
執筆者:辻 光明
代表税理士
外国税額控除の確定申告|米国株配当の二重課税を解消|税理士が解説

外国税額控除とは|米国株配当の二重課税をどう解消するか
米国株の配当は、米国で源泉徴収されたうえで日本でも課税されるため、放置すると「二重課税」になりがちです。結論として、確定申告で外国税額控除を適用すれば、一定の上限(控除限度額)まで日本の所得税等から差し引いて調整できます。
誰にとって何が問題かというと、「米国で引かれた税金を日本で精算しないと、実質的な手取りが想定より減る」点が個人投資家の典型的なつまずきです。
税理士法人 辻総合会計では、投資家の確定申告・税務相談を含め、30年以上にわたり多数の申告実務を支援してきました。現場感のある注意点も交えて解説します(個別事情により結論が変わる点はご留意ください)。
外国税額控除の確定申告が必要なケース
米国株で起きる「二重課税」の仕組み(米国源泉税+日本課税)
一般的に、米国株の配当は海外(米国)で税が引かれます。その後、日本の所得税等の課税対象にもなるため、海外源泉税を日本側で何もしないと二重に税負担が残ります。
この「日本側での調整手段」が外国税額控除です(控除できるのは上限まで)。
特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告が必要?
米国株の配当を特定口座で受け取っていても、外国で課税された税金を日本の税額から差し引くには、原則として確定申告で外国税額控除の適用を検討します。
一方で、申告により別の税金(住民税、他の所得との関係)が増減することもあるため、「申告すれば必ず得」とは限りません。損益・所得構成を見て判断します。
外国税額控除の計算|控除限度額と具体例
控除限度額の基本式(所得税)
外国税額控除は、外国で納めた税額を無制限に差し引けるわけではなく、国税庁が示す算式により控除限度額が決まります。所得税の控除限度額は概ね次のイメージです。
- 所得税の控除限度額 = その年分の所得税額 ×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
さらに、所得税の限度額を超えた分は、一定の範囲で復興特別所得税から控除できる仕組みも整理されています(算式も国税庁の案内参照)。
計算のつまずきポイント(実務)
- 「国外所得金額」の集計が雑になる(配当・利子・分配・海外ETFなどが混在)
- 外貨建ての税額を円換算するタイミング・レートが不統一になる
- 手数料や現地税の性質が「外国所得税」に該当するかの説明が不足する
シンプルな数値例(イメージ)
たとえば次のような状況を仮定します(概算の理解用です)。
- 日本の所得税額(各種控除後):30万円
- 所得総額:600万円
- 調整国外所得金額(米国株配当等):60万円
この場合の所得税の控除限度額は、 - 30万円 ×(60万円/600万円)= 3万円
となり、米国で引かれた税金が仮に5万円でも、所得税から控除できるのは原則3万円まで、というイメージです(残りは制度上の扱いが分かれます)。
外国税額控除の確定申告|手順(e-Tax/紙共通)
ここからは「海外株式の配当で引かれた外国税を、確定申告で精算する」実務手順です。
Step 1: 必要資料をそろえる(証憑が最重要)
- 証券会社の年間取引報告書(配当・外国源泉税の集計が分かるもの)
- 外国で課税されたことを証する書類(源泉徴収の明細等)
- 必要に応じて、課された税が外国所得税に該当することの説明資料
明細書の作成にあたり、「外国所得税が課されたことを証する書類等の添付」が求められます。
Step 2: 「外国税額控除に関する明細書」を作成する
確定申告で外国税額控除に関する明細書を作成し、外国所得税額の内訳や計算をまとめます。
外貨金額と円換算額を併記する設計のため、円換算ルール(どの時点のレートで、どの単位で丸めるか)を自分の中で統一しておくとミスが減ります。
Step 3: 確定申告書へ転記し、控除額を反映する
明細書で算定した控除額を、確定申告書の「外国税額控除等」欄へ反映します。
給与・事業・不動産など他の所得がある方は、国外所得金額と所得総額のバランスで控除限度額が変わるため、全体像の把握が欠かせません。
Step 4: e-Taxの場合は添付書類をイメージ提出する
e-Taxでは、要件を満たす添付書類についてイメージデータ(PDF等)で提出できる範囲があります。証憑の提出が必要な場合、電子添付の可否を確認し、対象ならスキャンして添付する運用が効率的です。
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米国株の二重課税を減らす方法の比較|源泉での軽減と確定申告
外国税額控除は「日本側での精算」ですが、実務では「そもそもの源泉を軽減できるか」も論点になります。両者の違いを整理しておくと判断が速くなります。
| 項目 | 源泉での軽減(現地側の手続) | 確定申告での外国税額控除 |
|---|---|---|
| 目的 | 外国で引かれる税を抑える | 日本の税額から差し引いて調整 |
| タイミング | 配当受領時点までに手続 | 配当を受け取った翌年の申告 |
| 実務の肝 | 事前手続・書類整備 | 控除限度額の計算と証憑添付 |
| 向いている人 | 長期で継続投資する人 | すでに源泉税が引かれている人 |
ポイントは、「源泉の軽減」と「外国税額控除」は競合ではなく、併用・使い分けの関係になりやすいことです。どちらが有利かは、所得状況、配当規模、国外所得割合、他の税額控除の有無で変わります。
よくある質問
Q: 外国税額控除を使うと、米国で引かれた税金は全額戻りますか?
A:
いいえ。外国税額控除は、日本の所得税等から差し引ける上限(控除限度額)があります。外国で引かれた税額が大きい場合、当年の所得税からは一部しか控除できないことがあります(限度額の算式に基づきます)。Q: e-Taxで申告する場合、外国税の証明書類はどう提出しますか?
A:
e-Taxでは、提出可能な添付書類についてイメージデータで送信できる仕組みがあります。外国税額控除は証憑の整備が重要なので、対象範囲を確認のうえ、年間取引報告書や源泉税の明細などをPDF化して添付できるか検討します。Q: 計算が難しいのですが、最低限どこを間違えやすいですか?
A:
典型は3点です。①国外所得金額の集計漏れ、②外貨の円換算ルールの不統一、③「外国所得税に該当する税か」の説明不足です。特に②は数字が合っていても根拠がぶれると修正が大変です。まとめ
- 米国株配当は「外国(米国)での課税+日本での課税」で二重課税になりやすい
- 二重課税の調整は、確定申告での外国税額控除が基本ルート
- 控除できる額は無制限ではなく、国税庁の算式による控除限度額が上限
- 申告実務では「明細書の作成」と「外国税が課された証憑の整備」が要点
- e-Taxは添付書類のイメージ提出を活用すると運用が楽になる場合がある
参照ソース
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
- 国税庁「外国税額控除に関する明細書(居住者)」PDF: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/058.pdf
- 国税庁 e-Tax「添付書類のイメージデータによる提出について」: https://www.e-tax.nta.go.jp/imagedata/imagedata1.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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