
執筆者:辻 光明
代表税理士
ファクタリングとは?仕組みとメリット・デメリット|税理士が解説

ファクタリングとは(結論:売掛債権の「売却」による資金化)
ファクタリングとは、売掛債権(請求書・売上代金の未回収分)をファクタリング会社へ譲渡し、入金期日より前に資金化する方法です。ポイントは「借入ではなく、債権の売買(譲渡)」であることです。
資金繰りが逼迫しやすいのは、売上は立っているのに入金が先で、支払い(人件費・仕入・家賃)が先に来る局面です。特に、急な売上増・季節変動・診療報酬や保険請求のタイムラグなどがある事業では、資金の谷が生じやすいのではないでしょうか。
当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、30年以上にわたり中小企業・クリニック等の資金繰り相談を多数扱ってきましたが、「銀行融資が間に合わない」「急ぎで資金が必要」という場面で、ファクタリングを検討するケースは一定数あります。
ファクタリングの仕組み|2社間・3社間の違い
2社間ファクタリング(取引先に通知しない型)
利用者(あなたの会社)とファクタリング会社の2者で契約し、売掛先(取引先)には基本的に通知せずに進めます。入金期日には、売掛先からあなたの会社へ入金され、その後ファクタリング会社へ精算します。
スピード重視で使われやすい反面、ファクタリング会社側のリスクが高くなりやすく、手数料は高めになりがちです。
3社間ファクタリング(取引先に通知・承諾を得る型)
利用者・ファクタリング会社・売掛先の3者で進め、売掛先へ債権譲渡を通知し、承諾を得ます。入金期日には、売掛先がファクタリング会社へ直接支払う形が一般的です。
透明性が高く回収リスクも下がりやすいため、手数料は2社間より低くなる傾向がありますが、売掛先の理解が必要です。
比較表:2社間・3社間・銀行融資の違い
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | 銀行融資(運転資金) |
|---|---|---|---|
| 取引先への通知 | 原則なし | あり(承諾が必要) | なし |
| 入金スピード | 早い傾向 | 中程度 | 審査次第 |
| 手数料/金利感 | 高めになりやすい | 低めになりやすい | 金利は相対的に低いことが多い |
| 審査の見られ方 | 売掛先の信用が重要 | 売掛先の信用が重要 | 自社の財務・返済力が重要 |
| 会計上の位置づけ | 債権の売却(要会計判断) | 債権の売却(要会計判断) | 借入金計上 |
ファクタリングのメリット
1) 売掛金の入金待ちを短縮でき、資金繰りが安定する
売掛金は「利益」ではあっても「現金」ではありません。期日前に資金化できることで、支払い遅延や資金ショートのリスクを下げられます。
2) 自社の赤字・債務超過でも検討余地がある
審査の中心は売掛先の信用力になりやすく、銀行融資より通りやすい局面があります(ただし、売掛先の与信や取引実態が重要です)。
3) 借入枠を温存し、金融機関との関係を保ちやすい
銀行融資は「枠」の問題があります。短期の資金需要をファクタリングでつなぎ、融資は中長期の設備・運転に回す、という使い分けが可能です。
4) 取引条件の変化(手形サイト短縮等)への緩衝材になる
業界全体で支払条件が見直される局面では、運転資金の谷が一時的に大きくなることがあります。売掛債権の活用は、こうした変化への対応策として検討されます。
ファクタリングのデメリット・注意点(ここを誤ると高コスト化)
1) 手数料が利益を圧迫する
ファクタリングのコストは、売上総利益率が低い業態ほど効きます。例えば、粗利10%の事業で手数料が数%発生すると、実質利益が大きく削られます。
「一回で終わるつなぎ」なのか、「恒常化している」かで、判断は大きく変わります。
2) 取引先に知られるリスク(3社間、または2社間でも例外)
3社間は通知が前提です。2社間でも、契約条項や回収方法によっては実質的に通知が発生し得ます。レピュテーション(信用)影響を事前に織り込む必要があります。
3) 契約が“実質貸付”なら違法・高リスクになり得る
偽装ファクタリング(ファクタリングを装った貸付)が問題化しています。典型的には、
- 買戻しを強制される(回収不能時に元本を必ず返す)
- 手数料ではなく、期間に応じた金利計算に近い設計
- 取り立てが貸金業者の様式
など、実態が「貸付」に近い取引です。特に給与を対象とする「給与ファクタリング」はヤミ金融に該当し得るとして注意喚起があります。
4) 債権譲渡の法的手続(対抗要件)に留意が必要
債権譲渡は、第三者に対して主張するための要件(通知・承諾、登記等)が論点になります。取引スキームによって、債権譲渡登記を求められる場合もあります。
「誰に、いつ、どの方法で対抗できるか」は、契約設計と実務運用に直結します。
ファクタリングと他の資金調達の違い(混同しやすい論点)
手形割引との違い
手形割引は受取手形を金融機関等に割り引いて資金化する方法で、手形の仕組みを前提とします。ファクタリングは請求書ベースの売掛債権を対象にすることが多い点が違いです。
売掛債権担保融資(ABL)との違い
ABLは売掛債権等を担保に「融資」を受けるため、借入金として計上されます。一方、ファクタリングは債権の売買として整理されるのが基本です(会計処理は個別判断)。
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ファクタリング利用の手順(実務の流れ)
Step 1: 対象債権の整理(取引実態の確認)
請求書、契約書、納品書、入金履歴など、売掛債権の実在性を説明できる資料を揃えます。架空計上や名義貸しは重大なリスクです。
Step 2: 見積取得と手数料の比較
同じ金額でも、2社間/3社間、回収方法、必要書類で条件が変わります。手数料だけでなく、事務手数料・振込手数料・違約金条項も確認します。
Step 3: 契約内容の精査(リコース・違約金・回収条項)
「回収不能時の負担」「買戻義務」「遅延時の追加負担」が明記されていないかを重点チェックします。疑義があれば専門家に確認します。
Step 4: 実行・入金(資金使途の優先順位付け)
入金後は、税金・社会保険・給与・仕入など優先度の高い支払いから充当し、資金繰り表を更新します。恒常化する場合は、収益構造の改善や金融機関調達への切替も検討します。
失敗しないための業者選びチェックポイント
- 会社情報(所在地・代表者・連絡先)が明確で、説明が文書化されている
- 手数料の内訳が明確(「一式」表記が多い場合は要注意)
- 契約が売買なのに、実質的に返済義務・買戻義務が強い設計になっていない
- 取引先への通知方法・タイミングが契約書と運用で一致している
- 相談窓口(金融庁・消費生活センター等)の注意喚起に反しない説明になっている
よくある質問
Q: ファクタリングは借入(融資)と何が違いますか?
A:
一般には売掛債権を譲渡して資金化する「債権の売買(譲渡)」です。借入のように元本返済・利息という形ではなく、債権の買取対価として手数料が発生します。ただし実態が貸付に近い取引は別問題になるため、契約と実態の整合が重要です。Q: 手数料はどのくらいが相場ですか?
A:
一律の相場はありません。2社間/3社間、売掛先の信用、回収方法、金額、資料の整備状況などで変動します。比較する際は、手数料率だけでなく、事務費用や違約金条項まで含めた“総コスト”で判断してください。Q: 取引先に知られずに利用できますか?
A:
2社間は原則として通知しない設計ですが、契約条項や回収方法次第で例外もあり得ます。3社間は通知・承諾が前提です。信用面の影響が懸念される場合は、資金繰り表を作成し、他手段(融資・条件変更交渉)も含めて比較検討すると安全です。まとめ
- ファクタリングは売掛債権を譲渡して期日前に資金化する方法
- 2社間はスピード重視だが手数料が高めになりやすく、3社間は透明性が高く手数料が下がりやすい
- 最大の注意点は偽装ファクタリングを避けること(契約と実態の整合、リコース条項の確認)
- 債権譲渡の対抗要件(通知・承諾・登記等)や契約条項(違約金・買戻義務)を必ず確認する
- 恒常利用になる場合は、収益構造改善や金融機関調達への切替も含めた再設計が有効
参照ソース
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」: https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
- 国民生活センター「給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!」: https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20200612_1.pdf
- 中小企業庁「売掛債権の利用促進について」: https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/urikake_panhu2.html
- 法務省「債権譲渡登記・質権設定登記」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00171.html
- 経済産業省「約束手形等のサイト短縮に関する要請」: https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240430002/20240430002.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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