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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

相続 確定申告の注意点5つ|親が亡くなった年を税理士が解説

9分で読めます
相続 確定申告の注意点5つ|親が亡くなった年を税理士が解説

相続発生年の確定申告で最初に押さえる結論

親が亡くなった年に注意すべきことは、「あなたの確定申告」と「亡くなった親(被相続人)の準確定申告」を混同しないことです。特に、医療費控除や扶養控除、死亡後に受け取ったお金(保険金・未支給年金など)の扱いでミスが起きやすく、期限も通常の確定申告とは異なります。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、相続発生年は「申告自体は簡単なはずなのに、控除と期限のズレで後から修正が必要になる」ケースがよくあります。ここでは、親が亡くなった年にあなたが行う確定申告で、実務上ミスしやすい5つのポイントを整理します。


注意点1:自分の確定申告と「準確定申告」を切り分ける

親が亡くなった場合、親(被相続人)の所得税は、相続人が「準確定申告」を行う場面があります。準確定申告は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」に申告・納税します。

一方で、あなた自身の確定申告(通常の申告)は、いつも通りその年分を翌年の申告期間に行います。ここが混線すると、医療費控除や各種控除の帰属がズレます。

ここがポイント
準確定申告は相続人が連署で提出するのが原則ですが、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出する方法も示されています(提出後に内容通知が必要)とされています。代表者を立てるか、実務体制を早めに決めておくと混乱しにくいです。

比較表:あなたの確定申告と準確定申告の違い

←横にスクロールできます→
項目あなたの確定申告被相続人の準確定申告
対象者あなた本人亡くなった親(被相続人)
対象期間1/1〜12/311/1〜死亡日まで
期限原則 2/16〜3/15相続を知った翌日から4か月以内
主な論点会社員なら医療費控除・寄附金等、年末調整の漏れ被相続人の給与・年金・事業所得、控除の帰属
添付等通常の確定申告書類準確定申告書の付表、還付委任状など

「誰の所得を、どの期間で、誰が申告するか」を最初に分けるだけで、相続発生年のミスは大幅に減ります。


注意点2:扶養控除・配偶者控除は「死亡日の現況」で判定される

親が亡くなった年は、扶養控除や配偶者控除などの適用関係が、通常年と感覚が違います。準確定申告では、扶養や配偶者の判定は「死亡日の現況」で行う旨が示されています(年末時点ではありません)。

ここで実務的に起きやすい誤りは次の2つです。

  • 「年末に同居していないから扶養にできない」と早合点する
  • 親の準確定申告と、自分の扶養控除(親を扶養に入れる/入れない)を同時に判断せず、二重カウントや漏れが起きる

相続発生年は、親側(準確定申告)と子側(あなたの確定申告)の扶養関係が絡みます。判定の基準日(死亡日・その年の状況)と、どちらの申告で使う控除かを一枚のメモに落として整理すると安全です。


注意点3:医療費控除は「いつ支払ったか」で帰属が変わる

「親の医療費を自分が払ったが、どの申告で医療費控除に入るのか」は、相続発生年の鉄板論点です。

ポイントは、「医療費控除はその年中に実際に支払った金額に限られる」こと、そして「被相続人の準確定申告で対象となるのは、死亡日までに被相続人が支払った医療費」に限られる、という整理です。

  • 親が死亡日までに親自身が支払った医療費
    • 親の準確定申告で医療費控除の対象になり得ます
  • 親の死亡後に、相続人(あなた)が支払った医療費
    • 親の準確定申告では医療費控除に入れられません
    • ただし、一定の前提(生計同一など)を満たす場合、あなたの医療費控除として整理される可能性があります
ここがポイント
「死亡後に相続財産から支払ったから親の支払い扱い」とはならない、という点が落とし穴です。支払者と支払時期で機械的に分け、領収書の名義・支払日・口座引落日まで確認してください。

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注意点4:相続で受け取ったお金が「所得」か「相続財産」かを分ける

親が亡くなった年は、あなたが受け取る入金が増えがちです。しかし、そのすべてが所得税の対象とは限りません。ここで大切なのは、相続税の対象(相続財産)と、所得税の対象(あなたの所得)を分けて考えることです。

実務で混同が多い例を整理します。

  • 死亡保険金・死亡退職金
    • 多くのケースで「相続税の課税関係」で整理(受取人・契約形態により異なる)
  • 未支給年金(親の死亡後に遺族が受け取るもの)
    • 所得税の扱いが絡むことがあり、受給形態・権利の帰属で整理が必要
  • 親の死亡後に発生・入金する家賃や配当
    • 「誰の期間の所得か」で切り分けが必要(死亡日前後で帰属が分かれる発想)
  • 葬式費用
    • これは所得控除(医療費控除等)ではなく、別の税目(相続税側の整理)で論点になることが多い

相続発生年は「税目またぎの整理」が増えます。あなたの確定申告で入れるべきものか、相続税申告側で整理するものか、まず分類してから入力するのが安全です。


注意点5:期限(4か月)と書類を“手順”で管理する

相続発生年は、申告が2本立てになりやすく、期限も複数出てきます。とくに準確定申告は「4か月以内」という短い期限があるため、先に段取りを固定しましょう。

Step 1: 「申告が必要か」を判定する(親・自分)

  • 親:準確定申告が必要か(給与・年金・事業・不動産・株取引などの有無)
  • 自分:通常の確定申告が必要か(医療費控除、寄附金、住宅ローン控除初年度など)

Step 2: 親の所得資料を集め、死亡日前後で区切る

  • 源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票
  • 事業・不動産があれば帳簿、通帳、経費領収書
  • 配当・売却益があれば取引報告書

Step 3: 控除(医療費・保険料・寄附金等)を「支払日」で仕分ける

  • 被相続人の死亡日までに「被相続人が支払った分」か
  • 死亡後に「相続人が支払った分」か

Step 4: 準確定申告書の付表・委任状など提出物を整える

  • 相続人の氏名・住所・続柄等を記載する付表
  • 還付金の受領を代表者に委任するなら委任状

Step 5: 相続税申告(必要な場合)も同時進行で全体最適にする

相続税の申告要否判定やチェックシートも公表されています。準確定申告と相続税申告は別物ですが、資料(通帳、証券、医療費、保険など)が共通するため、同時に収集すると効率的です。


よくある質問

Q: 親が亡くなった年、自分の確定申告は必ず必要ですか? ▼

A:

必ずではありません。あなた側で医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除初年度・副業所得など「申告が必要になる事情」があるかで決まります。一方、親側は準確定申告が必要かを別途判定します。
Q: 親の死亡後に支払った入院費は、親の準確定申告の医療費控除に入りますか? ▼

A:

原則として入りません。準確定申告の医療費控除は「死亡日までに被相続人が支払った医療費」が対象とされ、死亡後に相続人が支払った医療費は被相続人の支払いとは整理されません。ケースにより、相続人側の医療費控除として検討します。
Q: 準確定申告の期限「4か月」はいつから数えますか? ▼

A:

原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」とされています。実務では、死亡を知った日=相続開始を知った日となることが多いですが、状況により異なるため、具体的には日付を確定して管理します。
Q: 相続税の申告が不要でも、準確定申告は必要ですか? ▼

A:

あり得ます。相続税の申告要否(財産規模)と、準確定申告の要否(被相続人の所得状況)は別基準です。財産が基礎控除内でも、所得があれば準確定申告が必要になることがあります。

まとめ

  • 相続発生年は「自分の確定申告」と「親の準確定申告」を最初に切り分ける
  • 準確定申告は原則「相続を知った翌日から4か月以内」で期限が短い
  • 扶養・配偶者控除等は「死亡日の現況」で判定する整理が重要
  • 医療費控除は「支払者」と「支払日」で帰属が分かれ、死亡後支払いは親の準確定申告に入らないのが原則
  • 相続で受け取ったお金は、所得税か相続税かを分類してから申告に入れる

参照ソース

  • 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm
  • 国税庁「死亡した父親の医療費(質疑応答事例)」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/57.htm
  • 国税庁「相続税(申告手続・用紙)」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/sozoku/sozoku.htm
  • 国税庁 確定申告書等作成コーナー「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/cat2/cat20/cid064.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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