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中小企業向けコラム
作成日:2025.02.06
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

役員貸付金・役員借入金のリスクと解消法実務|税理士が解説

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役員貸付金・役員借入金のリスクと解消法実務|税理士が解説

結論:役員貸付金・役員借入金は「税務×信用」の論点です

役員貸付金・役員借入金は、会社と役員の資金の出し入れを示す勘定科目です。問題は、社長や役員にとって「一時的な立替・調整」のつもりでも、会社側では税務調査での否認・追徴や、金融機関からの信用低下につながりやすい点です。特に中小企業・クリニック法人では、日常の資金移動が積み重なり、期末に多額残高として表面化するケースが少なくありません。

税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業・医療法人の決算・税務調査対応を支援してきましたが、「役員勘定の整理」は資金繰り改善と税務リスク低減の両面で効果が出やすいテーマです。以下、定義・リスク・解消手順を実務ベースで解説します。

役員貸付金・役員借入金とは(違いを整理)

役員貸付金は「会社が役員に貸している(会社から見ると未回収)」、役員借入金は「役員が会社に貸している(会社から見ると返済義務)」という関係です。残高が長期化すると、実態(贈与・給与・資本・立替)とのズレが疑われやすくなります。

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項目役員貸付金役員借入金
資金の向き会社 → 役員役員 → 会社
会計上の性質会社の資産(債権)会社の負債(債務)
典型的な発生原因私的支出の会社払い、役員への立替・仮払、無計画な引出し役員の立替、短期資金不足の穴埋め、増資代替
主要リスク認定利息・給与課税、回収不能(貸倒)資本性を疑われる、返済原資不足、利息・契約不備
管理の核心返済計画・利率・契約書返済条件・劣後性の整理・利息設計
ここがポイント
役員に対する無利息・低利息の貸付は、一定の場合を除き「本来の利息相当額と実際利息の差額」が給与課税の対象となり得ます。役員貸付金が常態化している場合、ここが最初に論点化しやすい点です。

役員貸付金・役員借入金の主なリスク(税務・金融・ガバナンス)

税務リスク:認定利息・給与課税・実態認定

役員貸付金が「返済されない」「契約がない」「利息設定がない」などの場合、税務上は認定利息や、経済的利益(現物給与)としての課税が問題になります。国税庁は、役員等に無利息または低利息で金銭を貸し付けた場合の取扱いとして、一定の利率で計算した利息相当額等に基づき課税関係が生じ得ることを示しています。

また、同族会社の代表者等に対する仮払金(貸付金を含む)について認定利息を計算する取扱いに関する通達も存在し、長期残高の放置は論点化しやすい実務領域です。

さらに、役員等への経済的利益の供与は、状況により給与としての取扱いが問題になります。役員貸付金が「実質的に役員への便益供与」と判断されると、会社・役員双方の税負担に波及します。

金融機関・外部信用リスク:決算書の見え方が悪化

金融機関は、役員貸付金を「会社資金の社外流出」「回収不確実な資産」と見ます。特に、売上規模に対して役員貸付金が大きい場合、実質的な自己資本の毀損として評価され、融資条件や格付に影響し得ます。反対に、役員借入金が過大な場合も「実質債務超過の補填」「資本性の疑い」「返済の実行可能性」が論点になり、説明責任が増します。

ガバナンス・法務リスク:会社と個人の境界が曖昧になる

役員勘定の常態化は、資金管理ルールの不在を示します。社内的には経理の属人化、外部的には株主・後継者・監査(または税務調査)に対する説明困難を生み、将来の事業承継やM&Aでもディスカウント要因となり得ます。「会社の財布」と「個人の財布」を分けることが、最大の再発防止策です。

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役員貸付金・役員借入金の解消方法(実務フロー)

解消は「過去の整理」と「今後のルール化」を同時に進めるのが鉄則です。以下は、実務で再現性が高い進め方です。

Step 1: 残高の発生原因を棚卸しする(期間・相手先・内容)

まず、役員貸付金・借入金の内訳を月次で分解し、「立替」「私的支出」「仮払」「資金移動」「誤仕訳」を仕分けします。特に役員貸付金は、私的支出の混入があると説明が難しくなるため、領収書・通帳・クレカ明細まで突合します。

Step 2: 金銭消費貸借契約書と返済スケジュールを整備する

残高が残る部分は、契約書(元本・利率・返済期日・返済方法)を整備し、議事録(取締役会/株主総会の関与が必要な体制の場合)も残します。無利息・低利息のまま放置すると、利息相当額が給与課税の論点となり得るため、税務上合理的な利率設計が重要です(国税庁が示す利率の考え方等を参照)。

Step 3: 解消手段を選ぶ(返済・相殺・再分類・資本政策)

代表的な解消手段は次のとおりです(複数併用が一般的です)。

  • 役員貸付金の返済(役員→会社へ入金)
  • 役員報酬・賞与・退職金との相殺(法令・損金算入要件に留意)
  • 役員への立替精算(仮払・未払の整理)
  • 配当・役員報酬の支給設計を見直し、資金移動をルール化
  • 役員借入金の返済(会社→役員へ返済)または返済条件の長期化・劣後性整理
  • 増資・DES等の資本政策(規模や株主構成により検討)
ここがポイント
「相殺」は便利ですが、税務・会社法・社会保険の論点が同時に動きます。特に役員報酬は変更ルール、退職金は支給時期・損金性、配当は剰余金の範囲など、周辺論点をセットで設計してください。

Step 4: 再発防止のルールを作る(運用が9割)

最後に、月次で役員勘定をゼロクリアする運用を組み込みます。

  • 役員個人の支出は原則として個人口座・個人カードで決済
  • 会社カード利用の上限・用途・精算期限を明文化
  • 役員への貸付をする場合は、事前稟議(理由・金額・返済期間)を必須化
  • 月次試算表で役員勘定残高をモニタリングし、一定額超過でアラート

ケーススタディ(匿名)

あるクリニック法人では、院長の私的支出が混在し役員貸付金が年末に1,200万円まで膨らんでいました。内訳を棚卸しすると「単なる立替」と「私的支出」が混在しており、まず私的支出分を返済、立替分は月次精算ルールに変更。加えて契約書と利率設定を整備した結果、翌期末には残高がほぼ解消し、金融機関への説明も簡素化できました。

よくある質問

Q: 役員貸付金を無利息のままにすると必ず否認されますか? ▼

A:

必ず否認されるとは限りませんが、無利息・低利息の貸付は、利息相当額と実際利息の差額が給与課税の論点となり得ます。実務では「金額」「継続性」「返済実績」「合理的な利率設定の有無」「契約書の有無」でリスクが変わります。
Q: 役員借入金は多いほど安全(会社にとって有利)ですか? ▼

A:

資金繰り上は助かる一方、過大な役員借入金は「資本の代替」「返済可能性」「利息・契約の整備状況」などの説明が必要になります。金融機関や将来の承継局面では、資本政策として整理(増資・返済条件の明確化等)した方が評価が安定することもあります。
Q: 税務調査で指摘されやすいポイントは何ですか? ▼

A:

代表的には、(1) 役員貸付金の長期残高、(2) 返済実績の乏しさ、(3) 契約書・議事録不備、(4) 利息設定の不合理、(5) 私的支出混在です。特に認定利息や経済的利益の供与の観点で論点化しやすい点に注意してください。

まとめ

  • 役員貸付金は「回収可能性」と認定利息・給与課税が論点になりやすい
  • 役員借入金は「返済条件の明確化」と資本政策としての整理が重要
  • 解消は「内訳棚卸し→契約→解消手段選択→運用ルール化」の順で進める
  • 月次で役員勘定をゼロクリアする仕組みが、最も強い再発防止策
  • 個別事情で最適解は変わるため、決算前に専門家へ相談すると手戻りが少ない

参照ソース

  • 国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm
  • 国税庁「認定利息の取扱について」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/540915/01.htm
  • 国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5202.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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