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中小企業向けコラム
作成日:2025.06.17
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

請求書発行システムおすすめ比較|インボイス対応2026

10分で読めます
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請求書発行システムを選ぶ結論は、「インボイスの要件を満たすこと」だけでなく、取引先の受け取り方(紙・PDF・Web)と社内の承認・消込・会計連携まで含めて、請求書業務を一気通貫に設計できるかで決まります。特に、経理担当者が少ない中小企業や、医療・士業のように請求形態が多様な業種では、ツール選定を誤ると運用コストが逆に増えるケースが少なくありません。

税理士法人 辻総合会計では、40年以上にわたり多数の中小企業・クリニックのバックオフィス改善を支援してきました。現場で多いのは「請求書は作れたが、保存要件が不安」「送付方法が取引先に合わず戻ってくる」「会計ソフトに二重入力」という相談です。本記事では、インボイス対応を前提に、システムのタイプ別に比較し、失敗しない選び方を整理します。

請求書発行システムとは

請求書発行システムとは、請求書(見積・納品・請求・領収)を作成し、取引先へ送付し、控えを保存・管理する一連の業務をデジタル化するツールです。近年は、消費税のインボイス制度と電子帳簿保存法への対応が必須要件になり、単なる「作成ツール」から「証憑・債権管理の基盤」に役割が広がっています。

クラウド型とオンプレ型の違い

  • クラウド型:法改正対応のアップデートが早く、在宅・複数拠点でも運用しやすい一方、権限設計や運用ルールを整えないと統制が弱くなりがちです。
  • オンプレ型:自社要件に合わせた作り込みが可能ですが、法改正時の改修コスト・保守負担が重くなりやすい傾向があります。

中小企業の実務では、まずクラウド型を前提に比較し、既存の販売管理や基幹システムが強い場合のみ連携・併用を検討するのが現実的です。

インボイス対応で「最低限」押さえる要件

インボイス制度では、仕入税額控除の適用に向けて、請求書側の記載事項と保存がポイントです。システム選びでは、次の2点を最初に確認してください。

適格請求書の記載事項を自動で担保できるか

適格請求書には登録番号、税率ごとの対価、消費税額等などの記載が求められます。システム側でテンプレートや品目マスターを整備し、記載漏れを仕組みで防げることが重要です。特に、8%・10%が混在する業種(飲食のケータリング、物販を伴う医療・美容など)は、税率区分の運用が肝になります。

電子帳簿保存法(電子取引)での保存要件に耐えられるか

PDFでメール送付、Webでのダウンロード提供など、電子でやり取りした請求書は、電子帳簿保存法の「電子取引」として保存が必要です。検索性(取引年月日・金額・取引先)や改ざん防止の運用など、保存要件に沿った管理機能があるか、また自社の運用で担保できるかを確認してください。

ここがポイント
「作成できる」だけでは不十分です。税務調査では、請求書そのものよりも「保存のルール(誰が・どこに・どう保管し、検索できるか)」が問われます。ツール導入と同時に、運用規程・権限・保管場所をセットで決めることが再発防止になります。

おすすめ比較表|タイプ別に向いている企業が違う

請求書発行システムは、得意領域が大きく3つに分かれます。自社の課題がどこにあるかで、選ぶべきタイプが変わります。

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比較軸会計連携型(会計クラウド内)発行特化型(請求作成・送付に強い)統制・大量発行型(承認/配信/保存に強い)
向いている会社経理人数が少ない、入力を減らしたい請求書の作成・見積〜請求を効率化したい請求件数が多い、部署承認や取引先要件が複雑
強み売上計上〜入金消込〜会計まで一体テンプレ・定期請求・案件管理が軽い承認フロー、Web配信、長期保存、監査対応
注意点取引先要望(紙郵送等)に追加対応が必要なことも会計連携が弱いと二重入力が残る機能が厚く、導入設計を誤ると定着しにくい
代表例(方向性)freee/マネーフォワード系Misoca/MakeLeaps/board等楽楽明細/Bill One等(運用設計前提)

ここから先は「製品名」ではなく、「自社の業務課題→タイプ→候補」という順で絞り込むのが、失敗しない近道です。

タイプ別おすすめシステムと選定ポイント

ここでは代表的な選択肢を、実務で相談が多い観点に絞って紹介します。個別製品の細かな機能差よりも、「どんな会社が使うと効果が出やすいか」を重視してください。

1)会計連携を最重視するなら(会計クラウド内の請求機能)

売上計上、入金消込、仕訳連動までを一体化したい場合は、会計クラウドの請求機能が第一候補です。運用がはまると、請求発行後の「会計への転記」がほぼ不要になり、月次の締めが早くなります。

  • こんな会社に向く:経理1〜2名、社長が経理を兼務、請求件数が中程度
  • 見るべきポイント:取引先への送付手段(PDF/郵送/リンク)、入金消込の自動化、権限(作成者と承認者の分離)
  • 現場の落とし穴:請求は楽になったが、取引先が紙指定で結局印刷・封入が残る

2)見積〜請求までの作成効率を上げたいなら(発行特化型)

案件や見積が多く、見積→納品→請求の流れをテンプレ化したい場合は、発行特化型が適します。登録番号・税率設定をマスター化し、請求書の品質を標準化しやすいのも利点です。

  • Misoca:インボイス様式の作成・運用手順が整理されており、弥生系の周辺運用とも相性を取りやすい傾向
  • MakeLeaps:テンプレや登録番号の事前設定など、請求書作成の現場に寄せた設計
  • board:見積・請求・案件管理の流れを一体で持ちたい場合に検討しやすい

3)請求件数が多い、部署横断で統制が必要なら(大量発行・配信/保存型)

請求件数が多い、紙郵送が残る、営業部門が作成し経理が承認する、といった分業体制では、配信・保存・監査まで見据えたタイプが向きます。

  • 楽楽明細:既存の帳票レイアウトを活かしながら、アップロードで発行・配信し、保存管理もまとめて行いたい場合に検討しやすい
  • Bill One:請求書の受領・管理を起点に、インボイス判定や登録番号照会などの負荷を下げたい場合に有効(発行側の運用も含め設計が必要)
ここがポイント
「統制が必要=高機能が正解」ではありません。月間発行件数が少ないのに承認フローを過剰にすると、現場が回らず紙に逆戻りします。まずは件数・関与者・取引先要望を棚卸しし、必要な統制レベルを決めてから選ぶのが安全です。

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ツール導入は「契約したら終わり」ではなく、業務設計のプロジェクトです。現場で定着しやすい進め方をステップで整理します。

Step 1: 現状フローを棚卸しする(作成→承認→送付→保存→入金消込)

請求書の作成者、承認者、送付方法(メール・郵送・Web)、控えの保存場所、入金消込の担当を洗い出します。ここで「例外(医療機関の指定書式、取引先の紙必須、月末一括)」を必ず拾います。

Step 2: インボイス要件・保存要件の責任分界を決める

登録番号・税率区分・端数処理などのルールを、誰がどこで担保するか決めます。システムで自動化できる範囲と、運用で担保する範囲を分けることがポイントです。

Step 3: 2〜3製品でトライアルし、取引先の受け取り体験まで検証する

社内が便利でも、取引先が「開けない」「ダウンロードが面倒」と感じると回りません。PDFの見え方、リンク送付、紙郵送の有無など、取引先目線で確認します。

Step 4: 権限・承認・保管ルールを文書化し、運用開始後に微修正する

運用を始めると必ず例外が出ます。最初から完璧を目指さず、月次で改善できる体制(誰が設定を変えられるか、修正の承認は誰か)を作ると定着が早まります。

注意点|否認・トラブルを避けるチェックリスト

最後に、税務と実務の両面で、導入時に見落とされやすい注意点をまとめます。

  • 適格請求書の記載事項を「担当者の注意」に依存しない(マスター・テンプレで防止)
  • 電子でやり取りした請求書の保存を、個人メールやローカル保存にしない(検索できない状態がリスク)
  • 取引先の要望(紙、押印、締日、添付資料)を事前に確認する
  • 会計連携が弱い場合は、売上計上・消込の二重入力が残る点を織り込む
  • 登録番号の確認や取引先マスターのメンテナンスを、誰がいつ行うか決める

よくある事例として、請求システム導入後に「取引先名の表記ゆれ」「税率区分の登録ミス」「電子保存のルール未整備」が重なり、月末に経理が手戻りで疲弊するケースがあります。最初の1か月は、設定よりも運用ルールの整備に時間を使う方が結果的に近道です。

よくある質問

Q: 無料の請求書作成ツールでもインボイス対応はできますか? ▼

A:

可能な場合もありますが、実務では「保存要件」「取引先ごとの送付方法」「承認フロー」「会計連携」まで含めると限界が出やすいです。請求件数が少なく、作成者=承認者で、保存ルールも簡易で足りる場合は無料でも運用できますが、成長フェーズでは有料への移行コストも考慮してください。
Q: インボイス対応なら、どのシステムでも税務調査は安心ですか? ▼

A:

システム自体がインボイス様式に対応していても、保存や運用が不適切だと指摘対象になり得ます。特に電子で受領・交付したデータの保存要件や、社内での検索性・改ざん防止の運用が重要です。ツール選定と同時に、保管場所・権限・ルールを決めることをお勧めします。
Q: 取引先が「紙で欲しい」と言う場合、クラウド化は無理ですか? ▼

A:

無理ではありません。電子発行を基本にしつつ、紙郵送が必要な取引先だけ例外運用にする設計が現実的です。発行・封入・発送の外注や、郵送代の扱いも含め、例外を最小化するルール設計がポイントになります。

まとめ

  • 請求書発行システムは「作成」だけでなく、送付・保存・消込・会計連携まで含めて選ぶ
  • インボイス対応は、記載事項の自動担保と運用ルールの整備がセット
  • 電子帳簿保存法の要件(電子取引の保存)に耐える保管・検索設計が重要
  • 自社の課題を「会計連携」「作成効率」「統制・大量発行」に分けてタイプ選定すると失敗しにくい
  • トライアルでは取引先の受け取り体験まで検証し、例外運用を最小化する

参照ソース

  • 国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_tebiki.htm
  • 国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm
  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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