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中小企業向けコラム
作成日:2025.05.10
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

美容室・サロンの開業届と経費の考え方(2026年版)|税理士が解説

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美容室・サロンの開業届と経費の考え方(2026年版)|税理士が解説

美容室・サロンの開業届と経費の考え方とは

美容室・サロンの開業でつまずきやすいのは、「何をいつ税務署へ出すか」と「どこまで経費にしてよいか」の2点です。開業直後は売上より支出が先行し、プライベート支出との境界が曖昧になりがちです。結論としては、開業届は原則“開業日から1か月以内”を目安に提出し、経費は「売上を得るために直接必要」と説明できる支出のみを、証憑と記録で固めるのが王道です。

税理士法人 辻総合会計では、開業期の記帳設計から確定申告まで一貫支援しており、現場の相談で最も多いのは「開業前の支出は全部経費?」「家賃やスマホ代はどこまで?」という論点です。以下で、手続と経費判断をセットで整理します。

開業届の提出手順と、同時に検討すべき届出

開業届はいつ・どこへ出す?

個人で美容室・サロンを始める場合、一般に税務署へ提出するのは「個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる開業届)」です。提出先は納税地を所轄する税務署で、e-Taxによる提出も可能です。提出の遅れが直ちに罰則に直結するケースは多くありませんが、青色申告などの選択に影響するため、実務上は早めが安全です。

ここがポイント
令和7年(2025年)以降、税務署の運用変更により「控えへの収受日付印」まわりの取り扱いが変わっています。控え管理は、提出データ(送信結果)や郵送控え(控え+切手付き返信用封筒等)など、手元に証跡が残る形に整えておくと安心です。

青色申告は“期限”で損得が決まる

節税と資金繰りの観点で、開業初年度から検討すべき代表が青色申告です。青色申告の承認申請は期限があり、開業のタイミングによって締切が変わります。遅れるとその年は青色申告を使えないため、開業届とセットで検討してください。

美容室・サロンでよくある「開業時に追加で必要な届出」

税務署提出物は事業形態や運用で変わります。たとえば、従業員に給与を払う場合は源泉所得税の納付方法(納期の特例)を検討します。消費税(インボイスを含む)は、開業直後から課税事業者を選ぶと一定期間の影響が出るため、売上見込みと投資規模で判断が必要です。

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項目まず押さえるポイント美容室・サロンで起こりやすい場面
開業届事業開始の事実を届け出る物件契約日ではなく「営業開始日」をいつにするか迷う
青色申告期限内申請が必須。帳簿要件も強化開業準備が忙しく後回しになりがち
給与・源泉従業員を雇うなら検討アシスタント雇用、家族従業員の扱い
消費税・インボイス選択は中長期の影響が大きい開業時の設備投資が大きく、還付や仕入税額控除を意識

経費の基本:美容室・サロンで「落ちる経費」と「通る経費」

必要経費の原則は「売上獲得に直接必要」+「証拠が残る」

必要経費の基本は、「その収入を得るために直接要した費用」または「業務上の費用」であることです。美容室・サロンでは、材料・消耗品(カラー剤、パーマ液、シャンプー等)、広告宣伝(SNS広告、予約サイト手数料)、地代家賃、通信費、研修費などが典型です。

一方で、次のような支出は否認リスクが上がります。

  • 私的要素が強い(私服、家族旅行、私用スマホ端末の大半など)
  • 証憑が弱い(レシート無し、取引先・目的が説明できない)
  • 経費計上時期がずれている(年内に債務が確定していないのに計上 等)

家賃・光熱費・スマホ代の「家事按分」は設計がすべて

自宅兼店舗、または自宅で一部業務(予約対応・SNS運用)を行う場合、家賃や光熱費、通信費は家事按分になります。ポイントは「合理的な基準」と「証跡」です。

  • 面積基準:店舗・作業スペースの床面積割合
  • 時間基準:業務使用時間の割合(通信費などと相性がよい)
  • 併用:面積×時間など、より実態に沿う形

按分は“高ければ得”ではなく、説明可能性が重要です。税務調査で問われるのは割合そのものより、「なぜその割合なのか」「記録があるか」です。

ここがポイント
家事按分は「一部だけ事業に必要」と説明できる範囲に限られます。按分根拠(平面図、作業記録、スマホの利用状況メモ等)を残すと、後工程が圧倒的に楽になります。

美容室・サロン特有の論点:材料費・物販・施術メニューの原価

カラー剤等は「使った分が経費」と考えがちですが、期末に在庫が残る場合は棚卸(未使用分の資産計上)の論点が出ます。物販(ヘアケア商品、化粧品等)を扱う場合は、売上計上と仕入・在庫の整合が特に重要です。開業初年度から記帳ルール(仕入計上タイミング、在庫管理単位)を決めておくと、翌年以降の利益ブレを抑えられます。

開業前の支出・備品購入はどう処理する?

開業前に払った支出は「全部経費」ではない

開業準備期の支出は、性質により取り扱いが分かれます。判断を誤ると、利益が不自然に変動したり、固定資産計上漏れになりやすいです。

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支出の例典型的な扱い実務上の注意点
広告撮影、ロゴ制作、開店告知必要経費または開業費等の整理「開業準備のため」と説明できる資料を残す
カラー剤・消耗品の仕入仕入(在庫管理の対象)期末在庫が出るなら棚卸ルールを用意
シザー、ドライヤー、セット面など備品固定資産 or 少額資産の判断金額基準と使用開始日で処理が変わる
物件の保証金・敷金原則資産返還有無、償却の有無を契約で確認

10万円基準と、30万円未満の特例(期限に注意)

備品は「買った年に全額経費」とは限りません。一般に、使用可能期間が1年超で高額なものは減価償却(耐用年数で配分)となります。所得税の取扱いでは、取得価額が10万円未満等は一括費用化できる整理があり、さらに一定要件のもとで10万円以上30万円未満について特例が設けられています。なお、この特例は適用期限があるため、2026年(令和8年)3月末までの取得かどうか等、タイミングも含めて要件確認が必要です。

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失敗しないための運用設計(開業初月にやること)

Step 1: 開業日(事業開始日)を定義する

物件契約日・備品搬入日・プレオープン・グランドオープンのどれを「開業日」とするかで、届出期限や初年度の収支期間が変わります。実態に沿う日付を決め、メモを残します。

Step 2: 口座・カードを事業用に分ける

混在は否認の温床です。事業用口座・カードを用意し、私用支出を極力入れない設計にします。これだけで記帳工数が大幅に下がります。

Step 3: 経費科目と証憑ルールを決める

レシート・請求書の保存方法(紙・電子)、摘要の書き方(誰に・何のために)を統一します。“目的が書けない支出は計上しない”くらいが安全運転です。

Step 4: 家事按分の基準を先に固定する

家賃・通信費・水道光熱費の按分基準を、面積・時間などで決めて文書化します。後から作ると恣意的に見えやすくなります。

Step 5: 青色申告・消費税(インボイス含む)を一度シミュレーションする

売上見込み、初期投資、雇用予定の有無で、最適解が変わります。開業後に変更しづらい選択肢もあるため、初回だけでも試算して方針を固めます。

よくある質問

Q: 開業届を出さないとどうなりますか? ▼

A:

多くの場合、直ちに罰則が科される類ではありませんが、青色申告の適用可否や、各種届出の起算点(期限管理)に影響します。金融機関・取引先対応で「事業開始の証跡」が必要になることもあるため、実務上は早めの提出が推奨です。
Q: 自宅の一部で予約対応やSNS運用をしています。家賃や光熱費は経費にできますか? ▼

A:

できますが、全額ではなく家事按分が基本です。面積や時間など合理的基準で按分し、根拠(間取り、作業時間メモ等)を残すことが重要です。按分割合を毎年ぶらさない運用が、税務上の説明力を高めます。
Q: 開業前に買った備品や支払った広告費は経費になりますか? ▼

A:

性質により分かれます。消耗品・広告費は必要経費になり得ますが、備品は固定資産(減価償却)になる場合があります。購入日よりも「事業の用に供した日(使い始めた日)」が重要になることがあるため、使用開始日をメモしておくと整理がスムーズです。

まとめ

  • 美容室・サロン開業は、開業届と青色申告などの届出を「期限込み」で設計することが重要
  • 経費は「売上獲得に直接必要」かつ「証憑と記録」で説明できる支出に限定する
  • 家賃・光熱費・通信費は家事按分。割合よりも根拠資料の整備が核心
  • 開業前支出は、仕入・広告・備品(固定資産)などに分かれるため、初月にルール化する
  • 口座・カード分離と証憑運用の統一が、開業期の失点を最小化する

参照ソース

  • 国税庁「開業する場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/42.htm
  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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