
執筆者:辻 光明
代表税理士
地震保険料控除の確定申告|対象と計算・年末調整まで税理士が解説

地震保険料控除とは|確定申告で何が得になる?
地震保険料控除とは、地震保険(地震等損害部分)などの保険料を支払った場合に、一定額を所得から差し引ける所得控除です。結論として、所得税では支払額に応じて控除額が決まり、地震保険料は上限5万円まで控除できます。年末調整で漏れた場合でも、確定申告で取り戻せるケースがあります。
実務で多いのは「年末調整に証明書を出し忘れた」「副業・不動産所得があり確定申告をするついでに控除も入れたい」という相談です。税理士法人 辻総合会計でも、保険料控除は“入力は簡単だが証明書や区分でミスが出やすい”項目として、毎年チェックリスト化して確認しています。
対象になる契約・ならない契約|地震保険と「旧長期損害保険料」
地震保険料控除の対象(基本)
対象は、損害保険契約等のうち「地震等損害部分」の保険料(掛金)を支払った場合です。一般には、保険会社が発行する地震保険料控除証明書に「地震保険料」区分が表示されます。
旧長期損害保険料(経過措置)も対象になり得る
平成19年分から損害保険料控除は廃止されましたが、一定の要件を満たす長期損害保険契約等(いわゆる旧長期損害保険料)は、経過措置として地震保険料控除の対象になります。
ポイントは「古い契約だから必ず対象」ではなく、契約日や契約変更の有無など要件があることです。該当性は証明書の区分表示で確認するのが実務的です。
対象外になりやすい例
- 事業用資産のみを目的とした保険(居住用部分に対応しないもの)
- 1つの契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合に、同一契約について両方を二重に適用しようとする(どちらか一方を選択)
地震保険料控除の計算|控除額の早見と具体例
地震保険料控除は、支払った保険料の合計に応じて控除額が決まります。国税庁の計算ルールは次のとおりです(所得税)。
| 区分 | 年間の支払保険料の合計 | 所得税の控除額 |
|---|---|---|
| 地震保険料 | 50,000円以下 | 支払額の全額 |
| 地震保険料 | 50,000円超 | 一律50,000円 |
| 旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払額の全額 |
| 旧長期損害保険料 | 10,000円超 20,000円以下 | 支払額×1/2+5,000円 |
| 旧長期損害保険料 | 20,000円超 | 15,000円 |
| 両方ある場合 | ― | それぞれ計算した合計(最高50,000円) |
計算例(よくあるパターン)
-
例1:地震保険料 30,000円のみ
控除額=30,000円(50,000円以下なので全額) -
例2:地震保険料 80,000円のみ
控除額=50,000円(上限) -
例3:旧長期損害保険料 18,000円のみ
控除額=18,000×1/2+5,000=14,000円
地震保険の確定申告|手順(e-Tax・紙共通)
年末調整で控除が反映されていない場合や、自営業・副業・不動産所得などで確定申告をする場合は、申告書に地震保険料控除を記入します。控除を受けるには、支払額等を証明する書類(または電磁的記録印刷書面)を添付または提示する取扱いです(年末調整で控除済みなら不要)。
Step 1: 証明書を準備する
保険会社から交付される地震保険料控除証明書(旧長期損害保険料があればその表示があるもの)を手元に用意します。
Step 2: 申告方法を確認する(年末調整か確定申告か)
給与所得者は、年末調整で控除を受ける場合「給与所得者の保険料控除申告」を勤務先へ提出します。提出時期は、その年最後の給与支払日の前日までが原則です。
年末調整で漏れた、または年末調整の対象外なら確定申告で反映します。
Step 3: 確定申告書(または作成コーナー)に入力する
確定申告書等作成コーナーでは、「地震保険料控除」から入力します。証明書の金額・区分に沿って入力すると自動計算されます。
Step 4: 証明書の提出・保存を整理する
紙提出の場合は添付、e-Taxでも求められる保存・提示に備え、証明書は申告後もしばらく保管します(具体的な取扱いは申告方法・提出形態で異なるため、作成コーナーの案内に従うのが安全です)。
年末調整と確定申告の違い|どちらでやるべき?
| 観点 | 年末調整(会社員) | 確定申告 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社が年税額を精算 | 納税者が自分で申告・精算 |
| いつ | 年末(最後の給与前) | 原則、翌年の申告期間 |
| 何を出す | 保険料控除申告書+証明書等 | 申告書に記入+証明書等の添付/提示 |
| 典型的な利用者 | 給与のみで完結する人 | 副業・事業・不動産、年末調整漏れの人 |
年末調整で済む人はそれが最短です。一方、年末調整に間に合わなかった場合や、そもそも確定申告が必要な人は、確定申告で地震保険料控除を反映させます。
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ミスしやすい注意点|「控除できない」典型原因
- 証明書の区分(地震保険料/旧長期損害保険料)を取り違える
- 同一契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方を二重計上する(選択適用)
- 店舗併用住宅で、事業用部分まで全額を控除に入れてしまう(居住用部分のみ)
- 年末調整で控除済みなのに、確定申告で「もう一度」控除に入れてしまう(源泉徴収票・申告書の整合が崩れる)
税理士の現場感として、入力作業よりも「どの証明書のどの区分をどこに入れるか」「年末調整分と確定申告分の重複がないか」で差が出ます。迷ったら、まず源泉徴収票の保険料控除欄と証明書の金額を突合するのが早道です。
よくある質問
Q: 地震保険料控除証明書を紛失しました。確定申告はできますか?
A:
原則として、控除を受けるには支払金額等を証明する書類(または電磁的記録印刷書面)の添付・提示が求められます。まずは保険会社に再発行(または代替書類の発行可否)を確認してください。Q: 年末調整で出し忘れました。確定申告で取り戻せますか?
A:
年末調整で控除されていないなら、確定申告書に地震保険料控除を記入して反映できます。作成コーナーでは「地震保険料控除」から入力します。Q: 旧長期損害保険料があるか分かりません。どう判断しますか?
A:
経過措置の対象となる要件があり、実務では保険会社発行の証明書に区分が表示されます。証明書の表示を確認し、不明なら保険会社に照会するのが確実です。Q: 地震保険料はいくらまで控除できますか?
A:
所得税では、地震保険料は最大50,000円まで控除できます。旧長期損害保険料は計算式により最大15,000円ですが、地震保険料と併せた合計は最高50,000円です。まとめ
- 地震保険料控除は、地震保険等の保険料を支払った年に所得控除を受けられる制度
- 所得税の控除額は、地震保険料は上限50,000円、旧長期損害保険料は上限15,000円(合計上限50,000円)
- 給与所得者は年末調整での申告が基本だが、漏れは確定申告で補える
- 入力よりも「区分の取り違え」「年末調整分との重複」「居住用部分の判定」がミスの温床
- 申告にあたっては地震保険料控除証明書の準備・保存が重要
参照(リンク)
- 国税庁「No.1145 地震保険料控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
- 国税庁「A2-3 給与所得者の保険料控除の申告」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_05.htm
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー よくある質問:地震保険料を支払った場合」: https://www.keisan.nta.go.jp/r2yokuaru/cat2/cat22/cat22d/cid910.html
- 国税庁「(通達)店舗併用住宅等の按分に関する取扱い」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/16/04.htm
- 国税庁「手順3 所得控除の計算(地震保険料控除)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/03/order3/3-3_13.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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