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中小企業向けコラム
作成日:2025.09.15
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

副業の法人化タイミングと手続き|節税とリスクを税理士が解説

9分で読めます
副業の法人化タイミングと手続き|節税とリスクを税理士が解説

副業から法人化するタイミングは、「節税できるか」だけでなく、社会保険・資金繰り・取引先の信用・税務手続きの運用コストまで含めて判断するのが基本です。とくに、利益が伸びている人ほど「いつ法人にするか」で手取りと手間が大きく変わります。一方で、法人化すると固定費や事務が増え、思ったほど得にならないケースもあります。

副業の法人化とは何か

副業の法人化とは、個人で行っている副業を「株式会社」や「合同会社」などの法人格に移し、法人として売上・経費・税金を管理することです。個人の所得税ではなく法人税等で課税され、代表者は役員報酬(給与)として所得を得る形になります。

法人化の狙いは主に次の3つです。

  • 所得の分散(役員報酬・家族給与等の設計)で税負担を最適化する
  • 取引先や金融機関からの信用力を高める
  • 事業リスクと個人資産の切り分け(有限責任の枠組み)を明確にする

法人化するタイミングの判断基準

「法人化の目安はいくら?」と聞かれることが多いのですが、結論は一律ではありません。判断は、次の軸を同時に見ます。

利益が安定し、伸び続けているか

法人化は、設立費用や税理士費用・会計ソフト運用などの固定費が増えます。したがって、単年で儲かっただけでなく、翌期以降も一定の課税所得が見込めるかが重要です。

実務上は「課税所得が年800万〜1,000万円を超え始めたあたり」で検討が増えますが、これはあくまで“相談が多いゾーン”であり、役員報酬の設定や扶養・住民税、社会保険料で前後します。

取引先が「法人でないとNG」になっていないか

BtoB取引や大手プラットフォームでは、契約・与信・反社チェックの関係で「法人名義」「法人番号」「請求書の要件」を求められることがあります。法人化は税金だけでなく、売上機会の獲得にも直結します。

社会保険・人件費の影響を許容できるか

法人は原則として被用者保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所になりやすく、代表者も被保険者となるケースが多いです。副業の規模が小さい段階で法人化すると、実質的な固定費として重く感じることがあります。

ここがポイント
法人化は「節税のスイッチ」ではなく、役員報酬と社会保険、資金繰りをセットで設計する“経営の意思決定”です。税額だけを見て決めると、手取りが逆に減ることがあります。

消費税(インボイス含む)への影響を確認したか

新設法人は、原則として基準期間がないため消費税の納税義務が免除されることがあります。一方で「特定期間」の売上や給与等の条件などにより免除されない場合もあります。副業がインボイス(適格請求書)運用と絡む場合は、法人化の時期で“課税事業者になるタイミング”が変わるため要注意です。

個人事業主と法人の違い(税金・責任・手間)

法人化の判断では、メリットとデメリットを同じ粒度で比較することが重要です。代表的な違いを整理します。

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項目個人事業主法人(株式会社・合同会社)
税金の体系所得税・住民税(累進)法人税等+役員個人の所得税
所得の調整原則、個人に集中役員報酬等で分散設計が可能
経費の考え方事業関連性で判断同様だが社内規程・証憑整備が重要
赤字の取扱い青色で繰越可(要件あり)青色で欠損金繰越等(要件あり)
社会保険国保・国民年金が中心社会保険加入の影響が出やすい
信用・契約事業者本人の信用法人名義で取引・融資がしやすい
事務負担比較的軽い決算・申告・届出が増える

「税率が下がるか」だけでなく、社会保険と事務コスト、契約面のメリットを含めて総合評価するのが合理的です。

法人化の手続き(設立〜税務署届出まで)

法人化は、登記で終わりではありません。設立後の届出まで含めて“運用開始”です。最低限の流れをステップで整理します。

Step 1: 会社形態を選ぶ(株式会社/合同会社)

  • 株式会社:対外的信用が高い傾向、定款認証が必要
  • 合同会社:設立コストを抑えやすい、意思決定が柔軟

Step 2: 基本設計を固める(商号・事業目的・本店・決算期)

  • 決算期は繁忙期や資金繰りを踏まえて設定
  • 事業目的は将来の展開も見越して過不足なく記載

Step 3: 定款作成・資本金決定

  • 金融機関・取引先の見え方も踏まえ資本金を決める
  • 許認可が絡む業種は目的や役員要件を事前確認

Step 4: 設立登記(法務局)

  • 申請日(設立登記の日)が「設立日」として扱われます
  • ここから税務署提出期限などのカウントが始まります
ここがポイント
設立後は、税務署への法人設立届出書などの提出期限が「設立の日(設立登記の日)から2か月以内」等で動きます。登記日を“いつにするか”は実務上とても重要です。

Step 5: 税務署・自治体への主要届出

代表的なものは次のとおりです(業種や状況で増減します)。

  • 法人設立届出書(定款の写し等を添付)
  • 青色申告の承認申請書(期限に注意)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(役員報酬を支払う場合)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(該当する場合)
  • 消費税関係の届出(課税事業者選択等、必要に応じて)

Step 6: 運用設計(役員報酬・経理フロー・口座/クレカ)

  • 役員報酬は原則として期中変更が難しいため、利益予測とキャッシュを踏まえ決定
  • 口座・クレカ・請求書番号管理を法人で分離
  • 取引データの保存・証憑管理を「法人のルール」に統一

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失敗しやすい注意点(節税・消費税・役員報酬)

最後に、当法人(税理士法人 辻総合会計)の実務で相談が多い“つまずきポイント”を整理します。

役員報酬を低くしすぎて資金繰りが詰まる

「法人にお金を残す」こと自体は悪くありませんが、生活費が不足すると役員貸付や借入が増え、管理が複雑になります。役員報酬は、税金だけでなく社会保険・住民税の平準化も含めて設計します。

消費税の判定を見落とす

新設法人は消費税が免除されることが多い一方、一定条件で免除されないケースがあります。設立タイミングをずらす前に、課税売上高・給与等支払額・取引形態(インボイス)を確認し、消費税の納税義務の見込みを立てることが重要です。

個人→法人への移行(売上・資産・契約)の段取り不足

  • 取引先への契約切替(名義変更・口座変更)
  • 事業用資産(PC、備品、在庫等)の引継ぎ方法
  • ドメイン・商標・プラットフォームアカウントの移管

これらは「税務」だけでなく「契約・オペレーション」の設計が必要です。法人化は“作って終わり”ではなく、“止めずに移す”プロジェクトとして扱うのが安全です。

よくある質問

Q: 副業が赤字でも法人化する意味はありますか? ▼

A:

取引先要件(法人でないと契約できない)や、将来の資金調達・共同事業など非税務目的が明確なら検討余地はあります。ただし、設立費用と固定費が重くなるため、赤字が続く見込みなら慎重に判断するのが一般的です。
Q: 法人設立後、税務署への届出はいつまでですか? ▼

A:

代表的には、法人設立届出書は設立の日(設立登記の日)以後2か月以内です。また、青色申告の承認申請は「設立の日から3か月経過日」と「当該事業年度終了日」のいずれか早い日の前日まで等、期限が短いので早めの準備が必要です。
Q: 株式会社と合同会社はどちらが副業に向きますか? ▼

A:

取引先が会社形態を重視する場合や将来的に出資を受ける可能性がある場合は株式会社、設立・運用コストを抑えたい場合は合同会社が選ばれやすいです。契約先や事業計画に合わせて選定します。

まとめ

  • 法人化は「利益」「取引要件」「社会保険」「消費税」を同時に見て判断する
  • 目安の利益水準はあっても一律ではなく、役員報酬設計で結論が変わる
  • 設立登記日から届出期限が動くため、登記日設計が重要
  • 法人設立届出書・青色申告申請など、設立後の手続きが“実務の本番”
  • 移行は税務だけでなく契約・オペレーションの段取りが成否を分ける

参照ソース

  • 国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm
  • 国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_14.htm
  • 国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき(消費税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm
  • 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00134.html
  • 厚生労働省「被用者保険の適用事業所の範囲の見直し(資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000565930.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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