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中小企業向けコラム
作成日:2025.08.13
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

会社の株価評価方法【類似業種・純資産・配当還元】|税理士が解説

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会社の株価評価方法【類似業種・純資産・配当還元】|税理士が解説

非上場会社の株価評価(いわゆる自社株評価)とは、取引相場のない株式について、相続税・贈与税などの目的に沿って「1株いくらか」を算定することです。実務では、会社規模と株主区分により、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式のいずれを使うかが決まります。評価方法の選定を誤ると、税額・納税資金・承継設計が大きくぶれるため、手順から押さえることが重要です。

会社の株価評価とは(自社株評価の基本)

会社の株価評価は、上場株式のように市場価格がないため、一定のルールに基づいて算定します。主に論点になるのは次の3つです。

  • 何の目的で評価するか(相続税・贈与税、M&Aの目安、ストックオプション設計など)
  • 会社の規模区分(大会社・中会社・小会社)
  • 株主の区分(同族株主等か、それ以外か)

本記事は「相続税・贈与税の評価」を主眼に、基本3方式を整理します。M&Aや投資判断の「時価(フェアバリュー)」とは考え方が異なる点に留意してください。

ここがポイント
自社株評価は「目的」で結論が変わります。相続税評価(税務のルール)と、M&Aで用いる企業価値評価(DCF等)は、同じ“株価”でも前提が別物です。混同すると意思決定を誤りやすいため、まず評価目的を固定しましょう。

類似業種比準・純資産・配当還元の違い

3方式の位置づけを、実務目線で比較します。

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方式ざっくり結論主な対象(典型)価格が上がりやすい要因価格が下がりやすい要因
類似業種比準方式上場類似企業の水準を参照し、配当・利益・簿価純資産で比準大会社(原則)/中会社(併用)利益水準が高い、配当が厚い利益が薄い、財務が軽い
純資産価額方式資産負債を相続税評価に洗い替えし、純資産ベースで算定小会社(原則)/中会社(併用)含み益資産(不動産等)が大きい含み損、負債が多い
配当還元方式配当実績を一定利回りで割り戻す(簡易的)同族株主等以外が取得する場合の特例(典型)配当が多い無配・配当が少ない

税理士法人 辻総合会計では、医療・中小企業の承継支援を中心に30年以上、累計1,000件超の評価・申告実務に携わってきました。現場感としては「方式そのもの」よりも、方式選定(会社規模・株主区分)と、純資産の洗い替え(特に不動産・有価証券・保険)で結果が大きく動きます。

類似業種比準方式の計算ポイント(何を比準するのか)

類似業種比準方式は、上場会社の業種別データを参照し、評価会社の「1株当たり配当・利益・簿価純資産」を比準して株価を算定する考え方です。実務の要点は次のとおりです。

1. 業種目の判定がスタート地点

業種目がずれると参照する上場データが変わり、結果が変動します。最近は産業分類の改定もあるため、どの分類表で判定するか(該当年分の取り扱い)まで含めて確認します。

2. 参照データは「申告年分」に合わせる

類似業種比準価額計算に用いる業種目別株価等は、国税庁が年分(および月次)で公表しています。評価時点と参照年分がずれると、説明が弱くなります。

3. 中会社は“併用”が基本

中会社は、類似業種比準と純資産を一定割合でミックスします。したがって、どちらか片方だけ最適化しても全体は動き切りません。

ここがポイント
類似業種比準は「利益・配当・簿価純資産」の3点セットで考えます。利益だけ、配当だけに着目すると誤解が生じやすいため、3指標のバランスで納得感ある説明資料を作るのが実務上有効です。

純資産価額方式の計算ポイント(洗い替えが肝)

純資産価額方式は、帳簿の貸借対照表をそのまま使うのではなく、資産・負債を相続税評価に“洗い替え”して純資産を算定します。実務で差が出やすい論点は以下です。

1. 不動産の評価替え(路線価・倍率方式)

簿価が低い土地建物を多く保有していると、評価替えで純資産が跳ね上がるケースがあります。特に地主型・開業医法人・不動産管理会社は要注意です。

2. 有価証券・保険・貸付金の実在性

上場株式等の評価替えはもちろん、役員貸付金・仮払金・未収金など「回収可能性」をどう整理するかで、説明と対策が変わります。

3. 法人税等相当額の控除

含み益がある場合、評価差額に対する法人税等相当額を控除して純資産を算定します。ここは“控除できるから安心”ではなく、そもそも含み益資産をどう持つか(保有か売却か)と一体で検討します。

配当還元方式はいつ使う?(同族以外の特例を理解)

配当還元方式は、同族株主等以外の株主が取得する場合などに、会社規模にかかわらず原則的評価方式に代えて用いる特例的な評価方法として整理されます。実務では次のような場面で登場します。

  • 従業員・親族外への贈与で株主区分が同族に当たらないケース
  • 形式上は少数株主だが、持株関係の整理が必要なケース

ただし、同族判定や議決権構成の設計を誤ると、意図せず原則評価になりうる点がリスクです。株主名簿・議決権・持株割合・親族関係を含め、事前に確認しましょう。

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会社の株価評価の手順(実務で迷わない進め方)

実務では「方式の選定」→「必要資料の収集」→「計算」→「説明資料化」の順に組み立てると、手戻りが減ります。

Step 1: 評価目的と評価時点を確定する

相続・贈与・組織再編など、目的と課税時期(評価時点)を最初に固定します。ここが曖昧だと、参照データ(年分・月)もぶれます。

Step 2: 株主区分(同族株主等か否か)を判定する

配当還元方式の適用可否に直結します。株主名簿、親族関係、議決権、持株割合の整理を先に行います。

Step 3: 会社規模(大・中・小)を判定する

総資産価額、従業員数、取引金額などで区分し、類似業種・純資産・併用のどれが原則になるかを決めます。

Step 4: 方式に応じた数値を収集・整形する

  • 類似業種比準:1株当たり配当・利益・簿価純資産、業種目別株価等
  • 純資産:資産負債の洗い替え(不動産・有価証券・保険・貸付金等)
  • 配当還元:配当実績(一定期間)と株式数

Step 5: 計算とレビュー(感度分析)を行う

利益の増減、不動産評価の前提、配当方針など、主要ドライバーを変えた場合のレンジを把握します。承継計画では、評価額の「一点」より「幅」を持って意思決定する方が安全です。

よくある失敗と注意点(評価額が跳ねるポイント)

  • 不動産の含み益を放置し、純資産価額が想定以上に膨らむ
  • 業種目判定の前提が誤り、類似業種データがずれる
  • 同族判定を軽視し、配当還元の想定が崩れる
  • 株主名簿・議決権の整備不足で、税務上の説明が弱くなる

承継実務では「評価額そのもの」よりも、「納税資金」「後継者の持株比率」「少数株主対策」「配当・役員報酬・退職金設計」を同時に整えることが、結果的にトラブルを減らします。

よくある質問

Q: 類似業種比準と純資産、どちらが有利ですか? ▼

A:

一概には言えません。利益が厚い会社は類似業種比準で高く出やすく、含み益資産が多い会社は純資産で高く出やすい傾向があります。中会社は併用になるため、両方の要素を見てレンジ管理するのが実務的です。
Q: 配当還元方式は「配当をゼロ」にすれば評価額を下げられますか? ▼

A:

配当還元の前提として配当実績が影響しますが、そもそも適用できるのは同族株主等以外が取得する場合などの要件を満たすときです。要件判定を誤ると原則評価になり得るため、配当設計だけで判断しないことを推奨します。
Q: 決算書の純資産がマイナスなら株価もゼロですか? ▼

A:

純資産価額方式は資産負債を相続税評価に洗い替えるため、帳簿上の純資産がマイナスでも、不動産の含み益等で評価額がプラスになることがあります。資産内容の精査が必要です。
Q: 相続・贈与の前に、最低限そろえる資料は何ですか? ▼

A:

株主名簿、直近3期程度の決算書一式、法人税申告書、固定資産明細(不動産があれば所在地・面積等の資料)、保険一覧、借入金明細が出発点になります。評価に必要な追加資料は方式により変わります。

まとめ

  • 自社株評価は、会社規模と株主区分により、類似業種比準・純資産・配当還元の適用が整理される
  • 類似業種比準は「配当・利益・簿価純資産」を3指標で比準し、参照年分データの整合が重要
  • 純資産価額は“洗い替え”が核心で、不動産・有価証券・貸付金の評価が結果を左右する
  • 配当還元は特例の位置づけで、同族判定・議決権構成の確認が不可欠
  • 実務は「方式選定→資料収集→計算→説明資料化」の手順で進めると手戻りが少ない

参照ソース

  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm
  • 国税庁「財産評価基本通達(株式及び出資)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/04.htm
  • 国税庁「確定申告書等作成コーナー|取引相場のない株式の評価」: https://www.keisan.nta.go.jp/r3yokuaru/zoyozei/zaisanhyoka/kabushikihyoka/torihikisobanashi.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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