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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

相続税所得税二重課税を防ぐ方法|年金型保険も税理士が解説

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相続税所得税二重課税を防ぐ方法|年金型保険も税理士が解説

相続税と所得税の「二重課税」を防ぐ結論

相続で財産を取得すると相続税、取得後に利益が出ると所得税(譲渡所得や雑所得)が課税されるため、「同じお金に2回課税された」と感じることがあります。実務上のポイントは、同じ経済的価値に二重に課税しない設計(非課税・控除・取得費調整)が制度として用意されている点です。特に年金型保険は「相続税(年金受給権)+所得税(年金受取)」が並びやすく、計算を誤ると過大課税になりがちです。

税理士法人 辻総合会計では、相続後の換金(不動産売却)や保険金・年金受取まで含めた申告・更正のご相談が多く、最初に「何が相続税の対象で、どこからが所得税の対象か」を切り分けて整理します。

相続で「所得税がかかる」典型パターン

相続税と所得税が同時に出やすい場面

相続税は「相続により移転した経済的価値」に着目し、所得税は「所得(利益・果実)」に着目します。したがって、次のような場面で両方が関係します。

  • 相続した不動産・株式を売却して譲渡益が出た(譲渡所得)
  • 相続で取得した年金受給権に基づき、年金を受け取る(雑所得)
  • 相続財産から利息・配当・家賃が発生した(利子所得・配当所得・不動産所得)

ここで重要なのは、「相続で取得した元本部分」と「取得後に生じた運用益・果実部分」を分けて扱うことです。年金型保険はこの境界が見えにくく、誤りが起きやすい領域です。

ここがポイント
「二重課税」かどうかは感覚では判断できません。課税対象が「同じ経済的価値」か、「元本」と「運用益(所得)」かで結論が変わります。まず契約関係(契約者=保険料負担者、被保険者、受取人)と、課税区分(相続税/所得税)を並べて整理しましょう。

年金型保険の二重課税を避ける実務(年金受給権の取扱い)

年金型保険は「年金受給権」が相続税の対象

生命保険契約等で年金形式の受取りになる場合、相続時点で「年金受給権(将来の年金を受け取る権利)」が相続税の課税対象になり得ます。一方で、実際に毎年受け取る年金は、原則として雑所得として所得税の計算対象になり得ます。

この二重の構造があるため、所得税側で「非課税部分」と「課税部分」を振り分ける計算が用意されています。国税庁のタックスアンサーでも、相続等により取得した年金受給権に基づく年金について、年金収入を非課税部分・課税部分に区分して雑所得を計算する整理が示されています(旧相続税法対象年金/新相続税法対象年金で計算方法が異なる点に注意)。

「旧相続税法対象年金」と「新相続税法対象年金」の違い

国税庁の整理では、相続税法の改正前の第24条(定期金に関する権利の評価)の適用があるものを「旧相続税法対象年金」、それ以外を「新相続税法対象年金」とし、年金の課税・非課税の振り分け方法が分かれます。特に新相続税法対象年金では、相続税評価割合に応じて課税割合が段階設定されており、計算の置き方を誤ると課税部分が過大になりやすい点が実務上の注意点です。

二重課税を防ぐためのチェック手順(年金型保険)

Step 1: 契約関係を確定する
契約者(保険料負担者)・被保険者・年金受取人を確認し、相続等で年金受給権を取得した形かを判定します。

Step 2: 年金受給権が相続税課税かを確認する
相続税申告で年金受給権を評価・計上しているか(または本来すべきか)を確認します。

Step 3: 所得税の雑所得計算で「非課税/課税」を振り分ける
国税庁の計算区分に従い、支払年数・評価割合等から年金収入の課税部分を算定します。初年度が全額非課税になる扱いなど、年次によって取り扱いが変わる点も要確認です。

Step 4: 申告済みの場合は更正の請求・還付可能性を検討する
過去に全額課税として申告していた場合、訂正余地がないか(時効・更正の請求期限を含む)を税理士に確認します。

長崎年金訴訟が示したポイント(何が「課税できない」のか)

いわゆる「長崎年金訴訟」は、年金払特約付き生命保険の年金受取に対して所得税を課すことが、相続税の課税対象となる経済的価値と重なる部分について許されない、という整理を明確にした点が重要です。国税不服審判所の公表資料では、最高裁平成22年7月6日判決(第三小法廷)が、所得税法の非課税規定の趣旨を「相続税等の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないことで二重課税を排除する」と解釈し、年金の支給額のうち相続時点の現在価値に相当する部分は所得税の課税対象とならない旨を判示した要旨が整理されています。

ここから実務的に言えるのは、年金型保険の受取を「雑所得だから全額課税」と短絡せず、相続税評価(現在価値)と年金受取(元本相当/運用益相当)を接続して計算する必要がある、ということです。

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不動産・株式の売却で感じる「二重課税」への対応策(取得費加算)

相続した不動産や株式を売却すると、相続税を払ったうえで譲渡益に所得税がかかり、「二重課税」と感じやすい典型です。この場面では、制度として「相続税額のうち一定額を取得費に加算できる特例(取得費加算の特例)」が用意されています。

国税庁のタックスアンサーでは、相続・遺贈で取得した土地・建物・株式などを、相続開始の翌日から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までに譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できるとされています。要件を満たすと譲渡所得が圧縮され、所得税・住民税の負担が軽くなる設計です。

年金型保険と売却の「二重課税対策」の違い(比較表)

←横にスクロールできます→
代表ケース相続税の対象所得税の対象二重課税を避ける制度設計
不動産・株式を相続し売却相続時点の時価売却時の譲渡益取得費加算の特例(要件・期限あり)
年金型保険(年金受給権)年金受給権(現在価値)年金受取のうち課税部分(雑所得)非課税/課税の振り分け計算(年次で変動)
生命保険の一時金(死亡保険金)みなし相続財産として相続税(非課税枠あり)原則、相続税課税の範囲は所得税非課税の整理契約関係・課税区分の正確な判定が重要

失敗しないための実務チェックリスト

  • 年金型保険は「年金受給権の相続税評価」と「年金受取の雑所得計算」をセットで検証する
  • 契約者(保険料負担者)=誰かで課税関係が変わるため、保険証券・設計書で事実確認する
  • 売却を予定している相続財産は、取得費加算の特例の期限(「申告期限の翌日から3年」)を逆算してスケジュール化する
  • 過年度の申告に疑義があれば、更正の請求・修正申告の要否を早めに検討する
ここがポイント
年金型保険は、同じ「年金」でも公的年金(遺族年金など)と保険契約に基づく年金で課税関係が異なります。名前が似ていても根拠法令・計算構造が違うため、商品名だけで判断しないことが安全です。

よくある質問

Q: 年金型保険は、相続税を払っていても年金受取に所得税が必ずかかりますか? ▼

A:

必ずではありません。相続税の課税対象となる経済的価値(相続時点の現在価値)と同一といえる部分は、所得税の非課税の趣旨により課税対象から外れる整理が前提です。実務では国税庁の計算方法に従い、年金収入を非課税部分・課税部分に振り分けて雑所得を計算します。
Q: 「長崎年金訴訟」は、すべての年金型保険にそのまま使えますか? ▼

A:

そのまま機械的に当てはめるのは危険です。判決は年金払特約付き生命保険の事案を前提に、相続税評価(現在価値)と年金支給額の関係から非課税部分を論じています。契約形態や評価方法(旧相続税法対象年金/新相続税法対象年金)によって計算が変わるため、個別検討が必要です。
Q: 相続した不動産を売ったら「二重課税」なので、必ず減税されますか? ▼

A:

いいえ。取得費加算の特例は要件(相続税が課税されていること等)と期限(相続税申告期限の翌日以後3年まで)があり、常に使えるわけではありません。ただ、要件を満たすと効果が大きいことがあるため、売却前から検討する価値があります。

まとめ

  • 相続税は「相続で移転した価値」、所得税は「利益・果実」に着目し、両方が関係する場面がある
  • 年金型保険は、年金受給権(相続税)と年金受取(所得税)が並ぶため、非課税/課税の振り分けが核心
  • 長崎年金訴訟は、相続税課税の経済的価値と同一部分への所得課税を抑制する趣旨を明確化した
  • 相続財産の売却は取得費加算の特例で「相続税→譲渡所得」への二重感を調整できる場合がある
  • 実務は契約関係と評価・計算の接続が重要で、過年度分は更正の請求等の可否も含め早期検討が有効

参照ソース

  • 国税庁「No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm
  • 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 国税不服審判所「公表裁決事例等の紹介(別紙:最高裁平成22年7月6日判決要旨の整理)」: https://www.kfs.go.jp/service/JP/89/03/besshi01.html
  • 国税庁「相続税法第24条(定期金に関する権利の評価)関係(通達等)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/100702/02.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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