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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

相続賃貸の確定申告方法|不動産所得と減価償却引継ぎ|税理士が解説

9分で読めます
相続賃貸の確定申告方法|不動産所得と減価償却引継ぎ|税理士が解説

相続した賃貸物件の確定申告で最初に押さえる結論

相続した賃貸物件の確定申告は、「被相続人分(準確定申告)」と「相続人分(あなたの確定申告)」を切り分けた上で、相続開始後の家賃収入を不動産所得として申告し、減価償却は原則として被相続人の計算関係を引き継ぐのが基本です。問題になりやすいのは、遺産分割が終わっていない期間の家賃の帰属や、建物の減価償却の引継ぎ資料が不足するケースではないでしょうか。本記事では、相続直後から申告までにやるべき実務を、迷いやすい論点順に整理します。

相続 不動産所得とは:家賃収入は誰が、いつ、いくら申告する?

不動産所得の基本式(家賃・共益費・更新料など)

相続後にあなた(相続人)が受け取る家賃収入は、原則として不動産所得(事業的規模等により事業所得となる場合を除く)として申告します。不動産所得の計算は「総収入金額 − 必要経費」で、総収入には家賃のほか、返還不要の敷金・保証金、共益費、名義書換料や更新料などが含まれ得ます(契約内容と実態に応じて判定)。必要経費には、固定資産税、損害保険料、修繕費、そして減価償却費などが代表例です。国税庁も同様の整理を示しています。
出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm)

遺産分割が終わっていない場合(未分割期間)の家賃はどうする?

相続開始後、遺産分割協議がまとまるまで家賃を特定の相続人が管理口座で受け取っていたとしても、原則として未分割期間の所得は各共同相続人に法定相続分に応じて帰属します。さらに、後から遺産分割が確定しても、未分割期間の所得の帰属は原則としてさかのぼって修正できない、という取扱いが明示されています。ここを見落とすと、申告人のズレや修正の可否でトラブルになりがちです。
出典:国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期(未分割遺産から生ずる不動産所得)」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376_qa.htm)

ここがポイント
未分割期間の家賃を「代表して受け取っている人が全額申告すればよい」と誤解される相談は多い印象です。実務では、通帳入金先と所得の帰属が一致しないことがあるため、相続人間での精算(家賃の分配)と、税務上の申告(法定相続分按分)を分けて整理します。

相続 賃貸 確定申告の全体像:準確定申告と相続人の申告を分ける

賃貸物件の相続では、「亡くなった年の途中までの所得」と「相続開始後の所得」が混在します。そこで、申告の単位を次のように分けると整理しやすくなります。

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区分申告する人対象期間のイメージ主な対象
準確定申告相続人(被相続人の代理として)その年の1/1〜死亡日まで被相続人が得た家賃・経費等
相続人の確定申告相続人本人相続開始後〜12/31相続開始後の家賃・経費等(未分割なら法定相続分按分)

ポイントは、同じ賃貸借契約でも「いつの所得か」で申告主体が分かれることです。家賃の入金が月末・翌月など契約ごとにズレる場合もあるため、契約書の支払期日、入金日、管理会社の精算書を突合して期間帰属を確認します。

相続 減価償却 引継ぎ:建物は「中古で買った扱い」にはならない

耐用年数は見直せる?結論:原則、被相続人の耐用年数を引継ぎ

相続で取得した賃貸建物は、相続人にとっては「中古取得」に見えますが、減価償却の計算上は「被相続人が引き続き所有していたものとみなす」考え方が入り、原則として中古資産の見積耐用年数(いわゆる簡便法)に切り替えることはできない、とされています。したがって、取得価額、耐用年数、経過年数、未償却残高を引き継いで償却を継続するのが基本です。
出典:国税庁「相続により取得した減価償却資産の耐用年数(質疑応答事例)」
(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/30.htm)

引き継ぐべき情報(最低限この4点)

相続後の減価償却で必要になるのは、次の4点です。ここが欠けると、償却費が計算できず、必要経費が落ちる(税負担が増える)原因になります。

  • 取得価額(建物部分。土地は減価償却しません)
  • 採用していた償却方法(定額法など)
  • 耐用年数・償却率(取得時期等で異なることがあります)
  • 期首未償却残高(前年までの償却累計を踏まえた残高)
ここがポイント
実務では、被相続人の確定申告書控え(収支内訳書・青色申告決算書)と、固定資産税の課税明細、売買契約書(取得時)・建築請負契約書等をセットで確認します。資料が不足する場合は、まず「前年の申告書控え」が手掛かりになります。

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Step 1: 相続開始日と申告の範囲を確定する

死亡日(相続開始日)を基準に、「準確定申告の対象」と「相続人の確定申告の対象」を切り分けます。賃貸管理会社の月次明細がある場合は、精算対象月と入金日だけで判断せず、支払期日・精算基準を確認します。

Step 2: 未分割か、分割確定かを判定し、家賃の帰属を整理する

遺産分割が未了なら、未分割期間の所得は原則として法定相続分で按分して各自が申告します(代表受領でも同じ)。分割が確定した後でも、未分割期間の所得帰属は原則としてさかのぼって修正できない点に注意します。
(国税庁「No.1376」参照)

Step 3: 必要経費を「相続開始前後」で区分し、領収書・明細を束ねる

不動産所得の必要経費になり得る支出(修繕、保険、固定資産税、管理費、広告費、ローン利息のうち利息部分など)を、相続開始日を境に区分します。家事関連と混在しやすい支出は、按分根拠(面積、使用実態、契約)を残します。

Step 4: 減価償却を引き継いで計算し、申告書に反映する

建物は取得価額・耐用年数・未償却残高を引継ぎ、相続開始後の期間に対応する償却費を不動産所得の必要経費として計上します。建物附属設備(給排水、電気設備等)がある場合、償却単位が分かれていることがあるため、前年度申告書の内訳を確認します。
(国税庁「質疑応答事例」参照)

よくあるミスと注意点(税務調査・相続人間トラブルの芽)

  • 家賃入金口座の名義人が全額申告してしまい、未分割期間の帰属(法定相続分按分)とズレる
  • 減価償却を「相続したから中古で耐用年数を短くできる」と誤解し、償却費を過大計上する
  • 土地と建物を区分せず、土地まで償却しそうになる
  • 修繕費と資本的支出(資産計上)の判定を誤り、経費処理の時期がずれる
  • 準確定申告と相続人の申告を混在させ、誰の所得かが不明確になる

ここまでの論点は、早期に資料を集めて整理すれば回避できるものが多い一方、相続人が複数で未分割期間が長いほど複雑化します。

よくある質問

Q: 相続後、家賃が自分の口座に入っているので自分だけが申告すればいいですか? ▼

A:

遺産分割が確定していない未分割期間は、たとえ特定の相続人が収益を管理していても、原則として共同相続人が法定相続分に応じて申告します。分割確定後も未分割期間の所得帰属は原則として修正できません。国税庁の取扱い(No.1376)に沿って整理してください。
Q: 相続で取得したアパートは中古扱いなので、耐用年数を短くして減価償却できますか? ▼

A:

原則できません。相続で取得した賃貸建物は、減価償却の計算上、取得価額・耐用年数・経過年数・未償却残高を被相続人から引き継いで計算する取扱いが示されています(国税庁の質疑応答事例)。「中古資産の耐用年数(見積もり)」に切り替える発想はリスクになりやすい点です。
Q: 減価償却の引継ぎ資料が見当たりません。どう復元すればよいですか? ▼

A:

まず、被相続人の直近の確定申告書控え(不動産所得の収支内訳書・青色申告決算書)を探し、建物の取得価額や償却費、期首残高の手掛かりを得ます。次に、固定資産税の課税明細、取得時の契約書、管理会社の明細等を突合します。復元が難しい場合は、税理士法人 辻総合会計のような専門家に資料収集から相談するのが安全です。

まとめ

  • 相続した賃貸物件の申告は「準確定申告」と「相続人の確定申告」を切り分ける
  • 未分割期間の家賃収入は、原則として法定相続分で各相続人に帰属する(代表受領でも同じ)
  • 不動産所得は「総収入 − 必要経費」で計算し、経費には減価償却費等が含まれる
  • 減価償却は原則として被相続人の取得価額・耐用年数・未償却残高を引き継ぐ
  • 相続人が複数、未分割が長期化、資料不足の場合は早めに専門家へ相談する

参照ソース

  • 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
  • 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期(未分割遺産から生ずる不動産所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376_qa.htm
  • 国税庁「相続により取得した減価償却資産の耐用年数(質疑応答事例)」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/30.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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