
執筆者:辻 光明
代表税理士
節税と脱税の違い・グレーゾーン判断基準実務ポイント|税理士が解説

節税と脱税の違いとは(結論)
節税と脱税の違いは、端的にいえば「法律の想定する範囲で税負担を軽くしているか(節税)」、それとも「事実を隠したり偽ったりして税を免れているか(脱税)」です。
問題になりやすいのは、その中間にある「租税回避(いわゆるグレーゾーン)」で、取引の形式は整っていても、実態や合理的理由が乏しい場合に税務上否認され得ます。
経営者・個人事業主にとってのリスクは、追徴課税だけでなく、加算税や延滞税、場合によっては刑事責任(査察)まで広がる点です。本記事では、現場で使える判断基準を軸に整理します。
節税・租税回避(グレー)・脱税の整理
3区分の考え方(最初に押さえる枠組み)
- 節税:法令や通達、制度趣旨に沿って税負担を軽減する行為(控除・特例の適用、正当な費用計上など)
- 租税回避(グレー):形式上は合法に見えるが、制度趣旨に反する・経済合理性が薄いなどの理由で否認され得る行為
- 脱税:仮装・隠ぺい(売上除外、架空経費、二重帳簿等)により税を免れる行為。悪質性が高い場合は査察・告発の対象
比較表:実務での見分け方
| 区分 | 典型的な状態 | 税務上の帰結 | ペナルティの目安(代表例) |
|---|---|---|---|
| 節税 | 取引に実態があり、証憑・契約・業務目的が整合 | 原則として適法に処理 | なし(適正申告が前提) |
| 租税回避(グレー) | 形式はあるが、実態・合理性が弱い/制度趣旨に反する疑い | 否認・更正(税額の増加) | 申告内容等により過少申告加算税・無申告加算税等の可能性 |
| 脱税 | 売上除外、架空外注、偽造領収書など不正手段 | 重加算税・場合により刑事 | 重加算税(35%/40%等。繰返しで加重あり) |
グレーゾーンの判断基準(否認リスクを下げる5つの視点)
租税回避(グレー)を「節税として通るか/否認されるか」は、単一要素では決まりません。実務では次の5視点で総合判断します。
1) 取引の実態があるか(役務提供・権利移転・履行)
- 役務提供がないのにコンサル料だけが発生していないか
- 実物・成果物・作業記録があるか
- 相手先の人員・設備・能力と取引内容が整合するか
2) 合理的理由(税以外の目的)が説明できるか
- 経営上の目的(資金調達、リスク分散、事業承継、業務効率化等)が先に立つか
- 税効果が主目的に見える設計(不自然なタイミング・短期回転)になっていないか
3) 価格・条件が第三者基準で妥当か(独立企業間価格の発想)
- 役員・親族・同族会社間では、相場や算定根拠が特に重要
- 取引条件が一方的に有利/不利になっていないか
4) 開示・説明可能性(「説明して耐える設計」か)
税務調査で問われるのは「結論」より「過程」です。
意思決定資料(稟議、議事録、見積比較、検討メモ)が残っていれば、恣意性の疑いを下げられます。
5) 証憑と整合(契約・請求・支払・会計処理が一貫)
- 契約書と請求書の内容が一致するか
- 支払実態(振込・源泉・消費税区分)が整合するか
- 期ズレ・名義借り・現金循環など“説明困難な点”がないか
どこから脱税になるのか(「不正」のライン)
脱税で問題になるのは、単なる計算ミスではなく「不正手段」です。実務上の“危険サイン”は次のとおりです。
- 売上の一部除外(現金売上、プラットフォーム売上、入金口座の秘匿)
- 架空経費(実在しない外注、偽造領収書、名義貸し)
- 二重帳簿、データ改ざん、証憑の破棄
- 取引先に協力させた仮装(循環取引、架空請求)
国税庁の「令和6年度 査察の概要」では、告発件数や脱税総額が公表されており、悪質性が高い事案は刑事責任の追及に進むことが示されています。グレーのつもりでも、仮装・隠ぺいがあると評価されれば、次元が変わります。
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ペナルティの全体像(加算税・延滞税・査察)
加算税(申告の内容・経緯で変わる)
加算税は、過少申告や無申告など申告義務違反に対する行政上の制裁です。国税庁資料では、調査通知の前後や繰返しで税率が変わること、重加算税が35%/40%(繰返しで加重)と整理されています。
延滞税(納付が遅れるほど増える)
延滞税は、納期限までに納付されない場合に日数に応じて課される“利息相当”の税です。税率は年度・期間で変動し、加算税とは別枠で発生します。
査察(悪質事案は刑事へ)
査察は、悪質な脱税に対して刑事責任を追及するための手続です。国税庁が毎年公表している概要資料では、告発件数・脱税総額等が示されています。数字は“氷山の一角”で、重要なのは「不正と評価される設計を避ける」ことです。
迷ったときの実務手順(グレーを白に寄せる方法)
税理士法人 辻総合会計でも、節税相談で多いのは「やって良いか」より「どう設計すれば説明できるか」です。迷ったら次の順で整えます。
Step 1: 取引目的を一文で定義する
税以外の目的を明文化します(例:採用強化のための報酬設計、資金繰り改善のための設備更新など)。目的が曖昧だと、後から“節税目的の形式”に見えやすくなります。
Step 2: 実態の裏付け(成果物・記録)を作る
役務なら作業ログ、成果物、会議議事録。賃貸なら写真、使用状況、相場資料。証憑を「後追いで作らない」運用が重要です。
Step 3: 価格の算定根拠を残す
相見積、相場資料、算定表など、第三者が見ても妥当な根拠を残します。特に親族・同族関係は厳しく見られます。
Step 4: 税務論点を洗い出す(否認規定・典型論点)
同族会社、役員給与・退職金、寄附金、交際費、資産計上、消費税の課税区分など、論点を先に把握して“踏まない設計”にします。
Step 5: 実行前に専門家レビュー/必要なら事前相談
金額が大きい、スキーム性が高い、関係者取引が多い場合は、実行前レビューが費用対効果で有利です。税務調査は「やった後」ほど選択肢が減ります。
よくある質問
Q: 「節税」と言っていれば脱税になりませんか?
A:
なりません。呼び方ではなく、事実関係と手段で判断されます。事実を偽る(売上除外、架空経費等)行為は、節税目的であっても脱税と評価され得ます。Q: グレーゾーンは“違法ではない”のだから安心ですか?
A:
安心ではありません。グレーの本質は「税務上の否認リスクが残る」点です。否認されれば追徴課税に加え、申告状況によって加算税・延滞税が発生します。実態・合理性・証憑を整えるほどリスクは下がります。Q: 税務調査で否認されたら必ず重加算税ですか?
A:
必ずではありません。重加算税は「仮装・隠ぺい」など不正が認定される場合に問題になります。説明可能な資料が整っており、見解の相違に留まる場合は、重加算税に至らないケースもあります(ただし個別事情によります)。まとめ
- 節税は「制度趣旨に沿う適法な税負担軽減」、脱税は「仮装・隠ぺいによる不正」
- グレーゾーンは、形式より実態・合理的理由・証憑の説明力で勝負が決まる
- ペナルティは追徴だけでなく、加算税・延滞税、悪質なら査察(刑事)まで広がる
- 迷ったら「目的の明文化→実態証拠→価格根拠→論点洗い出し→事前レビュー」の順で整える
- 個別事情で結論が変わるため、高額・関係者取引・スキーム性が高い場合は実行前相談が有効
参照ソース
- 国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf
- 国税庁「No.9205 延滞税について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
- 国税庁「令和6年度 査察の概要」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sasatsu/r06_sasatsu.pdf
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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