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中小企業向けコラム
作成日:2025.05.31
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

経営セーフティ共済で節税|損金算入と解約返戻金|税理士が解説

9分で読めます
経営セーフティ共済で節税|損金算入と解約返戻金|税理士が解説

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは、取引先倒産に備えながら、掛金を損金算入(個人事業は必要経費)できる制度です。決算前に「節税になる」と聞いて加入する方は多い一方で、解約時の解約手当金は課税対象となり、出口(解約タイミング・資金需要・利益水準)を誤ると想定外の税負担が起きます。本記事では、社長・院長など中小企業経営者がつまずきやすい論点を、実務目線で整理します。

経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先事業者の倒産により売掛金等が回収困難になった際、連鎖倒産や資金繰り悪化を防ぐための「共済金の貸付け」を受けられる制度です。掛金を積み立て、必要時に無担保・無保証人で借入できる点が特徴で、掛金月額は5,000円〜200,000円、積立限度額は800万円です。

税務面では、掛金を当期費用にできる(法人は損金、個人は必要経費)ため、利益が出た年度の決算対策として検討されがちです。ただし制度の本旨は「資金繰りのセーフティネット」であり、節税“だけ”で設計すると出口で崩れます。ここを押さえることが重要です。

掛金の損金算入とは|いつ・いくらまで落とせるか

掛金は「支出した事業年度」に損金(必要経費)

原則として、掛金は支出した事業年度に損金(個人は必要経費)となります。したがって、決算月までに掛金を支払えば、その期の税負担を圧縮しやすい設計です。

上限と増減の考え方

掛金月額は5,000円〜200,000円(5,000円刻み)で設定でき、積立限度額は800万円です。まずは「資金繰りに必要な防波堤をいくらにするか」を先に決め、余剰の範囲で掛金を設定するのが実務上安全です。

ここがポイント
決算対策として月額を上げる場合でも、翌期以降に利益が落ちると掛金負担が重くなります。税負担の最適化よりも、キャッシュフロー(毎月の手元資金)を優先して設計してください。

前納(まとめ払い)の注意:前納は1年以内のみ

掛金を前納する場合、税務上の取り扱いに注意が必要です。制度上は前納が可能でも、税務では「前納期間が1年を超える部分」は、特例の対象外となり得るため、費用計上のタイミングがずれる(資産計上が必要になる)リスクがあります。決算前のまとめ払いを検討する際は、前納期間と会計処理を必ず確認してください。

2024/10以降の重要改正:解約→再加入の2年ルール

2024年10月1日以後に共済契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合、解約日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、損金(個人は必要経費)に算入できない取扱いが導入されています。

ここがポイント
「いったん解約して返戻金を受け取り、また加入して損金化する」という短期の“回転”は、制度趣旨に照らして否認リスクが高く、2024/10以降はルール上も制限されています。解約は“出口戦略”として慎重に検討しましょう。

解約返戻金(解約手当金)の仕組み|課税関係の基本

解約手当金はどう決まるか

解約時には、納付月数等に応じた支給率により「解約手当金」を受け取ります。一般的には、一定期間以上納付していれば掛金総額に近い水準が戻る設計ですが、短期解約では元本割れ(掛け捨て部分が発生)し得ます。

税務:解約手当金は原則「益金(収入)」になる

掛金を損金(必要経費)にしてきた以上、解約時に受け取る解約手当金は、原則として課税所得の計算上「益金(個人は事業収入)」に算入されます。つまり、入口で落とした分は、出口で戻ってくる構造です。

このため、節税の本質は「課税の繰延べ」と捉えるのが安全です。税率が高い年度に掛金を落とし、税率が低い年度(利益が少ない年度)に解約することで、トータルの税負担が軽くなるケースがあります。

具体例:決算対策に使ったが、解約年度が黒字だとどうなる?

  • 例:毎月20万円(年240万円)を3年間納付し、当期に解約して解約手当金を受領
  • 3年間の節税効果:各期で240万円ずつ損金化(税率次第で圧縮)
  • 解約年度:解約手当金が益金に入り、解約年度の利益が跳ねる(結果、税負担が増える)

よくある相談として「解約して資金化したら、その年の法人税が想定以上だった」というケースがあります。解約は資金需要(設備投資・借入返済・納税資金など)と利益見込みを合わせて検討する必要があります。

経営セーフティ共済は節税“だけ”で使うと危険|注意点とリスク

リスク1:解約手当金の課税で“後追い課税”になる

前述のとおり、掛金を費用化しているため、解約手当金は課税所得を押し上げます。特に、役員報酬の増額や退職金、保険解約益などと同じ年度に重なると、想定外の高税率帯に入ることがあります。

リスク2:短期解約による元本割れ(制度上の設計)

納付期間が短い場合、解約手当金が掛金総額を下回る設計になり得ます。節税を目的に短期で入って短期で出る設計は、キャッシュ面でも税務面でも合理性が低くなりがちです。

リスク3:解約→再加入の“回転”は制度・税務の両面で厳しくなった

2024/10以降、解約後2年以内の掛金は損金(必要経費)算入できない取扱いが明確化されています。決算対策の「便利な箱」としての使い方は、設計を見直す必要があります。

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他の制度・手段との比較|どれを選ぶべきか

経営者の決算対策では、経営セーフティ共済以外にも選択肢があります。重要なのは「目的(資金繰り対策/退職準備/純粋な保険)」に合うものを選ぶことです。

←横にスクロールできます→
比較項目経営セーフティ共済(倒産防止)小規模企業共済法人保険(一般論)
主目的取引先倒産時の資金繰り退職・廃業後資金保障・退職金準備等
税務効果掛金を損金/必要経費(入口)所得控除等(制度による)商品設計により差が大きい
出口課税解約手当金が課税所得に影響受取区分により課税関係が異なる解約返戻金等が課税所得に影響
キャッシュ性解約で資金化可能(条件あり)原則長期契約条件に依存
向く人取引先与信リスクがある業種退職金の積立をしたい経営者保障ニーズが明確な場合

税理士法人 辻総合会計の現場感としては、医療・士業・建設・卸売など「掛取引が多い業種」ほど、経営セーフティ共済は“保険”として合理性が出やすい一方、サービス業で現金商売中心の場合は、優先順位が下がることもあります。

導入・運用の実務手順|決算対策で失敗しない進め方

Step 1: 目的を定義する(節税より先に)
取引先倒産時の必要資金を概算し、どこまで積むか(例:売掛金の最大残高、月商の何か月分など)を決めます。目的が「資金繰りの防波堤」であれば、過大な掛金設定を避けられます。

Step 2: 掛金月額を設計する(上限より“継続可能性”)
月額は5,000円〜200,000円。いきなり上限にせず、資金繰りに無理がない水準から開始し、利益状況と連動して調整します。

Step 3: 会計処理・前納の扱いを確認する
前納を検討する場合は、税務上の費用化範囲(前納期間)と仕訳処理(費用/前払)を確認します。ここを誤ると、決算対策のつもりが「当期は落ちない」結果になります。

Step 4: 出口(解約)を“利益計画”に組み込む
解約手当金は課税所得に影響します。解約予定年度の利益見込み、役員報酬、退職金、設備投資、納税資金をセットで検討し、税率が跳ねない年度を選びます。

Step 5: 2024/10以降の2年ルールを前提に運用する
「解約してすぐ再加入」は前提にしない。必要があれば、資金調達(短期借入、当座枠)など他手段と組み合わせて、制度趣旨に沿った運用に寄せます。

よくある質問

Q: 掛金はいつ損金(必要経費)になりますか? ▼

A:

原則として、掛金を支出した事業年度に損金(個人事業は必要経費)になります。ただし前納を行う場合、前納期間が長いと費用化できる範囲に注意が必要です。
Q: 解約手当金(解約返戻金)は課税されますか? ▼

A:

原則として課税所得に影響します。掛金を損金(必要経費)にしてきた場合、解約時に受け取る解約手当金は、益金(個人は事業収入)として計上されるのが基本です。
Q: 解約してすぐ再加入すれば、また損金にできますか? ▼

A:

2024年10月1日以後に解約し再加入する場合、解約日から2年を経過する日までの掛金は損金(必要経費)算入できない取扱いがあります。短期の回転を前提にした設計は避けるべきです。

まとめ

  • 経営セーフティ共済は取引先倒産に備える制度で、掛金は損金算入(個人は必要経費)できる
  • 解約時の解約手当金は課税対象となり、節税というより「課税の繰延べ」と捉えるのが安全
  • まとめ払い(前納)は税務上の費用化範囲に注意し、会計処理を確認する
  • 2024/10以降、解約→再加入の2年ルールがあり、短期回転の設計は難しい
  • 導入は「資金繰り目的」と「出口(解約年度の利益計画)」をセットで設計する

参照ソース

  • 中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度について(FAQ)」: https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq16_tosankyosai.html
  • 中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度の現状について(令和7年12月)」: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kyousai/026/001.pdf
  • 国税庁「令和6年度 法人税関係改正の概要(その他主な改正項目)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2024/pdf/O.pdf
  • 国税庁「措置法第66条の11関係(法令解釈通達)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/15/15_66_11.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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