
執筆者:辻 勝
会長税理士
数次相続とは?連続相続の申告方法|税理士が解説

数次相続とは?まず結論と全体像
数次相続とは、一次相続(最初の被相続人の相続)の遺産分割や申告手続きが終わらないうちに、相続人の一人が亡くなり二次相続が発生する状態です。一次相続の「取り分」が確定していなくても、相続税申告の期限は原則として延びません。
困る場面は典型的に、相続人が多い・不動産が中心・揉めている等で一次相続が長引くケースです。一次と二次の手続きを同時並行で進める必要があり、申告期限(10か月)を落とさない設計が核心になります。
税理士法人 辻総合会計でも、クリニック院長ご家族のように不動産・自社株・預金が混在する相続で「協議中に次の相続が発生した」という相談は珍しくありません。実務では「未分割申告+後日の修正」を前提に、証拠(協議状況・評価根拠・資金繰り)を丁寧に残すことが重要です。
数次相続で何が起きる?相続関係と課税の考え方
数次相続の基本構造(権利は相続分として引き継がれる)
例:父Aが死亡(一次相続)→相続人は母B・子C。遺産分割が未了のまま母Bが死亡(二次相続)。
このとき、母Bが一次相続で持っていた「Aの遺産を受け取る権利(相続分)」は、二次相続でBの相続人(たとえば子C)に承継されます。つまり二次相続の申告では、B自身の財産に加えて、一次相続におけるBの持分(未確定でも概念としての権利)を財産として捉えることになります。
相続税の申告期限は原則「死亡を知った日の翌日から10か月」
相続税の申告・納税は、原則として「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。一次相続が長引いても、期限が自動で伸びるわけではありません(一次も二次も、それぞれ別に10か月が走ります)。出典:国税庁「相続税の申告と納税」【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm】
遺産分割がまとまらない場合でも、期限内に「未分割申告」が必要
遺産分割が未了でも、申告期限までに申告は必要です。この場合、各人が民法上の相続分(法定相続分)等で取得したものとして計算して申告・納税します。出典:国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm】
さらに実務上の注意点として、未分割申告だと配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、分割を前提とする特例が使えない(または使いにくい)形での申告になりがちです。したがって、期限内は未分割で「ひとまず申告」、その後に分割成立→必要に応じて更正の請求等、という二段構えが現実的です(適用要件の確認が前提)。
数次相続の申告手順(一次・二次を同時に組み立てる)
ここでは「一次相続(A)手続き中に、相続人Bが亡くなった」ケースを前提に、申告の組み立て方を整理します。
Step 1: 相続関係図を2段で確定する(一次と二次を分ける)
- 一次相続(A)の相続人は誰か
- 二次相続(B)の相続人は誰か
- 代襲が絡むか、相続放棄があるか
法定相続分の確認は、国税庁「相続人の範囲と法定相続分」が整理に役立ちます【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm】。ここが曖昧だと、未分割申告の前提(誰がどの割合で取得した扱いか)が崩れます。
Step 2: 一次相続(A)の申告方針を決める(分割成立の見込みで分岐)
- 分割が申告期限までに成立しそう:分割内容で申告(特例も検討)
- 難しい:未分割申告(法定相続分等で計算)で期限内提出【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm】
このとき、一次相続(A)の申告書上の「納税者(相続人)」には、すでに亡くなっているB本人は登場できません。Bの地位はBの相続人に承継されているため、一次相続(A)の申告実務はBの相続人がBの持分を含めて申告する形になります(相続関係の設計が重要)。
Step 3: 二次相続(B)の財産に「一次相続の相続分(権利)」を入れる
二次相続(B)の申告財産は、B固有の財産(預金・不動産等)に加え、一次相続(A)におけるBの相続分(未分割なら概念上の持分)を含めて評価・計上します。一次相続の分割が未了であれば、二次相続側も未確定要素を含むため、評価根拠(不動産評価、預金残高、債務、葬式費用など)を一次・二次で整合させる必要があります。
Step 4: 期限管理は「Aの10か月」「Bの10か月」を別管理する
- Aの申告期限:A死亡を知った日の翌日から10か月【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm】
- Bの申告期限:B死亡を知った日の翌日から10か月【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm】
数次相続で最も多い失敗は、一次相続の協議に集中して二次相続の期限を落とすことです。実務では、期限が早い方(先に到来する方)から逆算して、未分割での提出も織り込んでスケジュールを組みます。
数次相続の遺産分割(協議)の実務ポイント
参加者が増える:一次の協議に二次の相続人が入る
一次相続の相続人Bが亡くなると、一次相続の遺産分割協議は、Bの相続人が当事者として参加します。結果として、当事者が増え、合意形成が難しくなるのが典型です。
一次の分割が二次の分割にも直結する
二次相続の遺産分割は、Bの財産の分割ですが、その中に一次相続の持分(権利)が含まれるため、一次の分割内容が二次の課税関係に影響します。ここが数次相続の難所です。
税理士法人 辻総合会計の現場では、次の優先順位で整理することが多いです。
- 税務期限(申告・納税)を守る:必要なら未分割申告で提出
- 分割協議は、争点と非争点を分離して短期決着を狙う
- 後日、特例適用や税額調整が可能な余地を残す(書面・証拠)
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数次相続と混同しやすい制度との違い(比較表)
数次相続の相談では「相次相続控除」や「代襲相続」と混同されがちです。論点が違うため、まず切り分けます。
| 項目 | 数次相続 | 相次相続控除 | 代襲相続 |
|---|---|---|---|
| 何の話か | 手続き中に次の相続が発生した状態 | 10年以内の連続相続で相続税を一定控除する税額控除 | 本来の相続人が先に死亡等で、その子等が代わって相続する相続人の決まり |
| 主な困りごと | 期限管理・未分割申告・協議参加者増 | 控除要件・計算(税額の逓減) | 相続人と法定相続分の確定 |
| 参照の入口 | 申告期限・未分割申告の考え方【4205】【4208】 | 国税庁「相次相続控除」【4168】 | 相続人の範囲と法定相続分【4132】 |
相次相続控除は、前回の相続開始前10年以内に被相続人が相続で財産を取得し相続税が課税されていた場合、今回の相続税から一定額を控除できる制度です【https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm】。数次相続そのものを解決する制度ではありませんが、数次相続のケースで条件に合致すれば、結果的に二次相続の税負担を和らげる可能性があります。
よくある質問
Q: 数次相続だと、一次相続の申告期限は延びますか?
Q: 遺産分割がまとまらない場合、どうやって申告しますか?
Q: 二次相続(後に亡くなった相続人)の申告には、一次相続の財産も入りますか?
Q: 数次相続なら相次相続控除は必ず使えますか?
まとめ
- 数次相続は、一次相続の手続き中に二次相続が発生する状態で、一次・二次を同時に組み立てる必要がある
- 相続税の申告期限は原則10か月で、遺産分割未了でも期限内に未分割申告が必要【4205】【4208】
- 二次相続の申告財産には、一次相続における相続分(権利)も含まれるため、評価と期限管理を二段で行う
- 混同しやすい「相次相続控除」「代襲相続」は論点が別。特に相次相続控除は要件確認が必須【4168】
- 実務は「期限内の申告を優先し、分割成立後に必要な手続きで調整する」設計が現実的
参照ソース
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm
- 国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
- 国税庁「No.4168 相次相続控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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