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中小企業向けコラム
作成日:2025.09.08
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

夫婦で起業するメリットと税務注意点|税理士が解説

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夫婦で起業するメリットと税務注意点|税理士が解説

夫婦で起業するメリットと結論

夫婦で起業する最大の利点は、意思決定の速さと役割分担による生産性向上です。一方で、配偶者に支払う給与や役員報酬、経費の按分を「なんとなく」で処理すると、経費否認や扶養判定のズレにつながりやすい点が課題です。結論としては、事業形態(個人事業・共同経営・法人)に応じて「お金の流れ」と「税務根拠」を先に設計し、届出・規程・証憑で裏付けることが重要です。

夫婦で起業するメリットとは

1) 意思決定が速く、固定費を抑えやすい

共同創業者同士で合意形成が取りやすく、採用・外注を増やしすぎずに立ち上げを進めやすいのが利点です。特にバックオフィス(経理・総務・予約管理・広報)を配偶者が担うと、外注費の削減に直結します。

2) 役割分担により売上機会を最大化できる

夫が営業・制作、妻が顧客対応・運用など、補完関係を作ることで機会損失が減ります。結果として、同じ売上でも残る利益が増えるケースが多いです。

3) 所得の分散で税負担が最適化する可能性

所得税は超過累進税率のため、利益が一定以上になると税率が上がります。夫婦それぞれに所得を適切に配分できる設計であれば、世帯全体の税・社保負担が軽くなる場合があります(ただし、形式だけの分散は否認リスクがあるため注意が必要です)。

夫婦起業の形態別「税務の扱い」の違い

夫婦起業は大きく「個人事業(事業主1人+配偶者が従業員)」「個人事業(夫婦それぞれが事業主=共同経営に近い形)」「法人(役員・従業員)」に分かれます。税務上の論点が変わるため、まず型を決めることが重要です。

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項目個人事業(事業主1人+専従者)個人事業(夫婦それぞれ事業主)法人(株式会社/合同会社)
所得の分散専従者給与(青色)/専従者控除(白色)で調整売上・経費の実態配分が前提役員報酬・給与設計で調整
配偶者への支払い原則は経費不可だが例外ありそれぞれの事業の経費として処理役員報酬は損金算入要件あり
扶養・配偶者控除専従者は原則「扶養」に入れない所得次第で扶養判定給与額で扶養判定
手続き負担届出(専従者給与)・給与台帳取引・契約の帰属整理が要定款・議事録・年末調整等
否認リスク金額の相当性・実態が焦点名義借り・実態不一致が焦点定期同額等の要件外が焦点

税務上の注意点(失敗しやすいポイント)

注意点1:専従者給与は「届出」と「相当性」が必須

個人事業で配偶者に給与を払って経費化したい場合、青色申告なら「青色事業専従者給与」として必要経費算入が可能ですが、届出期限があります。原則として、その年に必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(一定の場合は開業日等から2か月以内)に届出が必要です。また、金額は労務の内容・程度等から「相当」と認められる範囲に限られます。

一方、白色申告では給与を経費にできませんが、「事業専従者控除」として一定額を必要経費として差し引けます(配偶者は最高86万円、その他親族は最高50万円)。この控除額にも計算上の上限があります。

ここがポイント
青色の専従者給与を受ける配偶者(または白色の事業専従者)は、原則として同一生計配偶者・扶養親族にはなれません。配偶者控除・扶養控除の見込みで設計すると、年末にズレが出やすい点に注意してください。

注意点2:法人化した場合、配偶者への「役員報酬」は要件を外すと損金にならない

法人にして配偶者を役員にする場合、役員報酬は原則として「定期同額給与」「事前確定届出給与」等の要件に該当しないものは損金算入されません。途中で気軽に増減すると、税務上の否認リスクが高まります。役員報酬は、株主総会・社員総会等の決議、議事録整備、支給方法の一貫性まで含めて設計してください。

ここがポイント
「配偶者に生活費として渡している」状態と「法人が役員報酬として支給している」状態は税務上まったく別物です。銀行口座の動き、議事録、源泉所得税、給与台帳の整合性がチェックポイントになります。

注意点3:経費按分(家事関連費)はルールと根拠が必要

自宅兼事務所、車両費、通信費などは、私的利用が混在しやすい典型です。按分割合は「面積」「利用時間」「通話明細」等、第三者に説明できる根拠で設定し、毎期同じ基準で運用します。夫婦間で「片方に寄せる」処理は、税務調査で論点化しやすいので避けるのが無難です。

注意点4:名義・契約・入金口座が実態とズレると“共同経営”が崩れる

夫婦それぞれが事業主として利益配分を狙う場合、取引の帰属(誰が契約当事者か、誰がリスクを負うか、誰の口座に入金されるか)を揃えないと、実態は「片方の事業」だと判断されかねません。契約書・請求書・入金口座の整合は最優先で整備してください。

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夫婦起業の税務設計:実務の進め方(手順)

Step 1: 事業形態を決める(個人事業/夫婦それぞれ/法人)
利益規模、取引先要件(法人必須か)、融資、社会保険、将来の事業承継まで含めて型を決めます。

Step 2: 配偶者の立場を決める(専従者/従業員/役員/外注)
同じ「働く」でも、税務・社保・手続きが変わります。給与にするなら源泉徴収・年末調整の運用までセットで検討します。

Step 3: 金額設計(専従者給与・役員報酬・給与)と根拠作り
職務内容、勤務実態、同業水準を踏まえ、金額の妥当性を説明できるようにします。規程(給与規程等)や議事録を整備します。

Step 4: 必要な届出・台帳を整える
青色の専従者給与は届出期限があるため、年初・開業時点で手続きします。法人なら役員報酬の決議・源泉・年末調整等を運用します。

よくある質問

Q: 夫婦で起業すると、必ず節税になりますか? ▼

A:

必ずではありません。利益規模、配偶者の稼働実態、社会保険、配偶者控除の可否などの条件で結果が変わります。形式だけの所得分散は否認リスクがあるため、実態に沿った設計が前提です。
Q: 個人事業で妻(夫)に給料を払えば、全部経費になりますか? ▼

A:

原則として生計を一にする配偶者等への給与は経費になりません。ただし青色申告で要件を満たす場合は「青色事業専従者給与」として必要経費算入が認められます。白色申告は給与の経費算入はできませんが、一定要件で「事業専従者控除」があります。
Q: 法人化して配偶者を役員にすれば、報酬は自由に増減できますか? ▼

A:

自由ではありません。役員給与は損金算入に要件があり、要件に該当しない部分は損金不算入となる可能性があります。決議・支給方法・金額変更のタイミングなどを含めて運用設計が必要です。

まとめ

  • 夫婦起業は意思決定の速さと役割分担により、固定費を抑えつつ成長を狙える
  • 税務は「事業形態」により論点が変わるため、最初に型(個人/夫婦それぞれ/法人)を決める
  • 個人事業で配偶者に支払う場合、青色は専従者給与、白色は専従者控除が基本線
  • 法人の役員報酬は要件外だと損金にならないため、決議・議事録・運用の整合が重要
  • 経費按分、契約名義、入金口座の整合を取り、実態に沿った証憑を残す

参照ソース

  • 国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
  • 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
  • 国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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