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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

配当 確定申告の損得比較|総合課税と分離課税を税理士が解説

8分で読めます
配当 確定申告の損得比較|総合課税と分離課税を税理士が解説

配当金の確定申告は「必ずした方が得」ではありません。結論から言うと、総合課税が有利になりやすいのは配当控除が効くケース、申告分離課税が有利になりやすいのは上場株の譲渡損失と通算したいケースです。一方で、扶養や各種制度の判定に影響することもあり、「税額だけ」で決めると後悔しがちです。

税理士法人 辻総合会計では、配当がある方の申告方針(総合課税・分離課税・申告不要)を、所得構造と将来の損失繰越まで含めて設計する相談が多い印象です。本記事では、配当確定申告の判断軸を実務目線で整理します。

配当 確定申告とは|申告不要・総合課税・申告分離課税

配当所得は原則として総合課税(給与などと合算して累進課税)ですが、上場株式等の配当等は、一定の要件のもとで申告分離課税(税率20.315%)を選べます。上場株式等の配当等を申告する場合、申告する配当の「全額」について総合課税か申告分離課税かを選ぶ点が重要です(途中で一部だけ方式を変える発想は事故のもとです)。また、一度選択すると、後から修正申告等で選択を変更できない点にも注意が必要です。

ここがポイント
「上場株式等の配当等」には、特定口座(源泉徴収あり)で受け取った配当も含まれ得ます。証券会社の年間取引報告書・配当金計算書(支払通知書)で、上場株式等かどうか、源泉徴収の有無をまず確認してください。

配当所得 総合課税 分離課税|違いを一覧で整理

配当の課税方式を比較すると、意思決定のポイントは大きく4つです(配当控除/損益通算/所得判定への影響/税率)。

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比較項目総合課税(申告)申告分離課税(申告)申告不要(確定申告不要制度など)
税率累進税率(他所得と合算)20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+地方税5%)原則として源泉徴収で完結
配当控除あり(要件あり)なしなし
上場株の譲渡損失との損益通算なしあり(一定要件)なし
所得判定(扶養・各種制度)への影響合計所得金額に含まれる合計所得金額に含まれる(通算等の扱いに注意)合計所得金額に含まれない(制度により影響あり得る)

ポイントは、配当控除は「総合課税で申告した配当」に限って使えること、そして申告分離課税なら上場株式等の譲渡損失と損益通算できることです。

配当 確定申告 お得|総合課税が有利になりやすい人

配当控除が効く(国内法人の配当が中心)

総合課税を選ぶ最大の理由は配当控除です。国内に本店がある法人からの配当等など、一定の配当は、総合課税で申告することで税額控除(配当控除)を受けられます。課税総所得金額等が1,000万円以下の一般的なケースでは、剰余金の配当等に係る配当所得×10%などの計算枠が示されています。

たとえば「国内上場株の配当100万円(剰余金の配当等)」があり、課税総所得金額等が1,000万円以下なら、配当控除の基本枠は100万円×10%=10万円(算出税額が上限)となります。ここが、申告分離課税にはない“総合課税の武器”です。

元々の所得税率(限界税率)が20.315%より低い可能性がある

給与所得などが比較的少なく、総合課税で合算しても限界税率が20.315%に届かないレンジだと、税率面でも総合課税が有利になり得ます。さらに配当控除まで効けば、差が広がることがあります。

ここがポイント
注意したいのは「総合課税にすると、配当が合算されて所得が増える」点です。配当控除で税額は下がっても、所得判定(扶養、各種負担・給付、保険料算定の一部など)に影響する可能性があります。税額差だけでなく“判定影響”も必ず確認しましょう。

配当所得 総合課税 分離課税|申告分離課税が有利になりやすい人

上場株の譲渡損失がある(または繰越控除を使いたい)

申告分離課税を選ぶ最大の理由は、上場株式等に係る譲渡損失との損益通算です。配当だけ見ると損でも、譲渡損がある年は、配当と相殺できる分だけキャッシュアウト(税負担)を抑えられることがあります。

イメージ例:

  • 配当:50万円
  • 上場株の譲渡損失:▲50万円
    この場合、申告分離課税で通算できれば配当部分の課税ベースが実質ゼロに近づき、源泉徴収済の税が還付になる余地が出ます(要件・取引区分により異なります)。

配当控除が使えない配当が多い

外国法人からの配当等など、配当控除の対象外の配当は、総合課税にしても“控除メリット”が出ません。この場合、申告分離課税の方が意思決定しやすいことがあります(ただし外国税額控除など別論点が絡むケースは要整理です)。

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配当控除|計算の要点と落とし穴

配当控除は「税額控除」なので、所得控除(基礎控除など)とは効き方が異なります。要点は次のとおりです。

  • 対象は、原則として「国内法人の配当等」などで、かつ「総合課税で申告した配当」に限られる
  • 控除率は配当の種類・課税総所得金額等の水準で変動し得る(代表的には10%・5%枠など)
  • 控除額は算出税額が上限(控除しきれない場合がある)

このため、配当控除がある=必ず得、ではなく、所得構造・税額の“受け皿”によってはメリットが目減りします。「控除が取り切れるか」まで見積もるのが実務のコツです。

配当 確定申告のやり方|損得比較の進め方(実務手順)

損得比較は、税率や控除だけでなく「損益通算」「所得判定」を同時に見る必要があります。手順化するとミスが減ります。

Step 1: 配当の種類を仕分けする

  • 上場株式等の配当等か(申告分離の選択可否)
  • 国内法人配当か(配当控除の対象可否)
  • 特定口座(源泉徴収あり)か、一般口座か

Step 2: その年の“他の所得”と“株の損益”を並べる

  • 給与、事業、不動産、年金などの課税所得の見込み
  • 上場株式等の譲渡損益(損失の有無・繰越残高)

Step 3: 3パターンで税額と影響を比較する

  • A:申告不要(該当する場合)
  • B:総合課税(配当控除を適用)
  • C:申告分離課税(損益通算・繰越控除の適用も確認)
    このとき、税額差だけでなく「合計所得金額に含まれるか」等の判定影響もメモします。

Step 4: 一度選んだ“方式変更不可”を前提に意思決定する
確定申告で方式を選ぶと、後から修正申告等で選択を変えられません。比較表・試算根拠(年間取引報告書等)を保存しておくと、翌年以降の判断が速くなります。

よくある質問

Q: 配当金は、確定申告しないといけませんか? ▼

A:

配当所得は原則として総合課税で申告対象ですが、上場株式等の配当等は申告分離課税を選べるほか、一定の場合に確定申告不要制度の対象となることがあります。まずは配当の種類(上場株式等か、源泉徴収の有無)を確認してください。
Q: 総合課税と申告分離課税は、配当ごとに選べますか? ▼

A:

原則として、申告する上場株式等の配当等は「申告する配当の全額」について、総合課税か申告分離課税かのいずれかを選択します。途中で一部だけ方式を変えることはできない前提で比較しましょう。
Q: 配当控除があるなら、総合課税がいつも得ですか? ▼

A:

いつも得とは限りません。配当控除は総合課税で申告した一定の配当に限られ、算出税額が上限です。また総合課税にすると所得判定(扶養など)へ影響する可能性もあります。税額差と判定影響をセットで比較するのが安全です。

まとめ

  • 配当の確定申告は「総合課税・申告分離課税・申告不要」の3択で損得が分かれる
  • 総合課税は配当控除が使えるケースで有利になりやすい
  • 申告分離課税は上場株の譲渡損失との損益通算が必要な年に強い
  • 方式選択は後から変更できないため、年末〜申告前に3パターン試算が基本
  • 税額だけでなく、所得判定(扶養等)への影響も同時に確認する

参照ソース

  • 国税庁「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
  • 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
  • 国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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