています。
Step 1: まず「必要額」と「支払期限」を確定する
葬儀費用、火葬料、僧侶関係、会食、返礼品、病院の清算などをリスト化し、いつまでにいくら必要かを固めます。
Step 2: 相続人関係(誰が相続人か)を仮確定する
戸籍の収集が完了していなくても、配偶者・子など分かる範囲で整理します。金融機関は相続人確認書類を求めます。
Step 3: 金融機関に「遺産分割前の払戻し」相談をする
金融機関の必要書類(死亡の証明、相続人の本人確認、関係を示す戸籍等)は異なります。窓口で要件・上限・手続き期間を確認します。
スマホ・サブスク・SNSの落とし穴(7)
7. スマホは「解約より先にログイン情報の保全」をする
親のスマホは、銀行・証券・保険・クレカ・通販・サブスク・ポイント・SNSの入口です。解約を急ぐと、二要素認証(SMS)やバックアップが消え、確認不能になるケースがあります。
おすすめの順番は、解約より先に「契約の洗い出し」と「ログイン手段の確保」です。
Step 1: 端末ロック解除と回線契約者名義の確認
端末パスコードが不明だとデータにアクセスできません。家族の合意のもと、解除可能なうちに確認します。
Step 2: 引落先(口座・カード)とサブスク一覧を作る
メール、SMS、アプリ課金履歴、クレカ明細から、継続課金を洗い出します。
Step 3: 必要データのバックアップ後に解約・停止へ
写真・連絡先・重要メールなどを保全してから、回線解約・サブスク解約・SNSの追悼設定/凍結申請へ進みます。
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生命保険は「3年」の思い込みで取りこぼさない(8)
8. 生命保険は請求しないと支払われない。まず「契約の有無」を確認する
生命保険は、受取人が請求しないと支払われません。親の郵便物、保険証券、通帳の保険料引落、勤務先の団体保険などから契約を洗い出します。
「保険金請求の時効(短期消滅時効)」が問題になることがあるため、後回しにしすぎないことが重要です(契約類型や約款で取扱いが変わる場合があります)。
| 項目 | 期限の目安 | まず確認するもの |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡診断書(検案書) |
| 相続放棄 | 3か月以内(原則) | 借金・保証・未払税金の有無 |
| 保険金請求 | 契約・約款で異なる(時効の論点あり) | 保険証券、引落履歴、勤務先制度 |
相続放棄(3か月)が迫る前の借金チェックリスト(9〜10)
9. 3か月のカウントは「死亡日」ではなく「相続開始を知ったとき」基準
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所へ申述します。
実務では「親が亡くなった=知った」と扱われやすいため、初動が遅れると選択肢が狭まります。
10. 借金チェックリスト(放棄検討のための最低限)
相続放棄を検討するなら、プラス財産より先にマイナス(債務・保証)を確認します。以下は最低限の確認項目です。
- カードローン・消費者金融:契約書、アプリ、明細、郵便物
- クレジットカード:リボ残高、分割残、未確定請求
- 住宅ローン・自動車ローン:残高証明、団信(団体信用生命保険)の有無
- 連帯保証:保証契約書、勤務先・事業関係の保証
- 税金・社会保険料:督促状、差押予告、自治体通知
- 賃貸・介護施設:未払家賃、原状回復、退去精算
- 医療費:入院費の未払、限度額適用の手続状況
Step 1: 郵便物を「金融・公的・その他」に分ける
督促や通知はここに集中します。まず仕分けだけで全体像が見えます。
Step 2: 残高・債務は「証拠(書面/画面)」で残す
口頭メモだけだと後で争点になります。残高証明、明細、スクリーンショットを保存します。
Step 3: 迷ったら熟慮期間の伸長も選択肢に入れる
調査しても判断できない場合、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる制度があります(要件・運用は個別です)。
よくある質問
Q: 口座凍結が怖いので、連絡前にATMで引き出していいですか?
Q: 親のスマホをすぐ解約しても問題ないですか?
Q: 相続放棄の3か月に間に合わなさそうです。どうすれば?
まとめ
- 最初の山は「死亡診断書」と「死亡届7日」で、後続手続きの詰まりを防ぐ
- 口座凍結は起こり得るため、葬儀代などは「遺産分割前の払戻し制度」を含め正攻法で確保する
- スマホは解約を急がず、契約洗い出しとログイン手段の確保を先に行う
- 生命保険は請求しないと支払われない。契約の有無確認を早めに着手する
- 相続放棄は原則3か月。借金・保証・未払の証拠を集めて期限前に判断する
参照ソース
- 法務省「死亡届」: https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html
- 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
- 法務省「相続された預貯金債権の払戻し」: https://www.moj.go.jp/content/001278308.pdf
- e-Gov法令検索(保険法): https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=420AC0000000056
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」: https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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