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中小企業向けコラム
作成日:2025.07.14
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

ECサイト運営の経費と在庫管理税務|税理士が解説

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ECサイト運営の経費と在庫管理税務|税理士が解説

結論:ECの税務は「経費」と「在庫」を分けて管理する

ECサイト運営の税務で最もつまずきやすいのは、支出をすべて「経費」にしてしまうことです。仕入れた商品は基本的に在庫(棚卸資産)として残り、売れた分だけが売上原価になります。経費と在庫の境界が曖昧なままだと、利益がブレて資金繰りや納税予測が難しくなるでしょう。特に小規模ECでは、運営者が兼務で処理するため期末棚卸が「後回し」になりがちです。

税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業の月次決算と税務申告を支援してきました。よくある相談として「広告費はどこまで経費か」「売れ残りを落とせるか」「返品・破損の扱い」が挙がります。本記事では、実務で再現できる形に落とし込みます。

ECサイト運営の経費とは(必要経費の基本)

税務上、事業所得等の計算で必要経費にできるのは、(1)売上原価など収入に直接対応する費用、(2)販売費・一般管理費など収入を得るために必要な費用です。つまり「売上のために必要で、事業と関連する支出」が軸になります。家事費(私用)と混ざる支出は、合理的に按分できないと否認リスクが高まります。必要経費の基本的な考え方は国税庁の解説を参照してください。

EC特有の支出は多岐にわたりますが、まずは売上原価(仕入れ)と、それ以外の経費(広告・発送・決済・ツール等)に分けることが第一歩です。この「分けるだけ」で、利益が安定し、どこにお金が漏れているかが見えるようになります。

経費にできるもの・できないものの違い(判断基準と例)

判断基準はシンプルで、「事業関連性」「金額の妥当性」「証拠(請求書・領収書・明細)」の3点です。ECではクレカ明細やモール管理画面のデータが証拠になることも多く、保存ルールまで含めて設計しましょう。

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支出の区分税務上の扱い代表例(EC)実務ポイント
経費(販管費)当期の経費広告宣伝費、販売手数料、決済手数料、発送資材、サブスクツール事業用途の証拠を残す(明細・契約)
在庫(棚卸資産)売れた時に売上原価商品仕入、OEM製造、輸入仕入(商品部分)期末在庫を把握しないと利益が歪む
資産減価償却等10万円超の備品、撮影機材、PC等少額資産の特例は要件確認
家事費(私用)原則不可(按分可)スマホ・自宅家賃、車両費、交際費の私用混在ルールと根拠(面積・時間等)を固定化

「経費にできない」の代表は、私的支出、罰金・科料、過度に高額で事業合理性が弱いものです。一方で、事業に必要であれば、広告費や外注費、発送費、モール手数料などは通常、必要経費になり得ます(ただし個別事情で判断します)。

ここがポイント
ECは「電子の証憑」が中心です。メール添付の請求書PDF、モールの手数料明細、カード明細などは電子帳簿等保存制度(電子取引)のルールに沿って保存が必要になります。保存方法(検索要件・真実性確保など)の整理は、運用を始める前に行うと手戻りが減ります。

在庫管理の税務とは(棚卸資産と売上原価)

ECの利益は、概ね「売上 − 売上原価 − 経費」で決まります。ここで売上原価は、仕入れ額そのものではなく「当期に売れた分の仕入れコスト」です。したがって、期末に残った商品は原則として在庫に残り、当期の費用にはなりません。

実務上のよくある失敗は、仕入れを全額経費にしてしまい、期末棚卸が未実施で利益が過小になるケースです。翌期に在庫が「どこにもない」状態となり、帳尻合わせの修正に発展します。税務調査でも、ECは在庫と売上原価の整合性(数量×単価)が重点確認ポイントです。

在庫管理は「数量管理」と「金額(評価)管理」の2階建てで設計します。数量が合っていなければ評価も合いません。モール別・SKU別に、入出庫(仕入・販売・返品・廃棄)を追える形が望ましいでしょう。

在庫評価方法の選び方と届出(原価法・低価法など)

在庫は期末に評価して金額を確定します。所得税では、評価方法の選定・届出に関する手続が用意されており、届出がない場合の取扱いも定められています。ECはSKUが多く、個別法が実務に合わないこともあるため、「現実に回る方法」を優先して選ぶことが重要です。

選び方の目安は次の通りです。

  • SKUが少なく個品管理が厳密:個別法(1点ごとに原価を追う)
  • SKUが多く回転が速い:総平均法・移動平均法など(一定の平均単価)
  • 値下げや滞留が多い:低価法の適用余地を含め検討(要件・運用が肝)

評価方法は一度決めると継続適用が前提となり、安易な変更は管理コストと税務リスクを増やします。まずは「毎月締められるか」「仕入単価のブレに耐えられるか」を基準に決めるのが現実的です。在庫評価方法の届出手続や期限は、国税庁の案内を確認してください。

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期末棚卸と在庫トラブルの注意点(滞留・廃棄・返品)

ECでは、滞留在庫・不良在庫・返品が利益を大きく揺らします。ここで重要なのは「値下げしたから損になる」ではなく、「税務上、どの事実をもって損失・費用化が認められるか」を資料で説明できる状態にすることです。

代表的な論点は次の通りです。

  • 値下げ販売:値下げは販売政策であり、在庫評価に直結しない場合があります(評価方法・事実関係が重要)。
  • 破損・汚損・期限切れ:廃棄記録、写真、廃棄証明、在庫台帳の減算記録があると説明が通ります。
  • 返品:売上取消と在庫戻し(または不良処分)をセットで処理し、数量がズレないようにします。
  • 委託販売・FBA等:保管場所が外部でも、所有権が自社なら期末在庫に含めるのが通常です。

匿名化した事例ですが、年商7,000万円規模のアパレルECで、期末棚卸を「ざっくり」で済ませた結果、在庫が過少となり利益が過小計上になっていました。翌期に値下げ販売が重なり、どこで損が出たのか説明できず、修正に大きな工数が発生しました。期末だけ頑張るより、月次で在庫差異を潰す方が最終コストは下がります。

ここがポイント
在庫トラブルの多くは「数量差異」と「証拠不足」です。棚卸表、在庫台帳、モール管理画面の履歴(返品・廃棄)、倉庫レポートなどを突合できる形にしておくと、決算と税務調査の双方で強くなります。

月次で回す経費・在庫管理の方法(実務ステップとチェック表)

期末だけ棚卸をやる運用は、ほぼ確実に無理が出ます。ECは取引量が多く、電子データ中心なので、月次締めの仕組みに落とすのが合理的です。以下は、最小構成で回る実務ステップです。

Step 1: 支出を「仕入」と「経費」に分けて入力する

仕入(商品)と、それ以外(広告・発送・手数料・外注等)を最初に分けます。クレカ・決済代行・モール手数料は勘定科目が混ざりやすいので、テンプレート化が有効です。

Step 2: 在庫の入出庫を“数量”で締める

SKU別に、当月仕入数量、販売数量、返品数量、廃棄数量を確定します。FBAや外部倉庫は、倉庫レポートを正本として差異を調整します。

Step 3: 平均単価(または原価)を更新し、売上原価を計算する

評価方法に沿って単価を更新し、売上原価を算定します。値引き・クーポンは原則として売上側の調整となりやすく、原価と混ぜない方が分析が安定します。

Step 4: 証憑・電子データの保存ルールを運用に組み込む

請求書PDF、明細CSV、取引メールなどを「いつ・どこに・どう保存するか」を固定します。電子取引を含む保存制度の概要は国税庁の特設サイトが整理されています。

Step 5: 期末は“月次の延長”として棚卸差異だけ潰す

期末に新しいことをしない設計にします。差異(不明ロス・返品未処理・廃棄未反映)だけを洗い出して、根拠資料とセットで整理します。

最後に、最低限のチェック観点を置いておきます。

  • 仕入計上は「商品」と「送料・関税等の付随費用」を区分できているか
  • モール手数料・決済手数料は月次で計上漏れがないか
  • 返品が「売上」と「在庫」に両方反映されているか
  • 廃棄・破損・期限切れは記録(写真・一覧・証明)を残しているか
  • 電子データ(請求書・明細)が検索できる形で保存されているか

よくある質問

Q: 仕入れた商品は、買った時点で経費にできますか? ▼

A:

原則として商品は在庫(棚卸資産)となり、売れた分が売上原価になります。期末に在庫が残る場合、仕入れ全額を当期の経費にすると利益が歪みやすい点に注意してください(詳細は必要経費・売上原価の考え方をご確認ください)。
Q: 在庫が売れ残って値下げしました。在庫を評価損として落とせますか? ▼

A:

一概には言えません。評価方法や、値下げの事実、滞留・破損などの客観的事情、証拠資料の有無で判断が分かれます。実務では、値下げの経緯、廃棄記録、在庫台帳の整合など「説明可能性」を先に設計することが重要です。
Q: モールの明細や請求書PDFは、紙で印刷して保管すれば足りますか? ▼

A:

電子で授受した取引データは、原則として電子データのまま保存が求められる場面があります。電子帳簿等保存制度(電子取引)の要件に沿った保存方法を整備してください。
Q: 在庫評価方法は後から自由に変えられますか? ▼

A:

評価方法は継続適用が前提で、変更には手続が必要となる場合があります。新規開業時の選定や届出期限を含め、国税庁の手続案内を確認のうえ、実務で回る方法を採用するのが安全です。

まとめ

  • ECの税務は「経費」と「在庫」を分け、売上原価を正しく出すことが核心
  • 必要経費は事業関連性・妥当性・証拠の3点で判断し、家事費混在は按分根拠を固定化
  • 在庫は数量管理が先、次に評価(単価)管理で利益のブレを止める
  • 在庫評価方法は“回る運用”を優先し、届出・継続適用の前提を理解する
  • 電子の証憑が中心のため、電子取引データの保存ルールを月次業務に組み込む

参照ソース

  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
  • 国税庁「A1-18 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/17.htm
  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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