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相続・事業承継コラム
作成日:2025.05.02
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

遺言書の書き方|自筆証書遺言の作成手順と要件|税理士が解説

10分で読めます
遺言書の書き方|自筆証書遺言の作成手順と要件|税理士が解説

遺言書の書き方で最重要なのは「無効にしない」こと

遺言書の書き方で最も重要なのは、形式ミスで遺言書が無効にならないようにすることです。自筆証書遺言は手軽ですが、民法の方式要件を外すと、相続の場面で「使えない紙」になりかねません。
税理士法人 辻総合会計でも、相続税申告の局面で「遺言はあるのに手続が進まない」「書き直しができない」という相談を繰り返し見てきました。ここでは、自分で作成する方向けに、作成要件・手順・例文・保管制度まで、実務で外せないポイントに絞って解説します。

自筆証書遺言とは?メリット・デメリット

自筆証書遺言は、本人が紙に書いて作る遺言です。公証役場に行かずに作成できる一方で、方式・保管・発見・改ざんリスクが論点になります。

  • メリット:費用を抑えやすい/思い立ったときに作成できる/内容の自由度が高い
  • デメリット:方式不備で無効になりやすい/紛失・未発見・改ざんリスク/相続開始後の手続(検認など)が重くなり得る
ここがポイント
自筆証書遺言で「全文・日付・氏名の自書」と「押印」が要件となる点は、法務省の案内でも明示されています。日付が特定できない表現(例:「吉日」)は不可とされています。

遺言書が無効になりやすい典型パターン

「遺言書 無効」と検索される多くは、次の落とし穴にはまっています。作成前に、失敗パターンを逆算して潰しておくのが最短です。

方式要件の欠落(全文自書・日付・署名押印)

法務省の案内では、自筆証書遺言として受け付けられる前提として、遺言書の全文・作成日付・氏名を自書し、押印することが必要とされています。
ここを外すと、相続手続で争点化しやすく、最悪の場合に遺言として使えません。

  • 全文自書が必要(本文をパソコンで印字して署名だけ、は危険)
  • 日付は特定できる形で正確に記載(「令和○年○月○日」など)
  • 署名押印が必要(押印の扱いは争点になりやすいため省略しない)

財産目録を添付する場合の「全ページ署名押印」

近年の実務で多いのが、預金・不動産が多く、本文中に書き切れず目録を別紙にするケースです。法務省の案内では、財産目録はパソコン作成や通帳コピー添付でも可能としつつ、目録の全ページに署名押印が必要とされています。
「目録の一部ページに署名がない」「コピーに押印がない」は、後から手当てが困難です。

訂正方法が不適切(書き直し・二重線だけ等)

書き間違いを二重線で消すだけ、修正テープを使う、余白に追記して済ませる、といった訂正はリスクが高い運用です。訂正は「どこをどう直したか」が第三者にも追える形にし、署名押印を伴う形で整えるのが安全です(詳細は後述)。

相続人・財産の特定が曖昧

無効ではなくても「執行不能」になり得るのが、対象の特定不足です。例えば「長男に自宅を相続させる」だけでは、どの不動産か特定できず、登記で止まることがあります。不動産は登記事項(所在・地番・家屋番号等)で特定するのが実務の基本です。

自筆証書遺言の正しい書き方(手順)

自筆証書遺言を「相続手続で使える形」にするための、最小限の手順です。作成前に、戸籍・不動産・預金などの資料を揃えると誤記が減ります。

Step 1: 誰に何を渡すか(目的と優先順位)を決める

  • 配偶者の生活費確保、事業承継、介護負担への配慮など、目的を1つに絞ると条文が簡潔になります。
  • 遺留分(最低限保障)に配慮しないと、後で請求が起きて紛争化しやすくなります。

Step 2: 財産を洗い出し、特定情報を控える

  • 不動産:登記事項証明書の情報(所在・地番等)
  • 預貯金:金融機関名・支店・種別・口座番号
  • 有価証券:証券会社・口座種別・口座番号
    この段階で財産目録を別紙にするか判断します。

Step 3: 本文を「全文自書」で作成する

最低限の型は次のとおりです(例文は後述)。

  • 「遺言書」という表題
  • 遺言事項(誰に、何を、どの割合で)
  • 作成日付(特定できる具体日)
  • 氏名の自書
  • 押印

Step 4: 目録を別紙にする場合は「全ページ署名押印」

目録をパソコン作成・コピー添付にする場合は、全ページに署名押印が必要とされています。ページ番号(例:1/3, 2/3, 3/3)も付けると、差替え疑義が出にくくなります。

Step 5: 訂正が必要なら、訂正ルールで処理する

訂正箇所が分かるように示し、訂正した旨を付記し、署名し、訂正箇所に押印する運用が推奨されます。迷ったら「書き直し」が結果的に安全です。

Step 6: 保管方法を決める(自宅保管か法務局保管か)

自宅金庫保管は「発見されない」「改ざんされる」リスクが残ります。法務局の保管制度を使うと、相続開始後の手続が軽くなるポイントがあります(後述)。

遺言書の例文(最低限の型)と書き分け

ここでは「型」を示します。財産・家族関係で条文の最適解は変わるため、個別事情がある場合は専門家確認を推奨します。

例文(不動産と預金を指定する基本形)

(表題)遺言書
1 私(氏名)は、次のとおり遺言する。
2 妻 ○○○○(生年月日)に、下記不動産を相続させる。
 (不動産の表示:登記情報をもとに特定)
3 長男 ○○○○(生年月日)に、○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○の預金の全部を相続させる。
4 本遺言の遺言執行者として、○○○○を指定する。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○(自書) 印

ポイントは「財産の特定」と「相続させる/遺贈する」の使い分けです。相続人に渡す場合は「相続させる」と書く運用が多く、相続人以外(内縁、孫、法人等)に渡す場合は「遺贈する」を用います。

ここがポイント
遺言執行者の指定は万能ではありませんが、預金解約や名義変更の実務で手続が揃いやすくなる場面があります。相続人間の対立が見込まれる場合ほど、執行者条項の有無が効きます。

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自筆証書遺言と保管制度・公正証書遺言の違い(比較)

自筆証書遺言は「作成」より「保管」と「相続開始後の手続」が問題になりやすい類型です。法務局の自筆証書遺言書保管制度の案内(法務局資料)では、保管を使うことで家庭裁判所の検認が不要になる点などが整理されています。また裁判所も、法務局保管の自筆証書遺言に関する「遺言書情報証明書」は検認不要と説明しています。

←横にスクロールできます→
項目自筆(保管制度なし)自筆(法務局保管)公正証書遺言
作成の手間本人が作成本人が作成+予約・申請公証人が作成に関与
紛失・未発見起こり得る低減(法務局で管理)原本は公証役場で管理
改ざんリスク残る低減(原本・画像を管理)低い
家庭裁判所の検認原則必要原則不要(証明書で対応)不要
向くケース財産が少ない/急ぎ形式の外形確認も受けたい紛争リスク高い/複雑

※保管制度では、保管官が方式を外形的に確認する一方、内容相談はできない点に注意が必要です(法務局資料の説明趣旨)。

作成後の流れ:保管・検認・相続手続

相続開始後の実務でつまずきやすいのが、遺言書の「提出」や「証明」の部分です。

  • 自宅保管の自筆証書遺言:相続人が発見したら、家庭裁判所の検認手続を経て、金融機関・法務局(登記)等の手続へ進む流れが基本です。裁判所は、検認は有効無効を判断する手続ではなく、偽造変造防止のために現状を明確化する手続だと説明しています。
  • 法務局保管の自筆証書遺言:相続人等が「遺言書情報証明書」の交付を受けて手続を進める運用になり、裁判所も当該証明書は検認不要と説明しています。制度側の通知もあり、発見されないリスクの低減に寄与します。なお法務省案内では、死亡時の指定者通知の対象者指定が令和5年10月2日から最大3名まで可能になった旨が示されています。

よくある質問

Q: 遺言書を自分で書くとき、ボールペンでよいですか? ▼

A:

筆記具自体よりも、方式要件(全文自書・日付・氏名・押印)を満たし、改ざんや滲みのリスクが低い形で保存できるかが重要です。消せるペンや鉛筆は避け、にじみにくい筆記具を推奨します。作成後は保管方法(自宅か法務局保管)まで含めて設計してください。
Q: 財産目録をパソコンで作ると無効になりますか? ▼

A:

目録自体はパソコン作成や資料添付でも作成可能とされています。ただし、その場合は目録の全ページに署名押印が必要とされており、ここを落とすと後の手続で問題化しやすくなります。
Q: 法務局に保管した自筆証書遺言でも、家庭裁判所の検認は必要ですか? ▼

A:

裁判所は、法務局に保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認不要と説明しています。相続開始後は、証明書の取得手続を優先して検討すると実務が進みやすくなります。
Q: 遺言書が無効になりやすいのはどんなときですか? ▼

A:

多いのは、日付が特定できない(吉日など)、本文が印字で全文自書を満たさない、署名押印が欠けている、目録の署名押印漏れ、訂正の仕方が不適切、といった形式面です。まずは「方式要件のチェックリスト」を作り、作成前に潰しておくのが有効です。

まとめ

  • 自筆証書遺言は手軽だが、方式要件を外すと無効になり得る
  • 最低限は「本文の全文自書」「日付」「署名押印」を確実に満たす
  • 財産目録を別紙にするなら、全ページの署名押印まで含めて設計する
  • 相続開始後の手続は「検認」か「証明書取得」かで分岐するため、保管方法が重要
  • 迷う場合は、争点になりやすい部分(不動産特定、遺留分、執行者)から専門家レビューを入れる

参照ソース

  • 法務省「遺言書の様式等についての注意事項(自筆証書遺言書保管制度)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
  • 裁判所「遺言書の検認」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
  • 法務局(茨城・水戸)PDF「自筆証書遺言書保管制度 ご案内」: https://houmukyoku.moj.go.jp/mito/page000001_00041.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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