
執筆者:辻 勝
会長税理士
路線価とは?調べ方と相続税評価の使い方|税理士が解説

相続税・贈与税で土地を評価するときの基準が路線価です。土地を引き継ぐ方にとって「いくらで評価するのか」が曖昧だと、申告の見通しも遺産分割協議も進みません。路線価とは、道路(路線)ごとに定められた宅地の1㎡当たりの価額(千円単位)で、相続税評価の出発点になります。まずは「どこで確認し、どう読んで、どう計算に落とすか」を押さえましょう。
税理士法人 辻総合会計でも、相続税の初回相談で「路線価図は見たが、評価額に落とし込めない」という声をよく伺います。この記事では、匿名化した典型ケースを交えつつ、初学者でも手順通りに進められる形で整理します。
路線価とは何か:相続税評価で使う理由
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(千円単位)です。相続税・贈与税では土地等を「時価」で評価するのが原則ですが、納税者が毎回時価を把握するのは現実的ではありません。そこで、課税の公平と申告の便宜の観点から、国税庁が毎年「路線価等(路線価・評価倍率)」を公開し、評価の基準として運用しています。
路線価は「売買の実勢価格」そのものではありません。相続税評価のための共通基準であり、相続税申告書上の土地評価は、この基準に各種補正(画地調整)を掛けて算定します。
路線価の見方:路線価図で何を読むのか
路線価図を開くと、道路沿いに「300D」のような表示が見つかります。ここで最低限読むべき要素は次の3つです。
- 数字:1㎡当たりの価額(千円単位)
例:300 → 300千円=300,000円/㎡ - アルファベット:借地権割合の区分(借地権・貸宅地評価で使用)
- 地区区分(路線価図上の区分表示):奥行価格補正率などの画地調整率の適用に影響
借地権割合は、借地権の価額(自用地価額×借地権割合)や貸宅地の評価で重要になります。路線価図には、借地権割合の区分が併記されているため、「土地が貸地(借地権が付着)かどうか」を把握したうえで参照します。
また、路線価方式では、路線価に対して奥行価格補正率や角地・二方路線の加算率などを適用し、地形・接道状況の違いを調整します。路線価の数字だけで判断せず、「補正後の単価×地積」で考えるのがコツです。
路線価の調べ方:国税庁「路線価図」で検索する手順
路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で公開されています。実務で迷いにくい手順は次の通りです(PC推奨)。
Step 1: 評価する年分を決める
相続税・贈与税は「課税時期(相続開始日/贈与日)」が属する年分の路線価等を使います。年の途中で相続が発生しても、その年分の路線価等で評価します(申告期限との関係で、概算が必要な場面もあるため後述します)。
Step 2: 都道府県 → 市区町村 → 町丁名で絞り込む
地番検索ではなく「町丁名索引」から入ると迷いにくいです。同名の町がある地域は、周辺の接続図(図番号)も確認します。
Step 3: 路線価図(PDF)で対象道路の表示を確認する
対象地が接する道路の表示(例:300D)を確認し、「正面路線」をどれにするか当たりを付けます。角地・準角地・二方路線の場合は、どの路線を正面にするかで評価が変わるため、次の計算ステップに進む前に整理しておきます。
Step 4: 路線価がない場合は評価倍率表を確認する
路線価が定められていない地域は「倍率方式」です。同じ市区町村でも、路線価地域と倍率地域が混在することがあります。
相続税評価への活用方法:路線価方式の計算(基本形)
路線価地域の宅地は路線価方式で評価します。基本形は次の式です。
- 評価額 = 路線価(円/㎡) × 画地調整率 × 地積(㎡)
画地調整率には、代表例として次が含まれます。
- 奥行価格補正率(奥行が標準から外れる調整)
- 側方路線影響加算率(角地など)
- 二方路線影響加算率(表裏で路線に接するなど)
- 不整形地補正、間口狭小補正、がけ地補正 など
計算例(シンプルな一路線)
- 路線価:300千円(=300,000円/㎡)
- 奥行価格補正率:0.97
- 地積:200㎡
1㎡当たり:300,000 × 0.97 = 291,000円
評価額:291,000 × 200㎡ = 58,200,000円
このように、路線価の表示をそのまま地積に掛けるのではなく、補正を挟むのがポイントです。
角地・二方路線の注意点(正面路線の判定)
角地など複数路線に接する宅地では、まず「正面路線」を判定し、正面路線価に奥行補正を掛けたうえで、側方路線(または裏面路線)の影響加算額を加える形になります。正面路線の判定や、地区が異なる場合の扱いには実務上の落とし穴があるため、判断に迷う場合は評価明細書の様式に沿って検算すると安全です。
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路線価方式と倍率方式の違い(比較表)
土地評価で混同が多いのが「路線価方式」と「倍率方式」です。ざっくり言えば、路線価が付く地域は路線価方式、それ以外は倍率方式です。
| 項目 | 路線価方式 | 倍率方式 |
|---|---|---|
| 対象地域 | 路線価が定められている地域 | 路線価が定められていない地域(倍率地域) |
| 基本計算 | 路線価×画地調整率×地積 | 固定資産税評価額×評価倍率 |
| 実務の要点 | 正面路線判定・各種補正の適用 | 固定資産税評価額の把握、倍率表の選択 |
| つまずきやすい点 | 角地・不整形・セットバック等の補正 | 固定資産税評価額の年度・課税明細の読み違い |
相続税申告では、同じ市内でも路線価方式と倍率方式が混在することがあるため、「まず地域区分を確定する」ことが第一歩になります。
よくある落とし穴と実務対応:迷ったらここを確認
最後に、相談頻度が高いポイントを実務目線で整理します。
- 評価単位(1画地)の判定
隣接地を一体利用している、私道負担がある、セットバックがある等で評価単位が変わることがあります。図面と現況確認が重要です。 - 地積は登記簿か実測か
原則は登記簿地積で進めつつ、明らかな相違がある場合は測量や資料の整合を検討します。 - 借地・貸宅地の扱い
「土地が自用地(更地)か」「借地権が付着しているか」で評価が大きく変わります。契約書・地代授受・利用状況で実態把握が必要です。 - 申告期限までに路線価が公表されないのでは?
路線価は毎年公表されます。相続税申告期限(原則10か月)との関係で、通常は申告作業中に当年分が公表されるため、概算と確定評価を分けて段取りするのが実務的です。
免責として、本記事は一般的な整理であり、個別事情(地形、接道、利用区分、権利関係、災害・規制など)により評価結果は変わります。相続税申告は金額影響が大きいため、判断に迷う場合は税理士等の専門家に相談してください。
よくある質問
Q: 路線価はいつの価格を見ればよいですか?
A:
相続税・贈与税は課税時期(相続開始日/贈与日)が属する年分の路線価等を用いて評価します。年の途中で発生しても、その年分で評価します。Q: 路線価図に数字が見当たりません。どうすればいいですか?
A:
路線価が定められていない地域は倍率方式です。同じ市区町村でも路線価地域と倍率地域が混在することがあるため、評価倍率表の該当地区で「固定資産税評価額×倍率」を確認してください。Q: 路線価の数字に補正を掛けるのはどんなときですか?
A:
奥行が標準と異なる、角地・二方路線に接する、不整形地、間口が狭い、がけ地、セットバックが必要など、画地の個別性がある場合に画地調整率を適用します。路線価×地積の単純計算にならないケースが多い点に注意してください。まとめ
- 路線価は相続税・贈与税で土地を評価するための基準で、路線ごとに1㎡当たり千円単位で示される
- 路線価図は国税庁「財産評価基準書」で確認し、年分・市区町村・町丁名から辿ると迷いにくい
- 評価額は「路線価×奥行価格補正率等の画地調整率×地積」が基本で、角地・不整形地は要注意
- 路線価がない地域は倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)で評価する
- 権利関係や評価単位の判定で結果が大きく変わるため、迷う場合は専門家に相談する
参照ソース
- 国税庁「No.4604 路線価方式による宅地の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604.htm
- 国税庁「路線価図の説明」: https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
- 国税庁「令和6年分の路線価等について」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/rosenka/index.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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