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中小企業向けコラム
作成日:2025.01.29
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

デューデリジェンスとは?買い手調査ポイント|税理士が解説

8分で読めます
デューデリジェンスとは?買い手調査ポイント|税理士が解説

デューデリジェンスとは?目的と全体像

デューデリジェンス(DD)とは、買い手が買収前に対象会社の実態とリスクを多面的に調べ、意思決定や条件交渉に反映する調査です。売り手にとっては「想定外の指摘で条件が変わる」ことが最大の課題で、買い手にとっては「買ってから発覚する損失」を避けるための工程です。結論として、デューデリジェンスは「価格・契約条件・統合(PMI)計画」を同時に精度化するための作業と捉えると整理しやすいでしょう。

中小M&Aの実務では、調査の深さとコストのバランスが論点になりがちです。一方で、中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、当事者が手続の留意点を理解し、トラブルを回避する観点が示されています。

デューデリジェンスで何が決まるか

DDの結果は、主に次の3点に影響します。

  • 取引価格(株価)と支払条件(分割・アーンアウト等)
  • 契約条項(表明保証、補償、解除条件、誓約事項)
  • PMI(人員配置、システム統合、取引先対応)と初期投資

デューデリジェンスと監査・株価算定の違い

混同しやすい点を整理します。

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項目デューデリジェンス(DD)監査(会計監査)株価算定(Valuation)
目的買収判断・条件交渉・PMIに必要なリスク把握財務諸表の適正性の意見表明企業価値の算定(前提に基づく価格レンジ提示)
観点リスクと実態(簿外・未払・契約・税務等)会計基準に基づく表示の妥当性事業計画、成長率、資本コスト等
成果物DDレポート、論点一覧、価格調整案監査報告書価値評価レポート
注意調査範囲に限界がある対象は主に財務諸表前提が変わると結果も変わる

買い手が調査するポイント(分野別)

買い手が見るのは「数字」だけではありません。税理士法人 辻総合会計の現場でも、最終的に問題になるのは「契約・税務・人の問題が数字に跳ね返る」ケースが多い印象です。ここでは優先度が高い論点から整理します。

1. 財務DD(Quality of Earnings)

  • 売上・粗利の実在性(検収基準、返品・値引、主要顧客依存)
  • 正常収益力の把握(役員報酬、私的費用、一次要因の除外)
  • 運転資本の実態(売掛金回収遅延、滞留在庫、前受金の根拠)
  • 簿外債務の疑い(未払残業、未払保険料、返品見込、保証)
  • ネットデット(有利子負債・リース・社債・役員借入等)の整理

2. 税務DD(申告の適正性と潜在税務リスク)

  • 法人税・消費税・源泉所得税の申告状況と修正リスク
  • 交際費・寄附金・福利厚生の損金性、役員関連取引の妥当性
  • 消費税(課税区分、インボイス対応、簡易課税の適否)
  • 税務調査の履歴、指摘事項の再発可能性
  • M&A時に想定される繰越欠損金・グループ通算等の影響(該当する場合)
ここがポイント
税務DDは「過去の申告が正しいか」だけではなく、「買収後に税務否認される余地がどこにあるか」を見立てる作業です。特に中小企業では、経理運用の癖がリスクとして残りやすいため、論点を金額換算し、契約条項(補償・価格調整)に落とし込む設計が重要です。

3. 法務DD(契約・許認可・紛争)

  • 主要取引契約(解除条項、チェンジオブコントロール条項、独占条項)
  • 許認可の要否と名義、更新要件(業種により致命傷になり得ます)
  • 訴訟・紛争・クレーム、反社チェック
  • 知的財産(商標、著作権、ソフト利用許諾、職務発明規程)
  • 個人情報・セキュリティ(委託契約、漏えい時の責任分界)

4. 人事・労務DD(未払残業と退職給付が多い)

  • 労働時間管理、固定残業代の運用、36協定の整備
  • 社会保険・労働保険の加入・算定、未加入期間の有無
  • キーパーソン依存、競業避止・秘密保持の実効性
  • 退職金規程・退職給付債務、ハラスメント・労務トラブル

5. ビジネスDD(事業の持続性とPMIの現実性)

  • 顧客・仕入先の集中度、トップ営業依存
  • 値上げ余地、競合優位性、参入障壁
  • 設備・ITの老朽化、更新投資の必要額
  • PMIの難易度(統合後の離職リスク、システム刷新コスト)

デューデリジェンスの進め方(実務の流れ)

買い手主導で進む一方、売り手の協力姿勢がスピードと条件に直結します。中小企業庁の資料でも、M&Aにおいて十分なDDが行われているかを確認する趣旨のチェックシートが示されています。

Step 1: 調査範囲の合意(スコープ設計)
目的(価格・契約・PMI)を明確にし、重要論点に絞って深掘りします。初期段階で「何を見ないか」も決めるのがコツです。

Step 2: 資料収集(データルーム整備)
試算表、総勘定元帳、契約書、申告書、就業規則、許認可、主要KPIなどを体系的に提出します。提出遅延はそのまま条件悪化につながり得ます。

Step 3: インタビューと検証
経営者・経理・現場責任者へのヒアリングで、数値の背景と運用実態を確認します。ここで「ルールと実態の乖離」が見つかりやすいです。

Step 4: 論点整理と条件反映
論点を金額換算し、価格調整(ネットデット・運転資本調整等)や、表明保証・補償条項・前提条件に反映します。

DD結果をどう交渉に落とし込むか(買い手の使い方)

DDは「見つけたリスクをどう扱うか」が本番です。典型的な落とし込みは次のとおりです。

  • 価格に織り込む:一時要因・投資必要額・回収不能債権などを減額要素にする
  • 契約で守る:表明保証の範囲、補償上限(キャップ)、免責金額(バスケット)を設計する
  • 条件を付ける:許認可の承継、重要取引先の同意、経営者保証の解除などをクロージング条件にする
ここがポイント
「リスクを全部価格で引く」のか、「契約でカバーする」のかは、リスクの性質で使い分けます。金額が読めないリスクは補償条項、金額が読めるリスクは価格調整、発生確率が低いが致命的なものは条件設定、という整理が実務的です。

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注意点とコスト感(やり過ぎ・やらなさ過ぎを避ける)

DDは万能ではありません。資料の限界、時間の制約、意図しない情報欠落が起こり得ます。したがって、買い手は「重要論点に集中」し、売り手は「疑念を持たれない資料設計」を意識する必要があります。

また、DD費用の税務上の扱いも実務論点です。国税庁の質疑応答事例では、合併に伴うデューディリジェンス費用の取扱いについて示されています(具体の事案により異なる可能性はあります)。

よくある質問

Q: デューデリジェンスは必ず実施しなければなりませんか? ▼

A:

法律上の一律義務ではありませんが、買い手にとっては意思決定と条件交渉の基礎になるため、実務上は多くの案件で実施されます。特に簿外債務や労務・税務リスクは、買収後に顕在化しやすい論点です。
Q: 売り手として、DDで揉めないために何を準備すべきですか? ▼

A:

①月次試算表と総勘定元帳の整合、②主要契約書・許認可の所在整理、③申告書・納税状況の提示、④労務(残業、社保、就業規則)の現状説明、の4点を優先してください。説明できない点がある場合は、先に論点化し、対処方針を用意すると交渉が安定します。
Q: DDで見つかった問題は、どのように最終契約へ反映されますか? ▼

A:

価格調整(ネットデット・運転資本)、表明保証の強化、補償条項の設定、クロージング条件(許認可・同意取得等)として反映されるのが一般的です。問題の性質により最適解は異なるため、専門家と条項設計まで一体で検討することが重要です。

まとめ

  • デューデリジェンス(DD)は、買い手が買収前に実態とリスクを調べ、価格・契約・PMIに反映する調査
  • 買い手の重点は、財務(正常収益力・運転資本・簿外債務)、税務(申告の適正性)、法務(契約・許認可)、労務(未払残業等)
  • DDは「見つけたリスクをどう扱うか」が核心で、価格調整・表明保証・補償・条件設定に落とし込む
  • 進め方は、スコープ合意→資料整備→検証→条件反映の順で、重要論点に集中する
  • 個別事情で結論が変わるため、取引スキームと契約条項まで含めて専門家と検討するのが安全

参照ソース

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
  • 国税庁「合併に伴うデューディリジェンス費用の取扱い」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/46.htm
  • 中小企業庁「事業承継等事前調査チェックシート(PDF)」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/ninteisinseisyo/09_check_tebiki.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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