
執筆者:辻 光明
代表税理士
開業届の書き方と提出方法【2026年】|個人事業主向け税理士解説

開業届とは、個人が事業を始めたことを税務署へ届け出る書類(正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」)です。これからフリーランス・副業から独立する方にとって、「いつまでに」「どこへ」「何を書けばよいか」が最初のつまずきになりがちです。本記事では、提出期限は原則「開業日から1か月以内」という基本から、記入欄の考え方、e-Tax・郵送・窓口の提出手順まで、実務目線でわかりやすく解説します。
税理士法人 辻総合会計でも、開業直後の届出漏れや記載ミス(屋号・納税地・青色申告の同時提出など)に関するご相談は多く、初動の設計がその後の確定申告の手間と税負担に直結する場面を数多く見てきました。要点を押さえて、迷いなく提出できる状態にしましょう。
開業届とは何か:提出が必要な人・不要な人
開業届の正式名称と目的(開業届とは)
一般に「開業届」と呼ばれる書類は、国税庁の様式「個人事業の開業・廃業等届出書」です。新たに事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき事業を開始した場合などに提出します。
提出が必要なケース
- 事業として継続的に売上を得る予定がある(例:フリーランス、店舗、EC運営)
- 事務所・事業所を新設、移転した
- 事業を廃止した(廃業届出も同じ様式で対応)
「副業だから不要?」の誤解
副業でも、事業所得として申告する形になるなら開業届の提出が基本線です。反対に、単発の雑所得にとどまる働き方や、そもそも事業実態がない場合は、提出が適さないこともあります。判断に迷う場合は、確定申告区分(事業所得/雑所得)から逆算して整理するのが安全です。
開業届と青色申告の違い:同時に出すべき届出
開業届と青色申告承認申請書の違い(開業届 青色申告 違い)
- 開業届:事業を始めた事実の届出
- 青色申告承認申請書:青色申告(最大65万円控除など)の適用を受けるための申請
青色申告を選ぶなら、開業届とセットで動くのが定石です。国税庁の案内では、青色申告承認申請書の期限は「原則3月15日まで(※開業日が1月16日以降なら、開業日から2か月以内)」と整理されています。
ついでに検討したい関連届出
開業直後に「提出しておけば後で困らない」書類として、次が典型です(必要性は業態によります)。
- 源泉所得税の納期の特例(給与支払があり、条件に該当する場合)
- 消費税の課税事業者選択・インボイス関連(開業時から課税事業者として動く場合は特に慎重に)
開業届の書き方:押さえるべき項目と記入のコツ
ここでは、初めての方が迷いやすい欄に絞って「考え方」を解説します(様式の細部は年度で微修正があるため、最新版の様式を使う前提です)。
まず決めるべき3点(納税地・屋号・事業の概要)
- 納税地:通常は住所地。提出先は「納税地を所轄する税務署」が原則です。
- 屋号:必須ではありません。ネットショップ名・屋号口座を使うなら記載すると実務上便利です。
- 事業の概要:広すぎず狭すぎず。「Web制作」「訪問看護(個人)」「輸入物販(EC)」など、第三者が読んで理解できる粒度が目安です。
開業日(事業開始等の事実があった日)の考え方
開業日は「いつから売上が立ったか」だけでなく、事業として開始した実態(開店日、サービス提供開始日、主要契約の開始日など)で考えます。提出期限は原則「開業日から1か月以内」なので、日付がブレると期限管理にも影響します。
「給与等の支払の状況」欄(従業員がいない場合)
当面は外注のみ・家族のみ、というケースでも、将来的に雇用の可能性があるなら、源泉税・年末調整の事務も見据えて整理しておくとスムーズです(届出は後から追加も可能です)。
よくある記入ミス
- 住所(納税地)と事業所所在地の混同
- 事業の概要が抽象的すぎる(例:サービス業)
- 開業日が不自然(開業前に請求書を出している等)で説明がつかない
提出方法:e-Tax・郵送・窓口の手順と必要なもの
開業届の提出は、e-Tax(オンライン)または書面(持参・郵送)で行えます。まずは違いを整理しましょう。
| 提出方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| e-Tax | 24時間近い時間帯で提出しやすい。e-Tax提出なら本人確認書類の提示・写し添付が不要。提出記録も残しやすい。 | 初回は利用者識別番号など事前準備が必要。 |
| 税務署窓口(持参) | 不備があればその場で指摘されやすい。時間外収受箱も活用可能。 | 開庁時間の制約。混雑期は待ち時間が発生。 |
| 郵送 | 税務署に行かずに提出できる。 | 郵送事故対策(特定記録等)や控え管理が重要。 |
Stepでわかる:開業届の作成〜提出まで(開業届 書き方 手順)
Step 1: 最新の様式を入手する
国税庁の「個人事業の開業・廃業等届出等手続」ページから、様式と書き方(記載要領)を取得します。
Step 2: 納税地(住所地)と所轄税務署を確認する
国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで、住所地の所轄税務署を確認します。事務所が別にあっても、原則は納税地所轄です。
Step 3: 記入(特に開業日・事業の概要・屋号を確定)
開業日は根拠が説明できる日付にします。事業の概要は具体的に書き、屋号は必要性に応じて記載します。
Step 4: 提出方法を選ぶ(e-Tax or 書面)
e-Taxなら本人確認書類の添付は不要です。書面の場合はマイナンバー記載に伴う本人確認が必要になる点に注意します。
Step 5: 控え・提出記録を残す(2025年以降の運用に注意)
令和7年1月から、申告書等の「控え」への収受日付印は行われません。提出記録を自分で管理できる形にしておきます。
本人確認書類(マイナンバー)まわりの実務
書面提出でマイナンバー(個人番号)を記載する場合、原則として提出の都度、本人確認(番号確認・身元確認)のための書類提示または写し添付が求められます。一方、e-Taxで提出する場合は、本人確認書類の提示・写し添付は不要とされています。
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提出後にやるべきこと:失敗しない運用設計(2026年の視点)
記帳・帳簿保存を早めに整える
開業届を出しただけでは、経理は自動化されません。領収書・請求書の保存ルール、クラウド会計の科目設計、事業用口座・カードの分離など、早期に整えるほど決算が楽になります。
青色申告を選ぶなら、同時に「体制」を作る
青色申告の承認申請書を出しても、要件(帳簿、保存)を満たせなければ効果は出ません。特に「事業専従者給与」「減価償却」「棚卸」の論点は、開業時の設計が重要です。
インボイス・消費税は「取引先要請」と「2年縛り」を同時に見る
免税でいけるのに、取引先都合でインボイス登録を急ぐケースは少なくありません。登録のメリット(取引継続)と、申告負担・資金繰りへの影響をセットで比較してください。
よくある質問
Q: 開業届はいつまでに出せばいいですか?
A:
原則として、事業の開始等の事実があった日から1か月以内です。期限が土日祝に当たる場合は翌日が期限となります。Q: 開業届を出すと「税金が増える」ことはありますか?
A:
開業届そのものが課税を増やすわけではありません。ただし、事業所得として申告する前提が整うため、記帳・申告が適切でないと結果的に不利になることがあります。青色申告の活用や経費区分の整理が重要です。Q: 税務署に持参すれば控えに受付印をもらえますか?
A:
令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつは行われません。提出日を証明したい場合は、e-Taxの受信通知や、郵送なら送付記録の保管など、別の方法で管理してください。まとめ
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、事業開始後、原則1か月以内に提出する
- 提出先は原則として納税地(住所地)を所轄する税務署
- e-Tax・郵送・窓口のいずれでも提出でき、e-Taxは本人確認書類の提示・写し添付が不要
- 令和7年1月から控えへの受付印は行われないため、提出記録の保管方法を設計する
- 青色申告や消費税・インボイスは、開業届と同時に期限・影響を整理して判断する
参照ソース
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
- 国税庁「開業する場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/42.htm
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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