税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
経営ブログに戻る
中小企業向けコラム
作成日:2025.01.18
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

決算書の読み方【貸借対照表・損益計算書】|税理士が解説

9分で読めます
決算書の読み方【貸借対照表・損益計算書】|税理士が解説

決算書の読み方は「P/L→B/S→前期比較」が基本です

決算書とは、会社や事業の状態を数字で説明するための資料で、中心となるのが損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)です。経営者にとっての悩みは「数字は並んでいるが、どこを見れば意思決定に使えるのか分からない」点ではないでしょうか。
結論として、まずP/Lで利益の稼ぎ方を把握し、次にB/Sで資金の安全性と運転資金の詰まりを確認し、最後に前期比較で「変化の理由」を掘り下げるのが最短ルートです。
税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業・クリニック等の顧問対応を行う中で、「金融機関に説明できる読み方」「次の一手が決まる見方」を重視してきました。本記事では、初学者でも実務で再現できる型に落として解説します。

決算書とは何か:貸借対照表と損益計算書の役割

決算書で分かること(経営の3点セット)

決算書は大きく次の3点を説明します。

  • 収益性:いくら儲かったか(P/L)
  • 安全性:倒れにくい体質か(B/S)
  • 資金繰り:お金が回っているか(B/S+補助資料)

特に中小企業では「黒字なのに資金が苦しい」ケースが頻発します。これはP/Lが利益を、B/Sが資金の滞留(売掛金・在庫・借入金など)を表すため、両方をセットで読む必要があるからです。

貸借対照表と損益計算書の違い(比較表)

まずは役割の違いを一枚で押さえましょう。

←横にスクロールできます→
項目貸借対照表(B/S)損益計算書(P/L)
何を示すか期末時点の財政状態(資産・負債・純資産)一期間の経営成績(売上・費用・利益)
見るタイミング「今、どれだけ安全か」「今年、どう稼いだか」
重要ポイント自己資本、借入依存、運転資金の詰まり粗利、固定費、利益率、損益分岐点
よくある落とし穴在庫・売掛金の増加で資金が消える利益は出ているのに現金が増えない
ここがポイント
決算書は「単年度の点数」ではなく「変化の理由」が本題です。P/LもB/Sも、必ず前期比較(前年差・増減率)をセットにすると、課題が一気に見えるようになります。

貸借対照表の読み方:資産・負債・純資産を「資金の流れ」で捉える

貸借対照表(B/S)とは

貸借対照表は、期末時点の財政状態(資産・負債・純資産)を示す決算書で、資金の調達状況と運用状況を表します。つまり「お金をどう集め、何に使い、どれだけ自分の元手が残っているか」を見る表です。

B/Sで最初に見る3か所(経営判断に直結)

B/Sは細かい科目に目が行きがちですが、初動は次の3点で十分です。

  1. 現預金の増減
  • 現預金が減っているのに売上が伸びている場合、売掛金や在庫が膨らんでいる可能性があります。ここで運転資金の詰まりを疑います。
  1. 借入金と返済負担
  • 短期借入金が増えていると、日々の資金繰りがタイトになっているサインです。長期借入金は投資の裏返しなので、投資回収(利益・キャッシュ)の筋道とセットで見ます。
  1. 純資産(自己資本)の厚み
  • 純資産は「赤字や突発支出に耐えるクッション」です。利益の積み上げが純資産を厚くし、企業体力に直結します。

よくある相談:売上増なのに資金が苦しい

現場で多いのは、次のようなパターンです(匿名化した典型例)。

  • 売上は前年比+15%
  • P/Lは黒字だが、現預金が前年比▲1,000万円
  • B/Sを見ると売掛金+800万円、在庫+500万円、買掛金▲300万円

この場合、利益よりも資金の吸い込み(売掛金・在庫)が大きく、現金が減ります。対策は、回収条件の見直し・在庫圧縮・仕入サイト調整など、B/S起点の手当が中心になります。

損益計算書の読み方:利益構造を分解して「打ち手」に落とす

損益計算書(P/L)とは

損益計算書は、一定期間の売上と費用、そして利益(儲け)を示します。経営管理で重要なのは、最終利益の金額そのものより「どこで利益が出て、どこで削られているか」という構造です。

P/Lで必ず押さえる4つの段差

P/Lは段差(利益の階段)で読みます。

  • 売上総利益(粗利):売上-売上原価
    • 売上総利益率が下がると、値引き・原価高騰・外注比率増などが疑われます。
  • 営業利益:粗利-販管費
    • 固定費(人件費・家賃など)の重さを確認します。
  • 経常利益:営業利益+営業外損益
    • 借入利息が重いと、資本構成(B/S)に課題がある可能性があります。
  • 当期純利益:経常利益+特別損益-税金
    • たまたまの特別利益・特別損失を除いて「実力利益」を把握します。
ここがポイント
金融機関や投資家との会話では、「営業利益(本業の稼ぐ力)」が重視されやすい一方、税務申告では課税所得の調整が入ります。目的により説明の仕方が変わる点は意識しておくと実務がスムーズです。

決算書の読み方(手順):10分で全体像を掴むチェック手順

ここからは、毎月・毎期で繰り返せる「型」です。

Step 1: P/Lで“稼ぐ力”を確認する
売上、粗利率、販管費率を見て、前年差の要因を一言で言える状態にします。まずは「粗利が落ちたのか/固定費が増えたのか」を切り分けます。

Step 2: B/Sで“倒れにくさ”を確認する
現預金、借入金、純資産の増減を見ます。純資産が増えていないのに借入だけが増える場合、財務体質が弱くなっている可能性があります。

Step 3: 運転資金の詰まりを点検する
売掛金・在庫・買掛金の増減を確認し、現金が減る理由を特定します。ここは資金繰りの核心で、黒字倒産の予防にも直結します。

Step 4: 前期比較で“変化の理由”を確定する
P/L・B/Sともに「前年差が大きい科目トップ5」を拾い、根拠資料(明細、請求・回収一覧、在庫表)で裏取りします。原因が言語化できれば、打ち手が決まります。

中小企業の税務・経営相談

創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

見積書・納品書・請求書の違いと発行タイミング|税理士が解説

見積書・納品書・請求書の違いを「目的」「発行タイミング」「税務(インボイス・保存)」で整理。取引フロー別の実務運用と、印紙税・電子保存の注意点まで税理士が解説します。

続きを読む

代表的な経営指標:B/S・P/Lを“意思決定の数字”に変換する

指標は多すぎると運用できません。中小企業でまず使いやすい目安を置きます(業種・成長局面で適正値は変動します)。

←横にスクロールできます→
指標計算式目安(一般的)見えること
売上総利益率粗利÷売上業種平均との差を重視価格・原価・外注のバランス
営業利益率営業利益÷売上まずはプラス維持本業の体力
自己資本比率純資産÷総資産20〜40%を一つの目安安全性・借入余力
流動比率流動資産÷流動負債100%以上を目安短期の支払耐性

指標は「当期の数値」より「前年差」と「業種特性」が重要です。例えば成長期は売掛金が増えて流動比率が下がることがありますが、その場合は回収設計や資金調達で補う、という判断になります。

決算書を見るときの注意点:誤読を防ぐ3つのポイント

  • 1年分だけで判断しない
    単年度の利益は、設備投資・人員増・価格改定などの影響を強く受けます。最低でも2〜3期で傾向を見ます。
  • 税務上の処理と実態がズレることがある
    減価償却、引当金、役員報酬、棚卸などは、ルールにより利益が動きます。実態のキャッシュと併読します。
  • 「利益=現金」ではない
    利益が出ても、売掛金・在庫が増えれば現金は減ります。P/Lだけ見て安心しないことが重要です。

また、個人事業主の場合、青色申告で貸借対照表・損益計算書を作成・添付する場面があり、帳簿の精度がそのまま決算書の読みやすさにつながります。

よくある質問

Q: 決算書はどこから読むのが正解ですか? ▼

A:

実務では「P/L→B/S→前期比較」が効率的です。まず利益構造(粗利・固定費)を見て、次に財務の安全性(現預金・借入・純資産)を確認し、最後に前年差の理由を特定します。
Q: 黒字なのにお金がないのはなぜですか? ▼

A:

代表例は、売掛金や在庫の増加で現金が吸い込まれるケースです。P/Lは黒字でも、B/Sで売掛金・在庫が増えると、入金が遅れたり仕入支出が先行したりして資金繰りが苦しくなります。
Q: 借入金が多いと危険でしょうか? ▼

A:

一概に危険とは言えません。投資回収(利益・キャッシュ)が見込める成長局面では借入が増えることがあります。ただし、短期借入の増加や利息負担の増加が続く場合は、資金繰りや収益性の改善策が必要です。
Q: 自己資本比率は高ければ高いほど良いですか? ▼

A:

安全性は高まりますが、投資機会を逃している場合もあります。業種・成長段階によって適正水準は変わるため、前年差と資金繰り、投資計画と合わせて判断するのが現実的です。

まとめ

  • 決算書は「P/Lで稼ぐ力、B/Sで安全性と資金の詰まり」を読む
  • 読む順番はP/L→B/S→前期比較が基本で、変化の理由を特定すると打ち手が決まる
  • B/Sは現預金・借入金・純資産の3点を起点に、運転資金(売掛金・在庫)を点検する
  • P/Lは粗利・販管費・営業利益の段差で利益構造を分解し、改善ポイントを特定する
  • 指標は「当期の点数」より「前年差」と「業種特性」で運用する

参照ソース

  • 中小企業庁「中小企業の会計 31問31答(問4:貸借対照表)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008/04.html
  • 中小企業庁「中小企業の会計 31問31答(問5:貸借対照表と損益計算書の関係)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008/06.html
  • 国税庁「青色申告者のための貸借対照表作成の手引き(令和6年分)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/046.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
経営ブログに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

請求書発行システムおすすめ比較|インボイス対応2026

請求書発行システムおすすめ比較|インボイス対応2026

ファクタリングとは?仕組みとメリット・デメリット|税理士が解説

ファクタリングとは?仕組みとメリット・デメリット|税理士が解説

RPAで経理業務を自動化する方法|2026年版・税理士監修

RPAで経理業務を自動化する方法|2026年版・税理士監修

人気コラムランキング

1
創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

2
決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

3
経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

4
freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

5
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15